コラム
ネギアザミウマの特徴・被害・対策を詳しくご紹介!!
公開日2022.08.12
更新日2022.08.12

ネギアザミウマの特徴・被害・対策を詳しくご紹介!!

アザミウマ類の中でもネギ属を中心に被害を与える「ネギアザミウマ」。ネギアザミウマは農作物の葉や果実を加害し、生育不良や品質低下を招くやっかいな害虫です。今回のコラムではネギアザミウマの特徴・被害・対策に関して詳しく記載していきたいと思います。後半にはネギアザミウマの対策に有効な資材をご紹介していますのでぜひ最後までご一読ください。本コラムが課題解決の一助となりましたら幸いです。

ネギアザミウマとは?こんな害虫です

ネギアザミウマ(Thrips tabaci Lindeman)はアザミウマ目アザミウマ亜科に属し、地中海東地域を原産とする農作物の重要害虫です。成虫は淡黄色~暗褐色をしており、体長は1.1~1.6mm程度です。成熟幼虫は淡黄色をしており、体長は0.7mm程度です。雌成虫は植物組織内に産卵し、幼虫は葉の上で生活して土中で蛹化します。発生のピークは8~9月で、冬期は成虫で越冬します。

名前の通り、ネギ属(ネギ、タマネギなど)へ被害を与えることが多いですが、野菜類(キャベツ、アスパラガス、ニラなど)、花卉類(キク、カーネーションなど)、果樹類(ウンシュウミカン、カキなど)といった広範囲の農作物への被害が確認されています。

本種は殺虫剤に対して抵抗性を発達させており、多くの薬剤が効かないという報告が挙がっています。特に産地で発生すると被害の拡散が懸念されるため、地域全体で密度の抑制に取り組む必要があります。そのため近年では薬剤だけに頼らないIPM(総合的病害虫・雑草管理)という考え方が取り入れられてきています。

関連コラム:IPM(総合的病害虫・雑草管理)とは?農業におけるIPMの方法メリットを解説

ネギアザミウマの被害:食害に関して

成虫、幼虫共に広範囲の農作物に寄生します。葉や果実の表面に口針を刺し、植物体液を吸汁して加害します。加害箇所はかすり状や白色の斑点になります。被害が大きいと葉が白化し、生育不良や枯死を引き起こします。結果的に農作物の収量低下や品質低下を招きます。以下に作物別の被害を記載します。

タマネギ

鱗茎(食べるところ)は加害されませんが、葉が加害され光合成が阻害されるため、収量と品質が低下します。

ネギ

葉身の表面を加害すると、かすり状や白色の斑点となるので、品質が低下し商品価値が損なわれます。

キャベツ

外葉が加害されるとかすり状となり、結球部が加害されるとカルス状となります。加害箇所が褐変したり黒色に変化すると腐敗に繋がり、生産物の品質が著しく損なわれます。

アスパラガス

成茎と若茎共に加害します。前者は白いかすり状の傷ができ、後者は傷や銀片葉に褐変が生じ、商品価値が低下します。

関連コラム:アスパラガスの害虫対策|効果のある資材をご紹介

ニラ

葉に筋状の食害痕を残すため品質が損なわれます。

カキ

着色期以前~着色期にかけて、果実表面を加害します。加害箇所は黒っぽくかすり状の傷ができるので品質が低下し商品価値が損なわれます。また被害が著しいと生理落果を起こします。

ネギアザミウマの被害:ウイルス媒介に関して

アイリス黄斑ウイルス(Iris yellow spot virus:IYSV)を媒介することが知られています。このウイルスにネギが感染すると「えそ条斑病」を発病します。症状としては葉に不明瞭な退緑斑が発生し、10~15mm程度の紡錘形の白色~淡黄色のえそ条斑ができます。症状が進むと隣接した病斑が癒合し、葉が萎凋して枯死します。

ネギアザミウマの対策:殺虫剤に関して

防除に利用できる登録のある殺虫剤はディアナSC、グレーシア乳剤、ダントツ水溶剤、コルト顆粒水和剤等がありますが、高い防除効果を見込めるものがないのが現状です。次章に記載しますその他の防除方法を組み合わせながら対策していくことが重要です。なお薬剤散布の際、同一系統の薬剤の連用は薬剤感受性の低下を招きます。異なる系統の薬剤をローテーションして使用しましょう。

ネギアザミウマの対策:その他

雑草を除草する

圃場周辺に雑草があると、発生源になります。可能な限り除草しましょう。

赤色防虫ネットを展張する

ビニールハウスで作物を栽培する場合は開口部(側面、入り口、天窓など)に目合い0.8mmの赤色防虫ネットを展張することでハウス内への侵入を抑制することができます。赤色防虫ネットは栽培初期(播種前~定植まで)に設置することがポイントです。また色落ちした場合は、効果が低下することがあるので注意しましょう。

赤色LED光を照射する

2020年の農林水産技術会議において『2020年農業技術10大ニュース』の1つとしても選ばれた最新の技術です。赤色LED光を照射することで生息密度を抑制することが可能です。農薬だけに頼らない防除方法として非常に注目されています。

天敵昆虫を活用する

土着天敵としてクモ類、ゴミムシ類、ヒメオオメカメムシ、カブリダニ類が挙げられます。これらの天敵をうまく活用することができれば個体数を抑制することが可能です。

ネギアザミウマの対策に有効な資材

虫ブロッカー赤

数百品目を超える植物に深刻な被害を与えるアザミウマ。殺虫剤の耐性を獲得して化学的防除が困難になってきました。虫ブロッカー赤アザミウマ対策ができる赤色LED防虫灯です。赤色LEDはアザミウマの抵抗性を発達させず密度を低下させることに貢献します。

虫ブロッカー赤の設置目安(1機あたり)の推奨ピッチは10m~20m(短いほど効果あり)。赤色LED(ピーク波長657nm)を日中に十数時間程度(日の出1時間前~日の入り1時間後までの点灯を推奨します)照射するとアザミウマの成虫は植物体の緑色の識別が困難になり、ハウスへの誘引を防止すると考えられています。その他、殺虫剤の散布回数減・散布労力減といった効果も期待できます。

吸引式LED捕虫器|スマートキャッチャーⅡ

ビニールハウス向けのLED捕虫器です。LEDの光でコナジラミ類・アザミウマ類・キノコバエ類・ハモグリバエ類・ヤガ類などの飛翔害虫を誘引し、強力吸引ファンで専用捕虫袋に捕獲します。2022年7月1日にモデルチェンジし、LEDの数が旧型の6球から12球に増えたことで捕虫率が向上しています。

実際の生産者さんの使用感や効果の声に関してはこちら
現地レポート(スマートキャッチャー編 #1)

活性式予察捕虫器|アザミウマキャッチャー

特殊誘引剤の匂いと粘着シートの色によってアザミウマを誘引し捕虫します。付着した害虫の種類や数を農薬散布の目安とすることで害虫被害の早期発見と早期防除に役立ちます。

100㎡あたりに1台を地上から0.5~1mほどの高さの位置に設置していただくことで効率よくアザミウマ類を捕獲することができます。粘着板と特殊誘剤が消耗品になります。特殊誘引剤は3カ月に1回程度で交換が必要になります。電気を使用しませんので電気が来ていない圃場の害虫対策としておすすめです。

 

乱反射型光拡散シート|てるてる

てるてるは特殊な繊維構造で作り上げることで高い反射性能と赤外線遮蔽効果を実現した高性能乱反射型光反射シートです。太陽光を嫌うアザミウマに対して高い忌避効果を期待できます。

背光反応を習性とするアザミウマ類やコナジラミ類などの飛翔害虫は太陽の位置を頼りに姿勢を保っています。てるてるの拡散反射効果によってアザミウマなどの行動を抑制し、繁殖や栽培エリアへの侵入を防ぐ効果を期待できます。

ネギアザミウマの被害から農作物を守りましょう

ネギアザミウマは薬剤抵抗性を発達させており、大量発生すると手に負えなくなります。特にビニールハウスで作物を栽培している場合は、栽培初期から「入れない・増やさない・出さない」の3つのポイントをしっかりとおさえることによる対策が非常に重要です。大切な農作物を守りましょう。本コラムがお役に立てれば幸いです。

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コラム著者

満岡 雄

2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Twitterを更新していますのでぜひご覧ください。

 

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