いちごの6つの作型をご紹介
促成栽培
断根、低温、短日、遮光等の管理によって花芽分化を促進し11月~5月前後に収穫するための作型です。現在では最も主流の作型となっています。詳しくは次章に記載します。
半促成栽培
晩生で休眠が深い品種を早くに収穫するための作型です。山上げ*あるいは短期株冷蔵**というやり方で休眠打破を行う方法があります。前者は山上げ半促成栽培、後者は短期株冷半促成栽培と呼ばれています。また、電照して長日処理することで休眠を打破する電照半促成栽培があります。半促成栽培は促成栽培の拡大によって減少しており、現在では北関東と北陸と東北の一部に残るのみとなっています。
*高冷地で低温遭遇させる方法。栃木県日光市の戦場ヶ原が有名。
**冷蔵庫で低温遭遇させる方法。
露地栽培
自然条件下でいちごを栽培する作型です。秋に定植し、越冬後、3月にマルチを張り、5~6月に収穫します。収穫期間は1カ月ほどと非常に短く、収量は1~2t/10a程度です。促成栽培で発生しやすいうどんこ病の発生が少ないという特長があります。かつてはジャム用の加工いちごとして栽培されていましたが、輸入いちごの影響を受けて国内の生産はほとんどありません。現在のところ東北地方の一部に残るのみとなっており、主力となるのは家庭菜園やガーデニングの市場です。
早熟栽培
露地栽培を少し前倒しした作型で、4月中下旬頃から収穫します。現在のところ国内の生産は消滅に近いと言われています。
抑制栽培
促成栽培の収穫が始まるまでの10~11月頃に収穫する作型です。次に記載する夏秋いちごの進出に伴い優位性がなくなったため、現在では国内の生産はほとんど見られなくなっています。
夏秋栽培
いちごの需要は冬(クリスマスがピーク)と春が多いですが、ケーキ屋さんを筆頭に通年の需要があります。そのためいちごが流通しづらい夏秋期(7月~10月)に収穫する作型が開発されました。比較的冷涼な地域である長野県や北海道や東北地方では四季成性品種を利用して普及しています。品種は2000年以降に50品種程度が発表されており、一例を挙げると「なつあかり」「デコルージュ」「サマーティアラ」等があります。
いちごの促成栽培とは
促成栽培は戦前から行われていました。最も有名なのは静岡県で行われていた「石垣栽培」です。「石垣いちご」とも呼ばれています。山腹の南斜面を利用し、盛土して石やコンクリートブロックを積み、太陽熱を蓄放熱させることでいちごの生育と成熟を早める方法です。しかし、毎年いちごの収穫が終わると石を崩し、定植前に積みかえるという重労働のため、現在では一部が残るのみとなっています。
戦後になると外張りのビニールフィルムが普及し、平地でも促成栽培が可能となりました。初期の主要品種は「福羽」で12月~3月前後まで収穫する短期どり促成栽培と呼ばれており、その後「はるのか」や「宝交早生」という品種の登場により、11月~5月頃までの半年間を同じ株から収穫する長期どり促成栽培が定着していきました。現在では日本の作型の90%以上が長期どり促成栽培と言われています。
促成栽培の確立には育苗時の花芽分化促進技術の進歩が大きくかかわっています。これによって収穫期の前進が進んできました。以下に技術の例を記載します。
花芽分化促進技術の例
断根促成栽培 | 断根して窒素肥料の肥効を抑える。 |
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山上げ促成栽培 | 高冷地の冷涼な気候で育苗する。 |
短日処理 | ビニールハウスの場合、遮光資材を朝遅く開け、夕方に閉めることで暗黒の時間を短い(=短日)条件にする。 |
遮光処理(シェード栽培) | 遮熱フィルムで遮光することによって日長時間を8時間程度とする。品種「女峰」で実績あり。 |
夜冷短日処理 | 遮光時間を8時間程度にする短日処理と、夜間のみ気温を12~15℃にする低温処理を組み合わせる。 |
低温暗黒処理 | 12℃程度の暗黒下で低温処理する。 |
おすすめの作型とは
促成栽培
先にも記載した通り日本では90%以上が促成栽培で、全国各地で行われています。そのため、最もおすすめの作型と言えます。暖房費削減という面では、温暖な気候の西日本や九州にメリットがあると言われています。ただし、日照時間が長いという面では栃木県や静岡県等にメリットがあります。
夏秋栽培
冷涼な気候である長野県や北海道や東北地方での栽培が人気です。ケーキ用のいちごを筆頭に一定のニーズはあるので、販路さえ確保できれば安定した収入が期待できる作型です。2000年以降、大手製菓メーカーが契約生産に着手したことから栽培面積が増えているようです。一方で夏秋栽培の収穫時期は30℃を超えるような高温の時期が長いことから、アザミウマやダニといった害虫が多く発生したり、花芽分化抑制等で生産が不安定になる可能性があるため注意が必要です。
完全閉鎖型栽培
近年のスマート農業の革新や栽培技術の確立によりLED光源を使用して完全な屋内で周年栽培を行うことも夢ではなくなってきています。コスト面と収量面が大きな課題となっているようですが、近い将来に新たなビジネスモデルとして確立されるでしょう。
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いちご栽培でビジネスを成功させるために
今回は促成栽培を筆頭に各作型の情報を記載してきました。様々な方法があるので、自分の栽培地域や環境に合ったものをお選びください。本コラムが農業ビジネス成功の一助になりましたら幸いです。
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コラム著者
満岡 雄
2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Xを更新していますのでぜひご覧ください。
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