コラム
ピーマンをタバコガから守れ!
公開日2023.09.01
更新日2023.09.01

ピーマンをタバコガから守れ!

気が付かないうちにピーマンの実が青虫に加害され、被害が広がっているご経験はないでしょうか。もしかするとタバコガやオオタバコガといったヤガ科の成虫が夜に圃場へ飛来し、ピーマンの株に卵を大量に産み付けていることが原因かもしれません。今回のコラムではタバコガやオオタバコガの特徴とピーマンへの被害、またその防除策などについてご紹介していきたいと思います。

タバコガとは?

タバコガとはチョウ目ヤガ科に属する虫です。タバコガの幼虫が作物の茎や果実内に入り込んで食害を引き起こします。ピーマンに被害を与えるのは、一般にタバコガとオオタバコガです。ともに幼虫の体長は35~45mm程度ですが、成虫はタバコガが15mm以内であるのに対し、オオタバコガは一回り大きい15~20mm程度です。タバコガは主にナス科の植物への加害が多く、オオタバコガはより広食性があり様々な植物を加害するとされています。メス一匹あたりの産卵数はタバコガ500~600個程度、オオタバコガ約1000~2000個とされ、オオタバコガのほうがより産卵数が多いようです。春から秋にかけて発生する可能性があり、高温・乾燥の条件で発生のリスクが高くなります。鳥類などの天敵から身を守るために日中はじっとしていて、夜になると活動を開始し交尾や産卵を繰り返します。ビニールハウスなどの施設内では蛹の状態で越冬することができるとされ、春になると成虫となります。

関連コラム:トマトをオオタバコガの被害から守るには?見分け方と駆除方法を解説

タバコガによるピーマンの被害

タバコガの成虫は直接加害することはありませんが、ピーマンの葉やがく片に産卵し、孵化した幼虫がピーマンの実を食害します。食害された実は落果しやすくなります。タバコガやオオタバコガの幼虫は、一カ所にとどまり同じ部分を食害するというよりは、どんどん移動して食い散らかすように加害します。そのため発生密度が低かったとしても被害がひろがりやすいという特徴があります。中齢幼虫以降は実の中に侵入しやすくなるため、薬剤散布による効果が期待できなくなります。また食害に気が付かないまま出荷されるケースもあり、市場やスーパーなどに出回ってから問題になることもあります。

タバコガからピーマンを守る方法

農薬(殺虫剤)散布

タバコガとオオタバコガは適用される農薬(殺虫剤)が異なる可能性があるので注意してください。齢をとると実に侵入しやすくなるため、若齢幼虫のうちに防除しないと、効果が期待できなくなります。地域によっては殺虫剤の有効性を鈍らせる薬剤抵抗性を持った種の発生も見られるため、同系統の農薬(殺虫剤)の連用を控えるようにしたほうが良いとされています。殺虫剤の系統はIRACコードで確認することができます。

フェロモントラップ

蛾のオスを誘引するためにメスが出すフェロモン剤を使用したトラップです。発生予察用のフェロモン剤は虫を誘引する効果が高いとされています。ただし、環境によっては対象外種が大量に誘引されて、粘着板の密度が高くなってしまいタバコガやオオタバコガの捕獲ができなくなるケースが発生しているようです。

関連コラム:フェロモントラップを利用したオオタバコガの防除法とは

防蛾灯(防虫灯)

タバコガやオオタバコガなどのヤガ科が昼間は活動を停滞させるという性質を利用した防除方法です。日が沈んだ後に、黄色や緑色の光を放射する照明を点灯して日中のような環境を作りヤガ科の成虫の飛来や生殖といった活動を抑えます。デメリットとしては、蛹や幼虫には効果がないことと、殺虫機能はないため既に大量に発生した圃場では効果が低いという点です。また、日長や短日といった光環境に生育が左右される作物を育てている場合には、生長を阻害するリスクがあるため注意が必要です。

関連コラム:防蛾灯を利用したヤガ(夜蛾)対策、効果のほどは?

テデトール

穴の開いている果実を手で取る(テデトル=テデトール)方法です。人力の方法なので労力がかかり、大量発生時には対応が難しくなります。

寒冷紗・防虫ネット

施設栽培での防除策となります。目合い4~5mm以下の寒冷紗や防虫ネットをビニールハウスの開口部に被覆してタバコガやオオタバコガの成虫の施設内への侵入を防ぐ方法です。より細かい目合いのものを設置すれば、ヤガ科以外の害虫の防除効果も期待できますが、通気性が悪くなり別の病害虫を発生させる可能性があります。

関連コラム:防虫ネットの正しい使い方|害虫のハウスへの侵入を阻止

タバコガの成虫の活動を抑制するおすすめの資材|虫ブロッカ―黄緑・緑

虫ブロッカ―黄緑・緑は、LEDの光を使った防蛾灯(防虫灯)です。日没から日の出にかけてLEDの光を照射させると、夜行性であるタバコガやオオタバコガの成虫の視覚を狂わせ、飛来や繁殖といった活動を停滞させます。オスとメスの繁殖機会が少なくなることで生息密度が低くなり、ピーマンの被害を減少させる効果が期待できます。密度の低下により、薬散の頻度を抑えることができるため、薬剤抵抗種の発生率を抑える効果が期待できます。1台で半径10mほどの範囲をカバーします。

適切な防除でタバコガからピーマンを守りましょう

タバコガやオオタバコガは、成虫のメス1匹あたりの産卵数が多いことや、幼虫は1か所にじっとせずに食い散らかして移動するなど、やっかいな性質を持っています。品質や収量を安定させてピーマン栽培を継続していくためには、複合的な対策を実施していくことが必要ですね。今回のコラムを皆様の圃場のタバコガ対策にお役立ていただければ幸いです。

オオタバコガの発生と見分け方
(農林水産省 植物防疫病害虫情報)

ピーマンをタバコガから守れ!

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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