コラム
肥料購入先のリスク分散!!バットグアノとその成分を解説
公開日2023.03.07
更新日2023.09.28

肥料購入先のリスク分散!!バットグアノとその成分を解説

どの業界においても、仕入先や納入先が一か所に依存し過ぎていることに対してリスクが高まる時代になりました。弊社も、農家さまから聴かせていただくお話に「肥料が高くても買えるならまだ良い。最悪、肥料が無くなって手に入らない事も考えられる」と危機感の強いリアルな内容が聴いて取れます。近年の世界情勢の中、弊社も一部の商品を販売できない事態に度々直面しますが、農業資材も普段とは異なるルートで購入することも考えなければいけないのではないでしょうか。
今回はバットグアノを中心に肥料成分の解説、輸入事情および使い方を述べたいと思います。皆様の参考になる記述が一か所でもあれば幸いです。

バットグアノとは

そもそもグアノは窒素質グアノ、リン酸質グアノ、バットグアノの三種類に大分されます。とりわけバットグアノはコウモリの糞(ふん)や死骸が堆積したものが数百年という長い年月をかけて化石化したものを肥料にした農業資材です。コウモリと聞くと少し危険な感じがありますが、バットグアノは完熟して化石化しているのでそのような危険性はなく安全性が確保されています。また、バットグアノは特殊肥料に分類されます。農家の経験によって識別できる肥料とされており、堆肥も特殊肥料に分類されています。

バットグアノの成分

バットグアノは主にリン酸、石灰、腐植酸の三つの栄養素が多く含まれています。どの栄養素も植物にとって必要な栄養素ですが、特にリン酸(P)肥料三要素と言われ窒素(チッソ、N)カリウム(K)とならび重要な肥料分です。本章ではそれぞれの栄養素の植物に対する役割について紹介したいと思います。

リン酸

リン酸は植物の生育に必要不可欠である17つの必須元素の1つに数えられます。必須元素は多量要素と微量要素に分けられますが、リン酸は多量要素に入ります。多量要素のなかでも特に窒素リン酸カリウムは肥料三要素と言われ植物が取り分け多くの吸収を必要とする肥料分です。リン酸窒素の次に多く吸収される元素です。
一般常識的に我々は植物の根によってリン酸が吸収されると学習してきましたが、近年の研究によると、植物のリン酸吸収の20~80%は菌根菌によるものとされています。菌根菌は別のコラムで解説していますのでそちらをご覧ください。

菌根菌に関するコラムはこちら
>>>土壌リン酸を上手に利用する菌根菌の使い方

石灰(カルシウム)

石灰はカルシウムともいいます(苦土はマグネシウムです)。カルシウムは多量要素で植物に必須な元素で、その化学性はアルカリ性です。酸性に傾いた土壌pHに対してカルシウムを施用するとpHが酸性側に矯正されます。ただし、多量に施用すると今度は土壌pHがアルカリに傾いてしまい、微量要素であるマンガン、鉄、ホウ素などの土壌溶解性が悪化し植物の吸収が悪くなることが注意点として挙げられます。カルシウムは頂芽や根に影響する栄養素で、不足すると例えばトマトの尻腐やイチゴのチップバーンなどの生理障害が発生します。例えばマイクロバブル水は植物のカルシウム吸収を手助けする効果があり、実際にチップバーン改善の効果が多くのイチゴ農家から報告されています。

イチゴ農家のチップバーン改善の事例はこちら
>>>チップバーンが1/3程度まで減りました!ナノバブル水製造装置の効果を実感|鎌田充貴さん

腐植酸(フミン酸)

腐植酸はフミン酸ともいいます。腐植酸は土壌有機物に含まれる栄養素で、通常農家では堆肥によって補給を図ることになります。或いは最近は、政令指定土壌解消資材である腐植酸質資材による施用も一般的になってきたようです。フミン酸は植物の生育促進だけではなく根の伸長や発芽にも影響を及ぼしていると言われています。また、堆肥によってフミン酸を補給する場合は、堆肥の物理性によって排水性や保水性など団粒構造の構築および土壌微生物の活性化にも影響するので、フミン酸はいわゆる必須元素ではありませんが植物の生育や地力アップを助ける影の立役者と言えそうです。

腐植酸に関するコラムはこちら
>>>腐植酸を肥料(堆肥)として用いる効果とは?土壌改良で品質向上を

リンの輸入事情

リンの輸入事情は平成から令和にかけたこの数年間で大きく変化しています。
農林水産省の資料から2014年と2020-2021年のリンの輸入量が比較できます。

リン酸アンモニウム(リン安)の輸入量の比較

  2014年 2020-2021年
1 アメリカ(54%)
255千トン
中国(90%)
460千トン
2 中国(36%)
173千トン
アメリカ(10%)
51千トン
3 サウジアラビア
31千トン(6%)
その他の国(0%)
1千トン
4 その他の国(4%)
17千トン
輸入合計量 476千トン(100%) 512千トン(100%)

2014年はリン安輸入合計量476千tのうちアメリカから255千t(54%)、中国から173t(36%)を輸入しており全輸入量の90%をこの二か国から輸入しています。また全体のわずか10%ですがサウジアラビアをはじめとした諸外国からも輸入しています。
一方、2020-2021年はリン安輸入合計量512千tのうち中国から460千t(90%)、アメリカから51千t(10%)を輸入しており全輸入量の100%をこの二か国から輸入しており、他国からの輸入は殆んど無くなりました。

上表からみてとれる大きなことは以下の三点です。
・2014年から2020-2021年にかけて輸入合計量が36千t増加した。
・輸入相手国上位がアメリカから中国に逆転した。
・輸入相手国の偏りが極端に変化し、殆んど中国に依存するようになった。

リン酸に関するコラムはこちら
>>>リン酸肥料の効果とは|無駄にしない効果的な使い方

なぜこれほど大きく変化したのか?

日本の農業は、農家の高齢化によるリタイアも一因に作付面積は年々減少傾向にあります。これに伴い化学肥料の国内需要も年々減少しています。それにも関わらず輸入量が増加しています。理由は定かではありませんが、流通過程の何処かが確保している動きがあるのではないでしょうか。農家が肥料を確保していても精々翌シーズン分くらいでしょう(何年分も保管できる肥料置き場が普通無い)。コロナウイルスが世界的パンデミックと騒がれて間もなく世界の貿易も混乱したので、今後の万が一のために確保した動きがあるのではないでしょうか。
世界の貿易の混乱と言えば、アメリカ大陸から船便が出なくなった事態は記憶に新しいです。某ハンバーガーチェーンのポテトが2022年にコロナウイルスによる物流網混乱などで一時期販売が不安定になりました。コラム冒頭でも触れた様に、弊社が取り扱う資材の一つにカナダから輸入されている肥料があります。2022年は在庫確保に奔走し、お客様のご注文に応えることができずにいました(2023年3月現在は解消しています)。この時、代替品を探して中国の資材を検討し、結果的に取り扱うことになったのがインドネシア産のバットグアノです。弊社のような小さな企業でも仕入先に関連してアメリカ方面から中国方面を検討するくらいですので、日本全体で考えれば現在の輸入構造は不思議とも言いにくいのかもしれません。

購入先を複数持ってリスク分散する

肥料の購入ルートがJAに頼る方や出入りの肥料屋に頼る方、或いはホームセンターで購入する方など皆さんそれぞれです。物の値段が上がっても収入が増えない現象が長く続いているので結局のところは最も価格が安いところから肥料を入手することが普通になっています。かく言う筆者もトータルで計算して一番リーズナブルなところで物を購入します。農業に限らず民間企業でも、仕入先を絞り過ぎてしまうと万が一その仕入先が無くなったときに慌ててももう遅いかもしれません。現状を変化させると理想的な価格、製品性能、使用効果ではなくなり手間が増えて面倒ではありますが、「もし」を考えればのっぴきならなくなるよりよっぽどマシな気がします。

バットグアノの使用方法と効果

セイコーステラが取り扱うバットグアノは「リンサングアノ」(粒状,20kg)という商品になります。インドネシア産でコウモリに由来した天然の良質な有機質肥料成分が含まれています。く溶性リン酸*、カルシウム、フミン酸の含量が豊富なことが特徴な特殊肥料で、小さな粒状になっているので土をフカフカにして水はけを良くする土壌改良効果も期待できます。使用量は野菜や果樹の栽培では10アールあたり5袋程度の施肥が目安になり、元肥でも追肥でも効果的に使用できます。イネやムギ、鉢物花卉のポット用培土にも相性が良くおすすめの使用方法です。リン酸の効果によって根張り、花数増加、果実の実付きなどが良くなるため果菜類や花卉類には特に向いている点もポイントです。またフミン酸が豊富なため堆肥効果も得られます。普段堆肥が使用できない方は栄養分的に一部リンサングアノで代用できますので是非ご検討ください。

*緩効性肥料として土壌中でクエン酸によってゆっくり溶けるリン酸

まとめ

リン酸に限らず窒素(尿素)とカリウム(塩化カリ)も大部分を輸入しており、リン酸と同様に輸入相手国が偏っています。農家としてできることは肥料の仕入先に工夫をすることですが、自前で調達することも必要になってくるかもしれません。いわゆる地域資源の活用です。代表的な地域資源に籾殻が挙げられます。大量の籾殻は使い道がなく、お金をかけて処分されており、貴重な有機資源として何か有効的な活用を考えるべきです。最近はJクレジットという制度が少しずつ広がり、籾殻(燻炭)の利用が金銭的なかたちで農家に還元される仕組みがでてきましたが、もう少し原点に近づいて、儲けではなく土づくりのことを考えても良いと思います。そうれば肥料が足りなくなってきたときの選択肢が一つ持てるようになるのではないでしょうか。

籾殻の有効利用に関するコラムはこちら
>>>籾殻の処理に困っていませんか?使い方と効果をご紹介

肥料購入先のリスク分散!!バットグアノとその成分を解説

コラム著者

小島 英幹

2012年に日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程を修了後、2年間農家でイチゴ栽培を経験。
2021年に民間企業数社を経てセイコーステラに入社。コラム執筆、HP作成、農家往訪など多岐に従事。
2016年から現在まで日本大学生物資源科学部の社会人研究員としても活動し、自然環境に配慮した農業の研究に取り組む。研究分野は電解機能水農法。近年はアーバスキュラー菌根菌を利用した野菜栽培の実践を始める。
検定、資格は土壌医検定2級、書道師範など。

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