コラム
ウインドウレス鶏舎とは?メリット・デメリットを解説
公開日2023.03.14
更新日2023.03.15

ウインドウレス鶏舎とは?メリット・デメリットを解説

日本における採卵鶏飼養戸数は、1988年の103,000戸から概ね減少の一途をたどり、2018年には2,280戸となっています。一方、飼養羽数は1998年の190,402千羽に比べて2018年では184,350千羽と微減となっていることから、飼養戸あたりの羽数が増加しており、鶏舎が大型化していることが推察できます。このような大型の農場では、ウインドウレス鶏舎といわれるシステム化された大きな設備が採用されています。今回のコラムではウインドウレス鶏舎についての解説と、そのメリットとデメリットについてお伝えしていきたいと思います。

ウインドウレス鶏舎とは?

言葉のままですが、窓(ウインドウ)が無い(レス)鶏舎のことをいいます。閉鎖型鶏舎と呼ばれることもあります。1棟あたりおよそ10万羽ものニワトリを飼育することが可能とされるほど規模が大きく建設には費用がかかることから、大規模養鶏農家が採用することが一般的です。大型換気扇と断熱材を設置し、鶏舎内の光・温度・空気量(風量や風速)といった環境整備はコンピュータによって管理します。衛生管理は厳しく、鶏舎内部へ入る際には全身をシャワーで洗浄し、滅菌された衣類に着替えます。

ニワトリは長屋のような横に長いケージで飼育されています。ケージは6~7段程度の階層状になっています。飼料は建屋の外部に設置されたタンクにストックされ、ここから自動的に与えられます。産み落とされた卵はケージの下の樋を転がり出てきて、樋はベルトコンベアになっており、一定の時間になると自動的に収穫されます。

ウインドウレス鶏舎が普及した理由

1995年に設立された世界貿易機構により貿易の自由化が推し進められた結果、日本の飼養農家は国際的な競争力が求められ、コストを低減する必要に迫られました。ウインドウレス鶏舎は、大規模に採卵鶏飼養を行えることや、ワクチン投与が疾病対策となり消毒作業の代わりとなると考えられたことが普及した一因です。

ところが、実際にはサルモネラ菌・大腸菌などが原因となる汚染が発生しました。つまり、消毒を含めた衛生対策をしなければならないのですが、ウインドウレス鶏舎は水洗いや消毒薬散布を想定していない構造であったため、衛生管理は試行錯誤的に実施されるという問題が発生しました。

ウインドウレス鶏舎のメリット

効率的に競争力のある卵を生産できる

開放型鶏舎に比べて光線と換気量をコントロールしやすいことから、坪当たり100~120羽程度(開放鶏舎のおよそ3倍)と高密度に多くのニワトリを収容することができます。運動量が少なく開放型の鶏舎に比べて餌代がかかりません。そして高密度に飼育していますから効率が良く市場競争力のある価格で卵を生産することができます。

環境が整備しやすい

収糞用のベルトコンベアにより糞が自動的に掃除されるため清潔な状態を保ちやすく、適切に運用することが条件ですが鶏舎の内部や周辺で臭いが発生しにくくなります。給排気設備とニワトリから発せられる熱を利用して環境温度を調整する手法がとられることもあるようです。

野鳥に起因する疾病を予防しやすい

開放型鶏舎では、スズメやムクドリなどが侵入しやすい環境ですが、ウインドウレス鶏舎は外部と遮断されているため、野鳥の侵入が原因によるサルモネラ菌・大腸菌・鳥インフルエンザなどの病原菌の媒介リスクを低下させます。ただし、野鳥の媒介だけが病原体の感染経路ではありませんので他の衛生管理は実施する必要があります。

ウインドウレス鶏舎のデメリット

感染症の被害が広がりやすい

野鳥や害虫(害獣)の侵入がなかったとしても、細菌ウイルスが人の移動や給気口を通して鶏舎内に侵入することがあり、感染病が発生すると密度が高いことが悪影響を及ぼし、サルモネラ菌・大腸菌・コクシジウムなどを原因とする疾病が一気に広がりやすいとされています。また、人為的なコントロールミスやシステム故障などが発生すると、ホコリやアンモニアガスの増加を招き鶏舎内の環境の悪化が起こったり、疾病を広げてしまったりすることがあります。

ニワトリの健康問題を招きやすい

一般的なウインドウレス鶏舎では、一匹のニワトリが活動できるスペースはA4サイズ1枚程度とかなりの極小であるため、運動量の低下が起こり、健康問題を招きやすいとされています。不健康なニワトリは免疫が低下しやすく、病気にかかりやすくなります。感染症が広がる要因の一つにもなります。

構造上のデメリット

立体的な多段式構造のため、オールアウトを伴う消毒・ニワトリの観察・均一的なワクチン投与・ネズミ対策などが非常に難しいとされています。鶏舎の壁は一般に二重構造をしているため、一度ネズミが住み着いてしまうと対策が難しく、ネズミを媒介とした病原菌の拡大が指摘されています。糞をついばめるような場所に収糞ベルトコンベアを設置するとコクシジウム症が広がりやすいという側面もあります。

費用が大きい

建設費用や維持費用が大きいため、気軽に導入できるシステムではありません。運営していくために機械の操作を覚えたり、ノウハウを蓄積したりする必要があり、それも維持コストの一つとなります。

ウインドウレス鶏舎を見直す動きも?

欧州において1960年代に密集飼育などの近代的な畜産手法について問題が提起され、アニマルウェアフェアという概念が普及してきました。養鶏にあてはめて言うと、できる限り自然に近い快適な環境を用意し、ニワトリが健康になることで本来持っている能力を引き出し、安全性や生産性の向上につながるという考え方です。

一方、アニマルウェアフェアへ偏りすぎると生産性が落ちることになり、国際競争力が失われ、畜産農家は生き残れなくなるのではないでしょうか。国内自給率の課題を考えると国内の農家さんが減っていくのは日本にとって良いことではありません。日本国としての戦略をどうするのか本質的な議論を進めないと、どちらが良いのか判断が難しい問題です。

ウインドウレス鶏舎でなくてもできる野鳥の衛生対策資材

バードネット

ポリプロピレン製の糸で出来たバードネットは軽量でありながら、強度を兼ね備えた膨張用のネットです。ネットを展張することで畜舎への野鳥の侵入を防止します。縦糸と横糸を延伸式に融着しているため、縦・横・斜めどの方向からの引っ張りにも強く目合いが広がりにくいという特徴があり、厳しい環境にさらされる鶏舎での使用に適しています。またハサミやカッターなどで簡単にカットできるため、強度を保ちながら塞ぎたい窓や穴に適したサイズをつくることが可能です。

オゾン散水器

細菌ウイルスを不活化する効果の高いオゾン水を手軽に生成することができます。オゾン水は酸化力が強く病原体を不活化する効果が期待できます。酸素と水に戻りやすい性質があるため、現在のところ人間や動物には悪影響が少ないと考えられています。また、悪臭の原因となる有機物(例えばアンモニア)なども分子のもとか分解するため、においを低減させる効果も期待できます。今までは大型の機材が一般的でしたが、オゾン散水器はハンディタイプのため水道の蛇口につなぐだけでオゾン水を生成することができ、約600gと軽量のため取扱いしやすいというメリットがあります。

ウインドウレス鶏舎の立ち位置を明確に

今後、畜産農業においてウインドウレス鶏舎をどのような位置づけにするのか、日本の食料自給率や世界情勢などを含めて本質的な議論を進めていく必要性を感じました。枝葉末節の論点に陥ることなく、政府や農林水産省、そして大手マスメディアが率先して農業の将来について取り上げて頂けるように切にのぞみます。

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コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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