コラム
ナスを高温障害から守ろう
公開日2024.01.10
更新日2024.01.10

ナスを高温障害から守ろう

ナスの原産地はインド東部の東ガーツ山脈付近で、高温を好み夏の暑さにも耐えやすい作物ですが、それでも猛暑が長く続いたり急激な温度上昇にさらされたりすると、生長が鈍くなり収穫量や品質の低下につながります。特にビニール被覆を用いた施設栽培やトンネル栽培では、良く晴れた日に温度が急激に上昇することから、高温障害が発生するリスクが高くなります。今回のコラムではナスの高温障害が発生する原因と対策についてお伝えしていきたいと思います。

ナスの特徴と適当な栽培環境

ナスは高温を好む作物で生育適温は22~30℃(17℃以下では生長が滞る)で、日射量が多いほど良く育ちます。露地栽培では夏から秋にかけて栽培されますが、促成栽培や半促成栽培により周年収穫が可能な作物です。ナスの果実の約90%は水分で出来ており、健全な生長には多くの水分を必要とするため、乾燥に弱いです。株の根は土の深くまで入り込むため作土の深さは20~25cm程度必要だとされています。根は乾燥や過湿に弱いため、土壌の水分が急速に変化すると根が傷み病原菌に感染しやすくなります。土壌病原菌に起因する連作障害が起こりやすい作物です。

関連コラム:連作障害の基礎知識と対策に関して|最適な肥料と土壌改良材をご紹介

ナス栽培で高温障害が発生する原因

高温障害は高温環境下で起こる生理障害の一つです。35℃以上の環境にさらされると発生しやすくなります。高温の環境では蒸散活動が盛んになり根からの吸水が蒸散に追いつかなくなります。根から栄養も吸い上げられなくなります。高い気温や湿度の影響で土の高温乾燥や過湿が起こると、根は養水分を吸収できなくなったり、根腐れを起こしたりします。夜間に高温環境にさらされると、昼間に生成した糖分を呼吸のために浪費してしまい生育を阻害します。また、強い光が当たりすぎると蒸散を防ぐために葉の気孔が閉じて光合成が阻害されます。その結果、二酸化炭素が取り込めなくなり糖分の生成を妨げることとなります。

関連コラム:夏場のビニールハウスの高温対策│作物を暑さから守るには?

高温障害が発生したナスの症状

高温が影響して生理活動がスムーズに行われなくなり様々な障害が発生します。葉が褐色や白色に変色したり、花が咲かなくなったりして、症状が進むと株自体が枯死することがあります。ナスが鮮やかな紫色をしているのはアントシアニン色素によるものですが、高温環境ではアントシアニンの合成が阻害され発現しにくくなり、淡色で色づきが悪いナスになることがわかっています。株が弱った結果、さまざまな病気にかかったり、害虫に食害されたりします。特に青枯病菌や半身萎凋病などは高温多湿環境で活発になるため、植物病害菌の発症を助長すると考えられています。

部位 症状
白化、褐変、枯死
褐変、花粉の発芽力低下、咲かない、着果不良
果実 褐変、落果、着色不良、奇形果、小球化
枯死

関連コラム:ビニールハウスで夏野菜を栽培しよう|高温対策をご紹介

ナスの高温障害を予防する対策

光の量を調整する

遮光ネットや寒冷紗などの遮光資材により、太陽からの光の量を調整して温度上昇を防止する方法です。光の量を減らすと光合成が促進されにくくなりますが、赤外線だけを反射して、株や土壌の温度上昇を防ぎつつ、光合成は阻害しないという製品もあるようです。ビニールハウスでは遮光塗料を塗布するなどの方法もあります。

関連コラム:ビニールハウスの遮光効果とおすすめの遮光・遮熱商品

土壌の乾燥を防止する

高温期の地温上昇や水分蒸発から株を守るために、バーグチップ・敷き藁・マルチなどで被覆する方法です。ナスの果実には水分がたっぷり含まれていることからわかるように、ナスの健全な生長には水分を必要としていますので、土が乾燥しないようにするための対策になります。バーグチップや敷き藁は上から灌水しても土壌に水が浸透していきやすいというメリットがあります。

換気設備を整える

施設栽培においては、妻面換気・サイド巻上換気・天井換気・循環扇などの換気設備を用意してビニールハウス内の熱だまりを外に逃がす方法があります。

関連コラム:ビニールハウスの換気方法|作物に最適な環境を目指して

葉面散布で栄養を補給する

根からの追肥が足りない(または間に合わない)場合には、液肥(液体肥料)を動噴などで噴霧して葉から吸収させる方法です。濃度が濃すぎたり、強い日差しの日に実施したりすると葉焼けを起こす可能性があるので注意しましょう。

関連コラム:作物の生育を助ける葉面散布|メリットを徹底解説

冷房システムを導入する

細かい霧を施設内に噴霧して温度を下げる細霧冷房システムという設備もありますが、導入コストは高額です。適切に使用しないと冷房効果が得られなかったり、湿度が高くなりすぎて病害虫の発生リスクが高くなったりするなどのデメリットもあります。ハウス栽培専用のヒートポンプエアコンも登場していますが、イニシャルコストやランニングコストを考えると、導入できる場所は限られてきます。

耐暑性のある品種を栽培する

これは「対策」とはいえないかもしれませんが、品種により耐暑性が異なりますので暑さに強いナスを栽培するというのも一つの方法かもしれません。長ナスは暑さや気温の変化に強い品種が多いようです。

ナスの高温障害対策におすすめの資材|空動扇/空動扇SOLAR

ナスの施設栽培における高温障害対策におすすめしたい製品が、電源を使わずに風や太陽光の力でビニールハウスの熱だまりを排出する空動扇/空動扇SOLARです。電源不要のため大がかりな工事が不要です。設置は既存のビニールハウスに穴を空けてクロス金具と補助パイプで固定するだけですから、比較的簡単に導入することができます。温度変化により形状記憶スプリングが伸縮することで換気弁が開閉するため、一度温度を設定してしまえばあとは自動的に換気をしてくれます。定期的な換気窓の開閉が不要となり作業負担を軽減させることができます。

▶空動扇の説明動画はこちら

高温障害を防いでナスの収量をアップさせましょう

高温環境は葉や実などにダメージを与えるだけでなく、土の中の根に対しても健全な生育を阻害する要因となりますので適切な温度を維持する栽培管理が重要になってきます。ナス栽培における高温障害対策を実施して品質の良いナスをたくさん栽培できるようにしたいですね。今回のコラムをナスの高温障害対策にお役立ていただければ幸いです。

関連コラム:ナスの育苗ポイント|失敗しない苗作りのコツ

参考資料:
ナスにおける環境制御ガイドライン
(愛知県農業総合試験場)

ナスを高温障害から守ろう

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

おすすめ記事
Tweets by SEIKO_ECOLOGIA
youtube
ご注文
見積依頼
お問合せ