コラム
バーク堆肥とは? 地力回復の効果とデメリットを解説
公開日2023.05.08
更新日2023.05.08

バーク堆肥とは? 地力回復の効果とデメリットを解説

工場で発生したおがくずや樹皮(バーク)はゴミとして廃棄されていましたが、これらを堆肥として利用しようという研究が始まったのは1950~1960年ごろです。日本では米ぬかや鶏糞などを発酵促進に用いた堆肥化の開発が進み、現在では特殊肥料として市場に流通しています。今回のコラムでは土壌を改良する資材として土づくりに用いられるバーク堆肥について詳しく解説していきたいと思います。

バーク堆肥とは?

紙パルプ工場や木材生産工場などで大量に発生する植物の樹皮(バーク)を粉砕して発酵させた肥料のことです。家畜ふんや化学肥料を加えて堆積し好気性発酵に適した水分を加え、高温で完熟化させます。家畜ふんを加えるのは、堆肥化に関係する微生物や栄養分が多く含まれているためです。高温になるのは、微生物がバークの易分解性有機物を分解する際に熱を発するからとされています。堆積期間に切り替えしを数回行い、常温発酵を促進させます。

樹皮(バーク)に含まれていて最初に分解される有機成分は、糖・アミノ酸・有機酸・アルコールなどで、次に分解されるのはデンプン・タンニン・ヘミセルロース・タンパクなどです。最後にリグニンやセルロースが分解され、この段階で腐植物質の形成が進むと考えられています。

バーク堆肥は、肥料取締法では特殊肥料にあたり、地力増進法では土壌改良資材にあたります。メーカーによって品質は異なりますが、一般に含水率が高く三大栄養素窒素リン酸カリ)は、ほとんど含まれていないという特徴があります。

バーク堆肥のメリット

バーク堆肥の適切な施用は、土壌が改良されて、根圏微生物など有効菌の活動が盛んになり、作物の品質や収量が向上します。その効果は以下の3つの要因が寄与していると考えられます。

土壌の物理性が改善する

微生物の働きにより団粒構造化が促進され、養水分の吸収力および保持力が改善し、土壌の保水性や保肥性が向上するとされています。また、樹皮(バーク)は微生物分解に対する抵抗力が高い難分解性のリグリンやセルロースを多く含んでいるため、分解の速度がゆっくりで生成される腐植物質の安定度が高く効果が持続しやすいと考えられています。団粒構造になると土がふかふかになるため耕作しやすくなるというメリットもあります。

関連コラム:団粒構造とは? 植物が良く育つ土壌に必要な要素と土の作り方

土壌の化学性が改善する

腐植物質が安定的に供給されることは、土壌の化学性の改善にも良い影響を与えます。特にバーク堆肥CECが高いという傾向があり、保肥力を改善させる効果が期待できます。また、腐植物質はアルミニウムやカルシウムと化合物を安定的に生成することで、土壌のリン酸との結合を妨げ、リン酸吸収係数を低くするといったメリットもあるようです。堆肥施用の減少に伴い微量要素欠乏症の多発が報告されていますが、バーク堆肥は各種の微量要素を含むことから欠乏症防止の効果が期待できると考えることができるかもしれません。

土壌の生物性が改善する

バーク堆肥を用いることで、土壌伝染性病害の抑制効果の報告例が増えてきているようです。キュウリつる割れ病・トマト萎凋病・ジャガイモそうか病などが軽減された例が報告されています。また、バーク堆肥中にはフザリウム菌や立ち枯れ病菌などの病原微生物に対して有効作用を有する菌が検出されているため、連作障害や病害虫発生を防止するなどの効果が期待できるとされています。

一方、ナス半身萎凋病・ダイコン萎黄病・ダイコン褐色腐敗病などは病害が助長されたとの報告があるため、栽培する作物によってバーク堆肥が植物に与える影響が異なるようです。施用する際には注意してください。

関連コラム:連作障害の基礎知識と対策に関して|最適な肥料と土壌改良材をご紹介

バーク堆肥のデメリット

窒素飢餓(窒素欠乏)を引き起こす

バーク堆肥は大量に投入しC/N比(炭素率)が高くなると、有機物を分解する際に窒素を利用する微生物が増えてしまい、植物が窒素飢餓(窒素欠乏)に陥る可能性があります。これは炭素(C)を食べ物として分解する微生物が窒素(N)を利用するためです。炭素(C)が多ければ微生物の働きが活発になり、多くの窒素(N)を消費します。植物が利用する三大栄養素の一つである窒素(N)が不足し、窒素欠乏症状を引き起こします。

生育障害を引き起こす

微生物の働きが活性化すると酸素の消費と二酸化炭素の放出が促進され、土壌が還元化(嫌気的)し生育障害を引き起こすリスクがあります。また、未成熟のバーク堆肥はタンニン酸、テンペル類といった植物に有害だとされるフェノール性酸の含有率が高いため植物の成長を阻害する可能性があるようです。

バーク堆肥を使う際の注意点

適正な製品を選ぶ

未成熟のバーク堆肥の施用は、生長障害を引き起こす可能性があるため、十分に堆肥化された製品を選ぶことが大切です。バーク堆肥は特殊肥料のため肥料成分の基準値が定められていません。メーカーによって製法が様々で特定の土壌や環境に対して、成分バランスが悪かったりする可能性があります。成分表示を確認し適当な製品を選ぶようにしてください。C/N比(炭素率)とCECが成熟の目安になり、一般にC/N比(炭素率)は35以下、CECは70me/100g以上が適当とされています。

窒素飢餓(窒素欠乏)に注意する

前章でもお伝えした通りバーク堆肥の施用において、特に発生しやすいリスクに窒素飢餓(窒素欠乏)があげられます。C/N比(炭素率)を低くするために施肥のタイミングや土壌や栽培する作物によっては窒素肥料を投入することも必要です。

乾燥に注意する

バーク堆肥は一度乾燥してしまうと水を弾きやすくなるという性質がありますので、乾燥したバーク堆肥は湿らせてから施用するようにしましょう。バーク堆肥が乾燥すると雨や潅水による水を弾いてしまい土壌が干上がってしまう原因となります。特に夏の高温時など乾燥しやすいシーズンは土壌の水分管理に注意してください。過度に乾燥し撥水性を示すものは使わないほうが良いかもしれません。

いきなり大量に施用しない

一度に大量に施用する場合は、最初から土壌に混ぜ込むと障害が発生するおそれが高いことから、地表にマルチングを施し2~3カ月してから混和させると良いとされています。

害虫に注意する

農業害虫は有機物が多く含まれた土壌に産卵するとされていますので施用する際には注意が必要です。特に未成熟のバーク堆肥にはコガネムシが産卵しやすくなるなどのリスクにもつながります。できるだけ腐熟の進んだものを利用するようにしましょう。

関連コラム:コガネムシの対策方法を詳しく解説|初動対応が大切

おすすめの土壌改良材|地力の素

土づくりにおすすめしたいのが高純度のフルボ酸を含有している有機質土壌改良資材の地力の素です。地力の回復に必要な腐植物質を投入すると、土壌の団粒構造を促進したり、植物の発根促進やリン酸吸収をサポートしたりするなどの効果が期待できます。また、少ない量で堆肥1トン分と同等の腐植物質を保有しているため、土づくりの際に負担となる堆肥投入作業を省力化することができます。特におすすめなのはペレット堆肥タイプで、牛ふん堆肥を含んでおり家畜糞の投入が不要のためブロードキャスターなどの機械で散布することができます。

地力の素の解説動画はこちら

堆肥を活用した土づくりを

日本の農地は有機物の消耗や施設土壌の塩類集積などが発生し、地力が低下しているとの指摘がありますが、これは化学農薬や化学肥料に偏りすぎたツケが回ってきているのかもしれません。短いシーズンの品質や収量だけに着目した土づくりではなく、長期的な視点で土壌管理を行うことが安定した農業経営につながっていくのではないでしょうか。今回のコラムを皆様の圃場の土づくりにお役立ていただければ幸いです。

関連コラム:農地の塩類集積を防いで農作物を守れ!

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コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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