コラム
夏いちごとは?基礎知識と栽培のポイントを解説
公開日2023.07.05
更新日2023.07.05

夏いちごとは?基礎知識と栽培のポイントを解説

いちご(イチゴ)は冬の農作物だと思っていませんか?確かにいちご栽培の作型は冬場の促成栽培が主流となっており、12月のクリスマスシーズンのピーク需要に向けて最大生産量の照準を合わせることが一般的です。一方で近年では「夏いちご」と呼ばれる夏の時期にいちご栽培を行う生産者さんが増えてきています。夏いちごの価格は冬春いちごと比較して1.5倍程度高いことが魅力で、しっかりと経営することで高い収益性が期待できます。今回のコラムでは夏いちごの基礎知識と栽培のポイントについて記載したいと思います。

いちご栽培の種類|冬春いちごと夏いちご

そもそも日本のいちご栽培は大きく「冬春いちご」と「夏いちご(夏秋いちご)」の2つに分けられます。冬春いちごの作型は促成栽培などがあり、11月頃~翌年5月頃まで出荷されるいちごのことで、栃木県、福岡県、熊本県などを中心に全国各地で生産されています。これに対して夏いちごとは「夏秋どりいちご」や「四季成り性品種」とも呼ばれ、6月頃~11月頃まで出荷されるいちごのことで、北海道、長野県、青森県、宮城県といった気候が涼しい生育環境に生産が集中しています。

関連コラム:いちごの促成栽培とは?おすすめの作型をご紹介

夏いちごとは?

いちごは夏秋期でも業務用(ショートケーキ用のいちごなど)として一定の需要があります。そのためその時期は栽培に適した気候であるアメリカのカリフォルニアといった外国からの輸入で賄われてきました。なぜわざわざ高額な輸送費や長距離輸送のリスクをかけてでも輸入に頼るのでしょうか。その理由は夏場の平均気温の高い日本では夏いちごの栽培が適していないためです。いちごは基本的に暑さに強くない植物ですので高温多湿の日本は過酷な環境と言えます。そのため病害虫の発生リスクが高く、収穫量が不安定になることが大きな課題です。その課題に対応するために1900年代後半から公的機関と民間企業が中心となって夏いちごの品種改良が進められています。夏いちごの栽培面積は約80~100haとされており、いちご全体の栽培面積の約6,600haと比較するととても小さいです。今後、栽培技術の進歩により栽培者が増えることが期待されます。

夏いちごの品種

夏いちごの品種には一季成り性品種と四季成り性品種があり、このうち一季成り性品種の栽培面積は20%~30%程度、四季成り性品種の栽培面積が70%程度と推計されています。本章では四季成り性品種の一部をご紹介します。

ペチカほのか(商品名:夏瑞)

2017年に品種登録されました。一般消費者向けにも販売されています。甘みがあり香りが良く、みずみずしいのが特徴です。収量性と秀品率が高いです。

なつあかり

「サマーベリー」に「北の輝」を交配し、2007年に品種登録されました。食味が優れ、生食用としても活用できます。

サマーキャンディ

宮城県農業・園芸総合研究所が「とちおとめ」に「盛岡26号×サマーベリー」を交配し、2008年に品種登録されました。多収であり、食味は良好です。

すずあかね

2010年に品種登録されました。栽培しやすく輸送性に優れることが特徴です。酸味がはっきりしているため、お菓子の材料として適しています。

サマープリンセス

2003年に品種登録されました。果実はやや柔らかい。糖度は10%を上回り、食味が良いです。

夏いちごの栽培のポイント|四季成り性品種

四季成り性品種の作型は春定植、夏定植、秋定植の3種類があります。このうち主流の作型は春定植です。春定植は11月~3月まで低温貯蔵した苗を3月末に定植し、6月~11月にかけて収穫する作型になります。本章では夏いちごの栽培のポイントをいくつか記載します。

育苗の際は親株数を多めにする

四季成り性品種は一季成り性品種と比較するとランナーの発生数が少ないため、親株を多めに育成しましょう。もしくは太郎苗を植え付けるとそこから子株を採苗することもできます。

ランナー子苗を殖やすには寒さが深まる前の9月下旬~10月上旬までに定植して丈夫な苗へ育てることが大切です。防寒用の資材をうまく使用しながら親株を寒害から守りましょう。ランナーは5月頃から発生が開始し、10月頃まで続きます。なおハウス内で採苗した方が露地よりも2カ月ほど早くランナーの発生が始まり多くの子苗が採れるため、ハウスでの採苗がおすすめです。

関連コラム:イチゴの育苗方法について-育苗の手順、育苗の種類や苗の増やし方を解説

暑さ対策をしっかりと行う

夏いちごにとって暑さ対策(高温対策)は収量の確保や果実品質の維持のために非常に大切です。ビニールハウスの裾や肩を換気したり、二重カーテンや遮光ネットを設置して対策を行いましょう。また、コストはかかりますが細霧冷房、クラウン温度制御、環境制御といった方法の導入も効果的です。

関連コラム:ビニールハウスの暑さ対策|ハウス内の温度を下げる方法と熱中症対策を解説

病害虫対策を行う

夏いちごは防除期間が9カ月程度と長く、かつ気温が高いため、病害虫が発生しやすいです。赤色防虫ネットや天敵昆虫等を導入し害虫の侵入や生息密度を低く抑えることで農薬散布の回数を抑えましょう。また培土は毎年交換することで土壌病害を防ぐことができます。

関連コラム:イチゴの育て方~たくさん収穫する栽培のコツと病害虫対策~

高設栽培がおすすめ

夏いちごの栽培には高設栽培が普及しています。土耕栽培と比較し、作業(特に収穫作業で腰を痛めない・・・)がラクであることがメリットです。最近では送風やクラウン冷却といった、冷却に重点を置いた夏いちご専用の高設設備も開発されています。一方でこれらの設備は導入コストが高額であることから導入に慎重な生産者も多いです。

産地で栽培する

夏いちごは販路の確保が課題となる場合が多いです。長野県のJAあずみを例にとると、製菓企業と契約生産することで安定した出荷先の確保に成功しています。産地であれば栽培の経験値等の必要な情報が手に入りやすいのでおすすめです。

夏いちごの栽培に最適な資材

アグリランプ(イチゴ向け)

近日発売予定のアグリランプ(イチゴ向け)。価格は1球あたり3,080円(税込・送料込)です。お問い合わせをお待ちしております。

スマートキャッチャーⅡ

吸引式LED捕虫器スマートキャッチャーⅡは施設園芸向けのLED捕虫器です。400~500㎡に1台を設置すると、緑色LED光と紫外LED光でコナジラミ類アザミウマ類・キノコバエ類・ハモグリバエ類・ヤガ類などの飛翔害虫を誘引し、強力吸引ファンで専用捕虫袋に捕獲します。

栃木県小山市のイチゴ生産者いちごブラザーズなかじま農園さんでは、害虫対策にスマートキャッチャーⅡ(CLF-700)を使用し効果を実感しています。以下のような嬉しい声を聴かせていただきました。

・手頃な価格だったので気軽に導入できました
・ヨトウガがたくさん捕れて助かっています
・設置が簡単でメンテナンスも楽です

>>いちごブラザーズなかじま農園さんのインタビュー記事はこちらからご覧いただけます

空動扇/空動扇SOLAR

ビニールハウス専用の換気扇です。栃木県のいちご育苗ハウスに導入実績があります。空動扇の最大の特徴は電気を使わない換気扇であることです。仕組みは形状記憶合金のバネが伸び縮みすることで連動した換気弁が開閉。換気弁が開いている時にハウスの外のベンチレーターが回転による排気効果により、ハウス上部の熱だまりを排出します。換気弁の開閉温度は温度調節ネジを調整することで約0℃~40℃の範囲で設定できます。面倒な電気配線工事が不要でランニングコストがかかりません。

実際に導入されたお客様の声はこちら:
ハウス内上部の熱気が全くないことがすごい!空動扇の効果を実感|畑尾浩暢さん
8℃下がった!?空動扇はハウス強度を落としません!|磯川さんのコーヒー農園
ハウス内が涼しくなった!空動扇SOLARの効果を実感|苺絵
夏場のハウス内温度が低下!湿度対策や耐久性向上にも効果を実感

▶空動扇の説明動画はこちら

夏でも美味しいいちごを食べるために

今回は夏いちごの基礎知識と栽培のポイントをご紹介しました。SDGsや食の安全性への関心は高まってきており、今後は国産夏いちごのニーズが増えるかもしれません。更なる品種改良や技術革新によって、先の遠くない未来に美味しい夏いちごをいつでもスーパー等で購入できる日が来るかもしれません。本コラムが少しでもお役に立てますと幸いです。

関連コラム:
いちごの花芽分化とは?基礎知識と処理方法について解説
イチゴの増やし方と苗作り|イチゴ農家が夏にやることとは!?

夏いちごとは?基礎知識と栽培のポイントを解説

コラム著者

満岡 雄

2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Twitterを更新していますのでぜひご覧ください。

 

◆Twitter
https://twitter.com/SEIKO_ECOLOGIA

おすすめ記事
Tweets by SEIKO_ECOLOGIA
youtube
ご注文
見積依頼
お問合せ