ピーマン栽培で問題になるアザミウマとは?
アザミウマは体長1~2mm前後の細長い微小害虫で、吸汁加害により葉や果実に「かすり状」の症状を起こします。花・新芽・葉裏などに潜み、口針で細胞を傷つけて汁を吸います。その結果、表面が銀白色に見えるかすれや、果実表皮のコルク化が起こり、見た目の品質が落ちます。
ピーマンで特に問題になりやすいのはミカンキイロアザミウマ・ミナミキイロアザミウマ・ヒラズハナアザミウマ・ネギアザミウマなどです。広食性で雑草にも寄生するため、周囲から飛来したり風に流されたりして圃場やハウスへ侵入する可能性があります。
厄介さの本質は「小さくて見つけにくい」「狭い場所に入り薬剤が当たりにくい」「増殖が速い」「薬剤抵抗性がつきやすい」「ウイルスを媒介することがある」の5点です。完全に防除することは難しいため、密度を上げない仕組み作りが対策の近道になります。
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アザミウマの生態と発生しやすい条件
アザミウマは温暖(20~25℃)な環境を好み、春から秋にかけて発生しやすくなります。発育のスピードが速いため短期間で個体数が増えます。圃場やハウスの中で繁殖が広がり次々と作物に被害を及ぼします。気温が上がる夏から秋にかけて発生率が高くなり、特に夏場のハウスはアザミウマにとって快適な環境になることから、気づいたときには花や新芽に集中して定着していることがあります。
成虫は飛来または風に流されるなどして圃場に侵入し、花の内部や新芽の隙間に入り込みます。卵は若く柔らかい葉や茎に産み付けられ、孵化した幼虫は花や葉を吸汁します。蛹の時期が近づくと地表付近に移動して、土壌や葉の中、花内などで蛹化し、成虫になると再び寄生して食害します。
アザミウマは、自然植生下では土着天敵による強い捕食圧を受けます。それに対抗する形で高い増殖力を備えていると考えられます。薬散を繰り返すと、土着天敵も同時に減少するため、アザミウマが捕食されにくい環境となります。このような圃場では、本来アザミウマが持っている高い繁殖力により爆発的に個体が増えていくことになります。
アザミウマによるピーマンの被害
アザミウマの被害で代表的なのは、葉の表面が銀白色に擦れたように見える「かすり症状」です。特に展開直後の若い葉が吸汁されると、生育が抑えられて縮れや変形が生じやすくなります。花では色抜けや奇形が目立ち、着果不良の原因となることもあります。果実では主にヘタ裏などに潜んで加害し、表面の変色や白ぶくれ、さらに茶褐色の筋状・線状の傷が現れ、商品価値の低下につながります。
アザミウマの被害を受けたピーマンの主な症状
葉 :かすり状の白い斑点
花 :変色、奇形
果実:変色、白ぶくれ、茶褐色の筋状の傷
アザミウマの被害は果実・葉芽の吸汁痕だけでなく、ウイルス病の媒介という形で現れることがあります。ピーマンにおいては、TSWV(トマト黄化えそ病)が問題となります。この病気になると、生育初期に生長点付近の若い葉に葉脈の透化が現れます。やがてえそ(組織の壊死)を伴いながら急速に黄化が進みます。とくに低温期には症状が激しく、生長点そのものが急に枯死してしまうこともあります。若葉では軽いモザイクや奇形が見られ、成葉ではぼんやりとした黄色の輪紋が現れるなど、症状は一様ではありません。さらに、茎や地際部に褐色のえそが生じたり、維管束が褐変したりと、内部組織にまで影響が及ぶケースもあり、全体として複雑な病徴を示します。
ピーマンにおけるTSWV(トマト黄化えそ病)主な特徴
- 生長点付近の葉の葉脈透化
- えそを伴って黄化
- 若葉にモザイクや奇形、成葉に黄色輪紋
- 茎や地際部のえそ(実にもモザイクやえそが発生することがある)
- 維管束の褐変
施設ピーマン栽培におけるアザミウマ対策
アザミウマは薬剤がかかりにくく、さらに薬剤抵抗性が発達しやすい害虫です。そのため、防除は発生後の対処だけでなく、予防を重視しながら複数の対策を組み合わせて行うことが重要とされています。侵入を抑制し、繁殖しにくい環境を整えたうえで、必要に応じて天敵や農薬を適切に活用します。
防虫ネット
ビニールハウスなどの施設でピーマンを栽培する際に、側窓や天窓などの開口部に防虫ネットを被覆して侵入そのものを減らす考え方です。ハウスで使われる防虫ネットといえば、目合い0.6~0.8mmが標準でしたが、農林水産省によればアザミウマのような微小害虫の侵入を防ぐためには、0.4mm以下の目合いの防虫ネットを適用することが推奨されているとのことです。
ただし、目合いを細かくすることによるデメリットもあります。防虫効果は確かに高まりますが、風の抜けが悪くなり、換気量が低下します。空気の流れが滞り高温多湿環境になれば、うどんこ病、斑点病、疫病、灰色かび病などが発生するリスクが高くなります。通気性を確保しながら、ある程度の害虫侵入を防ぐバランスが難しいところです。
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粘着シート
ハウス内に設置する黄色や青色の粘着シートは、発生確認と密度抑制の両方に役立ちます。アザミウマは特定の色に引き寄せられる習性があり、飛来した個体を効率よく捕捉することで、生息密度の上昇を抑える効果が期待できます。粘着剤で捕殺するため安全性が高く、農薬使用の削減にもつながります。シート状で設置や撤去が簡単なうえ、強力な粘着力で捕獲した害虫を逃しにくいという特徴があります。付着数を定期的に確認することで発生初期をいち早く把握でき、防除のタイミングを判断する目安にもなります。
雑草や残渣の管理
アザミウマ対策で効きやすいのが雑草管理です。周辺雑草は寄主になり、そこから成虫が飛び込むため、圃場周りやハウス際をこまめに除草して発生源を薄くします。収穫後の残さや抜き取り株を放置すると、次作や周辺作物への持ち越しにつながります。残さは速やかに圃場外へ持ち出す、処理するなど、虫の逃げ場を作らないことが基本です。
温湿度の管理
アザミウマは温度依存性が高く、25~30℃で発育が著しく早まります。夏季の施設内では世代交代が短縮し、短期間で個体数が増加します。加えて、気温が高くなると飽和水蒸気量が増え、同じ相対湿度でも葉からの蒸散が強くなります。その結果、植物は乾燥ストレスを受けやすくなり、防御機能が低下すると、アザミウマなどの吸汁害虫の被害が拡大しやすくなるかもしれません。
そのため、換気などで温度上昇を抑えることはもちろんのこと「湿度とのバランス」を意識した管理が重要になります。相対湿度の数値だけにとらわれず、飽差を目安に環境を整えることで、過度な蒸散を抑え、植物の生理的安定を保つことができます。
特に夜温が高い場合、光合成は行われない一方で呼吸は活発になり、昼間に蓄えた糖を多く消費してしまいます。その結果、果実への養分転流が不足し、肥大不良や草勢の低下を招きやすくなります。日中の高温対策だけでなく、夜間の温度管理にも十分注意し、昼夜の環境バランスを整えることが安定した生育につながります。
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天敵や生物農薬(天敵製剤)
アザミウマの天敵として、カブリダニ類やヒメハナカメムシ類などが知られています。低密度期の抑え込みに強く、薬散回数を減らす助けになります。天敵を活かすには、天敵に強い薬剤を無計画に当てないことです。農薬を選ぶときは、アザミウマへの効果だけでなく、天敵への影響も考慮すると良いとされています。特定の害虫にのみ効果を発揮する選択性殺虫剤を使用するということも一つの手段です。
スワルスキーカブリダニは、ピーマンの花粉をエサにするため、定着・増殖しやすいとされています。大分県農林水産研究指導センターの研究によれば、ミカンキイロアザミウマに対してスワルスキーカブリダニの密度抑制効果が認められたと報告されています。
地域によっては土着の天敵を活用するという選択肢もあります。例えば、品種はピーマンではありませんが、ヒメハナカメムシの温存植物であるマリーゴールドの植栽と選択性殺虫剤の活用により、ミナミキイロアザミウマの増加を抑制することができたと報告されています。
マルチシート
反射性の高い白やシルバーのマルチは、アザミウマの正の走光性を利用した環境制御型防除です。アザミウマのような微小昆虫は重力を感じにくく、太陽光を背面で受けることで上下方向を把握していると考えられています。畝間や周辺に白マルチを敷くと、太陽光が地表から強く反射し、上下の識別が乱れて活動が停滞します。結果として飛来・着地・産卵が減少します。銀色マルチは反射が強く効果も高い一方、眩しさにより作業負担が増える場合があります。そのため、防除効果と作業性のバランスから白マルチが実用的とされています。
赤色LED
薬剤抵抗性が問題となるアザミウマ類に対し、赤色LEDを活用して密度を抑える新しい防除技術です。アザミウマは、日中は葉の緑色に誘引されて定着すると考えられています。ところが葉に赤色の光を当てると、葉の見え方が変わり、寄主として認識しにくくなります。その結果、植物体への飛来が減り、密度が上がりにくくなります。
赤色LEDによるアザミウマ類防除マニュアル(大阪府立環境農林水産研究所)によれば、日中に赤色光を葉へ照射すると、アザミウマの定着が抑えられ、寄り付きにくくなると報告されています。一方、夜間照射は逆に誘引するため注意が必要です。日中12時間程度の照射が基本で、育苗期からの活用が効果的であり、ナス・キュウリ・メロンでの試験では、生育や収量に悪影響なく、天敵カブリダニとの併用でも高い抑制効果が確認されています。
薬散(殺虫剤)
アザミウマは世代交代の速さの影響なのか、薬剤抵抗性の付きやすい害虫です。同一系統の連用を避け、IRACコードを参考に作用機作の異なる剤でローテーションを組むことが大切です。天敵併用時は選択性農薬を選ぶなど、影響の小さい薬剤を優先しましょう。登録内容(適用作物・希釈倍率・収穫前日数・混用可否)を厳守してください。
施設ピーマンの温湿度管理におすすめ|空動扇&空動扇SOLAR
施設栽培でのアザミウマ対策では、環境条件の最適化も重要です。空動扇&空動扇SOLARは、電力を使わず自然風や太陽光を利用してハウス内を効率的に排出する換気扇です。密閉環境で高温・高湿が続くとアザミウマの発育が促進され、吸汁被害やウイルス媒介リスクが高まりますが、空動扇を導入することで温湿度のバランスを整え、害虫の活動しにくい環境がつくりやすくなります。電気代ゼロで運用できるため、ランニングコストを抑えつつ通気性を改善し、病害リスクを低減する効果が期待できます。
アザミウマの防除は総合的な対策を
アザミウマはサイズが小さく初期発生や被害が見逃されやすい上に、果実品質低下やウイルス媒介で被害が拡大するという厄介な性質を持っています。見回りや粘着シートなどのモリタリング、侵入防止の防虫ネット、高温にならない環境管理、そして天敵や光防除などを組み合わせて対策を行いましょう。これらの対策を上手に活用できれば、殺虫剤の使用は必要最小限となり、薬散の作業負担や薬剤抵抗種の発生のリスクを低下させることにつながるのではないでしょうか。
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コラム著者
セイコーステラ 代表取締役 武藤 俊平
株式会社セイコーステラ 代表取締役。農家さんのお困りごとに関するコラムを定期的に配信しています。取り上げて欲しいテーマやトピックがありましたら、お知らせください。






