農薬の正しい散布方法
●散布する前の準備
農薬散布の時、農薬溶剤が体表面に付着したり、口や目に入らないように、服装に気負つけましょう。特に夏場は高温多湿の環境下での散布作業する際の服装がおろそかになりがちです。農業用マスク・ゴーグルタイプのめがね・ゴム手袋・帽子・長袖・長ズボンなどを着用し、肌の露出部分を極力少なくすることで、農薬との接触を極力避けるようにしましょう。
農薬には、ビンや袋に必ず使用方法が書かれたラベルがついています。ラベルには農薬名をはじめ、成分や毒性が記載されているほか、使ってよい作物の種類・対象となる病害虫や雑草の名前・使用濃度や使用量・使用時期や回数・注意事項(高温状態で薬害が出やすい・添加剤等組み合わせ等々)などが書かれています。その農薬を効果的に、そして安全に使うための必要な情報ですから、購入後は必ずお読みください。使用方法や希釈倍数・濃度を守らずに使用すると期待する効果が得られないばかりか、薬害の発生や作物生産者の健康を阻害する可能性もありますので十分に注意してください。
農薬の多くは耐光性のビンに入り、利用する際は決められた希釈倍数に水で希釈し、散布機で散布するのが一般的です。農薬の種類ごとに希釈倍数が表示されていて、作物により所定濃度、散布間隔、利用可能時期等が決められています。農林水産省は人の健康に被害が及ぼすことがないよう残留基準を設定していますので、決められた利用方法を守らないと、農薬が所定濃度より濃くなり検査でひっかかって出荷停止となります。当人のみならず部会やその土地全体の農家さんが出荷停止になる可能性もあります。農薬は保存がきかないものがほとんどですから、基本的には一回で使いきれる分量を希釈し、余った場合でも圃場付近で廃棄しないようにしてください。
●散布の方法
農薬の散布位置は、作物の丈により高い位置だったり低い位置だったりするため散布の仕方に工夫が必要になります。散布しながら前進すると、農薬を散布したエリアに進むことになり、農薬を浴びやすくなってしまうので、後退しながら散布すると良いでしょう。動噴などの散布機を使い、ホースを連接して散布するときには動線を考慮して、ホースを配置するようにしましょう。果樹系で高所にまく必要があるときは、農薬散布後果樹から雨のしずくのように滴が落ちてくるので、柄が長いノズルを利用し、滴の落下している場所に入らない工夫が必要で、体にかかったとしても皮膚等に直接触れないように服装に気をつけましょう。高温時に散布すると薬害がでやすいため、朝夕など涼しい時間帯に散布するのが望ましいとされています。
圃場の面積が大規模な農家では、労力を削減するために無人ヘリコプターやドローンを活用し、農薬を空中散布しているケースも見られます。ドローンは元々の機体が軽いというメリットがあるため、農薬を搭載し飛行することが可能です。農業の展示会でも様々なメーカーが製品を出品しており、注目度の高さが伺えます。慣れてしまうと簡単に操作ができるというのも導入しやすい理由です。
農薬散布時の注意点
現在はヘリコプターを使った、空中散布はほとんど見かけませんが、減反政策以前は都市部水田でも、空中散布が行われていたことがあります。行われる日にち・時間はそのエリアに住んでいる人には、周知され外に出ないようにしていましたが、たまに知らない人が、まきこまれ体調を悪くした例もありました。風向きによっては、思わぬところまで飛散し水生生物が大量死することもあり、このような事故を防ぐためにも適量を使用し圃場からの飛散を防ぐ配慮が必要です。
「産業技術竿行研究所」から島根県の宍道湖を対象とした調査でウナギやワカサギの減少の一因として殺虫剤が浮上という発表がありました。関心がある方はご覧ください。
●散布対象の作物以外に農薬がかからないようにする
可能な限り作物の近くから散布して飛散を防ぐ工夫が必要です。圃場全体で使用する農薬使用量を減らすこともできます。液体状の薬剤を散布する場合、霧状にして空中を飛ばし作物の葉・茎・根もと等に散布することになりますが、散布中の風の影響は大きく、風があると霧が拡散され思ったように散布できないことがあります。風に負けないように大きな粒で散布すると、使用量が増え費用もかさんでしまうことになります。
露地栽培の圃場近くに小川や、用水路等がある場合、風に流された農薬が水に混入したり、圃場土中からしみだしたりすると、水に薬剤が混入し汚染の原因となります。住宅地に囲まれた圃場では、風によって運ばれた農薬が通行人やペットなどにかかり体調を崩したり、洗濯物など衣類を汚したり、悪臭を拡散させたりと、トラブルの原因となりますので十分な注意が必要です。原則として、気の葉が揺れたり、顔に風が感じられる程度の風速3m/秒以上では散布しないほうがよいと言われています。
●散布機の圧力や風量を適切に設定する
散布作業を短時間で終わらせるために、散布機の送水圧力を高めにしたり、風の強い日に無理にスケジュールを組んだりしがちですが、そうすると飛散範囲が大きくなり、風に流されやすいため、無駄な散布が増える傾向があります。散布範囲が広がり、圃場の外へも飛び出しやすくなりますので避けるようにしてください。
●近隣の作物栽培者へ配慮する
隣接する、作物生産者とはよく連絡を取り、事前にお互いが使用する農薬や散布方法、散布時期情報を交換しておくことをお勧めします。散布エリアが近いほど飛散している確率が高くなります。薬の種類によっては、散布間隔が決められていたり、組み合わせが禁止されていたり、収穫直前の散布が禁止されている物等がありますので、お互いが連絡を取り合い、そして情報共有をしながら、良い関係を作っていくことが大切です。
●適切な農薬を使用する
以前はヒ素系・無水水銀系・有機銅系等の強力な農薬が使われていた時期がありました。現在全世界で絶滅危惧種が最も多い生息域は、淡水系の昆虫類といわれています。この原因は、農薬の過度な使用によるものが原因という報告があるくらいです。日本では、高度成長期の環境汚染を反省として、農薬に対しても、人体や環境への悪影響が少なく、長期残留しにくい農薬が主流になりつつあると思います。リスクの低い天然由来成分の農薬や、人畜毒性が低い農薬などが開発されています。さらに進んで、病害虫の特性に合わせた農薬に変わる新たな駆除方法の研究も盛んに行われています。
農薬散布におすすめな静電機能付噴霧口『静電噴口』
静電噴口は静電気の力で薬液を対象物に付着させる静電機能付噴霧口です。通常では付着しにくい葉裏への薬液付着率が向上するのでヒラズハナアザミウマといった害虫類に殺虫剤がかかりやすくなることが期待できます。また約30%の農薬使用量削減が期待できます。
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農薬を上手く使い良質な作物を育てましょう
農薬は必ずしも悪ではなく、正しく利用することで害虫を防除し良質な作物を育てることができます。近隣農家と地域と十分に連携をはかりながら安全性を高め、農薬を上手に使い収量アップを目指しましょう
都道府県病害虫防除所から発表される「病害虫発生予報」や、「病害虫発生情報」には、県内の観測ポイントでの発生予測や発生情報が都度発表されます。合わせ使える薬剤など公表されています。有効にご活用ください。
コラム著者
キンコンバッキーくん
菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。