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トマトを生理障害から守れ!障害の種類と対策について
公開日2022.03.18
更新日2022.03.18

トマトを生理障害から守れ!障害の種類と対策について

トマトやミニトマトが健康な状態ではなくなり、尻腐れやすじ腐れなどが発症し良品率や収量の低下を招く生理障害。作物が必要な栄養素を上手く吸収できないと、生理障害は起こりやすくなると考えられています。生理障害をかかえた不健康な植物体は、果実が健康に育たないばかりではなく、病害虫の影響を受けやすくなります。今回のコラムでは、トマト栽培やミニトマト栽培で発生リスクのある生理障害について詳しくご紹介していきたいと思います。

トマトの生理障害とは

トマトに限ったことではありませんが、植物体は土壌中の根っこから必要な栄養素を吸収しています。この栄養素が上手に株全体に行き渡らないと不健康な状態になり、色々な障害の発生リスクが高くなります。後ほど詳しく解説しますが、栄養素が吸収できない要因はいくつかあり、日照不足による光合成活動の停滞であったり、土壌中の栄養素の不足または過剰による吸収阻害であったりします。生理障害が発生すると、その後のトマトの生長に悪影響を与え、尻腐れ・すじ腐れ・裂果などといった障害が生じて商品価値が著しく低下し、農業経営に大きなダメージを与えてしまいます。

トマトの生理障害の種類と症状

葉先枯れ

葉全体は枯れず、先端部分のみ枯れてしまいます。三大栄養素の一つであるカリウム(K⁺)が不足していると発生しやすく、別名「カリ欠」と呼ばれています。生長の盛んな5~6月頃、果実の量が増えて、それぞれの実が肥大すると、多くのカリが使用され根からの供給が追い付かず不足します。株全体でカリウムが不足すると、果実へのカリの供給が優先されるため、葉のほうは不足するというわけです。さらに「カリ欠」が進むとトマトの実に着色むらが発生したり、かどばったような形になったりします。

病気ではないので伝染することはありませんが、葉が枯れた部分から病原菌が侵入しやすくなります。特に灰色カビ病(糸状菌)は壊死した組織から増殖し植物体へ侵入するため注意が必要です。枯れた葉の壊死した部分は回復しません。放置すると灰色カビ病に罹患した場合に病気が株全体に広がるリスクがあるので、病原菌の侵入を回避するために枯れた葉は除去するようにしましょう。

尻腐れ(芯腐れ)

必要なカルシウムが不足し実の尻部分が腐ったように黒くなる生理障害です。トマトの実が肥大する時期(5~10月頃)に発生します。土壌に十分なカルシウム量があっても、土壌が乾燥していたりアンモニア態窒素が過剰に蓄積されていたりすると、根がカルシウムを吸収できなくなり発生リスクが高くなります。症状がでた実は回復することがないため速やかに摘果します。

酸性に傾いている土壌では、アンモニアと酸との反応によりアンモニア塩が生じます。陽イオンであるアンモニア塩(NH4⁺)は、同じ陽イオンの性質を持つカルシウム(Ca²⁺)の吸収を妨げるため、酸性土壌にアンモニア態窒素の過剰施肥が重なると、植物体はカルシウムを根から吸収できなくなってしまいます。またカルシウムは植物体の中を移動しにくい成分で、ホウ素が運搬役を務めているため、ホウ素が不足してもカルシウム不足となる場合があるようです。

ガク枯れ

トマトのヘタの部分が茶色く変色し枯れてしまう生理障害で、花が落ちてしまう原因となります。根から水分や窒素などの栄養素が吸収することができないときに発生しやすいと考えられています。日照不足や根張りが悪いことが原因で樹勢が弱くなっていると、実に補充する栄養が優先され、花に栄養が行き届かなくなります。反対に樹勢が強すぎて茎や葉が茂り過ぎる場合にも発生する可能性があります。

すじ腐れ

実の表面に黄色や緑色の斑点やすじが発生し、実が着色しなくなる生理障害です。成熟ステージの後半に発生リスクが高くなります。果皮の維管束が壊死して黒い線が生じる黒すじ腐れと、果皮が硬化して不規則な凹凸が生じる白すじ腐れの2種類があります。日照不足が大きな原因ですが、アンモニウム態窒素が過剰でカリウムが不足している(または吸収できなくなっている)*と、さらに発生しやすくなると考えられています。着果直後の判別は難しく、着色し始めて成熟していく段階で気が付くケースがほとんどです。

*アンモニウム態窒素とカリウムはお互いに作用を打ち消しあう拮抗関係にあるため、アンモニウム態窒素が過剰だと、カリウムが土壌に存在していても、トマトの根はカリウムを吸収できなくなります。

乱形果(奇形果)

果実が均一に肥大しないため円形に育たず、菊のような形や2~3個果実がくっついたようないびつな形になり、製品価値は著しく低下します。トマトは太陽の光がたくさんあたる南米が原産地のため、10℃以下の低温にあうと発生しやすく、特に育苗中の花芽分化のステージだと発生リスクが高くなります。また若い苗を定植すると樹勢が旺盛となり多発します。

その後の着果に大きく影響する第一果房の着果を確実にするためにホルモン剤を利用することがありますが、ホルモン剤の濃度を高温の時期に高い希釈倍率で施肥したときにも発生しやすいようです。

空洞果

ゼリー部の充実が悪くなり、果肉部とゼリー部の間に隙間が生じます。隙間が大きすぎると製品価値が低下します。果実が肥大する段階で、日照不足により光合成活動が十分に行えなかったり、栄養分が不足したりすると発生しやすい生理障害です。また着果促進ホルモン剤を高濃度で施肥したり、二度がけしたりすると発生するリスクが高くなります。

異常茎

他の茎に比べて太くなって茶色や黒色のすじが生じたり、茎が縦に裂けて穴が空いたりします。窒素過剰により、使いきれない窒素が生長点付近に溜まって同化作用が進まず、茎の中心部分にある髄(ずい)の一部が壊死して生長が止まりますが、髄の周辺部分は生長し続けているため、両側から引っ張られることで穴が空いてしまいます。

裂果

実の一部に硬化した部分が生じることがあり、この硬くなった部分と肥大していく部分の膨張率の違いにより歪が生じ裂果します。一般的な原因は3つあります。1)窒素過剰により樹勢が強くなりすぎて果実の芯が太くなり、ヘタの下に弾力性のないコルク層が形成されると、果実が大きくなる過程で歪が生じて裂果します。2)幼果時の日焼けで果皮が固くなりすぎると、果実肥大するタイミングで果皮が伸びることができずに裂果します。3)土壌乾燥が続いた後に潅水すると、根から急激に水を吸収し果実の肥大のスピードが速くなることで、果皮の伸長が追い付かず裂果します。

トマトの生理障害の主な原因

日照不足

トマトに限ったことではありませんが、雨天や曇天などが原因で光合成(炭素同化作用)を行うために必要な光エネルギーがたりなくなると、同化養分が不足します。これにより葉の肉厚や色が薄くなったり、根の活力が低下したりするなど、生理障害を引き起すリスクが高くなります。

栄養素の過剰(およびバランス)

土壌にアンモニア態窒素(NH₄⁺)が過剰にあると、植物体の根からカリウム(K⁺)やカルシウム(Ca²⁺)が吸収できなくなります。アンモニア態窒素・カリウム・カルシウムは、お互いに陽イオンのため拮抗関係にあり、過剰に存在すると養分吸収を抑制または阻害してしまいます。特に三大栄養素である窒素とカリウムは施肥量が多く、土壌の中に拮抗関係が出来上がりやすい傾向があります。

植物体が根から栄養素を吸収する際にはイオンの形で行われるため、陽イオン同士または陰イオン同士の土壌中の施肥量が多くなると、共存している他の栄養素の吸収を阻害することになります。以下に主な栄養素のイオンの形を示しますので、施肥する際の参考にしてみてください。またアルミニウムはリン酸・鉄・カルシウム・マグネシウム・マンガンといった栄養素吸収の抑制力がかなり高いと考えられています。

帯びている電子 栄養素の種類
陽イオン アンモニア態窒素・カリウム・カルシウム・マグネシウム・ホウ素・鉄・亜鉛・銅・マンガン
陰イオン 硝酸態窒素・リン酸

一般的に拮抗関係は同じ電荷を帯びている栄養素同士で発生しますが、異なる電荷を帯びている栄養素同士でも拮抗関係が起きることがあります。代表的なものでは、一価の陽イオンであるカリウム(K⁺)と二価の陽イオンであるマグネシウム(Mg²⁺)・カルシウム(Ca²⁺)は拮抗作用が顕著で、カリウムの過剰施肥ではマグネシウム欠乏症やカルシウム欠乏症が起こりやすいとされています。一方、二価の陽イオンの過剰施肥では一価への陽イオンへの影響は少ないようです。

栄養素の不足

窒素は、育苗ステージで苗が健全に生長するために必要量が多くなります。リン酸は、定植前の根張りを良くするためや、定植直後に開花を促すために必要とされています。カリウムはトマトにとって最も重要な栄養素で、生育ステージ全般で施肥することが大切です。ただし、単純に土壌の栄養素が不足している場合と、前述の過剰施肥が原因で拮抗関係が生じ、土壌に十分な栄養素があっても、根から栄養素が吸収できなくなっている場合がありますので注意してください。

一度に多量に潅水する

土壌の乾燥状態が続いた後に、一気に潅水を行うと果実の生長が急激になり裂果の原因となります。トマトの栽培には、少量で潅水する回数を増やす「少量多潅水」が良いとされています。潅水から次の潅水までに時間を空けると、裂果や根へのストレスが発生しやすいためです。点滴チューブなどを使用して土壌の水分状態を安定的に保つ方法が一般的です。

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トマトの生理障害対策におすすめの資材

日照不足対策におすすめのトマト補光用LED電球

施設栽培に限られますが、雨天や曇天日に光エネルギーを補うためにLED電球で補光します。トマトの花芽形成は、日長の変化に影響を受けない中性植物であるため、夜間に補光を行っても悪い影響は少なく効果が期待できると考えられています。トマトの葉は密生しやすく、下の方の葉が陰になりやすい傾向がありますので、このような部分にも電照すると光合成活動が一層促進されるとされています。

そこで皆様におすすめしたいのが、トマトの生育に必要な波長のLEDチップを搭載したトマト用LED電球です。光合成を促す赤色チップと、葉を厚くしたり実を大きくしたりする青色チップをバランスよく配置しています。天候不良など太陽光エネルギーが不足しがちなときに、LED光を電照しトマトの光合成活動をサポートします。一般的に良く利用されているE26口径を採用しており、既設の電気設備があれば電球を交換するだけで簡便に導入が可能です。生活防水仕様で多湿環境でも壊れにくいというメリットもあります。

葉面散布におすすめの小型電動噴霧器|モーターフォグ

光合成促進と葉肉を厚くするための葉面散布を行います、窒素・リン酸・カリなどの栄養素を含んだ肥料の葉面散布は速効性があり効果が期待できます。太陽の光が不足しているときは、根から栄養を吸い上げる機能が低下しますので、葉面に直接栄養を施肥し安定的に栄養を与えます。土壌からの追肥では時間がかかることや、土壌環境が悪く根に元気がないと地上部へ栄養が届かない場合があり、このような場合に葉面散布は効果が期待できます。

葉面散布を行うタイミングは、天気の良い午前中(早朝など涼しい時間帯)が良いとされています。太陽光が強い時間帯は、葉面散布剤の水分が急激に蒸発して高濃度になり、葉っぱがダメージを受けてしまいます。夕方の遅い時間では、葉っぱの気孔が十分に開いていないため栄養が吸収できません。また水分が葉っぱに残ったまま夜を迎えると病害虫の発生を誘発するリスクが高くなります。

トマトの状態 施肥する栄養素
尻腐れ カルシウム
葉先枯れ カリ
裂果 アミノ酸
実が赤くならない エチレン
樹勢が弱い 窒素
樹勢が強すぎる リン酸・カリ

葉面散布をする際におすすめしたいのが、小型電動噴霧器モーターフォグです。モーターフォグに搭載されているノズルは、液肥を微細な状態で噴霧することが可能で、施設内のトマトの葉っぱにまんべんなく散布することができます。一般的な動噴に比べて軽量で取扱いしやすく、葉面散布作業の作業負荷やわずらわしさを軽減します。密閉した湿度の高いビニールハウスでは、循環扇などの風にのせて噴霧する「置き型噴霧」も可能で、この方法であればスイッチを入れたら後はお任せで時間が来たら止めるだけでOKです。

トマトの生理障害を発生させない対策を

トマトやミニトマトの生理障害の発生を見逃し放置してしまうと、不健康な状態で育っていくため品質の良い果実を収穫することが難しくなってしまいます。生理障害の原因は多岐にわたり、圃場環境やトマトの品種、育て方により対策が異なるため、いろいろな考え方が必要かと思います。今回のコラムをお役立ていただけましたら幸いです。

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