コラム
いちごの花芽分化とは?基礎知識と処理方法について解説
公開日2023.01.23
更新日2023.01.23

いちごの花芽分化とは?基礎知識と処理方法について解説

一季成り性品種いちご栽培において、苗を本圃へ定植する前に花芽が形成されているかどうかは、収穫量や収穫時期を決定する重要な要因の一つです。花芽がないまま定植すると、温度や日射の影響で栄養成長が促進され花芽分化が停滞し、果実の収量が低下したり収穫期間が遅れてしまったりするというリスクが高くなります。そのため定植前に花芽検鏡を行い、花芽分化を確認した後に定植を実施するという手法が取られています。

いちごの花芽分化とは?

花芽分化とは、生殖のために必要な花になるための芽を作ることです。土壌や植物の栄養状態、気温、日照時間などが影響します。いちごを含めて植物は、自然環境下での花芽分化の時期が決まっています。本来、いちごが収穫できる時期は3月~5月頃ですが、促成栽培においては花芽分化のタイミングを人為的に操作し、5月~11月まで連続していちごを収穫できるようにしています。現在、主流となっている一季成り性品種のいちご栽培ではビニールハウスなどを使用した促成栽培が活用されています。

一季成り性品種のいちご

最近の人気品種では恋みのり・とちあいか・いちごさん・古都華(ことか)、少し古い品種だと章姫(あきひめ)・とちおとめ・女峰(にょほう)・とよのか・宝交早生(ほうこうわせ)などです。段々と日が短くなり気温も下がっていく秋頃に花芽分化し、花芽形成後に休眠して、日が長くなり温度が上がっていく翌春に開花・結実するという性質を持っています。

四季成り性品種のいちご

夏んこ・夏瑞(なつみづき)・ペチカ・雷峰(らいほう)・サマールビーなどです。日長とは関係なく花芽を形成し、長日環境において花房数が増加する傾向があります。現在のところ、一季成り性品種と比較すると品質や収量が低く、高温期に成り疲れが発生しやすいなどの指摘があり、栽培している農家は限られています。

いちごが花芽分化するための色々な条件

本章では、いちごが花芽分化するための3つの条件についてお伝えしたいと思います。品種により条件が異なることがありますのでご留意ください。

日長

日長はいちごに限らず植物の花芽分化に関わる重要な要素です。一季成り性品種のいちごは短日植物のため、日が短くなる(明暗交代サイクルにおいて明るい時間が短くなる)と花芽分化しやすくなります。日本の自然環境において日が長くなる春から秋でも、被覆資材などを使い日長を6~13時間程度(短日)にコントロールすると花芽分化しやすくなります。

温度

いちごは高温(約25℃以上)で長日の環境下では、栄養成長を行います。一方、低温(約15~25℃)で日が短くなると花芽分化を促進するようになります。12~15℃以下になると日長に関係なく花芽分化します。反対に25℃以上では日長に関わらず花芽分化は起こりません。

温度環境 花芽形成
~5℃ 花芽分化しない
5~15℃ 日長に関わらず花芽分化する
15~25℃ 短日環境において花芽分化する
25℃~ 花芽分化しない

窒素

いちごは、窒素の吸収が少なくなり体内窒素濃度が低くなると、栄養成長から生殖成長に傾くという性質があります。窒素濃度が高いままだと花芽分化が起こりにくくなります。

窒素量 成長 成長する部分
多い 栄養成長 株が大きくなる
少ない 生殖成長 花芽分化が促進される

花芽分化していない苗を圃場へ定植した際に発生するデメリット

本圃へ花芽分化していない苗を定植すると、長日や高温の影響で生殖成長へ傾きにくくなり開花時期が遅くなったり開花率が低下したりします。これにより収穫開始時期の遅れや収量の低下を招き、売上が停滞する原因となります。出荷するタイミングがずれてしまうと単価の安い時期に販売しなければならなくなります。

特定の品種「きらぴ香」などでは、ランナーから発生した花芽分化していない小苗を高設栽培ベンチに定植し、本圃で花芽分化させる方法もとられています。「きらぴ香」は花芽がつきやすい品種のため未分化の苗を植えても収量に影響がないようです。

いちごの花芽分化を促進する方法

本章では花芽分化を促進させるための方法についてご紹介します。品種や環境によって処理の適期や条件が異なりますのでご留意ください。

短日夜冷処理

ポット苗やセル成型苗を、8時間前後の短日処理に加えて夜間は約12~15℃の低温処理を行い、花芽分化を促進する方法です。花芽分化の条件である短日と低温の二つを組み合わせて安定した効果が期待できます。

遮光率100%の遮光資材を開閉ができるように被覆し、朝9時~夕方17時は被覆資材を開放して8時間前後の短日処理を行います。夕方17時~翌朝9時までの夜間は、完全に遮光し冷房などを用いて低温処理を行います。遮光のために専用のプレハブ冷蔵庫を用意している圃場もあります。関東以南の地域では低温処理のために冷房設備が必要になりますが、冷涼な東北地域においては冷房設備を利用せずに短日処理を行うことで花芽分化を促進させることが可能です。

また、日中に高温になると花芽形成が抑制されるため、昼間は寒冷紗などの遮光資材を使い日射を弱めたり、換気扇などで湿度を逃したりするなどの対策が必要になります。遮光資材の遮光率は50%程度が適当だとされています。

低温暗黒処理(株冷蔵処理)

いちご苗をコンテナなどに入れ、暗黒環境下の冷蔵庫(や予冷庫)で2~3週間程度の低温処理を行う方法です。短日夜冷処理に比べてコストを抑えられますが、いちご苗が窒素濃度に強く影響されるため、苗の体内窒素濃度が十分に低くなっていないと花芽分化が起こりにくくなります。育苗中の施肥管理に手間がかかり、花芽分化が安定しにくいという側面があります。低温暗黒環境では苗が徒長し軟弱化しやすいため、外に出して光を当てる陽光処理を適当回数行い体力を回復させると、花芽分化率や定植後の開花率が高くなるとされています。鉢上げ後2週間程度は、強い光を当てずに寒冷紗などで被膜し活着を促すと良いでしょう。

間欠冷蔵処理

13~15℃程度で3~4日間冷蔵し、同じ日数を自然の条件に戻すという周期を2~3回繰り返す方法です。冷蔵した後に自然条件下(50%程度の遮光)で光合成を行わせることにより、炭水化物などの栄養条件が改善され花芽分化が促進されると考えられています。短日夜冷処理と同様の効果が期待できるとする考察もあります。ただし、苗の出し入れに労力がかかるというデメリットがあります。

苗の定植後におすすめの資材|いちご用LEDモーターフォグ

せっかく苗を順調に栽培することができても、定植後の天候不順などでいちごの成長が阻害されてしまってはもったいないですね。そこで定植後の栽培におすすめしたい資材がいちご用LDE電球モーターフォグです。

天候不順時に補光で光合成を促すいちご用LED電球

いちご用LED電球は、生育に必要な3種類の波長を照射することができるLEDチップがバランス良く組み込まれています。定植後のイチゴにLED電球を日没後3~5時間程度点灯することで生育促進・休眠防止・収量や品質の向上といった効果が期待できます。初期投資は発生しますが、白熱球に比べて電気代が安く寿命も長いためランニングコストを軽減しながら、日射環境を改善することが可能です。赤い光だけでなく白い光も使用していますので、作業する方の目が疲れにくいというメリットもあります。

不足する養分を葉面散布で補うモーターフォグ

天候不順になると光合成が行われずエネルギーが不足するため、土に養分があっても根から吸い上げる力が足りなくなることがあります。植物の葉や茎からも養分を吸収する特性を生かした施肥方法が葉面散布です。モーターフォグは、この葉面散布を行うために適した資材です。特殊なノズルから噴霧される薬液は大変細かく、葉面にうっすらとまんべんなく散布することができます。これにより樹勢を回復させ病害虫に強い株に育てる効果が期待できます。動噴に比べて重量が軽く作業者の負担を軽減します。

いちごの適切な花芽分化処理を行い収量アップを目指しましょう

一季成り性いちごでは、定植時の花芽分化の状態がそのシーズンの収量に大きな影響を及ぼします。育苗時に品種や圃場環境に適した花芽分化処理を行うことで、収穫時期を遅らせることなく連続した収穫を維持できる可能性が高くなります。今回のコラムが皆様のお役に立ちましたら幸いです。

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