コラム
ネズミこないで!畑の被害と対策について解説
公開日2025.08.05
更新日2025.08.05

ネズミこないで!畑の被害と対策について解説

畑におけるネズミの被害は、栽培中の農作物を食べ荒らすだけでなく、貯蔵している作物がかじられるといった被害も報告されています。本コラムでは、被害の現状から具体的な駆除方法や予防策をご紹介したいと思います。ネズミは地上での活動だけでなく、土中に潜り込むこともあり、被害が拡大しやすい点も見逃せません。被害を最小限に抑えるためのポイントを押さえながら、長期的かつ効果的にネズミ対策を実践していきましょう。

畑に出没するネズミの種類

畑に出没するネズミは「野ネズミ」と呼ばれています。「野ネズミ」とは生物学に基づいた分類ではなく、野外に生息するネズミを示す人の目から見た日常的な表現です。家の外にいる野生のネズミは「野ネズミ」ですし、家の中にいれば「家ネズミ」ということです。「家ネズミ」でも圃場が人家に近ければ、畑やビニールハウスに侵入して農作物を加害する可能性はありますし、ネズミにとっては雨風を防げて食料があるという点から家もビニールハウスも同じような環境なのかもしれません。ネズミといっても、さまざまな種類があり、それぞれの生態を知ることが被害防止の第一歩となりますが、農作物を加害する野ネズミの研究は少なくはっきりとしたことはわかっていません。

 

ネズミの種類 特徴
野ネズミ アカネズミ 山林や河川敷に生息しています。植物の根や種、昆虫などを食べます。
エゾヤチネズミ 北海道の草地や林地に生息しています。春から秋にかけては落ち葉の下に穴を掘って生活し、耐寒性があるため冬でも積もった雪の下にトンネルを掘って活動しています。植林した苗木の樹皮が食害されることがあります。
カヤネズミ 水田・麦畑などのイネ科植物が生い茂った場所に生息しています。最近の調査では稲はほとんど食べず、稲の害となる雑草を食べており、害獣ではないと考えられています。雑食性のためバッタなどの虫も食べます。
スミスネズミ 森林やその周辺に生息しており、落葉や腐植層の厚い場所を好みます。造林木を加害することで知られています。
ハタネズミ 水田・畑・果樹園といった農耕地や河川敷などに生息しています。地中に40~50cmの深さまで穴を掘ってトンネル網をつくります。多くの農作物を加害する害獣として知られています。数が増えると造林地にも入ってきて造林木を加害します。
ヒメネズミ 森や林に生息する小型のネズミです。夜行性で種子や果実、昆虫類を食べます。
野ネズミ

家ネズミ
ハツカネズミ 草地・水田・畑・河原などに生息し、近くに人家があれば中に侵入することもあります。稲が実ると水田に、野菜が実れば耕作地にと、エサをもとめて移動するという傾向があります。畑では堆肥や藁積を住処にすることもあります
家ネズミ クマネズミ 警戒心が強いため防除が難しいとされています。雑食ですが植物を好みます。垂直移動が得意ですが、穴堀りは苦手だと考えられています
ドブネズミ 穴を掘りは得意で、土が高く盛り上がった場所の側面に穴を掘る傾向があります。

畑のネズミ被害の現状

ネズミに狙われやすい作物としては、根菜類や豆類、果樹などが代表的です。これらの作物は食料としての栄養価が高く、ネズミにとっては格好の餌となります。食害が起こると収穫量が減るだけでなく、商品価値が著しく下がり農家に大きな打撃を与えるため、早めの対策が必要です。

畑における被害

一般にネズミは雑食性または草食性のため、非常に幅広い作物を食害します。ジャガイモ、サツマイモ、ダイコンなどの根菜類、キャベツやレタスといった葉菜類、イチゴやメロンなどの果菜類、被害は多岐にわたります。最近では夜間イチゴの種を食害する被害報告が多数寄せられており、ハツカネズミによる加害である可能性が高いと考えられています。

畑で発生するネズミ被害は、一見すると作物がかじられる程度の問題に思われがちですが、被害が大きくなれば経済的ダメージは避けられません。作物への直接的な被害だけでなく、ネズミによる土壌の掘り返しで、地中にある根が傷ついたり、養水分の吸収を阻害したりするなど悪影響を及ぼします。

果樹園における被害

サクランボ・モモ・ブルーベリー・リンゴといった果樹の樹皮をかじります。皮が柔らかいためか苗木や若木が狙われやすくなり、食害が深刻である場合は、木が枯死することもあります。草生栽培や敷藁を行っていたり、原野や山林に隣接したりしていると、被害を受けやすいと考えられています。雪が降る地域では冬から早春にかけて被害が集中しやすく、特に樹木の周りの雪が解けはじめたころに被害が増加しやすいようです。

稲発酵粗飼料(稲WCS)の被害

収穫した稲をラッピングなどで包んで乳酸発酵させて作る牛の飼料が、保管中にネズミに加害されることがあります。主にロールの下部が食害されラップフィルムが破損します。

造林木

畑ではありませんが、木材として利用するための造林木においてもネズミの被害を受けることがあります。ネズミに根や地表近くの樹皮をかじられて、被害が大きい場合は木が枯死します。全てのネズミが樹皮をかじるわけではなく、主にハタネズミや(エゾ)ヤチネズミが加害します。カラマツ・スギ・トドマツ・ヒノキなどは被害を受けやすいようです。

畑のネズミ被害を防ぐための対策

ネズミが定着しないよう、普段の畑管理や環境の整備など、先手を打った予防が欠かせません。畑でのネズミ被害は、早期の予防対策によって大幅に抑制できます。対策を講じる上では、まずネズミが好む食料や巣材を断つ環境づくりを心がけることが肝心です。またネズミが活動しやすい場所や経路をあらかじめ把握しておくことも重要となります。

近年、無農薬栽培や草生栽培といった農法が注目されており、これらの栽培では深耕や有機物の投入が行われることから、土壌が柔らかくなり、野ネズミにとって好都合な環境となるため、従来以上の注意が求められます。

①耕種的防除

雑草を適切に管理する
ネズミはイタチやキツネ、ヘビなどの天敵から身を守るため、草の生い茂った場所に好んで生息しています。雑草を適宜刈り取ることで、ネズミの隠れ場所や繁殖区域を減らすことができます。畑の周囲にある草むらや倒木なども適切に処理し、ネズミが好む環境を作らないようにすることが被害抑制につながります。草生栽培を行う果樹園では、根元周辺の地表が確認できるように草を管理することが重要だとされています。

作物の残さや落下した果実を放置しない
残さや地面に落ちた果実をそのまま畑に放置すると、ネズミにとって格好の餌になり被害を助長する原因となります。作物残さや落ちた果実は定期的に回収し、ネズミが住み着きにくい環境を整備することが基本の対策です。

②化学的防除

毒餌(殺鼠剤)を使用する

毒餌はネズミに食べさせることで効果を発揮するため、穀物や油脂を混ぜて誘引性を高めています。農耕地で使用される毒餌には、即効性と緩効性の2種類があります。即効性タイプは効果が早く現れますが、有効成分の濃度が高いため、ネズミに警戒されやすい傾向があります。また、殺鼠効果はネズミの種類によって異なるとされています。

毒餌は、巣穴に直接投入したり、通り道に設置したりするのが一般的です。巣穴の入り口がきれいで、周囲に草がない場合は、ネズミが現在も出入りしている「生き穴」と考えられます。なお、ペットや家畜の誤飲を防ぎ、雨やホコリから毒餌を守るためには、ベイトボックス(ベイトステーション)の使用が効果的です。

使用にあたっては、農薬取締法や地域の規制を確認し、安全面や周囲の環境に十分注意しましょう。ネズミ以外の動物にも影響を及ぼす可能性があるため、近隣に飼い犬や飼い猫がいる場合は特に注意が必要です。

忌避剤
木酢液・ニンニク・トウガラシなどネズミが嫌う成分をしみこませた薬剤を設置する方法です。ネズミは天敵の臭いに対しても5日程度で慣れてしまうことが報告されており、効果は限定的で長続きしないといった見方もあるようです。

③環境的防除

捕獲罠を設置する
捕獲罠はネズミ対策の基本的な手段のひとつであり、効果を高めるには設置場所の選定が重要です。警戒心の強いネズミには、壁沿いや物陰など、よく通る経路に設置するのが効果的です。誘引材や毒餌を上手に活用し、定期的に点検・回収を行うことで、安全かつ効率的に駆除が進められます。捕獲罠には、繰り返し使えるカゴ型のものや、設置が簡単な粘着シートタイプなどがあります。特に粘着式のネズミ捕りシートは、手軽に使える点が特長です。

モグラ対策も同時に実施する
モグラが掘った穴やトンネルは、ネズミが横取りして利用する場合があります。そのためモグラ防除用の柵や対策を施すことで、ネズミが住みつく経路を減らせます。

木を保護具で防御する
果樹の場合、苗木や若木を保護するために主幹部を金網・ビニール・プロテクターなどで巻き付けてネズミが樹皮をかじらないように保護します。

関連コラム:モグラこないで!畑におけるモグラ被害と対策

畑のネズミ対策におすすめの資材|畑の番人

畑のネズミ対策におすすめの資材が畑の番人です。本器を単管パイプに取り付けると内蔵された爪がパイプを鳴動させネズミが警戒する音や振動を発生させます。ネズミは非常に鋭い聴覚を持ち、不快な音や予期せぬ振動をストレスと感じ、そこから離れようとする生態を持っているため、畑の番人を設置することでネズミが嫌がる環境を作り出します。慣れ(順応)により効果が薄れてしまうことがありますが、畑の番人は30分おきに15秒だけ間欠的に動作するため、慣れを予防する効果が期待できます。一定のタイミングで動作したり止まったりすることは、動物にとっては「いつ鳴るかわからない」「不安定で落ち着けない」環境になります。

ネズミこないで!畑の被害と対策について解説(イメージ)
畑の番人
ネズミこないで!畑の被害と対策について解説(イメージ)
ビニールハウス内への設置例。※本製品は25mmの直管パイプ専用です。
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露地での設置例。※本製品は防水仕様ではありません。屋外で使用する際は、写真のような雨よけを設置してご使用ください。
ネズミこないで!畑の被害と対策について解説(イメージ)
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まとめ・総括

ネズミは非常に順応性が高いため、その対策には包括的な視点と継続的な管理が求められます。どれか一つの方法を採用するのではなく、耕種的防除や環境整備などを複合的に組み合わせて実施すると効果が高いと考えられています。これまで見てきた内容を総括し、長期的な視点で予防と対策を進めましょう。

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