コラム
ビニールハウスの遮光効果とおすすめの遮光・遮熱商品
公開日2021.08.23
更新日2021.08.24

ビニールハウスの遮光効果とおすすめの遮光・遮熱商品

ビニールハウスは「悪天候の影響を受けにくい」「病害虫のリスクを減らす」などメリットのある便利な施設です。とはいえ外部環境の影響を全く受けないというわけではありません。「日射が強すぎて作物が傷む」「ビニールハウス内の温度が高くなりすぎて高温障害が発生する」「暑すぎて農作業に労力がかかる」などの環境を整えるための問題で頭を悩ませている農家さんも多いのではないでしょうか。今回のコラムでは、そのようなお悩みを解決する遮光・遮熱資材についてお伝えしていきたいと思います。

遮光資材とは

光に対する抵抗力が弱い育苗期などの作物を育てる日除けとして利用し環境を整えます。ネット・カーテンなどのタイプがあり、後付けで施工できるものが多く、特に施設園芸の農家さんで活用されています。

遮熱資材とは

太陽による日差しが差し込んだ際の熱によってビニールハウス内の温度が上がりすぎないような役割をする資材です。特に強い夏場の日差しに対して効果を発揮します。特殊な素材や構造を利用して熱を反射するネットや、液剤を希釈しビニールハウスのビニールに吹き付けることで遮熱できる特殊な塗布剤のようなタイプがあります。

遮光資材の種類と選び方

遮光ネット

温度上昇を抑制するための遮光ネットは、ビニールハウスの被覆材の外側からハトメ等を使用して装着する外張りタイプと、ビニールハウスの内部に設置する内張りタイプがあります。外張りタイプは固定式のものがほとんどで、内張りタイプは固定式と可動式が存在します。ネットは網目になっていますので、通気性が保たれかつ日射量を調節することができます。網目の細かさ(目合い)によって、ビニールハウス内に入ってくる日差しの強さが変わります。目合いの細かいものほど遮光率は高くなり、目合いが荒いほど遮光率が低くなります。通気性はその反対です。作物の種類や栽培ステージによって遮光率を選ぶようにしましょう。一般的にはトマトは遮光率40~50%・イチゴは遮光率40~60%・アスパラガスは遮光率50%・ビーマンは遮光率30~50%・マンゴーは遮光率30~40%が適しているといわれています。

目合い 遮光率 通気性
細かい 高い 低い
粗い 低い 高い

カーテンタイプの遮光資材

内張り被覆資材で可動式です。環境制御装置という位置づけにもなります。季節や時間によって開閉作業を行い(センサーを使った自動開閉タイプもあります)ビニールハウスに入ってくる日射量をコントロールします。

塗布剤

ビニールハウスの被膜(フィルム)に液体の塗料を塗布し遮光や遮熱の効果を狙う製品です。光を単純に遮光してビニールハウス内の温度を下げる遮光タイプと、熱線だけを防ぐ熱線反射タイプがあります。

遮光タイプ

遮光タイプは、塗布することで日射の強さを調節します。希釈率により遮光率をコントロールします。製品にもよりますが有効期間は約1~3カ月程度です。定植時期だけなど短期間で遮光したいときに使用します。

熱線反射タイプ

太陽光には、紫外線・可視光線・近赤外線などが含まれていますが、このうちの近赤外線を反射することで遮熱効果が得られます。光合成に必要な光は通して、熱だけ遮熱することから、温度を抑えながら光量を保つことができるというメリットがあります。約3~5か月程度効果が維持されるものが多いようです。春先から長期間にわたり効果を得たい場合に使用します。

遮熱フィルム(熱線遮断フィルム)

被膜フィルム自体が熱線の透過を抑制するものです。吸収タイプと反射タイプがあります。フィルムに材料が事前に塗布されているもの、またはすでに材料に練りこまれているものがあります。熱線だけでなく紫外線を抑える製品もあります。

遮光・遮熱資材のメリット

作物の日焼けや高温障害を防ぐ

光の強さに比例して光合成のスピードが速くなりますが、ある点(飽和点)を超えると光が強くなってもスピードが速くならず、作物にとってストレスになります。ビニールハウス内に強い光が入りすぎたり、熱がこもりすぎたりすると作物が高温障害を引き起こすリスクが高くなります。遮光や遮熱効果のある農業用資材を活用することで、このようなリスクを抑えることができます。また強い日光が苦手な育苗期の苗へのダメージを軽減し、育苗ステージに適した環境を整えることが可能です。

農作物の品質の向上

高温障害のリスク低減に加えて、遮光カーテンに光を拡散させる機能が備わっていると、光がほどよく分散することにより、総合的には光合成量が増加し圃場全体としての農作物の品質が向上すると考えられています。

農作業の負担を軽減する

土壌の水分量が低下すると蒸散を維持できなくなり、障害を起こしやすくなりますので潅水作業は大切です。遮光・遮熱資材を導入すると、地温が下がり作物や土の温度や湿度の上昇を抑えることから、潅水の回数を減らすことができ潅水作業の省力化につながります。遮光・遮熱資材の活用により潅水作業を30~40%ほど低減できたと実感している農家さんもいるようです。暑い時期のビニールハウスの労働には大変な労力がかかります。安心安全で生産的な労働環境を整えることができます。

ビニールハウス更新時のリスクを低減

ビニールハウスは太陽光による紫外線の影響を受けて、最初は透明度が高かったものが年々乳白化して、気が付かないうちに太陽の光を遮っています。ビニールハウスを新調すると光の入り方が変わり、更新直前と同じ方法で作業を進めると葉焼けや高温障害を起こすリスクがあります。特に育苗期の苗は日射の影響を受けやすいですから、遮光資材を使用することでリスクを抑えることができます。

遮光・遮熱資材のデメリット

設置や施工に時間と手間がかかる

ネットやカーテン、そして塗布剤は設置や施工に手間と時間がかかります。ネットであれば季節によって脱着作業が必要になりますし、塗布剤は高所作業のため危険もあり、雨が続くと塗料が落ちて効果が薄れる為、場合によっては塗りなおしが必要になります。塗布作業は人手を必要とし高所作業の危険性もあることから、ドローンによる塗布を実験的に行っているという報告もあります。

植物の成長に弊害となる場合がある

光合成の量を減少させてしまう、花芽分化を抑制させてしまう、などの可能性があります。紫外線の量が低下すると、益虫が暗闇として認識、方向感覚の喪失や花弁が見えなくなることがあります。ハチを使った受粉活動が低下したり、巣箱に戻れなくなったりすることが知られています。益虫の活動を妨げたり、植物の発色不良を招く可能性もあると考えられています。

ビニールハウスの遮光や遮熱を上手にコントロールして収量をアップ

太陽光の強い春から夏にかけては日射量や温度環境を整えることがポイントです。栽培する作物に適した遮光・遮熱資材を選び、作物のストレスを軽減して葉焼けなどの障害から守りましょう。今回のコラムをお役立ていただき、遮光・遮熱資材を有効活用することで収量アップにつながれば幸いです。

ビニールハウスの遮光効果とおすすめの遮光・遮熱商品

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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