コラム
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?
公開日2024.02.28
更新日2024.02.28

ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?

ミナミキイロアザミウマは薬剤抵抗性が発達しやすくウイルスを媒介するなど、非常にやっかいな害虫であるアザミウマです。加害されたメロンの幼果は生長すると傷が目立つなど、密度が低くても経済的に大きな損害をもたらすことがあります。防除が難しい農業害虫として知られるアザミウマ類の中で、今回は温室メロン栽培で特に問題となるミナミキイロアザミウマにスポットをあてて、その特徴と防除策についてお伝えしていきたいと思います。

ミナミキイロアザミウマの特徴と性質

成虫のサイズは1mm程度と大変に小さく、色は黄やオレンジです。雌成虫は植物の花梗・がく・葉脈・葉柄・葉肉などに卵を産卵します。卵から孵化した幼虫は間もなく新芽や葉などを加害し、成熟すると地面に落下して土の中で蛹になります。その後、羽化して成虫となり再び地上に現れます。卵から成虫になるまでのサイクルは25℃の環境で2週間程度です。成虫は4週間ほど生存しますが、その間に約100個の卵を産卵するため防除が遅れると大量発生を許すことになります。高温になるほど発育速度は速くなります。よほど暖かい地域でなければ露地での越冬はできませんが、施設栽培では越冬が可能なため冬は施設内で増殖し、気温が温かくなると周辺の圃場や雑草地帯へ移動して世代交代を繰り返します。他の吸汁性害虫とは異なりストロー状の吸管が無く、口針で穴を空けた部分に唾液を流し入れて組織を破壊して吸汁します。そのため葉が委縮して展開しなくなったり、実の一部が引きつり目立つ傷になったりします。

関連コラム:ミナミキイロアザミウマとは?被害と対策をご紹介

ミナミキイロアザミウマによる温室メロンの被害

葉が加害され光合成能力が低下する

ミナミキイロアザミウマが主に加害する箇所は葉や実です。加害された葉には、かすり状の白い斑点が生じます。加害量が増えると光合成量が低下し実の糖度や重量が低下します。防除が遅れ密度が高くなると株が枯死することがあります。

見栄えが悪くなり商品価値が低下する

幼果に加害されると、果実の生長に伴って傷跡が広がり商品価値が低下します。メロンでは一株一果で栽培した証拠として茎をT字にして出荷する商習慣が残っており、市場ではT字部分の美しさも求められますが、この部分が加害されると果実が無傷でも価格が安くなります。

メロン黄化えそウイルス(MYSV)を媒介する

ウイルスに感染すると初期症状では葉脈透過があらわれ、株全体に広がります。その後、症状が進むと、葉に濃淡がまだらになるモザイク症状や斑点が生じ、黄化が起こります。またメロンの実の形が異常になったり糖度が上がらなかったりします。

温室メロンを守るために知っておきたいミナミキイロアザミウマの性質

薬剤抵抗性が発達しやすい

他のアザミウマ類と同様に、同じ圃場で作用機構が同一の殺虫剤を繰り返し使用していると、解毒分解酵素や透過性阻害の発達により、薬剤抵抗種の出現リスクが高くなるとされています。その原因はアザミウマの成長速度が速く、作用点の変異や解毒作用の発達など抵抗性を獲得する変異が発生しやすいためだと考えられています。

関連コラム:農薬が効かなくなる?害虫や病原菌の薬剤抵抗性について解説

集まる光の波長と集まらない光の波長がある

静岡県経済産業部がまとめた資料によると、ミナミキイロアザミウマは500~525nmの波長に最も誘引され、660nmの波長への誘引数は少ないと報告されています。人には500~525nmは青~緑色、660nmの波長は赤色に見えます。また多くの害虫種で人の目では認識することができない360nm付近の近紫外線域に誘引されやすいとされています。紫外線を発していないLEDの電球に虫が寄ってこないのは、この性質のためです。

光の刺激に対して走光性を持っている

アザミウマ類に限らず多くの虫は、光の刺激に対して反応する性質を持っています。また、背中には近紫外線を感知する機能が備わっていることが知られています。虫の体は小さく重力を感じて上下を認識することができないため、光を感知する機能により姿勢を制御しているのではないかと考えられています。

広食性が高い

キュウリ・スイカ・ナス・ホウレンソウ・キクなど多くの作物を加害します。栽培作物だけでなく圃場周辺の雑草にも寄生し住処とします。ただし、トマトやミニトマトでは、葉っぱにミナミキイロアザミウマの接触阻害や毒性をもった成分が含まれているとされ、被害は少ないようです。

ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策

農薬(殺虫剤)を散布する

アザミウマ類は成長のサイクルが早いためか、薬剤抵抗性が付きやすい害虫です。薬剤を散布する場合には異なる系統の殺虫剤を選び、ローテーションしながら使用するほうが良いとされています。系統はIRACコードで確認することができます。卵は植物の内部、蛹は土の中にあるため薬散の効果が低下します。場合によっては、数日後に現れる幼虫や成虫をターゲットとした薬散を実施します。なおアザミウマ類は種類によって有効性の異なる害虫です。種の同定を間違えてしまうと薬散の効果が期待できません。

また、ミツバチやマルハナバチなどのハチを使って受粉している場合には、ハチの巣箱やその周辺には散布しないようにする必要があります。開花直前の薬散はハチが訪花しなくなるリスクがあり注意が必要です。

関連コラム:農薬散布の正しい方法と注意点|安全・安心な作物作りを目指して

粘着トラップを設置する

アザミウマ類が誘引されやすいとされる色の粘着シートを用いて誘殺する方法です。一般的には青色や黄色のものが主流ですが、アザミウマ類は青色のほうを好む傾向があるようです。静岡県農林技術研究所によれば、ミナミキイロアザミウマにおいては青色や黄色に比べて青緑色により強く誘引されるという報告があります。捕殺された数のモニタリングを行えば、農薬散布を実施するタイミングの参考になります。

防虫ネットを設置する

温室ハウスの中へミナミキイロアザミウマを侵入させないために、サイド・天窓・開口部などに目合いの細かいネットを張る方法です。0.4mm以下の目合いだとミナミキイロアザミウマの侵入防止効果が高くなりますが、通気性が悪くなるというデメリットがあります。赤色の波長はミナミキイロアザミウマに認識されないため、赤色のネットを使うと侵入防止効果は高くなります。目合い0.6mmの赤色ネットで目合い0.4mmの白色ネットと同等の侵入防止効果があったとの報告がありますので、風通しを悪くしたくない場合は赤色ネットがおすすめです。赤ネットは太陽光などの影響で退色すると効果が低くなりますので、定期的に貼替を実施する必要があります。

関連コラム:防虫ネットの正しい使い方|害虫のハウスへの侵入を阻止

シルバーマルチや白マルチを敷設する

アザミウマの光に対する走光性を利用した防除方法です。シルバーマルチや白マルチを敷設することで地表に降り注ぐ太陽光を反射させます。するとアザミウマは光を上からも下からも感知してしまい正しい姿勢を制御することができなくなります。シートの上に落下したり、シートから飛び立てなくなったりして活動が停滞します。そのため交尾の機会が少なくなりミナミキイロアザミウマの密度を抑えます。また地表に被覆されたマルチは幼虫が土の中への侵入するのを阻止するというメリットもあります。

赤色の光を照射する

電球などを使って、日中に赤色の光をハウス内やハウスの周辺に照射する方法です。で密度が高くなっている場合には効果が期待できません。660nm以上の光の波長はアザミウマが認識できず誘引されにくいという特徴があるため、赤色の光を照射することで株への誘引や圃場への侵入を防止する効果が期待できます。既に株に寄生してしまったミナミキイロアザミウマには効果はありません。

関連コラム:LEDで虫除けが出来る?|昆虫と光の不思議な関係

雑草や残渣を放置しない

ミナミキイロアザミウマは広食性があるため、残渣や圃場周辺の雑草にも寄生します。栽培終了後の残渣や雑草は放置せず、適切処分しましょう。

蒸し込み処理を行う

ハウスを密閉して高温の環境を作り、ミナミキイロアザミウマを殺虫する方法です。ナスの施設栽培において夏の快晴日にハウスを密閉し46~50℃の密閉高温処理を行うことでミナミキイロアザミウマの発生を抑制する効果が出たとの報告があります(和歌山県農業試験場)。休ませることができるハウスがあれば、夏に約10日、春や秋であれば約14日ハウスを締めきって蒸し込み処理を行い、周辺への拡大被害を抑えるというもあります。

天敵を利用する

ミナミキイロアザミウマを捕食する天敵農薬では、スワルスキーカブリダニがあります。メロンは他の温室栽培に比べて年間の作付け数が多くなる傾向があり、費用が高くつくことがデメリットです。薬散の影響を受けますので農薬(殺虫剤)を散布するタイミングには注意が必要です。殺虫剤に対しての感受性が低いとされる土着のヘヤカブリダニを増殖させて利用する方法もあるようです。

紫外線カットフィルム

紫外線カットフィルムをハウス全体に展張すると、ハウス内に紫外線が入ってこなくなり、アザミウマの侵入を防ぐ効果が期待できます。ただし、紫外線を頼りに飛行しているハチの走光性が阻害され訪花せず、受粉が停滞する可能性がありますので注意が必要です。ミツバチと比べてマルハナバチのほうが紫外線カットの影響を受けにくいようです。また、入ってくる紫外線量が減りますので場合によっては軟弱徒長の要因となるかもしれません。

メロンのミナミキイロアザミウマ対策におすすめの資材1

虫ブロッカー赤|アザミウマ専用の赤色LED防虫灯

アザミウマ類は植物の緑色の波長を感じて株に近づいていきます。赤色のLEDを照射させると、赤色を認識できないアザミウマは株の場所がわからなくなり、行動を抑制につながります。これにより雄成虫と雌成虫の接触機会が減少しアザミウマの増殖を抑える効果が期待できます。殺虫剤を選択する場合にはアザミウマの種の同定が重要ですが、虫ブロッカー赤は農業害虫として知られる数種のアザミウマに対して行動を抑制します。そのため薬散回数を減少させ薬剤抵抗性を発達させるリスクを抑えることができます。100Vタイプと200Vタイプをご用意していますので圃場の電源環境によってお選びいただけます。

ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
虫ブロッカー赤
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
虫ブロッカー赤|連結タイプ
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
100V用コンセントプラグ
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
200V用丸端子ケーブル
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
連結タイプ用中継コード|連結部分はネジ式で防水対策があります
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
虫ブロッカ―2台を連結した様子
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
連結タイプ用中継コードの先端はキャップを付けて防水をします。
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
夜間点灯時の様子
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
施設栽培での設置の様子
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)

メロンのミナミキイロアザミウマ対策におすすめの資材2

てるてる|乱反射型光拡散シート

特殊な繊維構造を持つてるてるは、高い反射性能を持った乱反射型光反射シートです。地表に敷設することで、太陽の光を下から反射させアザミウマの光を感知する機能を攪乱し行動を抑制します。太陽の照射角度が変わっても乱反射の性能により、下からの光が届きやすいという特長があります。虫ブロッカー赤と同時に利用すれば、光が届きにくい葉裏にも赤色の光を届けることができ、より高いアザミウマの行動抑制効果が期待できます。

メロンのミナミキイロアザミウマ対策におすすめの資材3

スマートキャッチャーⅡ|吸引式LED捕虫器

緑色の光(525nm)と紫外線(375nm)を照射して誘引されたアザミウマを、強力ファンで吸引して捕まえる捕虫器です。内部の反射板により光を360℃にパノラマ照射させて1台で500㎡の広さをカバーします。アザミウマだけでなく、コナジラミ・キノコバエ・ハモグリバエ・ヤガなどの数種類の飛翔害虫も捕まえることができます。付属のハチ防護ネットを取り付ければ受粉時期に活躍するミツバチやマルハナバチの吸引を防ぐことが可能です。まずはアザミウマの密度が高い場所に1台投入してみてはいかがでしょうか。

ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
反射板が害虫を誘因する光をパノラマ状に照射
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
防護ネットでハチの吸引を防止
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
S字フックなどで簡単に設置することが可能です(S字フックは付属していません)
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
低消費電力のため電気代を抑えながら24時間点灯させることができます
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)
ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?(イメージ)

ミナミキイロアザミウマの対策を確立して温室メロンを守りましょう

高温条件で栽培される温室メロンでは、ミナミキイロアザミウマが増殖するスピードが速く、一度発生すると短い期間であっという間に広がり被害が拡大しますし、薬剤抵抗性の発達しやすい害虫ですので、長期的な農業経営を考えると殺虫剤だけに頼らない対策の確立が求められますね。今回のコラムを品質の良いメロンの収穫にお役だていただければ幸いです。

関連コラム:アザミウマの被害と防除方法について解説

参考資料:
・温室メロンにおける赤色光を利用したミナミキイロアザミウマ防除技術
(静岡県農林技術研究所)
・メロンにおけるLED光を利用したミナミキイロアザミウマ防除法の開発
(静岡県農林技術研究所)
温室メロン栽培における赤色LED 光照射によるミナミキイロアザミウマの密度抑制
(日本応用動物昆虫学会 )

ミナミキイロアザミウマから温室メロンを守る対策とは?

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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