酸性土壌とは?その定義について
土壌が酸性よりかアルカリ性よりか、判断するためには水素イオン濃度指数(pH)を使用します。pHは水溶液中の水素イオン(H⁺)の量を示す値です。水(H₂O)にはプラスの電荷を帯びた水素イオン(H⁺)やマイナス電荷を帯びた水酸化イオン(OH⁻)が含まれていて、水素イオン(H⁺)が多いほど水溶液は酸性に偏り、水酸化イオン(OH⁻)が多いほど水溶液はアルカリ性に傾きます。酸性とアルカリ性はお互いのバランスをとっていて、酸性が強いときはアルカリ性が弱く、アルカリ性が強いときは酸性が弱くなります。この性質を利用し、水素イオン(H⁺)濃度を計測することで、圃場の土が酸性よりかアルカリ性よりか判断をすることができるということです。具体的な計測方法は、土壌の乾燥した土に土の容量のおよそ2.5倍の水を加え、pH計を用いて水素イオン濃度(pH)値を測定し判断をします。多くの農作物はpH5.5~6.5の弱酸性~微酸性が作物の栽培に適しているとされています。
日本に酸性土壌が多い理由
ヨーロッパや北米の土の材料は、氷河によって削られた岩石が細かく砕けたものです。雨量が少ない(およそ日本の1/3~1/2)ため、微量要素が流出しにくい条件になり、土壌のpH値は中性~微アルカリ性であることが多いようです。
一方、日本は多湿気候地域特有の風化作用や腐植物質の影響などもありますが、降雨量が多いため土壌が酸性にかたよりやすくなります。日本の年間降雨量は1718mmほどで、インドネシア、フィリピンに続いて3番目に多く世界平均(880mm)のおよそ2倍の雨が降ります。腐植が豊富なことに加えて温暖かつ降雨が多いことは、土壌微生物の活発化に貢献します。土壌微生物は我々人間と同じように呼吸(好気呼吸)をするので、二酸化炭素を放出します。二酸化炭素は水に解けると炭酸水になり、炭酸水は酸性を示します。これが日本に酸性土壌が多くなっている本質です。
また、純水のpHは7.0(中性)ですが、空から降ってくる雨水には大気中の二酸化炭素が溶け込むことと、排ガスの中に含まれる硫黄酸化物や窒素酸化物が紫外線によって酸性物質になり雲に取りこまれることにより、雨水のpHは4.77(中酸性)になります(2013年 環境省発表)。土壌緩衝能の働きによって雨水が土壌に接触すると、pHは中性に近づきますが少なからず土壌酸性化に影響していると思われます。
降雨量が多い日本では、降雨量は蒸発量を上回り土壌中へ浸透する水と一緒に土の中のアルカリ分(石灰)が流されやすくなります。
酸性土壌のデメリット
陽イオンの栄養素が溶脱しやすく施肥の効果が低下する
水素イオン(H⁺)が多くなると土壌は酸性に傾きます。土壌を構成する一部の土はマイナス電荷を帯びているため、プラス電荷を帯びている栄養素*とくっつきやすい状態です。しかし、土壌中に水素イオンが増えると、これら陽イオンの栄養素よりも先に水素イオンが土にくっついてしまい、くっつけなかった栄養素は雨が降ると流れやすく(溶脱しやすく)なります。酸性が強くなればなるほど、陽イオンの栄養素は土壌にとどまることができなくなり、いくら施肥をしてもどんどんと溶脱していくと考えられています。
プラス電荷を帯びている栄養素*:三大栄養素ではカリ(K⁺)とアンモニア態窒素(NH4⁺)。その他の必須元素ではマグネシウム(Mg⁺)・カルシウム(Ca⁺)など。
金属系の栄養素の過剰症状がおこりやすい
酸性に傾いた土壌ではマンガン(Mn)・鉄(Fe)・銅(Cu)・亜鉛(Zn)・ホウ素(B)**などの微量微量要素が溶けやすく過剰症になるリスクがあるとされています。金属は酸性条件下で溶出量が多くなるという考察もあり、金属の元素であることと関係性があるのかもしれません。
ホウ素(B)**:元素の分類において金属と非金属の中間の性質を持つ半金属。
根に障害をもたらし作物の生育を阻害する
酸性に傾き過ぎた土壌では、土壌中の元素の7%ほどを占める鉱物アルミニウムが酸により溶解します。低濃度のアルミニウムでも短時間のうちに、根の伸長を強く抑制する(細胞分裂を停止させる)と考えられています。また、リン酸と結合し不溶性のリン酸アルミニウムとなり、根からのリン酸吸収を阻害します。
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土壌のpH値に適した作物
植物の種類により適したpHは異なります。育てる作物によって圃場のpHを適正な値になるような土壌改良が求められます。
pH | 状態 | 生育しやすい作物 |
---|---|---|
5.0~5.5 | 酸性 | チャ |
5.5~6.0 | 弱酸性 | ショウガ・ジャガイモ・ブルーベリー |
5.5~6.5 | 微酸性~弱酸性 | イネ・キャベツ・イチゴ・ダイコン・ミカン・リンゴ |
6.0~6.5 | 微酸性 | トウモロコシ・ネギ・ハクサイ・ブロッコリー・カボチャ・スイカ・ナス・ピーマン |
6.5~7.0 | 微酸性~中性 | サトウキビ・ホウレンソウ・ブドウ |
強酸性(pH4.0~5.0)を好む雑草は、メヒシバ・ヨモギ・スギナ・白クローバーなどがあります。このような雑草が生えている場所は、強酸性の土壌となっている可能性が高く、野菜や果樹を育てるには土壌の中和が必要になると考えられます。
酸性土壌の改良方法とは
石灰資材を投入する
石灰(Ca(OH₂))を土壌に投入するとCa²⁺と2OH⁻にわかれます。OH⁻が土壌に存在している水素イオンH⁺と結びつき水H₂Oとなり水素イオンの量を減らすことができます(水素イオンH⁺が減れば土壌のpHはアルカリ性に傾きます)。石灰投入による水素イオンの減少により、水素イオンと結びついていた土壌のマイナスイオンが空席となるため、他の栄養素とくっつきやすくなり、土壌からの栄養素の流出を防ぐことにつながります。以下に代表的な石灰質資材をご紹介いたします。
苦土石灰(くどせっかい)
ドロマイドという鉱物を粒状や粉状に細かく砕いた肥料です。主成分は炭酸カルシウム(CaCO3)と酸化マグネシウム(MgO)で、弱アルカリの性質を持っています。
有機石灰(ゆうきせっかい)
貝の化石やホタテ・カキの殻が原料です。細かく粉砕し、粒状や粉状にしています。石灰石と同様に海の二酸化炭素を取りこみ作られた石灰質の体(炭酸カルシウム)が主成分です。酸性土壌を穏やかに中和します。
消石灰(しょうせっかい)
サンゴや貝などが海中の二酸化炭素を取りこみ石灰質の体を作り、それらが海洋プレートに乗って移動し堆積したものが石灰石です。この石灰石を粉砕して粒状や粉状に加工した資材です。強アルカリ性のため、窒素と反応しアンモニアガスが発生したり、皮膚がかぶれたりするので取扱いには注意が必要です。
石灰質肥料を投入する目安量は、土壌のpHを1.0上げる(アルカリ性へ傾ける)ために1平米(深さ10cm程度)につき、苦土石灰や有機石灰であれば約150g、消石灰であれば約100gとされています。
植物を燃焼させた資材を投入する
植物を燃焼させると炭酸カリウムや炭酸ナトリウムなどが生成され、これらが水に溶けるとアルカリ性を示します。以下に代表的な資材をご紹介いたします。
草木灰(そうもくばい)
藁・落ち葉・枯草などを燃焼させたもので、カリ(K)と石灰を含む資材です。古くから広く使用されている農業資材ですが、原料の確保が難しくなったことや、原則として野焼きが法律で禁止されていることから、化学肥料へ切り替えられているようです。酸性土壌を調整すると共にカリ(K)の作用により花や果実の生長を促進します。
籾殻燻炭(もみがらくんたん)
籾殻を可能な限り無酸素の状態で蒸し焼きし炭化させた資材です。土壌と一緒にすきこむことで酸性土壌対策となります。土壌が中和されることにより土壌微生物が活性化して土壌の団粒構造化を促進する効き目も期待できます。施用量の目安は5~10%程度です。
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酸性土壌を改善する籾殻燻炭の製造におすすめな資材
お米を脱穀した後に発生する籾殻の処理にお困りではないでしょうか。または近隣に処理に困っている農家さんはいらっしゃらないでしょうか。籾殻連続炭化装置スミちゃんは余った籾殻を使い、酸性に傾きすぎてしまった土壌を改良する籾殻燻炭を手軽に製造することができます。多孔質構造である籾殻燻炭は微生物の住みかとなるため団粒構造を促進し、土壌の保水性(水もち)や通気性を改善するという効果も期待できます。また主成分であるケイ酸は植物を健康にして病害虫や環境に強くなると考えられています。稼働に重油などの燃費がかからず、廃棄にかけていた費用も軽減することが可能です。
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酸性土壌を改良し収量アップを目指しましょう
品質の高い農作物を、安定的に多く収穫するためには、計画的な土壌診断の実施と、診断結果に基づく適正な土づくりや改良が必要ではないでしょうか。土壌を最適なpHに矯正することで、土壌環境が改善され施肥効果を得られやすくして、作物を健全に育てることができるという良い流れを作りだしましょう。今回のコラムをお役立ていただければ幸いです。
コラム著者
キンコンバッキーくん
神奈川県藤沢市出身(一説によると母親はイスラエル人)、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。
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