コラム
キクの重要害虫クロゲハナアザミウマの生態と駆除方法について解説
公開日2024.04.12
更新日2024.04.15

キクの重要害虫クロゲハナアザミウマの生態と駆除方法について解説

温暖な気候を生かし愛知県や沖縄県ではキク栽培が盛んですが、近年では施設栽培技術を生かし秋田県や岩手県といった東北地方でも栽培が行われています。キク栽培では15種類のアザミウマが発生するとされ、中でもミナミキイロアザミウマやミカンキイロアザミウマが問題となっていました。ところが2010年頃からそれまで重要視されていなかったクロゲハナアザミウマの被害が確認されはじめ、沖縄県のキク栽培では最重要害虫として扱われています。今回のコラムでは未だ情報が少ないクロゲハナアザミウマの生態と駆除方法について解説していきたいと思います。

クロゲハナアザミウマの生態

雌成虫の体長は1.3mm程度、雄成虫の体長は1.0mm程度で淡い黄色をしています。サイズや色はミナミキイロアザミウマと似ていますが、クロゲハナアザミウマの体には、まだら模様があります。幼虫・成虫ともに多くは葉裏を住処としています。雌成虫は15℃の環境で1カ月ほど生存し、30℃の環境下で40個程度産卵します。他のアザミウマと同様に卵は植物の組織内に産み付けられます。卵→幼虫→蛹→成虫のサイクルは15℃で40日、25℃で15日、30℃で12日と環境の温度が高くなるにつれて早くなります。35℃以上では卵は孵化せず幼虫も成虫にならずに死亡するとされています。現在のところ病原菌やウイルスを媒介する事例は確認されていません。

クロゲハナアザミウマの被害

クロゲハナアザミウマは主にキクの葉を食害します。被害は小ギク・輪ギク・スプレーギクなどで確認されています。加害された葉は、食害のキズや排泄物である黒い点が目立ち、被害が進んだ葉はカスリ状となるシルバリングの症状が見られます。キク栽培におけるアザミウマの被害は、従来ミカンキイロアザミウマミナミキイロアザミウマによるものとされていましたが、最近の調査ではクロゲハナアザミウマが優占種になっているようです。ミカンキイロアザミウマはキクえそ病の媒介となりますが、現在のところクロゲハナアザミウマではウイルスや病原菌の媒介は確認されていません。キク以外でもキュウリ・ナスといった果菜類、レタス・スペアミントといった葉菜類、コスモス・ヒマワリ・ラン・トルコギキョウといった花き類などで被害が発生し問題となっています。

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クロゲハナアザミウマを駆除する方法

農薬(殺虫剤)を散布する

沖縄県農業研究センターと沖縄県八重山農林水産振興センターの研究報告「沖縄のキク圃場で問題となるクロゲハナアザミウマの発生状況と薬剤感受性および増殖能力」によれば、クロゲハナアザミウマの農薬(殺虫剤)に対する効果は、有機リン系・カーバメート系・合成ピレスロイド系・ネオニコチノイド系などにおいて、一定の効果があったと報告されています。他のアザミウマに比べて薬剤抵抗性は発達していないようです。

ただし、キクは他の作物に比べて、密集して栽培される影響から葉裏や内側や下側に薬液がかかりにくく、散布ムラの原因となります。そのため農薬の効果が発揮されにくいという傾向があるようです。クロゲハナアザミウマは葉裏に寄生していることが多いため、農薬が葉の裏にもしっかりかかるように散布することが大切です。出荷時に不要となる下の葉は早い段階で除去すると良いとされています。

液剤が均一に散布しづらい場合は、粒剤などの土壌処理剤を併用して利用すると良いでしょう。沖縄県農業研究センターの「沖縄のキク圃場で発生するクロゲハナアザミウマに有効な粒剤の探索」によれば粒剤の定植時の株元散布が、処理後20日にわたり密度を抑える効果があったとのことです。

今後のことはわかりませんが、他のアザミウマと同様に成長のサイクルが速いことから、同一系統薬剤の連用は抵抗性種の発生を助長する恐れがあると思われます。薬散はローテーション散布をお勧めいたします。

関連コラム:農薬散布の正しい方法と注意点|安全・安心な作物作りを目指して

粘着トラップを設置する

アザミウマが誘引される波長の色を利用して、粘着トラップを設置し予察や捕殺に活用する方法です。粘着トラップには青色や黄色がありますが、多くのアザミウマの誘引されやすさは青色が優れているという説が有力です。予察(モニタリング)の実施により、薬散のベストなタイミングを把握することができます。

防虫ネットを設置する

ビニールハウスの妻面や側面に細かい目合いのネットを展張して、外からの飛び込みを防止する方法です。目合いは0.4~0.8mm程度が一般的ですが、目が細かすぎると換気性能が低下して、生理障害を引き起こすリスクが高くなりますので注意が必要です。色は白よりもアザミウマが認識しにくい色である赤が良いと考えられています。

京都府南丹農業改良普及センター「ニンジンにおける赤色防虫ネットのネギアザミウマおよびクロゲハナアザミウマに対する防除効果」によれば、0.8mm目合いの赤い防虫ネットをビニールハウスの妻面や側面に展張したところ、白色の防虫ネットの慣行区と比較してアザミウマの被害の程度を抑制したとのことです。ただし、優占種であったネギアザミウマとクロゲハナアザミウマに対して、ネギアザミウマへの効果は確認できたがクロゲハナアザミウマへの効果は判然としない結果であったとあり、種類によって赤色ネットの効果が異なる可能性が示唆されています。

関連コラム:防虫ネットの正しい使い方|害虫のハウスへの侵入を阻止

シルバーマルチや白マルチを敷設する

畝面や畝間、ビニールハウス周辺などにシルバーや白のマルチを敷設して防除する方法です。アザミウマのような小さな虫は地球の重力を感じることができないため、太陽の光を頼りにして進む方向を感知しているとされています。太陽の光がマルチに反射されるとアザミウマは上下から光を感知することとなり、方向感覚が混乱して活動が停滞すると考えられています。これにより植物への誘引や、成虫同士の交尾の機会を減少させ密度を抑える効果が期待できます。

赤色LEDの光を照射する

多くのアザミウマ類は人の目には赤色に見える光を感じることができず、植物体に赤色の光に照射すると、対象を認識できなくなるため誘引を抑えられると考えられています。クロゲハナアザミウマの分光感度に関するデータは見つけられませんでしたが、沖縄県農業研究センター「沖縄県の電照キク栽培用に開発された赤色LED電球がクロゲハナアザミウマの生息密度に及ぼす影響」によれば、赤色LEDの電照は生息密度を抑制する効果があったと報告されています。光自体に殺虫作用はありませんので、既に寄生してしまったアザミウマには効果が期待できません。

雑草や残渣を放置しない

アザミウマは広食性を持っているため、圃場周辺に雑草があったり、残渣が放置されたりするとアザミウマの住処となってしまいます。防除の効果が低下してしまいますので、雑草や残渣は適切に処理し、生息できる環境を減らしていくことが大切です。

天敵を利用する

アザミウマの天敵にはスワルスキーカブリダニ・ククメリスカブリダニ・リモニカスカブリダニなどのカブリダニ類がありますが、キク栽培で天敵製剤を活用した研究報告が見つかりませんでしたので、あまり導入が進んでいないのかもしれません。カブリダニ類は花粉を餌とするため、キク栽培ではエサとなる花粉がない(開花していない)ため定着しにくく、バンカーシートやバンカープランツを導入する必要がありそうです。キク栽培の適温は他の花き類にくらべてやや低いため、低温に強いリモニカスカブリダニが環境に適していると考えらえます。

紫外線カットフィルムを被覆する

アザミウマは紫外線領域を察知し移動します。紫外線をカットするフィルムを展張するとビニールハウス内の植物体を認識しづらくなり、外部からの飛び込みを防止する効果が期待できます。紫外線カットフィルムは花き栽培での導入が少なく、はっきりとした影響がわかっていないという状況です。高知県農業技術センターの「施設栽培花き類におけるUVカットフィルムの適応性」によれば、グロリオサ・トルコギキョウ・ブルースター・ダリアの栽培において、紫外線カットフィルムを被覆した圃場では、慣行栽培に比べて収穫日が前後する可能性が示唆されています。

クロゲハナアザミウマ対策におすすめの資材1

虫ブロッカー赤|アザミウマ専用の赤色LED防虫灯

アザミウマが認識できない赤色の光を植物体へ照らすと、アザミウマは対象を認識しづらくなり、活動が抑制されます。キクへの寄生や成虫の交尾の機会を減少させ密度を抑える効果が期待できます。花芽抑制のために用いられている赤色の光源(ピーク波長637nm)でもクロゲハナアザミウマの密度の抑制に寄与したとの報告がありますが、一般に600nmを超えると波長が高くなるほど、虫の分光感度は低下する傾向が見られます。虫ブロッカー赤のピーク波長は657nmのため、より高い効果が期待できます。防虫ネットや紫外線カットフィルムのように定期的に貼替をする手間なく、ひっかけてタイマーの点灯時間をセットすれば、メンテナンスはほとんど不要です。100Vタイプと200Vタイプがありますので圃場の電源環境によってお選びいただけます。

キクの重要害虫クロゲハナアザミウマの生態と駆除方法について解説(イメージ)
虫ブロッカー赤
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虫ブロッカー赤|連結タイプ
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100V用コンセントプラグ
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200V用丸端子ケーブル
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連結タイプ用中継コード|連結部分はネジ式で防水対策があります
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虫ブロッカ―2台を連結した様子
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連結タイプ用中継コードの先端はキャップを付けて防水をします。
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夜間点灯時の様子
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施設栽培での設置の様子
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キクの重要害虫クロゲハナアザミウマの生態と駆除方法について解説(イメージ)
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クロゲハナアザミウマ対策におすすめの資材2

てるてる|乱反射型光拡散シート

太陽の光を乱反射させてアザミウマの行動を抑制する方法です。特殊な繊維構造のため太陽の光を拡散することができ、日中の太陽光の角度が変わっても葉裏に反射光が届きやすいというメリットを持っています。虫ブロッカー赤と同時に使用すれば、上からの電照では密生した菊の葉裏など光が届きにくい部分にも赤い光を照らすことができ、より広範囲にわたってクロゲハナアザミウマの行動を抑制する効果が期待できます。

クロゲハナアザミウマの生態を把握して適切な対策を実施しましょう

クロゲハナアザミウマは現在のところ薬剤に対する感度が高いため、薬散で防除しやすい種ですが、今後薬剤抵抗種の発現がないとは言えません。被害が問題になり始めてから、あまり時間がたっていないことから防除に対する情報が他のアザミウマに比べて少ないという傾向があります。今から情報収集を行い、薬散に頼りすぎない複合的な対策を確立してみてはいかがでしょうか。

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参考資料:
沖縄県の電照キク栽培用に開発された赤色LED電球がクロゲハナアザミウマの生息密度に及ぼす影響
(沖縄県農業研究センター)
ニンジンにおける赤色防虫ネットのネギアザミウマおよびクロゲハナアザミウマに対する防除効果
(京都府南丹農業改良普及センター)
沖縄のキク圃場で問題となるクロゲハナアザミウマの発生状況と薬剤感受性および増殖能力
(沖縄県農業研究センター・沖縄県八重山農林水産振興センター)
沖縄のキク圃場で発生するクロゲハナアザミウマに有効な粒剤の探索
(沖縄県農業研究センター)
施設栽培花き類におけるUVカットフィルムの適応性
(高知県農業技術センター)

キクの重要害虫クロゲハナアザミウマの生態と駆除方法について解説

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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