耕盤層とは?
圃場の土は、耕耘された部分である作土層と、耕耘されていない心土層という構成になっています。作土層とは、作物が養水分を吸収するために根を要因に伸長させることができる土壌の上層部のことで、一般に農具や農業機械によって耕されます。この作土層の直下に形成されるカチカチに硬くなった地層の部分を耕盤層といいます。隙間が少なく水分や空気が通りにくい状態で、硬盤層や不透水層と呼ばれることもあります。畑の作土層の深さは耕耘機の刃が届く15~25cm程度ですが、この下に発生することが多いようです。通気性や浸水性が著しく悪いという特徴があります。
耕盤層が発生する原因
過剰な薬剤の施用と有機物不足
化学肥料は直接的に植物の根から吸収されるため、即効性があるなどのメリットがある一方、施肥量が過剰になると、土壌微生物の餌となる有機物が不足し、微生物の密度が低くなり、団粒構造が形成されにくくなります。団粒構造が形成されるためには、微生物が有機物(動植物の遺体など)を分解することで発生する腐植物質が必要になります。一般的に化学肥料には腐植物質は含まれていません。また、クロルピクリンなど土壌燻蒸剤を使った土壌消毒は、土の中の有用な生物が死んでしまいます。
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大型農業機械の使用
一般的なトラクターやスピードスプレイヤーは600~800kgほどの重量があり、圃場を走行させると土に大きな荷重がかかる影響で踏み固められた状態となります。耕耘機は地表から10~20cmほど耕しますが、その下の土が加重で締まっていきます。土の表面から25~40cm程度の部分で影響をうけて土が凝集され孔隙率が下がります。大型農業機械を使えば使うほど、作土層の下に硬い耕盤層が形成されるリスクが高くなります。また、作業時間の短縮のためにロータリーの回転スピードを速くすると、土壌の団粒構造が破壊されたり、有機物の分解スピードが速くなりすぎたり、土壌に悪い影響が発生します。
土壌の性質
耕盤層の形成されやすさは土壌の性質によっても異なります。耕盤層は、赤色土のほうが黒ボク土より形成されやすく、乾燥した土のほうが湿った土より形成されやすいです。また、土に含まれる腐植物質も影響しているようで、腐植含有量が少ないほうが耕盤層は形成されやすいとされています。
耕盤層のデメリット
土づくりのために作土層を耕した際、耕盤層が形成されている影響で作物が思うように育たないことがあります。排水性能が低下し根腐れや病気を起こしやすくなったり、締まった耕盤層に植物の根が伸びていかず、生長が停滞したりするなどの悪影響があります。根が下まで伸ばせないため倒伏のリスクも高くなります。耕盤層は作土と心土との間で水の出入りを拒みます。浸透性が低下している影響で、大雨では水はけが悪くなり、干ばつの時には深い土層からの水の供給を受けにくいというダブルデメリットが発生します。根が浅い(植物の根が伸長できる有効土層が少ない)ということは、土壌の乾燥や過湿による生理障害や生育不良が発生しやすくなります。
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耕盤層の改善方法
トラクターで心土粉砕を行う
トラクターにサブソイラー・プラソイラー・プラウなどの心土破砕機を取り付けて使い深くまで耕します。大型トラクターが必要になります。ゆっくりと走行したほうが耕盤層を破壊しやすいとされています
緑肥を利用する
深根性を持った緑肥を施肥します。緑肥の根は80~100cmほど深くまで根を伸ばし、耕盤層まで侵入します。緑肥がすき込まれた後、根は枯れて耕盤層に隙間が残り耕盤層の改善につながります。春~夏蒔き用としてはソルガム(ソルゴー)やセスバニア、秋蒔き用としてはライ麦などがあります。エンバクは春・夏・秋のスリーシーズンで利用できる便利な緑肥です。土壌や日射などの環境により緑肥の生長が異なりますので、必ずしも効果が保証されるとは限らないという点がデメリットです。
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人力で深く掘り起こす
てこの原理で深くまで耕せる深耕鍬を使用する方法です。ビニールハウス内でも使用できるというメリットがありますが、広大な面積をお持ちの農家さんでは現実的ではありませんね。
縦穴暗渠工事を実施する
電動式オーガやスパイラルボーラーなどを利用して、耕盤層を破壊する手法です。耕盤層から水が抜け、土壌中に根の生長に必要な空気が取り込まれやすくなります。掘った穴には堆肥や籾殻燻炭などを入れておくと土壌微生物が活性化し、土壌の改善につながると考えられています。地下に土管などの水路を施設する暗渠工事に比べて手軽に取り入れやすい方法です。
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不耕起栽培(半不耕起栽培)を取り入れる
不耕起栽培(半不耕起栽培)とは通常、土づくりの際に行う耕耘を省略または削減し、作物を栽培する方法のことです。深く耕しすぎると有機物や土壌微生物の少ない土を作土層に上げてしまうこととなり、下層の土が不良の場合は土壌の生物性や化学性が悪くなるという指摘もあります。深く耕したことで病害が増えたという経験のある農家さんもいるようです。不耕起栽培はコストや時間を軽減する方法ですが、土壌の種類や状態、育てる作物によっては上手くいかない可能性があります。使い分けが必要な方法です。
基本の土づくりにおすすめの資材|地力の素
コストをあまりかけずに耕盤層と上手く付き合っていく方法としては、緑肥や腐植物質を生かした土づくりが有効ではないでしょうか。土壌の化学性や物理性を大きく変えない縦穴暗渠工事も良いかもしれません。土壌を良くするためのおすすめしたい資材が、腐植物質と呼ばれるフミン酸やフルボ酸を高濃度の凝縮した「地力の素」です。腐植物質は耕盤層の形成を予防するとされています。細粒と粗粒タイプは堆肥と同等の腐植を含有しているため、堆肥の投入量を半減させることができます。またペレットタイプは牛糞堆肥を含有しているため、堆肥を投入しなくても良質な土壌を作る効果が期待できます。
耕盤層が形成されない土づくりを実践しましょう
一般に締め固まった耕盤層は、作物の生長に悪い影響を与えます。ただし、やみくもに土を掘り返せば良いというわけではなく、圃場の作土層や心土層の状態によって取り組む対策が異なってきます。ご自身の農場の土の状態を把握することが、地域の土の特徴を生かした土づくりや耕作につながっていくのではないでしょうか。今回のコラムを皆様の土壌改善にお役立ていただければ幸いです。
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コラム著者
キンコンバッキーくん
菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。