有機石灰とは?特徴と効果
カキ殻やホタテ殻といった貝の殻や、貝の化石、卵の殻などを原料にした石灰資材です。主成分は炭酸カルシウムで、貝殻に付着している海藻や、卵の殻についている薄皮などが混ざるため微量要素が含まれているものもあります。酸性土壌の中和に使われますが、石灰石を原料としている生石灰・消石灰などに比べるとアルカリ分が少ないため効き目が穏やかであるという特徴があります。酸性土壌の強制力は弱いのですが、散布した後すぐに播種や定植ができる点がメリットです。また、有機成分の影響で土壌微生物が活性化するため土がフカフカになるという効果が期待できます。一般に窒素・リン酸・カリなどの三大栄養素は含まれていません。良く知られた原料としては、貝殻石灰・貝化石・卵の殻などがあります。
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有機石灰の種類と性質
貝殻石灰
カキやホタテの貝殻を露天に晒して塩分を抜いた後に乾燥させて粉末にしたものです。貝殻由来の石灰は、石灰石由来のものに比べて溶けにくいため、効果が持続しやすいという特徴があります。貝殻にはマンガン・ホウ素・鉄・亜鉛・銅・モリブデンなどの微量要素も含まれており、これらの効果も期待できます。
貝化石
海の中で堆積して化石化した貝が地殻変動により地上に現れた層から原料を採掘し加工したものです。魚やサンゴなども混在しており、微量要素やミネラル分を含んでいるという特徴があります。
卵の殻
マヨネーズなどを作る加工工場から出る副産物の卵の殻を原料としています。殻を洗浄し乾燥させた後に粉砕したものです。殻には炭酸カルシウムが含まれ、薄皮の主成分はタンパク質で、これは土壌の微生物のエサとなるため、土壌微生物が活性化します。また、卵の殻は多孔質のため微生物の住処になるとされています。
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有機石灰資材のメリット
取扱いがしやすい
扱いやすさは、アルカリ分の含有量に着目するとわかりやすいかもしれません。一般にアルカリ分の含有量は、生石灰80~95%、消石灰60~70%、苦土石灰50~55%、有機石灰40~45%程度です。アルカリ分が多いほうが酸性土壌の矯正力が大きくなります。一方でデメリットもあります。他の肥料や堆肥との反応でアンモニアガスが発生し、作物がガス障害を引き起こすリスクがあるのです。有機石灰は他の石灰資材に比べるとアルカリ分が少なめですから、化学反応が起こりにくく、土壌へ投入するタイミングについて、それほど注意を払う必要がありません。
土作りに役立つ
有機石灰には土壌微生物のエサとなる有機成分が含まれているため、土の中の微生物が活性化し団粒構造が形成されやすいという効果が期待できます。アルカリ分の多い石灰資材を多用すると土が硬くなったり、消毒の強さから土に有用な生物まで死んでしまったりします。
生理障害を防止する
有機石灰に限ったことではありませんが、石灰資材にはカルシウムが含まれているため、生理障害の予防の効果が期待できます。カルシウムはペクチンと結合して植物の細胞壁を構成します。カルシウムが不足すると、茎や若葉などの生長点が枯れやすくなり、トマトの尻腐れ、イチゴやレタスのチップバーンを誘発します。石灰資材でカルシウムを補給してあげることで、これらの生理障害を防止する効果が期待できます。細胞壁を丈夫にするため、病害虫の耐性も高くなるとの見解もあります。
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有機石灰の効果が期待できる資材|リンサングアノ
リン酸質のバッドグアノは洞窟内に堆積したコウモリの糞や死骸が完全発酵したものです。リンサングアノは洞窟や隆起した地層から採取したものが原料です。リン酸成分は洞窟や地層の石灰と結びつき、リン酸石灰の形で残ったとされています。含まれているリン酸はク溶性で根から分泌されるクエン酸によりゆっくりと溶け出すため、肥効が長く続くという効果が期待できます。石灰成分は4割ほどのため土壌に混ぜる順序やタイミングを気にせずに施用できます。リンサングアノには腐植酸も含まれており、急激なpH変化を和らげるという特徴もあります。
適切な石灰資材を用いて野菜作りに役立てましょう
石灰質資材は酸性土壌の矯正やカルシウムの補給には欠かせないものです。どのような条件でも有機石灰が良いというわけではありませんので、育てる作物や圃場の環境によって適切な石灰資材を選ぶようにしましょう。
コラム著者
キンコンバッキーくん
菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。