連作とは?基礎知識を解説
そもそも「連作」とは何でしょうか。連作とは同じ畑で同じ作物を毎年つくり続けることです。例えば春作(春から夏)でキャベツをつくり、秋作(秋から冬)でもキャベツをつくると連作になります。また1年目の春作でキャベツをつくり、秋作でレタスをつくり、2年目の春作でキャベツをつくる場合も連作に該当します。そして同じ「科」の作物を育てた場合も連作に該当します。例えばナスをつくった場所で翌年もナス科のトマトやジャガイモをつくった場合も連作に該当します。
連作障害とは?原因と種類をご紹介
連作障害の原因
連作障害が起きる原因は次のように3つ挙げられ、土壌病原菌、土壌害虫、生育阻害物質があります。そのうちの8割の被害は土壌病原菌と土壌害虫にあると言われています。以下に詳しく記載します。
1.土壌病原菌による加害
土の中にすんでいる微生物の中には、作物の内部に侵入し繁殖して病気を引き起こす種類がいます。それが土壌病原菌です。土壌病原菌は種類ごとに好む野菜の「科」が異なるため、同じ科の野菜を連続で栽培してしまうと地中に土壌病原菌が増えていくというわけです。なお病原菌の種類によっては休眠胞子の形で10年以上も土中で生きていることもあるようです。
2.土壌害虫による加害
土壌害虫で最もやっかいなのは「線虫」です。種類が多く、代表的な種類だとネコブセンチュウ、シストセンチュウ、ネグサレセンチュウ等が挙げられます。線虫は肉眼ではほとんど見えない大きさの生物で、土中の有機物や微生物を食べて生活しているのですが、連作して数が増えてくると作物の根に寄生して生育を阻害します。
センチュウの種類 | 被害を与える作物の種類 | 被害 |
---|---|---|
ネコブセンチュウ |
ナス科、ウリ科、マメ科、セリ科などの多くの野菜 | 名前の通り、作物の根に侵入してこぶをつくり、内部で養分を吸収します。そのため、作物は根から養分を吸い上げられづらくなるので、生育不良や枯死します。 |
シストセンチュウ | ジャガイモ | 地上部が枯れて葉が光合成をできなくなるので収量が大きく低下します。 |
ネグサレセンチュウ |
ダイコン、ニンジン、ゴボウなどの根菜類 | 根に侵入するとその部分が傷むので品質が低下します。また多発すると株全体が生育不良になります。 |
3.植物から分泌される毒素(生育阻害物質)による発芽や生育の抑制
例えばエンドウやアスパラガスといった作物は、根から生育阻害物質(アレロパシー)を分泌します。この物質は雑草等の植物の発芽や生育を抑制する働きがあります。その環境において自分だけが優占できる画期的なシステムである一方、地中に生育阻害物質が蓄積していくと、物質を分泌する作物自身も障害を受けてしまいます。例として挙げられるのが外来種である「セイタカアワダチソウ」です。一時期、根から生育阻害物質を出して日本の在来植物を駆逐して優占したことがメディアで盛んに報道されていたことがありました。しかし、これも生育阻害物質の蓄積により繁殖がとまりました。今ではそれほどセイタカアワダチソウを見かけなくなっていると思います。
連作障害の種類
連作障害には様々な種類があります。代表例を挙げて解説します。
つる割病
キュウリやメロンといったウリ科の作物で発生します。カビ(糸状菌)の一種が原因で起こり、葉が萎れ、枯れて落ち、株全体に広がり枯死します。
萎黄病(いおうびょう)
キャベツやダイコンといったアブラナ科の作物で発生します。カビ(糸状菌)の一種が原因で起こり、下葉から黄色く萎れて枯れます。
線虫害
多くの種類の作物で発生します。土壌動物である線虫が植物の根に寄生することで、生育を阻害する被害を起こします。
そうか病
ジャガイモで発生します。細菌の一種が原因で起こり、ジャガイモの表面に5~10mm程度のかさぶたのような病斑が発生します。高温状態や乾燥状態になると発生しやすいです。
青枯病(あおがれびょう)
ナス、トマト、ピーマンといった作物に発生します。細菌の一種が原因で起こり、名前の通り葉が青い状態(緑色のまま)で突然萎れ、枯死します。夏場(7~9月)に発生しやすいです。
半身萎ちょう病
ナス科の作物で発生します。カビ(糸状菌)の一種が原因で起こり、株の片側の葉が巻き上がって萎れて枯れます。気温の低い初夏~秋に発生しやすいです。
根こぶ病
アブラナ科の作物で発生します。カビ(糸状菌)の一種が原因で起こり、根にこぶができるのが特徴です。収穫後に地中に休眠胞子が残るので注意が必要です。
黒腐菌核病(くろぐされきんかくびょう)
長ネギやニンニクといった作物に発生します。カビ(糸状菌)の一種が原因で起こり、葉先が黄色く変色して枯れ、地際には名前の通り黒色の菌核ができて枯れます。根が腐ることも特徴です。
連作障害の予防と対策方法の基本
連作障害を出さないためにはまずは「輪作」が基本です。また予防対策の一つにクロルピクリンによる土壌消毒が挙げられます。連作障害の原因となる病原性微生物を取り除くことで連作による被害が発生しにくい畑にすることができます。
可能であれば土壌診断を行い、診断に基づいた施肥管理による丁寧な土づくりをすることが連作を予防する重要なポイントとなります。
作物別の連作障害の予防と対策方法(例)
作物別の連作障害の予防と対策方法は様々です。以下に一例を記載します。
アブラナ科
土壌改良材を投入する
「転炉スラグ*」や「コーラル**」がおすすめの土壌改良材です。根こぶ病を抑制する効果が期待できます。根こぶ病菌は土壌が弱アルカリ性(pH7.2以上)だと感染しなくなると言われています。転炉スラグに含まれる石灰分が土壌をアルカリ性に傾けるので、1㎡あたり2~3kgを鋤きこむことで根こぶ病への効果が期待できます。コーラルはプラスに帯電しており、マイナスに帯電した根こぶ病の休眠胞子を吸着するため、休眠胞子の発芽を抑制します。定植の際に植え穴にコーラルを50g程度入れて土と混和することがおすすめです。
*製鉄所の鉄の製造過程にできる副産物。主成分はケイ酸カルシウム。マグネシウム、リン酸、鉄、マンガンなどを含む。
**サンゴ化石。主成分は炭酸カルシウム。
アブラナ科、アカザ科を除く野菜
籾殻燻炭を投入する
多孔質の籾殻燻炭は菌根菌の絶好の住処となります。菌根菌は野菜の根に菌糸を伸ばして共生する菌です。菌根菌は光合成生産物である糖等を作物からもらう代わりに、作物の肥料分であるリン酸を広範囲から吸収して作物に提供します。籾殻燻炭は1㎡あたり400~1,500g程度を混和することがおすすめです。
関連コラムはこちら:アーバスキュラー菌根菌とは?リン酸供給の働きと籾殻による活用法
ナス科、ウリ科の野菜
コンパニオンプランツを植える
栽培する作物と一緒に植えると良い影響を与える作物を「コンパニオンプランツ」と言います。ナス科の野菜であるトマト、ナス、ピーマンやウリ科のスイカ、メロン、キュウリなどにネギ属の作物を植えると有効です。ネギ属にはバークホーデリア・グラジオリーという細菌が共生しており、この細菌が抗生物質を出すことで土壌中の病原菌の抑制に効果を発揮します。
連作障害が起きにくいおすすめの作物
連作障害が起きにくい野菜には稲、ネギ属、トウモロコシ、ニンジンなどがあります。本章では稲とネギ属に関して記載します。
稲
稲は他の作物と違って連作するほど収量が上がり、連作障害がない作物です。水田に水を張っていると水田土壌は嫌気的な状態になるため、好気的な病原菌が生きていけないためです。
ネギ属
ネギやニンニク等のネギ属の野菜も連作障害があまり出ません。ネギ属は独特のニオイがありますが、これはアリシンという成分によるもので、このおかげで病原菌に対して抵抗することができます。またネギの根周りにはフザリウム菌に対して静菌作用のあるシュードモナス菌等が住んでいることも理由です。
簡単にバイオ炭が作れる!
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ドラム缶式バイオ炭製造機のしんちゃんは農業残渣を2時間でバイオ炭に転換するアイデア製品です。農業残渣はかつては燃やして処分することができましたが法令が変わってからは自身で焼却処分ができなくなってしまい困った事態になっています。そんな悩みをしんちゃんは解決し、さらにはいま流行りのバイオ炭として有効活用の幅を広げます。ドラム缶は200Lで、農業残渣を詰め込み、少量の灯油で直接着火します。収納室にセットしたドラム缶でおよそ2時間燃焼させると、生の農業残渣200Lからバイオ炭70Lになります。
連作障害対策に最適な腐植酸質資材
地力の素|高純度フルボ酸含有100%有機質土壌改良材
地力の素は、良質な腐植酸が含まれている土壌改良資材です。土づくりの際の堆肥の投入量が半減できます。土壌に混和することで、連作で崩れた土壌微生物のバランスを整えて健全な土壌を取り戻します。実際にホウレンソウ萎凋病の発生が緩和されたり、レタス根腐病、カーネーションの立枯病などの抑制効果が確認されています。またネコブセンチュウの被害も大きく抑制することができ、トマト、キュウリ、ピーマン、メロン、ニンジン、オクラなどで効果が確認されています。地力の素は、主に土づくりの際に使用する固形タイプ(細粒・粗粒・ペレット)と、灌注や点滴など追肥でも利用できる液体タイプがあり、いろいろな用途で活用することが可能です。
連作障害を回避して安定した収穫量の確保を目指しましょう
計画的に作付けを行う農業にとって、連作障害が起きてしまい収量が低下することは絶対に避けたいものです。事前に必要な情報を得て対策を行えば回避することができるので、本コラムをご参考にインターネットや参考書等で情報収集してみてはいかがでしょうか。
関連コラム:
・根圏における根の活動とは?土壌微生物との共生関係について
・土壌改良をして水はけの優れた環境を作るには?
コラム著者
満岡 雄
2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Xを更新していますのでぜひご覧ください。
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