コラム
草生栽培とは?果樹園における土壌管理について
公開日2024.02.20
更新日2024.02.20

草生栽培とは?果樹園における土壌管理について

青森県のリンゴ栽培では1930年~1940年にかけて窒素・リン酸・カリなどの施肥量が急増しました。当時、耕起はほとんど行われず、土壌管理と言えば雑草の除草剤を撒いて土を裸にし、樹から一定の距離に円状の溝を掘って肥料を入れる輪肥を行う程度でした。このような土壌管理を繰り返した結果、地力は落ち、根からの栄養吸収が弱くなり、樹勢を衰えさせていきました。そのような土壌管理を見直すために注目された栽培方法が、土を裸地にせず下草を生かす草生栽培です。

草生栽培とは

草生栽培(そうせいさいばい)とは果樹園における栽培法の一つで、地表に下草を生やして土壌を管理します。下草には自然発生する雑草を利用する方法と、栽培する果樹に適した緑肥の種をまいて育てる方法があります。下草の部分は果樹園の地表全面に生やすか、養水分の競合を避けるために樹冠の下を避け、帯状や格子状に生やすか、樹種や土壌環境によって適した方法が採用されています。下草は年に数回の定期的な刈り取りが必要になり、除草剤を使って土壌をむき出しにする清耕栽培に比べて労力がかかりますが、自然に枯死する草種を使えば刈り取り作業を省力化することが可能です。刈り取られた草は有機物として土壌に還元されるため堆肥の役割を担うと考えられており、果樹園で不足しがちな有機物の補給をすることができます。地表に生やす下草は、緑肥やカバークロップなどと言われ、果樹園だけでなく野菜作りの圃場にも用いられることがあります。果樹ではリンゴをはじめとして、温州ミカン・カキ・ナシ(ニホンナシ)・モモなどの果樹園で採用されています。

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草生栽培のメリット

土壌の流失を防止する

地表に草が生えていないと雨や風の影響で土壌が浸食されやすく、果樹の根が地表にむき出しになり根が傷むことがあります。傾斜地にある果樹園では水が地表をすべりやすいため、浸食作用が大きくなります。流失した土壌を復旧する場合、費用や作業など重い負担をこうむることになります。地表に草を生やすことで水が直接地表を流れにくくなり、土壌の浸食を防止する効果が期待できます。

土壌の物理性の改善により樹勢が向上する

刈り取った下草を敷草にしたり、すき込んだりすると、土壌へ有機物を補給することになります。下草の葉や茎だけでなく、地下部にある根も有機物として土壌に還元されます。有機物は土壌微生物のエサになるため、微生物の働きが活性化し土の団粒構造化を促します。スピードスプレイヤーなどの大型農業機械を繰り返し使用している果樹園では、加重により土の中に耕盤層が発生し排水性が悪くなることがあります。下草の根が深く伸長すると耕盤層が破壊され土壌の排水性が改善されたり、気相が増加して根が生長しやすい土壌環境が整ったりするなどの効果が期待できます。

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土壌に起因する病気を予防する

果樹の病気は、土壌中の菌の多様性が失われ特定の病原菌が増加したために発生することがあります。下草のすき込みなどによる有機物の補給は、土壌微生物の多様性を維持し、特定の病原菌の増加を抑えるとされています。草生栽培では、地表をむき出して管理する清耕栽培に比べて土壌に起因する病気を抑える効果が期待できます。健全な土壌には病原菌に拮抗する多様な菌の存在が必要というわけです。

草生栽培のデメリット

果樹の養水分が足りなくなる

土壌に植物が増える関係で、養水分が栽培作物である樹体と競合します。夏に雨が少ないと影響が大きくなり、実の糖度が落ちたり、サイズが小さくなったりすることがあります。

草刈や播種などの作業負担が大きくなる

下草を適切に管理するためには定期的な草刈の作業が必要です。乗用型の草刈り機が使用できない急な傾斜地では、人力で実施することとなり作業負担が大きくなります。草刈の回数が少ないと多年生やつる性の雑草が増えますので、場合によっては除草剤を使った除草作業が必要となります。下草に緑肥を用いる場合には播種の作業も追加で発生します。

害虫の発生原因となるリスクがある

下草の管理が不適切だと、果樹に加害する害虫が増えることがあります。下草自体が害虫の住処になることもありますし、あるいは下草を切りすぎたことによって天敵がいなくなって被害が発生することもあります。雑草よりは、緑肥として販売されている草種を使う方が害虫被害は抑えられるとされています。またマムシなど人に危害を及ぼすヘビの生息地になることから、作業する際には注意が必要です。

果樹の草生栽培に適した緑肥

緑肥を用いる場合の果樹園の下草としては、イネ科のイタリアンライグラス・ナギナタガヤ・ケンタッキーブルーグラス、マメ科のヘアリーベッチなどがあります。イネ科はマメ科にくらべて蒸散の量が少ないことから、水分の競合を抑えられます。一方、多くのマメ科には根粒菌と共生して空気中の窒素を植物が利用できる形に返還するという性質があることから、土の中の窒素成分の取り合いが起こりにくいと考えられています。イネ科とマメ科をミックスしてそれぞれの良い部分の効果を期待するという手法もあるようです。

関連コラム:品質や収量が向上する?緑肥としてのひまわりについて解説

イタリアンライグラス(イネ科)

土壌が凍結する直前まで生育を続けるとされ、冷涼な地域に適しています。草丈が1m以上に達するほど生育は旺盛で、根量が多く直立に育ち、倒れにくいという特徴があります。一年草ですが穂から落ちた種子が発芽し生長が良好であれば、次年度からは播種量を減らすことが可能です。品種改良により窒素の蓄積を抑えた草種もあるようです。

オーチャードグラス(イネ科)

多年生で寒冷地に適した草種です。加湿環境に弱く湿害が発生しやすいため、排水性の悪い土壌や地下水位が高い場所では不向きです。

ナギナタガヤ(イネ科)

春から夏にかけて自然に倒伏して地表を覆うため雑草を抑制する効果が期待できます。地表を流れる水の量を減らして、特に傾斜地において降雨による土や肥料成分の流失を防止します。敷草として使用する場合には、刈取り作業が不要となり農作業が省力化できます。害虫に加害されることが少ないという特長があります。倒伏の方向によっては部分的に雑草が生えることがあります。多くの果樹に適合する草種です。

ヘアリーベッチ(マメ科)

根粒菌と共生し空気中の窒素を固定する性質があることから、栽培している果樹との窒素の取り合いが起こりにくいという性質があります。また、ヘアリーベッチが放出する化学物質は他の雑草の生長を抑制する効果があるとされています。つる性のため、旺盛期には歩行性が悪くなったり、脚立がたてにくいなど作業性が低下したりするなどのデメリットがあります。

草生栽培で地力が回復しないときにおすすめの資材

草生栽培で地力が回復しないときにおすすめしたい資材が腐植酸(フミン酸)を高純度に含んだ地力の素です。土づくりの作業を省力化したい場合には、堆肥成分が含まれているペレットタイプが便利です。ペレット型はブロードキャスターなどの散布機を使って撒くことができ作業の負担を軽減します。堆肥成分を効かせたくない場合は、腐植酸が7~8割含まれている粗粒タイプをおすすめします。腐植物質土壌微生物にゆっくりと分解される性質があり、地力を維持するという効果が期待できます。加えてCECが高くカルシウムやマグネシウムといった陽イオンを土壌に保持するため、樹木の根が栄養を吸収しやすい環境を整えるとされています。

地力の素の解説動画はこちら

草生栽培とは?果樹園における土壌管理について(イメージ)
【 細粒 】20kg
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【 粗粒 】20kg
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【 ペレット 】15kg
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【 リキッド12 】1L
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【 リキッド12 】5L,20L
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果樹園の管理方法として草生栽培を検討してみてはいかがでしょうか

草生栽培は、土の中の環境を整えて樹体の根を健全に育てたい場合に適した方法です。栽培する果樹によって適切な土壌管理方法は異なりますので、どの場合でも草生栽培が良いとは一概には言えませんが、樹勢が衰えてきたときや果実の品質や収量が落ちてきた場合に導入を検討してみても良いかもしれません。今回のコラムをお役立ていただければ幸いです。

参考資料:
・果樹園の草生栽培の意義と方法
(青森県りんご試験場)
果樹栽培におけるカバークロップの利用
(神奈川県農業総合研究所)
果樹生産における施肥の現状と課題
(農林水産省)

草生栽培とは?果樹園における土壌管理について

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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