コラム
籾殻を使った土壌改良|見直される自給肥料
公開日2021.01.12
更新日2023.03.30

籾殻を使った土壌改良|見直される自給肥料

新米の収穫の時期になると脱穀・乾燥と忙しい時期を迎えます。古くは収穫後に大量に排出される籾殻(もみ殻)と稲わらを収穫後の水田で焼いたりする光景は良く見られていました。しかし現在のところ野焼きは原則として禁止されているため、籾殻の処分に困っている方が多いのではないでしょうか。今回のコラムでは籾殻を使った土壌改良に関して詳しく記載していきたいと思います。

籾殻の特徴

籾殻とは

お米は地中にあるケイ酸を吸収することで種を保護するために受粉後すぐに強度がある皮を作ります。ケイ酸の化合物は身近なところでは石英として存在し、ガラスの原料として使われています。籾殻は窒素・リン酸・カリの含有量は少なく、微生物に分解されにくいという特徴を持ちます。

籾殻や稲わらでのたき火・野焼きが行われなくなった

籾殻や稲わらは、古くは自給肥料や家畜への飼料などに有効利用されていました。耕運機やトラクターなどが導入される前は多くの農家が牛や馬を使っていたため、家畜の飼料にしたり、排せつ物と混ぜ合わせ有機肥料を作ったり、灰や炭にすることで土壌改良資材として有効利用がなされていました。現在は、機械化が進んだことや、焚火や野焼きがしにくくなったことから自給肥料として利用する方は少なくなってきました。灰や炭にする方法は次の二つの原因で少なくなったと考えられます。

第一は火災の原因となることが多いためと考えられます。火災の原因の第1位はタバコ、第2位は放火、第3位はコンロ、第4位はたき火、第5位は放火の疑い、第6位は火入れ(野焼き)といわれ、1位~6位で全体の40%以上です。
(平成30年度 消防白書より)

約4万件の火災のうち、「たき火」は約3,000件(約7.5%)「火入れ」(野焼き)は約1,800件(約4.5%)となり、両方合わせると1位の「たばこ」の約3700件(約9.3%)を上回ります。

もう一つ、1980年代にダイオキシンが問題だとマスコミが報道し注目が集まりました。有機物や無機物を混合し加熱するとPM2.5の原因物質や有害な塩素系化合物などが出来ることがあり、この煙を吸い込むと喘息や健康障害の原因になるといわれました。このように、火災や健康障害の原因と見なされ、家庭での簡易焼却炉や、圃場での残滓焼却はほとんど行われることができなくなり、水田でも籾殻焼きや藁焼きが見られなくなりました。

土壌改良資材としての籾殻

  1. 十分乾燥させた籾殻は腐りにくく長い期間保存が可能
  2. 肥料成分の窒素・リン酸・カリの含有量が少なくケイ酸が豊富、堆肥・腐葉土との親和性が高い
  3. 土中で分解されにくく形状が崩れにくい、通気性確保
  4. 地表に引きつめると水跳ねを防ぎ、草止めになる
  5. 炭にすることで、酸性土壌の中和剤になる
  6. 炭にすることで、保水力向上と土壌細菌・土壌微生物の住処になる
  7. 炭にすることで、独特なにおいがするものと混ぜ合わせと、脱臭効果を発揮
  8. 炭を引きつめることにより、冬場の地温上昇が期待できる

籾殻は、素材としてみたときにほぼ同じ大きさで、米を籾摺りするときの副産物としてできます。十分乾燥されていれば、袋等に詰めて長期保存にも耐えます。ほかの野菜等の残滓にはない特徴があり使いやすい土づくりのための土壌改良剤です。

再認識されてきた籾殻

有機農法や減農薬による栽培方式が評価されるようになってきたことが、籾殻や稲わらの良さが再認識され積極的に土壌改良資材や堆肥の原料として使われるようになってきました。その結果、完成品としての籾殻燻炭や有機肥料を農業資材売り場でよく見かけるようになってきました。

籾殻はそのままでも土壌改良資材として魅力的ですが、灰や炭にすることでアルカリ性になり酸性土壌を中和する薬剤となります。炭にすると黒色になり、地表にまくと太陽熱を吸収し地表を保温する機能が発揮されます。灰や炭にすることにより、体積や重量を小さくすることができます。保管場所や輸送費の削減が期待できます。

関連コラム:籾殻くん炭とは?土壌改良資材としての効果と作り方、使用方法

米作りの副産物、籾殻の価値を高める

籾殻は、籾摺りした後に玄米と別れた外側の殻になります。品種や乾燥条件によって大きく変わると思いますが籾殻と玄米の重さの比率はよくわかりません、参考までに玄米を精米し白米にするとき糠(米ぬか)が発生します。1俵(400合)を精米し白米にすると白米(約360合)糠(約40合)できるそうです。籾殻と玄米の関係もこれくらいの重量比とし、種もみを選別するときにうるち米は比重1.13くらいの塩水で沈むものを使用するとなっています(ざっくりですが、種もみは均一な質量でできていると仮定し)1合(180㏄)のうるち米の種もみは約200g(実際は空間がかなりできるのでもっと軽いかと思います)。20gの籾殻と180gの玄米になりそうです。大雑把に一俵(60kg)の玄米ができるとき籾殻は約6.7Kg、農林水産省が毎年発表している平均反収はおよそ560㎏前後(9~10俵)ですから籾殻は約63Kgできそうです。籾殻自体は軽くフカフカした状態です。殻が割れほとんどが空間ですので元の体積より増えてしまいそうです。(1俵は72ℓですが2倍以上容積がかさばりそうです)

・籾殻の保管場所や運送の手間を省く

籾殻は重量のわりに空間をふさぐ厄介なものです。昔は庭先や田んぼで籾摺り後の籾殻を籾殻燻炭にし、カサを減らし保管しました。現在ではそのままで保管するためには場所を確保する必要があります。運送するにも重量は軽いわりに広い荷台が必要になり多くの量が運べません。

コストを抑えるためにも土壌改良材や有機肥料の原料とし自家消費をすることをおすすめします。また有機肥料や減農薬に関心が集まり、家庭菜園を行う方が籾殻や籾殻燻炭を利用されるようになってきています。ここへの供給も検討してみてはいかがでしょうか。

関連コラム:籾殻を処分する方法|籾殻有効活用を目指して

・籾殻の体積を減らすために

籾殻は肥料分としての養分が少なく、ケイ酸を多く含み固い構造をしているのが特徴です。固い鎧のような構造ですので多少圧縮しても形状を変えにくい性質があり、土中に混ぜ込んだ時に空間を作り通気性を良くします。体積や重量を減らす方法として燃やすという方法があります。燃焼させる方法で燻炭になったり、炭になったり、灰になったりします。燻炭は比較的低温で燃焼させます。炭は比較的高温で蒸し焼きにし、できるだけ炭素だけ残します。灰は酸素を送り込んで最後まで燃焼させます。灰が最も重量・体積とも小さくなります。

・燃焼装置の注意点

籾殻くん炭装置や燃焼させる装置と同じような構造のものに、小形焼却装置があります。処理能力が50kg/時間、火床又は火格子面積が0.5㎡以上のものでごみを燃す能力がある製品は、産業廃棄物を処理する焼却炉の扱いになり「ダイオキシン類対策特別措置法」が適用されます。すべての焼却炉は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」が適用され構造・燃焼温度の管理が規定されています、設置方法等は「消防法」が関係します。PM2.5やダイオキシンを発生させない配慮や、火災を起こさないための基準です。炭素と塩素を比較的低温(300~500℃)で反応させるとダイオキシン類の化合物ができやすいといわれ800℃以上で燃焼させ排ガスは急速に冷やすことを求められています。燃焼装置に目的の籾殻以外は入れないようにしましょう。特に残飯等には食塩が含まれていることがありますからご注意ください。紙の発火点は諸説ありますが約230℃位といわれていますので、籾殻もこの辺の温度になれば燃焼が始まるかと思います。

籾殻連続燻炭化装置『スミちゃん

1.商品特徴

スミちゃんは籾殻を連続で燻炭化することができる装置です。お米の脱穀によって生じた籾殻を450℃~550℃程度のやや高温で燃焼して燻炭化させます。10時間稼働させることで生の籾殻約2,500L~3,500Lから約800~1,000Lの籾殻燻炭を生産することができます(A-A型の場合)。できた籾殻燻炭は露地栽培やハウス栽培の土壌環境を改善したり、畜産におけるニオイや虫の発生を抑止したりする資材として活用できます。スミちゃんで出来た籾殻燻炭を販売している方もいらっしゃいます。

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2.スミちゃんがおすすめの理由は?

・野焼きは原則禁止

廃棄物(籾殻)の野外での焼却については、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、いわゆる廃棄物処理法で原則禁止とされていますが、全国各地で籾殻を野焼きした際に発生する煙と臭いによる苦情や消防への通報が後を絶ちません。スミちゃんであれば稼働音が静かで、燃焼部の特殊な構造により煙と臭いがほとんど出ないため、近隣に住宅があっても気にせず運転ができ、火災の心配もありません。安心して籾殻燻炭を生産することができます。

・良質な籾殻炭ができる

通常、籾殻を燻炭にする場合、燻製時に臭いが強くなったり煙が多く出たりします。そして籾殻の形のまま燻炭になりますが、タール分という油分が多く残ってしまいます。タール分が多いと農作物の生育に悪影響を及ぼすといわれています。ドラム缶やスチール製の燻炭器などで作る籾殻燻炭は、籾殻を400℃以下の低温で長時間かけてじっくりと燻して炭化させますが、スミちゃんの場合はやや高温の450~550℃程度で燃焼させ籾殻炭として取り出しますのでタール分もほとんどない良質な籾殻炭ができます。

・手間をかけずに短い時間で安全に炭化できる

スミちゃんは連続して自動で焼成できるため「籾殻を混ぜ返す」「水をかけて冷やす」「熱が冷めるのを待つ」といった手間がかかりません。燃焼部から排出された籾殻炭は、冷却スクリューコンベア(オプション)で冷やされて完成しますので、安全性も高く安心してお使いいただけます。

籾殻を有効に活用して循環型農業を

今回のコラムでは籾殻の基礎知識と時給肥料として使う方法を記載してきました。【籾殻⇒燻炭⇒肥料(田んぼや畑へ投入)⇒農作物の健全な成長】という循環の流れができれば環境に優しい理想的な農業をすることができます。ぜひ課題解決の一助となれば幸いです。

関連コラム:もみ殻堆肥とは?作物が育ちやすい土壌を実現する肥料の作り方

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コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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