コラム
処分に困る籾殻の活用方法|燃やすことで籾殻燻炭に変えよう
公開日2023.11.13
更新日2023.11.14

処分に困る籾殻の活用方法|燃やすことで籾殻燻炭に変えよう

稲刈り後に田んぼからでる籾殻(もみ殻)は畜産の床材、農業や家庭菜園における土づくりの材料として活用されています。しかし大量に籾殻がでると処分しきれないことも。特に作付面積の広い水稲農家さんや水稲関連の仕事に携わっている方は困っている方も多いのではないでしょうか。今回のコラムでは処分に困る籾殻の利用方法と、燃やすことで籾殻燻炭に変えるメリットについて解説します。ぜひ最後までご一読ください。

籾殻の活用方法

本章では籾殻の活用方法を解説します。

肥料として活用

籾殻には植物の成長に必要な窒素が0.4%程度しか含まれていないため肥料効果はほとんど期待できません(下表を参照)。そのため、籾殻を単体で利用するというよりは堆肥、ぼかし肥料、園芸培土などの材料として活用することが理想ではないでしょうか。

 

籾殻の構成元素の分析結果(乾物重あたり)

有機物 無機物 その他
炭素 窒素 酸素と水素 ケイ素分とミネラル
35.8% 0.4% 32.5% 22.1% 9.2%

微量要素を活用

籾殻には微量要素であるケイ素分が20%程度と豊富に含まれています。土壌へ混和した籾殻は分解が進むとケイ素分が溶け出し、酸素と水素と結合することでケイ酸(珪酸)になりますが、ケイ酸は植物に吸収されると植物体を丈夫にし、細胞壁からの病原菌の侵入を防ぐと言われています。実際にキュウリ、カボチャ、イチゴのうどんこ病に対して効果が得られているようです。

土壌改良に活用

籾殻は軽くてかたく、見た目が舟形という独特な形状をしているため、土壌に混和することで土中に空間(隙間)をつくります。さらに籾殻の内部構造を見ると、小さな穴がたくさんあいています。そのため通気性、排水性、水もちに優れた土壌への改良が期待できます。作物に理想的な土壌環境を「団粒構造」と言いますが、それに近い状態へ土壌改良することが可能です。

床材として活用

籾殻は消臭効果や保温効果が期待できるため動物の床材として最適です。牛、豚、鳥といった畜産業はもとより、リクガメやフクロウといった動物園の床材としても重宝されているようです。

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籾殻を燃やす方法~燻炭にすることがベスト~

大量の籾殻は保管場所に困ったり、産業廃棄物になると処分費までかさんでしまいます。そのため、籾殻は燃やして籾殻燻炭にすることで活用の幅が広がります。本章では籾殻を燃やす方法を解説します。

籾殻を燃やす方法|野焼き

日本の稲作地帯で古くから行われている籾殻の燃焼方法が野焼きです。ホームセンター等で数千円程度から購入できる煙突状の燻炭器を使用することが特徴的で、煙がもくもくと出るため見かけたことがある方も多いと思いのではないでしょうか。

野焼きの注意点

一般的に野焼きをすることは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」によって原則禁止とされており、違反すると5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又はその併科、法人の場合は3億円以下の罰金刑に処せられる場合があるため注意が必要です。

ただし、以下の通り農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却は例外として認められています。

(焼却禁止の例外となる廃棄物の焼却)
第十四条 法第十六条の二第三号の政令で定める廃棄物の焼却は、次のとおりとする。
四 農業、林業又は漁業を営むためにやむを得ないものとして行われる廃棄物の焼却

参考:廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令

発生する匂いや煙への対応

籾殻を野焼きする際に発生する匂いや煙は近隣住民からの苦情や迷惑をかけることがあります。目や喉の痛みといった健康被害も報告されています。そのため籾殻を野焼きする場合は少量ずつ燃やし、風向きや時間帯(夜間は燃やさない)を考慮する必要がありそうです。ただし籾殻の野焼きを禁止している市町村や自治体も多いため、野焼きをする前に情報収集をされることをおすすめします。

籾殻の燃焼方法|炭化装置

各メーカーから炭化装置が発売されています。価格は20万円~100万円以上とピンキリです。「価格が高いほど労力がかからない」「稼働時の煙や臭いが出にくい」「連続して大量の籾殻を炭化できる」といった特徴があるようです。これらの単価装置はイニシャルコストがそれなりにかかりますが、煙などで近隣住民に迷惑をかけづらく、火災の心配も少ないため安心安全に籾殻燻炭をつくることが可能です。高額な炭化装置ほど国や地方自治体から交付される補助金を使用して導入されている方が多いようです。

籾殻燻炭にするメリット

生の籾殻籾殻燻炭にすることで、性質がパワーアップします。本章では籾殻燻炭にするメリットを解説します。

保水力や保肥力がアップ

籾殻燻炭は形状を維持できるため、土壌に混和すると土壌中に空隙をつくることができ、その空隙に水分を保持することができます(保水力)。また籾殻燻炭そのものには肥料成分はありませんが、保水力が高いということは植物の根に肥料成分を効率良く供給できる環境をつくります(保肥力)。

通気性がアップ

土壌中の空隙は空気の通り道となるため、植物の根腐れ防止が期待できます。

土壌微生物との相性が良い

籾殻燻炭が持つ多孔質構造(マクロ孔)は保水性と通気性があるため、植物の根が侵入しやすく、植物の根に共生する菌根菌などの土壌微生物が増殖しやすくなります。

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籾殻を連続して炭化する装置『スミちゃん

スミちゃんは処分に困る大量の籾殻を連続して炭化する装置です。特許取得済みの技術により、匂いや煙があまり出ないことが最大の特徴です。そのため近隣住民の目を気にせずに籾殻燻炭をつくることが可能です。本体を室内に設置するため、雨天時も稼働できます。スミちゃんを10~15時間稼働した時の籾殻処理量の目安は1,200Lから。処理したい籾殻の量をご教示いただければ機種選定のご相談を承ります。また導入後の運転指導のご相談も承ります。詳しくはお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

処分に困る籾殻を燃やして宝物に変えましょう

大量の籾殻の処分に頭を悩ませている・・・という場合、発想を変えれば、籾殻燻炭にすることで宝物へ変えること可能になります。貴重な資源を有効活用する環境に良い活用方法をぜひ実践してみてはいかがでしょうか。本コラムがお悩みの解決のヒントとなれば幸いです。

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コラム著者

満岡 雄

2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Twitterを更新していますのでぜひご覧ください。

 

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