コラム
アルミニウムは根の天敵?酸性土壌における影響について
公開日2023.10.12
更新日2023.10.12

アルミニウムは根の天敵?酸性土壌における影響について

土壌には地球に存在する元素の多くが含まれており、およそ7%はアルミニウム(Al)だといわれています。もともと土壌中に含まれている物質ですが、酸性に偏った土では植物が障害を引き起こす大きな原因となります。化学的にとても活性化しやすく、他の物質と反応して化合物になりやすいという性質があるためです。今回のコラムでは酸性土壌におけるアルミニウムの作用や改善策についてお伝えしていきたいと思います。

酸性土壌におけるアルミニウムの悪影響

日本においては、耕作可能地における酸性土壌の割合はおよそ4割といわれています。日本は降雨量が多いこと(雨は空気中の二酸化炭素が溶けているため微酸性)や、多湿な気候の影響で土壌微生物が活発になり、土の中で二酸化炭素を放出するなどの影響が大きいようです。そしてある一定のpHになるとアルミニウムは土壌に溶け出して作物の生長を阻害する作用を引き起こします。

根の伸長を抑制する

アルミニウムは、中性の土壌では安定的に保持されているため他の物質と反応することはありませんが、土壌が酸性に偏るとイオン化し土に溶出します。溶けたアルミニウムは土の中にしみ出して作物の根に障害を与えます。土からの栄養を吸収するための根にダメージが加わると、植物にとっては致命的です。作物の種類によりアルミニウムに対する反応は大きく異なりますが、一般的には微量でも根の伸長を阻害するという性質を持っています。アルミニウムイオンの影響を受けると、根端(根の先端部分)の伸長が抑制され、場合によっては細胞分裂が停止して根は致死に至ります。

リン酸が吸収されにくくなる

土壌が酸性に偏りすぎると、鉄やアルミニウムが土に溶け出してリン酸と強く結合します。不可給態リン酸と呼ばれ、根から分泌される根酸に反応しにくく、作物が栄養を吸収しにくい状態です。このような状態の土壌では、リン酸の施用量を多くしても肥効が得られにくいというデメリットが生じます。

ほとんどの植物は、その毒性を排除するためにアルミニウムを体内に集積することはありませんが、耐性遺伝子を持ち障害を受けない植物があります。アジサイやチャ、ユーカリなどはアルミニウムを集積することがあります。例えば、青い色のアジサイの花は、アントシアニンとアルミニウムの結合したことで決まっていると説明されています。また酸性土壌を好むブルーベリーでは、エリコロイド菌根菌との共生関係によりアルミニウムイオンから根を守っているという説もあるようです。

アルミニウムの障害を防ぐには?

アルミニウムの溶解はpHに大きく関係しています。微酸性~中性の土壌では溶け出しませんが、酸性に偏るとアルミニウムイオンの形で土の中に存在するようになります(およそpHが5.5以下でイオン化し始める、5.0で顕著になり4.5以下でほとんどがイオン化する)。火山灰土では、特にアルミニウムが溶出しやすく5.8以下でも溶け出すことがあります。アルミニウムによる障害を防ぐためには土壌が酸性土壌に偏りすぎないようにする必要があります。酸性土壌の改良として、一般的な方法はアルカリ成分の含まれた石灰質資材や植物質資材を土壌に施用する方法です。

石灰質資材

生石灰・消石灰・苦土石灰・有機石灰などがあります。同じ石灰石を原料として作られていますが、それぞれ含まれている成分が異なります。

生石灰や消石灰はアルカリ性が強く即効性がある反面、土壌での反応が高いです。そのために混和後ある程度の期間をおいてから、播種や定植を実施する必要があります。また、窒素肥料と反応してアンモニアガスとなり窒素成分が失われる可能性があるなど、他の肥料との関係性に留意して使用しなくてはなりません。生石灰は近くに可燃物があると発火するなどの危険性があるため、保管や取扱いにも注意が必要です。

苦土石灰や有機石灰はアルカリ成分が抑えられているため、効き目が穏やかです。播種や定植のタイミングは生石灰や消石灰ほど注意する必要はなく、窒素肥料と反応してアンモニアガスを発生させる可能性は低いと説明されています。

植物質資材

草木灰籾殻燻炭など、植物を原料とした資材です。草木灰は、藁・落ち葉・枯草などを燃やしてできた灰です。籾殻燻炭は、脱穀時に発生するお米の固い外皮をなるべく無酸素の状態で蒸し焼きにしたものです。植物が熱を受けると炭酸カリウムや炭酸ナトリウムなどが生成され、水に溶けるとアルカリ性を示します。

アルカリ成分の多い資材は、連用すると土が硬くなることがあります。資材を使いすぎて土壌がアルカリ性に偏りすぎると、三大栄養素の一つである窒素や、鉄・マンガン・銅・亜鉛といった微量要素を植物が吸収しにくい状態となり生育障害が発生します。アルカリ性に傾いた土壌を酸性へ戻していくのはハードルが高いため、pHを測定しながら資材を施用することがとても大切です。

酸性土壌におけるアルミニウム障害を予防するおすすめの資材

リンサングアノ|インドネシア産バットグアノ

コウモリの排泄物や遺骸が時間をかけて発酵したもので、リン酸・石灰・腐植酸を豊富に含んだ特殊肥料です。完熟しているため臭いもほぼ発生しません。石灰(カルシウム)成分は4割ほど含まれており、土壌のpHを上げる効果が期待できます。そして腐植酸はpHの変化を緩和する緩衝作用もあるため、作物に適したpHを保ちやすいというメリットも生まれます。酸性に偏った土壌を改善しつつ、リン酸の施用もできるという便利な資材です。リン酸はク溶性で、根から分泌されるクエン酸などの根酸などにより溶けやすく、肥効が長くつづきます。

スミちゃん|籾殻連続炭化装置

余った籾殻の処分に費用を払って産業廃棄物に出していないでしょうか。スミちゃんは籾殻を燃焼させて籾殻燻炭を作ることができる機械です。600~700℃の高熱で生の籾殻を燃焼させて、籾殻の形状の残った燻炭を製造します。籾殻燻炭はアルカリ成分が含まれており石灰資材の代用として酸性土壌の矯正に適していることや、多孔質であり保水性の改善や土壌微生物の活性化といった効果が期待できます。

酸性土壌を矯正してアルミニウム障害を防ぎましょう

アルミニウムによる生育不要の発生は、酸性に偏りすぎた土壌に起因しています。酸性土壌を矯正せずに、いくら適切に肥料を施肥しても土の中で肥効を発揮できなければ、無駄使いとなってしまいます。日本には酸性土壌である黒ボク土が広く分布していることや、雨が多い影響で多くの圃場が酸性に傾きがちです。厳密性に拘らなければ簡易な測定器もあり土壌のpHを把握することは、難しいことではありません。pHの管理も視野にいれた土づくりを実践してみてはいかがでしょうか。

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コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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