コラム
根圏における根の活動とは?土壌微生物との共生関係について
公開日2022.03.10
更新日2022.03.10

根圏における根の活動とは?土壌微生物との共生関係について

植物体の根っこは、空気・栄養素・水分を吸収する大切な器官です。人間でいえば口にあたるのでしょうか。植物は動物のように自ら移動することはできず、一度土壌に根を張ってしまえば、その環境の良し悪しに関わらず順応できなければ死んでしまいます。環境に順応し生き残るすべとして、植物体の根は積極的に土壌や土壌微生物に対して働きかけを行っています。今回のコラムでは、根圏と呼ばれる根の周辺数ミリメートルでの根っこの活動と微生物の関係性についてご紹介していきたいと思います。

根圏とは?

根圏(こんけん)とは植物体の根と、その影響を受ける土壌微生物との相互作用によってつくられている極めて根に近い範囲を指します。最近は、根の内部も根圏の一部として含める場合が多くなってきました。これは、根の周辺に寄生する菌の菌糸が根の細胞壁に侵入し作用することが分かってきたためです。

根圏の活動と微生物

根の周りでは「根分泌物*」「抜け落ちた根毛」「剥がれ落ちた表皮」などの有機物質が発生し、これをエサ(栄養分)として土壌微生物が増殖しています。土壌微生物が増えれば団粒構造化しやすいなど、根っこの生長にとって良い生育環境が整いますので、この点だけでも根と微生物は共生関係にあると考えても良いでしょう。また根から放出される根分泌物は、土壌微生物である根粒菌や菌根菌などと共生するためのシグナルを送る機能も兼ね備えていて、これらの菌と共生することで、植物体は必要な栄養素を効率的に吸収することができると考えられています。

植物体が根分泌物を出すもう一つの理由は、土壌中の栄養素を溶解して取りこみやすくするためです。例えば三大栄養素の一つであるリン酸(P)は、鉄(Fe)やアルミニウム(Al)と結合しやすく、土壌に施肥されると急速に結合し鉄型リン酸やアルミニウム型リン酸といった難溶性リン酸に変化してしまいます。いわゆるリン酸の固定化です。このような鉄型リン酸やアルミニウム型リン酸ではリン酸成分を吸収しにくいため、根から有機酸を出して難溶性リン酸を溶解し吸収しています。根分泌物には解毒機能もあり、根の生長を妨げる根圏の有害なアルミニウムを毒性の低い物質にしてしまう作用もあるようです。

このように根は土壌の中で活発に活動を行っており、植物体地上部の光合成により作られた炭素の5~20%は根から土壌中に分泌されているという考察もあります。

*根の分泌物:タンパク質・糖・フラボノイド・アミノ酸・クエン酸・シュウ酸・マロン酸・ピシジン酸・ムギネ酸・リンゴ酸・アミノ酸などがあり、植物体の種類によって分泌物や分泌量が異なると考えられています。

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根圏微生物の特徴と役割とは?

根圏微生物はたくさん種類がありますが、その中でも有名なアーバスキュラー菌根菌(AM菌)と根粒菌の特徴と役割について解説していきたいと思います。

アーバスキュラー菌根菌(AM菌)

デボン紀(4億年ほど前)のシダ類の根の化石からも発見され、二酸化炭素が現代の20倍ほどあった時代から植物の根と共生してきた根圏微生物(カビ菌)です。根が貧弱である水生植物が陸地へ進出する際に、すでに土壌で適応していたアーバスキュラー菌根菌の祖先を「陸上進出ツール」として利用したことが共生の始まりだと考えられています。植物の三大栄養素である窒素・リン酸・カリのうち、窒素やリン酸を植物体の根が吸収する作業を助け、代わりにアーバスキュラー菌根菌は植物の根から光合成産物を受け取って自分のエネルギー源としています。植物体から供給される炭素源に頼らなければ、単独で生存したり次世代の胞子をつくったりすることは不可能です。

アーバスキュラー菌根菌は、植物体の根に寄生して菌糸を伸ばします。菌に寄生された植物の根は土壌に対する影響力を強め、より多くの窒素やリン酸を吸収することができます。特にリン酸は根が吸収しにくい成分で、土壌中の根から3mm以内にあるものしか活用できないという研究もあり、アーバスキュラー菌根菌を寄生させることで、根圏を広げて遠くのリン酸も吸収できるようになります(一説には菌糸は数cm~数十cm伸びる)。リン酸肥料を施肥しても効果が見られない場合は、もしかすると根と菌の共生関係が築けていないのかもしれません。

アブラナ科(例:ブロッコリー・キャベツ・白菜・大根)やアサガ科(例:ほうれん草・ビート)などには共生しませんが、他のほとんどの植物(およそ80%)とは共生関係を持っているというのが現在までの研究による考え方です。

根粒菌(こんりゅうきん)

別名「根粒バクテリア」ともいわれ、大豆・枝豆・そら豆・インゲンといったマメ科の植物体の根に寄生して、共生関係をつくる細菌(バクテリア)です。今のところマメ科以外の植物体では共生が確認されていませんが、なぜマメ科にだけ寄生するのかよくわかっていません。根粒菌は根にコブ*のような根粒をつくり、内部に生息します。植物の栄養素である窒素は、大気の78%を占めているにもかかわらず、そのままでは植物が吸収することができません。根粒菌は、植物が作った丸い根粒の中で空気中の窒素を植物体が利用できるようにアンモニア態窒素に変えて植物体へ供給します。空気中の窒素分子が植物体によって取りこまれ窒素化合物へ変化する窒素固定が起こります。植物体は窒素をもらう代わりに、根粒菌へ光合成産物を提供します。土着の根粒菌がいない場所では、新たに根粒菌を共生させると劇的に収量が増えますが、すでに根粒菌が生息しているような土壌では明確な効果は出にくいようです。

*コブの根粒組織は液体を運搬する維菅束が発達していて、植物からの栄養素を受け取ったり、固定化した窒素を植物体へ送ったりする作業を素早く行うことが可能です。

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土壌微生物的な働きをする?ナノバブル水「根活

根活は、肉眼では確認することができない直径0.1nm以下の気泡「ナノバブル」が含まれた植物活性水です。この気泡はマイナス電荷を帯びているため、プラス電荷を帯びている鉄(Fe)マグネシウム(Mg)ナトリウム(Na)カルシウム(Ca)カリウム(K)といった栄養素を引き寄せる能力があります。ナノバブルは植物体の細胞よりも小さな存在で高い浸透性を有しているため、根活を潅水で使用すると土壌中に存在している栄養素を引き寄せ、根っこが栄養素を吸収しやすくなるというわけです。根張りが良くなり、植物体が健全に育ち品質や収量が向上するだけでなく、病害虫などによる生物的ストレスや、日照不足・高温乾燥などから受ける非生物的ストレスなどにも影響を受けにくくなります。このような働きは菌根菌や根粒菌といった微生物の働きと似ていると考えることができるのではないでしょうか。原料は水と空気ですから安全性が高く、農薬散布や葉面散布でもお使いいただけます。根活は日本の最大級公的研究機関 「国立研究開発法人 産業技術総合研究所」と共同で開発された農業資材です。

根圏微生物の代表格!!アーバスキュラー菌根菌資材「キンコンバッキー

上記でも紹介したアーバスキュラー菌根菌は殆どの土壌で普通にみられる土壌微生物です。普通にみられると言っても肉眼で観察するには小さすぎるので顕微鏡で100倍位に拡大する必要があります。また観察する場合は植物の根を特殊な方法で染色して顕微鏡で観察しますが、草本などは適当に引っこ抜いた植物の根には高い確率で菌根菌が観察できます。
ところが、菌根菌が共生した植物の全てがリン酸吸収などの恩恵を受けるわけではありません。菌根菌にも働き者と怠け者が存在します(便宜上このように表現します)。農家からするとやはり働き者の菌根菌に共生してほしいのが本音で、キンコンバッキーは働き者の菌根菌を厳選して資材化し、共生さえすれば植物が恩恵を享受できるというものになります。
キンコンバッキーを水で2000倍に希釈して生育中の植物に施用します。このとき可能な限り若い植物(幼苗)に施用することが共生率を高めるコツです。菌根菌は硬くなった根よりも柔らかく若い根の方が共生しやすいことがわかっています。キンコンバッキーに含まれるアーバスキュラー菌根菌は施用2週間~1ヵ月ほどで植物に共生します。

土の中の根圏にも注目し栽培に取り組んでみてはいかがでしょうか

根圏と土壌微生物の働きを理解しこれを生かすことで、土壌の生態系バランスを整えることができます。根圏と微生物の働きをコントロールできる技術力を高め、土壌微生物の力を利用し減農薬の取り組みができれば、農作業従事者の負担を軽減するとともに、近年より高まっている作物に対しての安心感や安全性といった消費者ニーズに答えていくことができるかもしれません。根圏における根の作用と土壌微生物の働きについて、共生関係を持っていることは間違いないと思いますが、まだ解明されていない部分は多く残っていますので今後の研究結果にも注目をしていきたいですね。

根圏における根の活動とは?土壌微生物との共生関係について

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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