コラム
アスパラガスをネギアザミウマから守るには?
公開日2024.04.02
更新日2024.04.02

アスパラガスをネギアザミウマから守るには?

ネギアザミウマは、タマネギやネギの農業害虫として知られていますが、近年ではミカンやスイカ、そしてアスパラガスでも被害が報告されています。環境温度が高い施設栽培が増えたことや、収穫期間が長期化したことにより、アスパラガスのネギアザミウマの被害が顕在化しているようです。今回のコラムではアスパラガス栽培におけるネギアザミウマの被害と防除対策についてお伝えしていきたいと思います。

ネギアザミウマの特徴と性質

ネギアザミウマの成虫は体長1.3mm前後で黄色または褐色です。夏は黄色系、冬は褐色系の個体が多くなります。ミナミキイロアザミウマと特徴が似ているため間違われることがあります。20~30℃程度の高温環境になると行動が活発になり密度が高くなります。暑さや寒さに強く休眠はせず、成虫は残渣や雑草に潜んで越冬します。広食性で幼虫、成虫ともに食害します。特にアスパラガス・タマネギ・ネギといったユリ科の作物は被害の程度が大きいようです。卵→幼虫→蛹→成虫のサイクルは10~20日程度と世代交代の期間が短いため、薬剤抵抗性を備えやすいという特徴があります。抵抗性は地域や個体群によって異なりますが、カーバメート系・有機リン系・ピレスロイド系・ネオニコチノイド系など各系統の殺虫剤に対する感受性の低下が問題となっています。アスパラガスの栽培では問題となりませんが、アイリス黄斑ウイルス(IYSV)やトマト黄化えそウイルス(TSWV)などを媒介します。

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ネギアザミウマによるアスパラガスの被害

ネギアザミウマは、吸管をもたず組織を破壊しながら食害するため、被害箇所はスジやカスリ状となり、傷は白色や淡い緑色、または褐色に変化します。場合によってはコルク化を伴うことがあります。若い茎に寄生しやすく、新芽の食害痕は商品価値を低下させます。密度が高くなってくると茎が曲がったり、奇形が生じたりして、規格外品となり収量低下の原因となります。特にアスパラガスの萌芽直後の茎や若茎に多く寄生されると、屈曲し規格外品が多発する原因になるようです。寄生する成虫が多いと伸長が止まったり腐敗したりします。

アスパラガスにおいては、ネギアザミウマの被害がほとんどですが、長崎県や佐賀県など一部の地域ではミカンキイロアザミウマによる重大な被害も確認されています。その他、ミナミキイロアザミウマヒラズハナアザミウマなどの発生も確認されていますが、多くの地域では密度は低く加害の程度は小さいようです。

アスパラガスでは被害が確認されていませんが、2020年には兵庫県でネギ・タマネギ・トルコギキョウ・テッポウユリなどの作物で、ネギアザミウマによるアイリス黄斑ウイルス(IYSV)の媒介が確認されるなど、今後アスパラガスにも同様の被害が発生するリスクがないとはいいきれません。

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ネギアザミウマからアスパラガスを守る方法

農薬(殺虫剤)を散布する

地域差はあるもののネギアザミウマ薬剤抵抗性は全国で確認されており、同一系統の農薬の連用を避けてローテーション散布を実施する必要があります。アスパラガスは登録農薬が少なく、農薬取締法により使用回数に制限があり頻繁に薬散を実施することができません。栽培期間の後期に密度が高くなってくると対策に困窮することとなります。

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粘着トラップを設置する

周辺からの飛び込み対策として、施設の出入口や側面に青色や黄色の粘着シートを設置する方法です。捕虫機能のほか、密度を確認して薬散のタイミングを計る指標としても活用できます。現在のところ、黄色よりも青色の粘着シートに誘引されやすいという説が有力です。害虫はアザミウマだけではありませんので、他の発生外注の特性を把握した上で色を選択すると良いでしょう。

防虫ネットを設置する

換気する際に開口するビニールハウスのサイド部分に防虫ネットを被覆する方法です。目合いは細かいほど侵入を防止できますが、細かすぎると風通しが悪くなり高温障害や生理障害を引き起こすリスクとなります。アザミウマは人の目で赤に見える色の波長が認識しにくいという性質を持っていますので、ネットの色は赤が良いとされています。京都府農林水産技術センターの資料「ネギ栽培における赤色系防虫ネット技術マニュアル」によれば白色のネットに比べて、侵入率を9割以上も抑えられたという報告があります。ただし、太陽の紫外線により赤が退色すると効果が低下しますので、定期的に貼替をする必要があります。

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シルバーマルチや白マルチを敷設する

多くの虫は体重が軽く地球の重力を感じることができないため、太陽の光を頼りに飛行していると考えられています。ネギアザミウマも同様の性質を備えており、畝間や側面開口部の外側に反射シートを敷設すると、太陽の光を上下から感知して混乱してしまい活動が停滞します。これによりアスパラガスへの寄生や成虫同士の接触機会が減り、密度を抑制する効果が期待できます。

赤色LEDの光を照射する

人の目には赤に映るピーク波長660nm程度の光を照射すると、アザミウマは植物体を認識できなくなり活動が低下するとされています。農研機構の技術紹介パンフレット「赤色LEDによるアザミウマ類防除マニュアル」によれば、赤色LED光によるアザミウマの定着阻止効果はミナミキイロアザミウマでは高く、ネギアザミウマミカンキイロアザミウマでは低いと報告されています。アザミウマの種類により波長の感じ方が異なるようです。同じ赤色でも製品によっても波長が異なるため、単純に赤色に見えるから良いということではありません。光に殺虫能力はありませんので、既に密度が高くなっている場合には効果が見込めないので注意しましょう。もちろん、この赤色の光は他の虫にも作用を及ぼしますが、同一のパンフレット内には天敵農薬であるカブリダニ類の使用に影響はないと記述されています。

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雑草や残渣を放置しない

ネギアザミウマは広食性があるため、圃場周辺の雑草や残渣を住処にすることがあります。居心地が良くなってしまわないように雑草や残渣は放置せず、適切に除去して住みにくい環境を整えることが大切です。

天敵を利用する

ネギアザミウマの天敵農薬としてスワルスキーカブリダニやタバコカスミカメなどがあります、葉に振りかけて利用しますが、細い葉をもつアスパラガスでは製剤が落下してしまい上手く使えません。バンカーシートやバンカー植物を用意して住処を提供する必要があります。タバコカスミカメはアスパラガスを摂食せず定着しにくいといった傾向があります。ゴマ・クレオメ・バーベナといったタバコカスミカメの住処となるバンカー植物を育てる必要があります。土着のタバコカスミカメは、北海道を除く全ての地域で確認されていますが、天敵として活用できるほどの数が生息しているのは九州や四国の温暖地に限られています。

紫外線カットフィルムを被覆する

アザミウマ類の視覚は紫外線領域の波長を感知するため、その紫外線をカットするフィルムをビニールハウスに被覆することで、侵入を抑制する方法です。長崎県農林技術開発センターの「アスパラガス栽培における紫外線除去フィルム利用によるアザミウマ類の密度抑制効果と資材特性」によれば、紫外線除去フィルムの利用がアザミウマ類の侵入を抑制する効果があり、2年間経過しても防除効果に変化はなかったとのことです。

アスパラガスのネギアザミウマ対策におすすめの資材1

虫ブロッカー赤|アザミウマ専用の赤色LED防虫灯

植物の緑色の波長を感知して寄生する性質を持つアザミウマに対して、赤色LEDを照射してアスパラガスの緑色を感知しづらくさせる方法です。ネギアザミウマの成虫の行動を抑制しアスパラガスへの寄生が減るため、同時に幼虫の被害も抑えることとなります。ネギアザミウマが増える前に準備しておく必要がありますが、吊り下げて光らせておくだけですので電源があれば簡単に設置でき後は日中に光らせておくだけです。ナスの施設栽培においてピーク波長660nmの赤色LED と光反射シートを組み合わせて評価したところ、優性種であったネギアザミウマに対して抑制効果があったとの研究報告もあります。光自体に殺虫能力はないため密度が高くなってからでは効果が低くなってしまいますので、導入のタイミングには注意してください。

アスパラガスをネギアザミウマから守るには?(イメージ)
虫ブロッカー赤
アスパラガスをネギアザミウマから守るには?(イメージ)
虫ブロッカー赤|連結タイプ
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100V用コンセントプラグ
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200V用丸端子ケーブル
アスパラガスをネギアザミウマから守るには?(イメージ)
連結タイプ用中継コード|連結部分はネジ式で防水対策があります
アスパラガスをネギアザミウマから守るには?(イメージ)
虫ブロッカ―2台を連結した様子
アスパラガスをネギアザミウマから守るには?(イメージ)
連結タイプ用中継コードの先端はキャップを付けて防水をします。
アスパラガスをネギアザミウマから守るには?(イメージ)
夜間点灯時の様子
アスパラガスをネギアザミウマから守るには?(イメージ)
施設栽培での設置の様子
アスパラガスをネギアザミウマから守るには?(イメージ)
アスパラガスをネギアザミウマから守るには?(イメージ)
アスパラガスをネギアザミウマから守るには?(イメージ)
アスパラガスをネギアザミウマから守るには?(イメージ)
アスパラガスをネギアザミウマから守るには?(イメージ)
アスパラガスをネギアザミウマから守るには?(イメージ)
アスパラガスをネギアザミウマから守るには?(イメージ)
アスパラガスをネギアザミウマから守るには?(イメージ)
アスパラガスをネギアザミウマから守るには?(イメージ)

アスパラガスのネギアザミウマ対策におすすめの資材2

てるてる|乱反射型光拡散シート

てるてるは光の拡散に優れたマルチシートです。高い反射性能を持っているため、畝間やビニールハウスの周辺などに敷設すると、下から光を乱反射させることができます。太陽の光が上からだけでなく下からも受けることにより、ネギアザミウマの成虫の飛翔行動を阻害すると考えられています。行動が抑制できれば、成虫の接触機会が減るため産卵しにくくなり、密度を抑える効果が期待できます。虫ブロッカー赤の光も反射してくれますので、上からの照射では届かなかった部分にも赤い光を届けることができ、より高い効果が期待できます。

農薬に頼りすぎないアザミウマ対策を実施しましょう

アザミウマは成長サイクルが早いため薬剤抵抗性が発達しやすい害虫です。農薬に頼りすぎてしまうと、いざというときに効果が得られにくくなってしまいます。今回ご紹介したさまざまな対策を複合的に取り入れながら、最終段階では薬散を実施するという方法が理想的ではないかと思います。今回のコラムをお役立ていただけましたら幸いです。

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参考資料:
アスパラガス栽培におけるIPMの取り組み
(長崎県病害虫防除所)
アスパラガス栽培における紫外線除去フィルム利用によるアザミウマ類の密度抑制効果と資材特性
(長崎県総合農林試験場)
ネギ栽培における赤色系防虫ネット技術マニュアル
(京都府農林水産技術センター 農林センター)

 

アスパラガスをネギアザミウマから守るには?

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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