コラム
野菜の高温障害と対策について解説
公開日2025.05.30
更新日2025.05.30

野菜の高温障害と対策について解説

気候変動や地球温暖化が当たり前の時代になりました。特にここ数年は、異常なまでの猛暑が増えてきたように感じます。農業分野においても高温は栽培作物にダメージを与え、収量や品質を低下させる悩みの一つとなっています。今回のコラムでは野菜の高温障害と対策について解説していきます。

はじめに

気象庁の報告によると、2024年の日本の平均気温の基準値からの偏差は+1.48℃となり、1898年の統計開始以降で最も高い値となりました。グラフを見ていただくと分かる通り、右肩上がりで気温の上昇傾向が続いていることが分かります。この気温上昇が、農作物の高温障害(こうおんしょうがい)の発生を高めていると推測されます。

参考:日本の年平均気温偏差の経年変化(1898〜2024年)(気象庁)

高温障害とは?

植物が受けるストレスの一つに環境ストレスがあります。環境ストレスとは温度、湿度、日射、風といった物理的要因と、根への過剰な養水分や欠乏といった化学的要因によって生じ、それら複数が影響し合って生じることもあります。
高温障害とは、夏場に一時的に作物の適温を超える温度となった時に生じる生育障害の一つです。具体的には葉や茎の萎れ、葉枯れ、果実の日焼け、枯死などが起こることで農作物の収量低下や品質低下に繋がります。高温障害が発生するメカニズムについてはまだ解明されていないことも多く、今後の研究結果の報告が期待されます。

野菜の適温

  適温の目安 作物
高温性野菜 25~30℃ オクラ、キュウリ、スイカ、メロン
中温性野菜 23~28℃ サヤインゲン、トマト、ナス、パプリカ
冷涼性野菜 18~23℃ イチゴ、セロリ、ホウレンソウ、レタス

高温障害になりやすい農作物

稲、大豆、果菜類(キュウリ、トマト)、葉茎菜類(キャベツ、ホウレンソウ、ブロッコリーなど)、野菜(イチゴ)、果樹(リンゴ、ブドウ、ウンシュウミカン)、根菜類(サトイモ、ダイコンなど)、花き(キク)が高温障害になりやすいと言われています。

農作物別の高温障害の症状

農作物 症状
受精障害、高温不稔、登熟障害など
大豆 結莢率、百粒重、莢数、収量の減少など
果菜類(キュウリ、トマト) 着果不良、裂果、奇形果、日焼け果、着色不良、尻腐れなど
野菜(イチゴ) 花芽分化の遅れ、虫害の発生、果実の肥大不足
果樹(リンゴ、ブドウ、ウンシュウミカン) 着色不良・着色遅延、日焼け果など
葉茎菜類(キャベツ、ホウレンソウ、ブロッコリーなど) 発芽不良、活着不良など
根菜類(サトイモ、ダイコンなど) 肥大不足
花き(キク) 開花期の前進・遅延、奇形花の発生、生育不良、病害の発生、立ち枯れ

高温障害を防ぐための対策

急な温度上昇を防ぐ

高温障害を防ぐために最も重要なことは、急な温度上昇を防ぐことです。施設栽培(ビニールハウス栽培)の場合は天窓、側窓、妻面換気、循環扇などの換気装置が正常に機能しているか、日頃からこまめにチェックを行いましょう。もしも換気装置の調子がわるい時は故障する前に早めにメーカーや農機具屋さんに連絡して修理することをおすすめします。また、ハウス内に温度計を設置し、ハウス内が異常な温度にならないように常時モニタリングすることもおすすめです。最近のモニタリングシステムは設定温度を超えると警報アラートでお知らせしてくれる機能がありますので、活用すると便利です。

バイオスティミュラント資材を活用する

高温による環境ストレスへの耐性を強めることが期待できる、バイオスティミュラント資材が販売されています。フルボ酸、海藻(フコイダン、マンニット、ベタイン)、亜リン酸、ヘキセナールといった成分が含まれた製品に効果が確認されているようです。

関連コラム:バイオスティミュラントとは?|農作物の生産を向上する資材

資材を導入する

コストはかかりますが、細霧冷房、ヒートポンプ、遮光剤、遮熱剤、遮光ネット、遮光カーテン、遮熱カーテン、マルチといった資材を導入することでより高温障害の発生を防ぐことが可能です。

作型や栽培管理を見直す

慣れている作型や栽培管理を見直すことはなかなか勇気がいりますが、暑い時期を避けて早期播種したり、早めに作を切り上げるといったことを考えても良いかもしれません。

その他

栽培植物を変更したり、高温耐性のある品種を導入する(稲では特に有効なようです)、潅水量や潅水時間を調整して土壌温度を下げることも有効な対策です。

もしも高温障害になってしまったら?

速やかに換気をする

速やかに換気装置の開口部を開けて換気を行い、生育適温に近づけましょう。

日陰へ移動する

移動が可能な栽培作物の場合は一刻も早く日陰へ移動しましょう。

高温障害対策に最適な資材:空動扇/空動扇SOLAR

空動扇/空動扇SOLARはビニールハウス専用の換気扇です。空動扇は10坪あたりに1台、空動扇SOLARは15坪あたりに1台を設置すると、設定温度に応じて自動的に換気をしてくれる優れものです。空動扇は電気を使わないためランニングコストがかからないことがメリットです。設置も簡単で、既存のビニールハウスへ後付けすることが可能です。ビニールハウスの暑さ対策に最適な資材です。
ビニールハウスの上部に溜まった暑い空気は、例えばトマトの生長点を痛める高温障害の原因の一つとなります。空動扇はハウス上部の暑い空気を排熱し、側窓から外気を取り入れてハウス内の温度を下げるため、作物に快適な環境をつくりだします。
空動扇は換気装置の開け忘れによる高温障害の発生リスク防止、自宅からビニールハウスへ距離がある場合の換気にも最適です。育苗ハウス、本圃ハウス、資材管理ハウスなど、シーンを問わずにご使用いただけます。ビニールハウス温度管理にいかがでしょうか。

野菜の高温障害と対策について解説(イメージ)
左:空動扇|右:空動扇SOLAR
野菜の高温障害と対策について解説(イメージ)
空動扇は自然の風の力でベンチレーターを回転させることでハウス内の暑い空気をハウス外へ排出します。
野菜の高温障害と対策について解説(イメージ)
空動扇SOLARは自然の風の力とSOLARの力を利用してビニールハウス内の熱い空気をハウス外へ排出します。無風の時でも晴れてさえいれば換気能力が失われません。
野菜の高温障害と対策について解説(イメージ)
空動扇SOLARはを設置する場合は、ソーラーユニット単体を回さないようにお願いいたします。故障や部品欠落の原因となります。
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ビニールハウスの上部に設置することで、熱気と湿度を排気します。
野菜の高温障害と対策について解説(イメージ)
パイプ取付部分の爪の直径は約25mmと約40mmです。25mm側を補助パイプへ、40mm側を母屋パイプに固定します。
野菜の高温障害と対策について解説(イメージ)
設定温度(換気弁の開閉温度)は形状記憶スプリングのツマミを回すことで0~40℃の間で設定することができます。
野菜の高温障害と対策について解説(イメージ)
野菜の高温障害と対策について解説(イメージ)
野菜の高温障害と対策について解説(イメージ)
野菜の高温障害と対策について解説(イメージ)
野菜の高温障害と対策について解説(イメージ)
野菜の高温障害と対策について解説(イメージ)
野菜の高温障害と対策について解説(イメージ)

まとめ

高温障害になると、作物が弱り、収量が減り、品質の低下に繋がりますので避けていきたいものですね。今後も年平均気温の上昇は見込まれておりますので、早めに情報を収集して予防対策を講じていきましょう。

関連コラム:
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【徹底解説】ブドウの高温障害対策~暑さからブドウを守る具体策~

参考資料:
・施設園芸・植物工場ハンドブック(日本施設園芸協会)
作物における気候変動の影響の顕在化と適応技術(杉浦俊彦)
農業従事者の気候変動適応に対する認知:適応策の実践意図に影響する要因の分析(今井 葉子, 田村 誠, 増冨 祐司, 馬場 健司)
気温の大豆への影響 (農研機構)

野菜の高温障害と対策について解説

コラム著者

満岡 雄

玉川大学農学部を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは植物栽培。Xで業界情報をpostしておりますのでぜひご覧ください。

 

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