籾殻燻炭とは?基礎知識と使い方
基礎知識
籾殻燻炭(もみ殻くん炭)とは、籾殻を蒸し焼きにし、形を維持したまま炭にしたものです。舟形の形が土中に適度な空隙をつくるため、水が流れやすく(=排水性)、空気が通りやすい(=通気性)環境になります。また炭の断面は数μ(ミクロン)~数百μ(ミクロン)のパイプを束ねたような多孔質構造をしているため、水をため込む性質(=保水性)もあります。
籾殻燻炭の成分は有機元素、炭素、窒素、酸素。水素、ケイ素、ミネラルの7種類です。その中で最も割合が多いのは炭素とケイ素です。籾殻燻炭が黒色なのは炭素を多く含んでいるからです。炭素は30~50%の割合で構成されており、ケイ素は20~25%の割合で構成されています。
使い方
籾殻燻炭は育苗培土への使用が最も最適と言われています。育苗培土3に対して籾殻燻炭1を目安に混ぜます。ちなみに籾殻燻炭100%の培土に播種し、幼苗になったらポットへ移植するという方法も効果的のようです。
畑に直接籾殻燻炭を撒く場合は1㎡あたりに2~3リットルを目安とし、様子を見ながらもし足りなそうな場合は追加するようにします。
籾殻燻炭の効果
籾殻燻炭による最大の効果は土の状態を良くすることにあります。硬い土がふわふわになったり、籾殻燻炭のニオイを嫌がるため害虫予防にもなります。以下に記載します。
通気性の向上
舟形の多孔質構造の籾殻燻炭が硬い土壌に空隙をつくるため、土壌の物理性を改善します。植物の根の酸欠を防ぎ、空気を提供するため根張りを良くする効果があります。根張りが良くなるため、その先の生育促進と収量アップにもプラスの影響を与えます。
保水性の向上
籾殻燻炭を使用している土壌と使用していない土壌を比較すると、使用している土壌の方が容積あたりの保水性が高いです。多孔質構造の籾殻燻炭が水分を保持するため、土壌の水持ちが良くなります。また肥料の溶けた肥料水も保持するため、肥料を植物へ供給しやすくするというはたらきもあります。
耐倒状性や病害虫への抵抗性向上
籾殻燻炭の成分であるケイ素は非結晶のままのため、徐々に水に溶けることでケイ酸になります。ケイ酸が植物に吸収されると茎や葉が頑丈になり植物体を強化するはたらきをするため、耐倒状性や病害虫への抵抗性の向上に役立ちます。
関連コラム:ケイ酸の特徴|肥料として期待できる効果を解説
微生物の住処
籾殻燻炭の微細な穴は糸状菌や細菌の住処となります。これら微生物のネットワークが広がることによって土壌環境が改善されます。特に糸状菌の一種である菌根菌は炭との相性が良いと言われており、根が増えることで菌根菌の感染場所が増加し、菌根菌が殖える要因となります。
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害虫予防
籾殻燻炭の独特なニオイを嫌がって、害虫予防になります。アブラナ科の野菜やレタス等では定植初期に株元へたっぷりの籾殻燻炭を撒くとアブラムシの被害が激減するという報告があります。
籾殻燻炭の作り方
籾殻燻炭作りにはいくつかの方法があります。それぞれ長所と短所がありますので、例を挙げて以下に記載解説します。
燻炭器で焼く
インターネットやホームセンターなどで銀色の煙突状の燻炭器を購入することができます。籾殻が飛ぶことを防止するための風除けとしてトタン板やブロックで囲い、火付けには稲わらや乾いた竹材や新聞紙等を使用します。籾殻を投入し、少し焼けてきたら籾殻を足します。表面の所々が黒くなってきたらスコップでかき混ぜます。これらの作業を全体が黒っぽく籾殻燻炭として完成するまで繰り返します。80L~600L程度の籾殻燻炭を約2時間~4時間程度で作成できるようです。焼いた籾殻燻炭の消化にはペール缶が便利です。すぐに熱々の籾殻燻炭をスコップですくい、ペール缶に入れて蓋をして消火しましょう。少量の籾殻燻炭を作成したい場合はコストが低いのでおすすめです。
自作の燻炭器で焼く
例えば「ドラム缶+ブリキの保米缶(十俵缶)+煙突」という材料を使用し、各生産者さんが工夫して自作(DIY)の燻炭器を作成しているようです。自作する際は、特に火の扱いと煙の扱いに注意し近隣に迷惑がかからないようにしましょう。
製造装置で焼く
インターネットで検索していただくと、数種類~十数種類の籾殻燻炭の製造装置の情報を得ることができます。価格は数万円から数千万円とピンキリです。籾殻燻炭の品質や自動化の機能を求めると価格が高くなるようです。大量に籾殻燻炭を作成したい場合や人が常駐しなくても自動的に焼ける機能を求める方におすすめです。
おすすめの籾殻燻炭製造装置『スミちゃん』
スミちゃんは処分に困る籾殻を600~700℃程度の温度で燃やし「燻炭」という“宝物”に変える装置です。スミちゃんの特徴は『連続して籾殻燻炭がつくれる』『煙があまり出ない』ことです。前者はスミちゃんの最下位機種で10~15時間稼働させることで約1,200L(約1.2㎥)の籾殻を処理することが可能です。後者は籾殻が炭化した際にでた煙を、ボックス内の特殊な金属を通過させることにより燃焼させ、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)に分解します。そのため、外に「煙」や「臭い」が排出されることがあまりありません。従って近隣の方に迷惑をかけずに籾殻燻炭を作ることができます。製品の詳細に関してご不明な点がありましたらお気軽にお問い合わせください。
おすすめの籾殻燻炭製造装置『しんちゃん』
しんちゃんはドラム缶で手軽にもみ殻燻炭を製造できる装置です。通常、もみ殻燻炭製造装置は高額な場合が多く、導入のハードルが高いですが、しんちゃんは低価格のため、導入しやすいことが最大の魅力です。籾殻をドラム缶に入れて着火し2時間程度待つだけでもみ殻燻炭が出来上がります。しんちゃんは1回の稼働あたり約200Lの籾殻から約70Lの籾殻くん炭を製造することができます。本体はキャスター付きの台車に乗っているため移動も楽ちん。低消費電力のため、ポータブル電源を使用すれば電源のない場所でも稼働できます。しんちゃんで作成したもみ殻燻炭は農林水産省が定義するバイオ炭に適合します。バイオ炭は土壌への炭素貯留効果、土壌の透水性を改善する効果、酸性土壌のpHを調節する効果が期待できます。環境に優しい製品をぜひ導入してみてはいかがでしょうか。
籾殻燻炭を使用して農作業を快適に
今回のコラムでは籾殻燻炭の基礎知識と作り方に関して解説してきました。籾殻燻炭は農作業を快適にする可能性を秘めています。資材のコスト高騰が騒がれる今ですが、籾殻燻炭をうまく活用することでコスト削減(収量アップや農薬代削減など)を図れるのではないでしょうか。もっと多くの方に籾殻燻炭をご利用いただけるような世の中になることを願います。本コラムがお役に立てれば幸いです。
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コラム著者
満岡 雄
2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Xを更新していますのでぜひご覧ください。
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