コラム
ミナミキイロアザミウマとは?被害と対策をご紹介
公開日2022.03.03
更新日2023.06.08

ミナミキイロアザミウマとは?被害と対策をご紹介

アザミウマ類は作物の葉を吸汁し、ウイルス病を媒介するやっかいな農業害虫です。発育スピードが速く、繁殖力も驚異的で、薬剤抵抗性を発達させる特徴を持っているため、発生初期から効果的な対策をしていくことが非常に重要です。アザミウマ類で特に問題になるのはミナミキイロアザミウマ・ネギアザミウマ・ミカンキイロアザミウマ・ヒラズハナアザミウマ・チャノキイロアザミウマの5種類ですが今回のコラムではミナミキイロアザミウマにスポットを当てて被害と対策を解説していきたいと思います。

ミナミキイロアザミウマの特徴と生態

学名:Thrips palmi
英名:Melon thrips

和名:ミナミキイロアザミウマ
自然分布:東南アジア

特徴

雌成虫の体長は1.2~1.4mm程度で体色は黄色、雄成虫は体長0.9~1.0mm程度で体色は淡黄色です。翅の毛が黒いので、雄と雌の両性共に翅をたたむと背中に黒い筋があるように見えることが特徴です。東南アジアからの侵入種で日本では1978年に宮崎県で初めて確認され、現在では本州・四国・九州・沖縄まで広く分布をしています。

生態

卵を新芽や新葉の組織内に一卵ずつ産みます。成幼虫は葉裏の葉脈沿いや果実の表面、へた周辺を吸汁します。休眠性はありません。露地野菜では5~10月に発生し、7~8月の夏季にピークになります。低温に弱いため、寒い地域の野外では越冬できません。施設野菜では周年発生し、特にキュウリ・メロン・ナス・ピーマン等で多いです。一方でトマトにはほとんど発生しません。メロン黄化えそウイルス(MYSV)、スイカ灰白色斑紋ウイルス(WSMoV)を媒介します。

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>>>ヒラズハナアザミウマとは?生態の特徴や被害・駆除方法を解説

ミナミキイロアザミウマによる被害と対策

被害

ミナミキイロアザミウマの被害は肉眼で見ても分かりやすいです。ただし、チャノホコリダニの被害と似ているので注意が必要です。キュウリではきゅうり黄化えそ病を媒介、ピーマンでは生長点部への加害による葉の奇形や果実の奇形果の発生、メロンでは葉裏の葉脈沿いが加害されかすり状の白変になり褐変や幼果の肌が汚れる被害、ナスでは葉柄・軟弱な茎・果鞭・蕚・果皮などにカスリ状に色が抜ける傷ができることで新芽や新葉の伸長不良や果皮の変色や果実肥大停止といった被害を発生させます。

対策

粘着シートを設置する

ある特定の色に誘引されるというアザミウマの性質を利用した対策です。ミナミキイロアザミウマの場合、白色や青色の粘着シートによく誘引されます。薄いプラスチック製の板に粘着剤が塗られており、翅の生えた成虫が飛んで誘引されることでくっついて死亡します。主に農薬を散布するために設置するモニタリング資材という位置付けの資材ですが、たくさん設置することで個体数を減らすという効果的な利用方法をしている生産者さんもいます。なお光反射スペクトルのピークが450nm付近の白色や青色への誘因性が高いことが知られていますので各メーカーより発売されている粘着シートの資材選定の際の参考にしてください。

光反射資材を敷く

地面からの光に飛行攪乱されるというアザミウマの性質を利用した対策です。アザミウマ類の成虫は飛ぶ時に太陽光紫外線を感知することで上下の方向感覚を保っています。光反射資材で反射された太陽光が地面から当たると上下の方向感覚が麻痺する(上下のどちらが空であるかが分からなくなる)ようです。その結果、葉に着地しようと思っても飛んでしまったりという現象が起き、農作物へ定着できなくなります。太陽光をよく反射する資材、例えば白色や銀色などの効果が高いようです。なお光が届く(反射する)範囲での効果となりますので、例えば農作物が繁茂してくると効果がしだいに減衰するので注意が必要です。

畝面マルチを敷く

2齢幼虫が蛹になるために土の中に潜るというアザミウマの習性を利用した対策です。アザミウマ類の多くは、外敵の少ない土中で蛹になることで生存率のアップを図っています。畝面をマルチで覆うことで2齢幼虫が土に潜れなくなり高温・乾燥・外敵などの環境条件にさらされることで死亡します。なおフィルムの継ぎ目を可能な限りなくすことで土に潜る確率を減らすことができればより効果的です。

太陽熱とビニールで蒸す

前項で記載したように、アザミウマは土中で蛹になるため、栽培終了後も土壌中で生存しています。従って、栽培終了後に透明のビニールを土壌表面に敷き、太陽熱で地温を上昇させ蒸し焼き状態にして蛹を殺虫することができます。

赤色防虫ネットで侵入防止

ビニールハウスの開口部に赤色の防虫ネットを展張して侵入を防ぐ方法です。アザミウマの目からは長波長側の赤色は見えないため、赤色のネットで覆われているとビニールハウスの内部がよく見えなくなることで寄ってこないと考えられています。なお、ネットの目合いが大きいと風で流されてきたアザミウマが侵入することがあるので注意が必要です。

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>>>防虫ネットの正しい使い方|害虫のハウスへの侵入を阻止

ミナミキイロアザミウマを防除する際のポイント

初期発生を見逃さない

ミナミキイロアザミウマによる被害を最小限にするためには、初期発生を見逃さないことが非常に大切です。なぜなら生息密度が上がれば上がるほど被害を減らすことが困難になるからです。日々植物を観察し、農作物に些細な傷が生じていないか観察しましょう。

薬剤の散布ムラをなくす

よく「最近の農薬はアザミウマには効かない。薬剤抵抗性が発達しているからだ」と耳にします。確かにこれは事実なのですが、そもそも散布ムラが発生し、農薬や殺虫剤自体がアザミウマにしっかりとかかっていないという事実も隠されているようです。薬剤は適量をしっかりとムラなく散布することが大切です。最近では静電気の力を利用して葉裏に農薬が付着しやすくする噴口も販売されていますので利用すると良いでしょう。>>静電機能付噴霧口『静電噴口』の情報はこちら

天敵昆虫を利用する

最も有名な天敵昆虫はスワルスキーカブリダニです。スワルスキーカブリダニはボトル製剤化された生物農薬で、アザミウマ類やコナジラミ類を捕食してくれる昆虫です。活動可能温度は15~35℃(最適温度は28℃前後)なので冬場も加温している圃場であれば使用することができます。ただし導入コストが高いのがデメリットです。

圃場周辺の雑草を除去する

施設栽培の場合、施設周辺の雑草がミナミキイロアザミウマの発生源となることがあります。そのため施設の側窓を開けると、風で流されて侵入する要因となることになりますので、圃場周辺の雑草はなるべく除去することをおすすめ致します。

ミナミキイロアザミウマによる被害の対策におすすめの農業資材

以下にご紹介する製品はミナミキイロアザミウマの対策に有効な農業資材です。どの製品もこれさえあればミナミキイロアザミウマが根絶できるという製品ではありませんが、他の農薬散布や他の農業資材(防虫ネットなど)と組み合わせてご使用いただくことでアザミウマの個体数減・被害軽減・ウイルス病の拡散防止といった効果が期待できます。ぜひ導入の参考にしてください。

虫ブロッカー赤

数百品目を超える植物に深刻な被害を与えるアザミウマ。殺虫剤の耐性を獲得して化学的防除が困難になってきました。虫ブロッカー赤アザミウマ対策ができる赤色LED防虫灯です。赤色LEDはアザミウマの抵抗性を発達させず密度を低下させることに貢献します。

虫ブロッカー赤の設置目安(1機あたり)の推奨ピッチは10m~20m(短いほど効果あり)。赤色LED(ピーク波長657nm)を日中に十数時間程度(日の出1時間前~日の入り1時間後までの点灯を推奨します)照射するとアザミウマの成虫は植物体の緑色の識別が困難になり、ハウスへの誘引を防止すると考えられています。その他、殺虫剤の散布回数減・散布労力減といった効果も期待できます。

てるてる

てるてる」は害虫忌避と果実着色を同時に行う光拡散反射シートです。アザミウマ類の背光反応という習性を利用しているためIPMにおける物理的防除法に適合しています。「てるてる」を地際に設置する(敷く)ことで、アザミウマ類の下方向からも太陽光を照射することができるため高い忌避効果を生み出しています。
虫ブロッカー赤を設置したハウスに「てるてる」を設置すると、相乗効果によって赤色LED光の照射効果をより高めることができます。

スマートキャッチャーⅡ

吸引式LED捕虫器です。LEDの光でアザミウマ類を誘引し、強力な吸引ファンで捕虫袋に捕獲します。害虫の初期発生時に1,000㎡に2機を設置していただくことで、増殖を抑制する効果が期待できます。アザミウマ以外もコナジラミ類、コバエ類、チビクロバネキノコバエ、ナガマドキノコバエ、クロバネキノコバエ類、アシグロハモグリバエ、マメハモグリバエ、ハスモンヨトウ、ヨトウガを捕虫してくれる優れモノです。

アザミウマキャッチャー

特殊誘引剤の匂いと粘着シートの色によってアザミウマ類を誘引し捕虫します。100㎡に1台を目安に設置していただくことで重要な初期防除を支援致します。また害虫の付着状況を適宜チェックすることで農薬散布のタイミングを見極めることができます。電源が必要ありませんので電源の確保できない圃場に大変便利な製品です。

ミナミキイロアザミウマの生態を理解し必要な対策をしていきましょう

今回のコラムではミナミキイロアザミウマに関して詳しく解説してきました。ミナミキイロアザミウマはやっかいな農業害虫の一つですので有効な対策を実行していきましょう。なお近年ではIPM(総合的病害虫・雑草管理)という考え方も定着してきましたのであわせて以下のコラムをお読みいただけますと幸いです。

>>IPM(総合的病害虫・雑草管理)とは?農業におけるIPMの方法メリットを解説

ミナミキイロアザミウマとは?被害と対策をご紹介

コラム著者

満岡 雄

2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Twitterを更新していますのでぜひご覧ください。

 

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