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クエン酸が作物に及ぼす影響とは?その作用と期待できる効果を解説
公開日2025.05.09
更新日2025.05.09

クエン酸が作物に及ぼす影響とは?その作用と期待できる効果を解説

クエン酸は、現在、農業用の肥料として注目を集めています。キレート作用による栄養素の吸収促進や根の活性が高まるなど、収穫量の増加や品質アップにつながる効果が期待できるためです。そこでこの記事では、クエン酸配合肥料の現在わかっている効果や使い方、注意点について解説します。また、使用がおすすめのケースもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

クエン酸配合肥料とは

クエン酸は有機酸の一種で、植物の種類によっては根から分泌されています。このクエン酸は、肥料のほか除草にも使われるなど農業分野で活躍している成分です。除草効果を期待して使用する場合は、濃度が高い状態で使用します。そんなクエン酸を配合している農業用肥料は、「液体」「粉末」のタイプがあり、水で希釈して潅水葉面散布などで使用します。研究や実験においては、固形化した試作資材を使用している事例もありますが、現在のところ市場には流通していないようです。

クエン酸配合肥料の効果が現れる時期は、作物の種類、生育ステージ、土壌の状態、施用量など様々な要因によって異なりますが、一般的に液肥のため即効性が高く施用後数日から数週間で葉色が良くなったり根の張りが活発になったりといった効果が現れはじめると言われています。ただし、目に見える効果がすぐに出なくても、土壌環境の改善や養分の吸収促進といった効果はすでに発揮されている可能性があります。継続的に使用することでより大きな効果が期待できるため、作物の状態を確認しながら定期的に施用していきましょう。

農業におけるクエン酸の重要な3つの働き

クエン酸は、様々な研究から植物の生育に良い影響を与えることが分かっています。それは、次の3つの働きがあるためです。

① 難溶化した栄養素のキレート化

植物の健康な育成には、土壌の窒素リン酸カリウムのほか、鉄やマンガンといった微量要素などの栄養素の吸収が重要になります。しかし、これらの栄要素は土中のある条件で水に溶けにくい状態(難溶性)となり、植物が根から吸収しにくくなっていることがあります。クエン酸には、難溶化した栄養素をキレート化し、植物が利用しやすい形に変える作用があります。

難溶性になりやすい栄養素として良く知られているのはリン酸です。リン酸は鉄・アルミニウムなどの金属イオンと結合しやすく、結合したリン酸は難溶性となり根が吸収しにくい状態です。クエン酸にはこれら難溶性となった栄養素を遊離状態にして吸収しやすい状態に戻すという働きがあります。また、酸性が強い土壌ではアルミニウムが溶出して植物が生育阻害を受けることがありますが、植物によって(例えばインゲンマメ)は根からクエン酸を根圏に放出して解毒することが知られています。

キレートはギリシャ語で「カニのハサミ」を意味します。キレート作用とはクエン酸が特定の金属イオンを挟み込んで、他の塩類と結合しない状態(錯体)にする化学反応のことです。キレート錯体となった金属イオンの化学的性質は、遊離状態(化合物から分離している状態)と比べて大きく変化します。

クエン酸によるキレート化は、土壌の有害な金属イオンを無毒化することにつながります。そのため、土木の分野では汚染土壌の浄化にも応用されています。

② 根の活性が向上する

高畝マルチ栽培の早生ウンシュウにおけるクエン酸資材施用による樹勢維持と減酸促進(農研機構)によると、発根期にクエン酸を土壌施用すると、温州ミカンの根の活性が高まり、葉色は高い値で維持され、果実の減酸も促進されると報告されています。クエン酸がどのように作用して根の活性が向上するのか、その理由について現在のところ、はっきりとしていないようですが、根の活性による樹勢回復などの効果が期待できるようです。

③ アルカリ性土壌のデメリットを改良できるかも?

クエン酸は弱酸性なため、アルカリ性土壌を緩やかに調整する作用が期待できます。アルカリ性土壌はカリウム・マンガン・鉄・亜鉛などの微量要素の吸収量が低下して欠乏症を招きやすい状態になる(下図:農林水産省の資料より抜粋)とされていますので、クエン酸資材の施用によりアルカリ性に傾きすぎた土壌の調整に役立てることができるかもしれません。作物や土壌の負担を抑えながら緩やかにpHの調整ができるのは、非常に重要な作用と言えるでしょう。九州大学農学研究院と理化学研究所植物科学研究センターの共同研究では、小松菜にクエン酸配合肥料を施用することで、根圏のpHが下がってリン酸・鉄・アルミニウムの吸収量が増加したと報告されています。

 

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クエン酸配合肥料に期待できる3つの効果

土壌環境や作物特性、そして利用方法により差異はありますが、クエン酸配合肥料のキレート作用や根の活性向上などの働きは、次のような嬉しい効果が期待できます。

収量がアップする

上記のように、クエン酸には植物の根の活性が向上するとされ、根張りが良い作物は栄養の吸収力も高いため、クエン酸配合肥料を使うことで作物の収量が向上する効果が期待できます。収穫期間の長いイチゴやトマトなどといった果菜類で問題となる「成り疲れ」を防ぐことにもつながります。長く収穫できることは、収量のアップに直結しやすくなります。九州沖縄農業試験研究では、地表面のクエン酸散布によってアスパラガスの地下部重が有意に増加したことと翌年の収量増加につながる可能性が示唆されています。

果実の品質が向上する

リン酸は植物の開花や結実を促進するとされる栄養素です。実肥と呼ばれることもあり、果実の成熟や軟化、着色、糖度に関わっていると考えられています。しかし、リン酸は土壌中で鉄やアルミニウムと結合して難溶化(不溶化)し、植物が根から吸収しづらい状態になりやすい傾向があります。一方、クエン酸は難溶性リン酸をキレート作用により吸収しやすい状態に戻す性質を持っていることが分かっています。ですから、クエン酸配合肥料の施用は、作物の果実の品質を向上させる効果が期待できます。

肥料を節約できる

クエン酸は土壌中の固定化された栄養素(リン酸カルシウムなど)を可溶化し、植物が吸収しやすい形に変えるため、既存の土壌中の養分を効率的に利用できます。また、根張りを良くする効果から、作物が土壌の深部や広範囲から栄養を吸収できるようになるため、少ない肥料でも作物に必要な栄養が十分に供給されるようになるかもしれません。高騰が続いている肥料の使用量を減らせる可能性があり、肥料コストの削減につながります。

クエン酸配合肥料が向いているケース

上記のようなメリットがあるクエン酸配合肥料は、様々な農業作物の品質や収量の向上に役立ちます。それ以外にも、様々な作物や栽培状況で効果を発揮することが分かっています。例えば、次のような場合には、クエン酸配合肥料による効果を感じられやすいかもしれません。

  •  成り疲れを防止したい場合
  •  果実の品質を向上させたい場合
  •  定植した苗の根の活着を促進したい場合
  •  高温環境などにより植物が体力を落としている場合
  •  アルミニウムや鉄の含有量が高い土壌で栽培する場合
  •  リン酸などの肥料を十分に施用しているが効果が見られない場合

例えば、新しい苗は定植後に傷みやすいため、早期に定着することが望ましいです。クエン酸配合肥料を施用すれば根の活性が向上するため、定着のスピードを早める効果が期待できます。また、クエン酸配合肥料には土壌補正やキレート作用があるため、効率のよい養分吸収を促すことができます。長期間同じ畑で作物を栽培している場合や作物の「なり疲れ」にも効果を発揮するでしょう。そのほか、低温・高温・日照不足などのストレスへの耐性が必要な場合などにも効果的です。

おすすめのクエン酸配合肥料|BioSもろみ

クエン酸配合肥料は市販でいくつかありますが、選ぶ際には「何が一緒に配合されているか」や施用方法なども重要になります。ここでおすすめしたいのが、BioSもろみです。BioSもろみは、クエン酸やアミノ酸を配合している液肥です。作物の状態や生育段階に分けて配合されている成分が違うため、それに沿って施用することで収量や品質向上効果を最大限に得ることができます。また、一般にアルカリ性の農薬やカルシウム以外の液肥であれば、混用ができるため、散布労力も減らすことが可能です(ただし、肥料メーカーの使用方法に従ってください)。

作物 症状・目的 結果・評価
ピーマン 猛暑によるピーマンの根痛み
養分バランスの不良
葉の黄変解消
根圏の改善で生育が回復
収量が10%以上アップ
イチゴ 猛暑によるイチゴ苗の生育不良 猛暑による生育不良の苗が、8月末には例年以上に回復
ナス 猛暑による夏秋ナス苗の生育不良 収穫が見込めないほど生育不良の苗が、9月末には例年以上に回復
ブドウ 猛暑によるブドウ糖度の低下 無処理区は糖度が低くなったが、もろみM処理区は例年並みの糖度に回復
ミニトマト アミノ酸による生育促進
ミネラルの吸収促進
農薬の使用回数が減少傾向になった

このように、BioSもろみを施用することで、様々な効果が期待できます。近年は特に高温障害による被害で悩まれている農家さんは、この機会に導入をご検討ください。

クエン酸が作物に及ぼす影響とは?その作用と期待できる効果を解説(イメージ)
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クエン酸配合肥料の注意点

様々な効果が期待できるクエン酸配合肥料ですが、いくつかの注意点もあります。安全かつ効果的に農業に使用するために、注意するポイントも確認しておきましょう。

適切な希釈倍率で使用する

クエン酸配合肥料を使用する際は、製品ラベルに記載された希釈倍率を厳守することが大切です。濃度が高すぎると根や葉が傷み、生育不良や枯死の原因となることもあります。特に幼苗期や高温乾燥条件下では、やや薄めに調整すると安全でしょう。希釈を行う際は、スケールなどを用いて正確に希釈することが重要です。希釈倍率は、作物の種類や生育ステージ、土壌の状態によって異なります。不明な場合は、肥料メーカーや販売店、農業改良普及センターに相談することをおすすめします。

石灰やアルカリ性資材との混用は避ける

クエン酸は酸性物質であるため、アルカリ性資材と混合すると互いの性質を打ち消し合う中和反応を起こし、クエン酸の効果が失われてしまいます。石灰、草木灰、炭酸カルシウムなどのアルカリ性資材とは同時に使用しないようにしてください。

使用直前に希釈し、速やかに使い切る

クエン酸配合肥料を希釈した液肥は、時間の経過とともに劣化し、効果が薄れる可能性があります。希釈液は使用直前に作り、その日のうちに使い切るようにしましょう。また、気温が高い場所や直射日光の当たる場所に置いておくと、太陽光や温度の影響で成分が変化してしまうこともありますので注意してください。

土壌pHが極端に高い場合には効果が低下する

クエン酸は土壌のpHを調整する効果も期待できますが、極端にpHが高い土壌では、十分な効果を発揮できない場合があります。あまりにもアルカリ性に傾きすぎている場合は、事前に土壌改良を行い、pHを適切な範囲に調整してからクエン酸配合肥料を使用することをおすすめします。土壌pHの測定には、市販の土壌酸度計などが利用できます。

葉面散布時は濃度と時間帯に注意する

葉面散布は、葉の表面から直接養分を吸収させる方法ですが、濃度が濃すぎると葉焼けを起こす可能性があります。特に、若い葉や柔らかい葉は、肥料焼けを起こしやすいため、注意が必要です。高温や強い日差しのある環境では、液肥が急速に乾燥し高濃度となり葉焼けを引き起こす可能性があります。そのため、気温が比較的低い早朝に行うと良いとされています。強い日差しが当たっている時は避け、曇りの日や雨上がりのタイミングを選ぶと良いでしょう。葉面散布を行う場合は、事前に少量でテストを行い、問題がないことを確認してから全体に施用しましょう。場合によっては規定の希釈倍率よりさらに薄めたほうが良いケースがあります

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まとめ

クエン酸配合肥料は、キレート作用や根張りを良くする効果により生育促進につながったりする効果があります。また、収量や品質の向上やストレス耐性向上など、作物栽培に嬉しい様々な効果が期待できます。そんなクエン酸配合肥料は、近年特に環境への優しさや持続可能な農業のニーズから、特に注目を浴び、様々な商品開発がなされています。クエン酸は他の有機酸と比べて水に溶けやすく、強いキレート効果によって土壌の栄養素の吸収促進が見込める成分です。うまく活用して、作物の収量や品質の向上を実現してください。

参考資料:
クエン酸施用によるアスパラガス地下部の生育促進(長崎県農林技術開発センター)
高畝マルチ栽培の早生ウンシュウにおけるクエン酸資材施用による樹勢維持と減酸促進(九州沖縄農業研究センター )

クエン酸が作物に及ぼす影響とは?その作用と期待できる効果を解説

コラム著者

セイコーステラ 代表取締役  武藤 俊平

株式会社セイコーステラ 代表取締役。農家さんのお困りごとに関するコラムを定期的に配信しています。取り上げて欲しいテーマやトピックがありましたら、お知らせください。

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