コラム
ナスの育苗ポイント|失敗しない苗作りのコツ
公開日2022.01.27
更新日2022.01.28

ナスの育苗ポイント|失敗しない苗作りのコツ

夏野菜の代表格であるナスの播種は1月下旬頃に始まります。播種から約120日の生育期間を経て収穫できるようになり、気温が高くなる夏にかけて収穫量も増えていき、上手く管理すれば秋口まで収穫を続けられます。このような長期間収穫できる体力を株につけさせるには、育苗期に充実した苗を作ることが不可欠です。充実した苗の基本は『根張り』です。今回のコラムでは、根量の多い充実したナスの苗を作るポイントとコツを紹介したいと思います。

ナスとは

ナス(茄子)はナス科の植物でピーマンやトマトと同じです。原産国はインドといわれています。日本へは中国(当時の唐朝)を経由して7世紀ごろに伝わったとされています。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の第3話にもナスが登場しており、平安時代末期には現代の伊豆半島周辺でも栽培されていたのかと思います。

ナスは強い日射と高温を好んで旺盛に成長します。水分要求量と栄養も多く必要です。原産国のインドも高温多湿なので(地域によりますが)、ナスは日本の夏野菜であるという結びつきが容易に想像できるのではないでしょうか。

ナスの病気

ナスは水分要求量が多い果菜類ですが、排水不良地には弱いとされています。実際にナスで発生する代表的な病害に“ナス青枯病”があります。ナス青枯病の原因は土壌伝染性の細菌(バクテリア)です。高温期に地温が高くなると発生が顕著で、発生初期は一部の枝葉が萎れているだけですが日に日に萎れる範囲が広がり、数日後には株全体が萎れてしまいます。農薬による回復は見込めません。元々土壌に潜伏していた細菌が、高温になると水を伝って根から侵入して罹患させます。罹病株の果実を収穫をしたハサミを使って健全株の収穫を行うと、切り口に菌が侵入し感染する原因となります。対策は、「高温を避ける温度管理をすること」「土壌の排水性を良好にして多湿にしないこと」「土壌消毒を行うこと」などが挙げられます。それでも発生してしまった場合は、罹病株を放置せず、発見次第株ごと抜き取り栽培に影響のない場所で処分します。

ナスの害虫

ハダニ、アブラムシ、コナジラミなど多くの農業害虫に侵されますが、最も厄介な害虫はアザミウマです。果皮を吸汁し、かさぶた状の被害痕を残します。アザミウマは露地栽培でもハウス栽培でも発生し、気温やハウス温度が高くなってくると発生は顕著になります。アザミウマは、いわゆる難防除害虫であり近年は農薬に対する抵抗性を高めています。そのため、露地栽培ではバンカー植物であるソルゴーを植えて天敵生物であるタバコカスミカメを利用すると生物的防除が可能になります(ハウス栽培でのタバコカスミカメのバンカー植物にはスカエボラとバーベナが利用できるようです)。ハウス栽培では目合いが0.4mm程度の防虫ネットを設置してハウス外からアザミウマの侵入を防ぎ物理的防除を行うことができます。その際、アザミウマの目には見えない赤色の防虫ネットを使用すると効果が高まるといわれています。

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ナスのタネまきの時期|発芽率を上げるコツ

ナスの種まきの時期は1月下旬から2月上中旬にかけてです(作型や栽培地によります)。発芽適温は25~30℃ほどで、播種後3~5日ほどで発芽します。播種は育苗箱やセルトレイを利用します。いきなりポットに播種してしまうと発芽しない種子もあるので育苗管理の効率が悪くなってしまいます。

発芽率を上げるコツ

① 培土の選定

培土は保水性、排水性、通気性に優れたものを使用します。石の多い培土は発芽後の定着と苗の自立性に悪影響を及ぼすので避けるようにします。少々値段が高くなっても、播種用の培土は良いものを購入することをオススメします。

② 鎮圧を行う

鎮圧とは、播種して覆土を行った後に少し上から土を抑え固めることです。鎮圧することによって「灌水時の種子の流亡を防ぐ」あるいは「気相と液相(=孔隙率)のバランスを良くして種子の乾燥を防ぐ」ことで発芽率が向上します。あまり強く土を固めすぎると発芽しても地上に芽が出なくなるので注意します。

ナスの育苗管理のポイント|健苗に仕上げるコツ

発芽後本葉が2~3枚ほどになったらポットに鉢上げ(移植)をします。これ以上本葉が出すぎると生長に伴って伸びてくる根が絡み合ってしまい鉢上げ時に根を傷つける原因となります(育苗箱の場合)。あるいは、葉と葉が重なり合ってしまい受光態勢が悪くなって光合成を妨げます。

健苗に仕上げるコツ

① 徐々に大きなポットへ移植する

最初の鉢上げでいきなり大きなポットに移植することは避けましょう。場所を取ってしまうだけではなく灌水の手間も大きくなってしまいます。また、幼苗の根がまだ十分に張っていないので培土中の肥料が灌水によって溶脱してしまい無駄が発生します。

2回に分けて徐々に大きなポットに移植することをオススメします。

② 苗の成長にあわせてポットの間隔を広げる

苗の成長に従ってナスの葉が大きくなっていきます。葉は大きくなると葉と葉が重なり合ってしまい受光態勢が悪くなって光合成効率が悪くなります。当然生長も悪くなるので苗の大きさや草勢にバラツキもでてしまいます。ナス苗が大きくなることにあわせて葉が重ならないようポットとポットの間隔を十分に確保しましょう。

③ 接ぎ木をする

接ぎ木をすることでナス青枯病や半身萎凋病などの土壌伝染性の病害を予防することができます。台木は、品種改良によって作られた土壌病害に強いナスを使用します。接ぎ木方法は、割り接ぎ、挿し接ぎ、斜め接ぎなどがあります。接ぎ木は土壌病害にとても有効的ですが、失敗すると穂木も台木も台無しになってしまい、接ぎ木苗を準備するメリットがなくなってしまいます。自身の成功率の高い方法を選ぶのが良いでしょう。

④ アーバスキュラー菌根菌を利用する

アーバスキュラー菌根菌は、いわゆる有用性土壌微生物です。ナスの根に共生して水分と養分の吸収を手助けします。また、アーバスキュラー菌根菌はナス苗の根量を増やし耐病性を上げる役割も担ってくれます。一般的には定植時にアーバスキュラー菌根菌を施用することが多いですが、幼苗の段階で施用したほうが収穫期間の長いナスでは有効効果の恩恵を長く享受することができます。

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丈夫で健康な苗に!!アーバスキュラー菌根菌資材「キンコンバッキー」!!!

ナスの育苗にキンコンバッキーを使用してみませんか。
キンコンバッキーに含まれるアーバスキュラー菌根菌をナス幼苗の根に共生させると定植後の発根や、果重増による収量アップが期待できます。キンコンバッキーを2000倍に水で希釈して鉢上げ時や移植時に株元に50-100mlを施用します。育苗期の温度にも依りますが、1ヵ月程でナス苗に共生します。共生後はナスのリン酸吸収や水分吸収を助けるので、リン酸栄養に関わる生長促進と耐乾燥性による環境ストレスの緩和を期待できます。アーバスキュラー菌根菌は過度な土壌栄養状態に弱く、とりわけナスは多肥栽培される野菜であるためアーバスキュラー菌根菌を共生させるタイミングは育苗期が最も適しています。

健全苗を作ってスタートダッシュを成功させよう

見た目にも悪い苗を定植して、収穫に大きな期待をよせても思い描いた収穫はできないでしょう。だからといってたくさん肥料を与えては肥料焼けや発根量に影響を及ぼします。

そこに苗作りの重要性と難しさがあります。ナスは家庭菜園でも比較的栽培しやすい農作物ですが、その場合は園芸店での購入苗が殆どです。育苗だけにスポットを当てると、そうそう上手くいかないのがナスの難しいところです。

今回のコラムが皆様の参考になれば幸いです。

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ナスの育苗ポイント|失敗しない苗作りのコツ

コラム著者

小島 英幹

2012年に日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程を修了後、2年間農家でイチゴ栽培を経験。
2021年に民間企業数社を経てセイコーステラに入社。コラム執筆、HP作成、農家往訪など多岐に従事。
2016年から現在まで日本大学生物資源科学部の社会人研究員としても活動し、自然環境に配慮した農業の研究に取り組む。研究分野は電解機能水農法。近年はアーバスキュラー菌根菌を利用した野菜栽培の実践を始める。
検定、資格は土壌医検定2級、書道師範など。

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