創業から今日に至るまでの簡単な経緯を教えてください
TOSIファーム 秋山さん
株式会社TOSIファームのTOSIは先代の故「荒木 利」の「利」を残したネーミングしました。前身である有限会社マッシュでは、2008年当初椎茸栽培を基幹事業としていました。私が入社した当時は畑には何にもなく、現在の本郷農場と矢島農場にあたる場所を自力で開拓し、椎茸栽培用のビニールハウスを建設しました。未経験の椎茸栽培でしたのでとても苦戦しましたが、きのこ生産が盛んだった台湾から専門家を呼び指導を受け、事業は徐々に軌道に乗り始め、10年を経過することができました。
しかし2011年3月11日の東北大震災による放射能の風評被害、種苗メーカーによる生産販売などで価格の下落による事業縮小で当時は椎茸栽培の多くの法人が休業に追い込まれました。その時、椎茸栽培の代わりに提案したのがネギの栽培でした。量販店やスーパーへの卸売を専門にしている株式会社あらき(株式会社TOSIファームのグループ親会社)は当時、ネギを県外の契約産地から仕入れて販売をしていました。埼玉県深谷市で自分たちの農場を作ればビジネスチャンスが広がるのではないかと考えていましたので、諦めきれず粘り強く社長を説得していたところ、ようやく承認してくれました。
History
————————————————————
2003年 有限会社マッシュ設立
2008年 ネギに特化する
2011年 東北大震災
2018年 株式会社TOSIファーム設立
具体的な事業内容と御社の強みについて教えてください
●事業内容
栽培している品目はネギが99%です。現在ネギの供給先は株式会社あらき、株式会社TFY(TOSIファームのグループ会社)は全国各地の契約産地からネギの仕入れを行っております。TOSIファームは埼玉深谷の産地の真ん中の農業法人で現在30haのネギ栽培をしています。
●会社の強み
私自身、会社の立ち上げから携わり、多くの失敗を経験してきました。今思い直してみると失敗にくじけず、その後の対策を考えるスピードが速いことが会社の強みになったのではないかと思います。なるべく失敗を無駄にしないようにしています。
ねぎに特化されている理由について教えてください
夏場にとても暑くなる埼玉県深谷市で椎茸栽培を続けることは難しいと考えていました。株式会社あらきがネギを協力農家から購入して販売をしている組織体制を活かし、もともとネギ栽培が盛んであったこの地で自社農場を作ることが自分たちの強みになるという考えで事業を進めました。日々努力したおかげで売上も順調に伸びてネギの栽培に特化したという経緯があります。
ねぎの栽培方法で気を付けていることや難しいと思うことはありますか
●気を付けていること
苗の品種に適した潅水量や温度管理を行い強い苗をつくることです。畑は台風が来る前に病気が出ないようにしっかり段取りし、雨や乾燥の際にタイミング良くしっかりと対処することが大切です。
●難しいと思うこと
やるべきことはだいたい決まっていて、それ自体は技術的に難しいということはありません。しかし、天候や作物の状態により対策を行うタイミングがあり、そのポイントが少しでも遅れてしまうと、ネギにすぐに影響が出てしまいます。その影響は後々まで響くことがわかっていながらも人手がたりず、対応が遅れてしまうのがとても悔しいですね。
「空動扇」を導入しようと思った理由と導入後の感想を教えてください
ネギの苗は暑い時期にハウス内に置いておくことができません。その為苗を作ってもいちいち外(露地)に出さないといけない手間がありました。セイコーエコロジアのチラシで「空動扇」を見つけた時、電気もいらず自然に動くところが本当かなと思いつつ問い合わせました。一番の目的は温度を下げることでした。導入前は苗がビニールハウスに一つもありませんでしたが、導入後は換気の影響で温度が上がらず苗を外に出さずハウスに残すことができました。今でもやってはいますが、導入前は換気扇や妻面換気、遮光シートなどを使い温度を下げていました。
「空動扇」を設置したことで体感的に5℃くらい温度を下げることができていると思います。特に一番良かったのは春口と冬場の風が強い時期にビニールが剥がれたり、古い穴があるところは穴が広がったりしていましたが、今はそれがないことです。また作業していると頭上の暑さがなくなったこと、そして座っていると涼しいと感じます。「空動扇」があると人間には見えないけれど自然の風をハウス内外に循環できています。また雨が降っても「空動扇」から雨が入ることはないです。空気とともに湿度が抜けるのもメリットですね。
茨城や秋田など産地(協力農家さん)の方が来た時には必ず「これは何ですか?」と尋ねてきますのでPRをしています。相手はどういうふうに受け取るかはわかりませんが、自分なりに「空動扇」のメリットを伝えています。
セイコーエコロジアの対応はいかがだったでしょうか
半信半疑でしたのでビニールハウスに穴を開けるのが怖かったのですが、営業の満岡さんの言葉を信じて、試しにビニールハウスに一機設置して動作を確認しました。無事に動いてくれてほっとしました。満岡さんは、礼儀正しくすごく頑張り屋さんという印象です。
今後取り組みたいことはありますか
この会社ができて20年になりますが50年は残したいと思っています。少しでも強くなる会社、そして中身が堅くできている会社を作りたいです。社員の皆さんにもっと勉強してもらえる環境を整え、畑と向き合い作物を大切にする生産者の気持ちと、作物を食べるのを楽しみにしている消費者の気持ちのわかる会社にしたいと考えています。
今は自分たちのブランドになるような珍しい品種のネギを、安定的に栽培することを目指しています。とてもやわらかくて甘い品種で、早く安定化して消費者の皆さんに届けたいですね。
「空動扇」の導入へ向けて検討される方にメッセージはありますか
設置するのは簡単ですからいちご・トマト・キュウリなどハウス栽培をしている農家さんにはおすすめだと思います。
コラム著者
満岡 雄
2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Xを更新していますのでぜひご覧ください。