コラム
ビニールハウスの屋根散水とは?高温対策に効果的な方法を解説
公開日2026.01.05
更新日2026.01.05

ビニールハウスの屋根散水とは?高温対策に効果的な方法を解説

ビニールハウスのような施設栽培は、外部環境から作物を守るのに適していますが、夏場など気温が上昇する時期には内部温度が極端に高くなる傾向があります。その結果、作物の品質低下や病害虫の増加、そして農作業従事者への負担増といった問題が起こります。温度上昇を抑制する資材として遮光ネットや循環扇などがありますが、このような資材だけでは効果が低い場合の手段として「屋根散水」が注目されています。これは、屋根に散布した水が蒸発する際の気化熱によって、温度上昇を抑える方法です。

ビニールハウスにおける高温化の問題点

ハウス内の高温化は作物に深刻な負担をもたらします。ビニールハウスは、透明な被膜を通して太陽光が入りやすい一方で、熱が逃げにくい構造になっているため、気温が高い時期には外気温よりさらに高温になり、内部の温度が40℃を超えることも珍しくありません。高温環境下では、植物は気孔から水蒸気を放出して、体温調節を行います。温度が高くなりすぎると、光合成に必要な酵素が変形して作用しなくなってしまうためです。蒸散が上手く作用しなければ生育障害が起こりやすくなります。また、高温状態が続くと障害や病害虫が発生しやすい環境となり、被害の拡大スピードが早まるリスクが高くなります。結果として生産コストの増大や収量減少につながりかねません。防虫対策のため目の細かい防虫ネットを設置するケースがありますが、ハウスでは風の通りが悪くなり、施設内の温度上昇を助長しています。そして作物への悪影響ばかりでなく、ハウス内が高温になることは作業者にとっても過酷な環境となり、作業効率の低下や熱中症リスクの増大が懸念されます。

関連コラム:
ビニールハウスの暑さ対策|ハウス内の温度を下げる方法と熱中症対策を解説
夏場のビニールハウスの高温対策│作物を暑さから守るには?

屋根散水とは?

屋根散水は、ビニール屋根の外側に水を撒いて一部を蒸発させることで熱を奪い、ハウス内部の温度上昇を抑える方法です。比較的、低コストで導入することができるため、小規模ハウス向けの冷却技術として注目されています。ハウスの内部を冷やすのではなく、太陽光が入ってくる部分から熱を奪って温度上昇を抑えるという方法です。適切に運用すればコストを抑えながら高温対策が実施できます。水に濡れた表面積が大きくなるほど、水が蒸発する際の熱の量が増えてハウスを冷やすことになります。

屋根散水のメリットとデメリット

メリット

冷却システムとしては、ヒートポンプエアコン、細霧冷房、パッドアンドファンなどもありますが、これらに比べて導入コストや維持費用が安いといった特徴があります。また、既存のビニールハウスに後付けしやすいうえに、2~3人で簡単に設置することができます。温度上昇を抑制することで、高温障害を軽減し、作物の品質や収量を向上させられます。さらに、ハウス内作業の効率や作業者の安全確保や快適性の向上に役立ちますので、熱中症対策としての効果も期待できます。

  • 後付けで簡単に設置できる(灌水チューブを流用できる)
  • 他の冷却システムに比べてコストが安い
  • 熱中症対策としての効果も期待できる

関連コラム:
野菜の高温障害と対策について解説
農作業中の熱中症対策!命を守るための予防と対処法・対策グッズ紹介

デメリット

水質の悪い水を使うと散水チューブが目詰まりするため、質の良い水を使う必要がありますので、井戸水の水質次第では水道水を使うこととなり、ランニングコストがかかります。また、気化熱という形で冷却しているため、曇天や雨天といった天候が悪い日や、屋根面が乾くと冷却効果を発揮できません。日中の屋根散水量が多すぎると、夜間のハウス内の湿度が高くなり湿害を助長することがあります。

  • 水質の良い水を使う必要がある(コスト増)
  • 曇天や雨天の日は効果が低い
  • 過度な散水は湿害を助長する

一般的な屋根散水の方式

散水チューブ(灌水チューブ)方式

農業用の灌水チューブをハウス上部に敷設して広範囲に水を散布する一般的な冷却方法です。複数のチューブを取り付ければ大量の水を一度に散布でき、ハウス全体を均一に冷やす効果が期待できます。取り付けはポリエチレンバンドなどによって簡単に行えますし、すでに灌水チューブを持っていれば流用して、導入コストを抑えることが可能です。ミスト式の灌水チューブの場合、霧粒が小さいため強風に煽られると屋根に水がかからないことがあります。

スプリンクラー方式

ハウスの外側に複数のスプリンクラーを設置し、側面から屋根全体に散水する方法です。使い方によっては、ビニール被覆の汚れを落としたり、雪を溶かしたりする設備として利用できます。ハウスのサイドに設置するため、散水チューブ方式よりも、比較的容易に設置することが可能です。水滴が大きいため、強い風で水が流されにくいといった特長があります。

いずれの方式においても、単体で使用するとすぐに水が蒸発してしまうため、遮光や遮熱用の不織布や寒冷紗などの被覆資材を併用して、屋根に水分がとどまりやすいようにする方式が良いと考えられています。

ハウス屋根散水冷房システムの活用ポイント

遮光資材を同時に利用する

屋根散水は直接的に熱を奪う方法ですが、ハウスに入ってくる光や熱量をコントロールすることも同時に大切です。遮光資材を展張することで、日射そのものを抑制しながら水持ちも良くなるため、散水による冷却効率を高められます。鳥取県野菜研究室の資料によれば、遮光率40%以上の遮光資材で安定した昇温抑制効果が期待できる(遮光率30%の遮光資材では効果がなかった)と報告されています。また、大阪府農林水産総合研究所の資料によれば、遮光資材は長繊維不織布が割繊維不織布や透明寒冷紗に比べ冷却効果が高く、かつ安価であるため適当であると報告されています。遮光資材を用いる別の役割としては、散水チューブの擦れによってビニール被覆に傷がつくのを予防するといった点があげられます。

関連コラム:ビニールハウスの遮光効果とおすすめの遮光・遮熱商品

散水時間と休止時間

鳥取県野菜研究室の資料によれば、午前8時から午後15時までのあいだで、1回あたりの散水を15分にとどめて休止を15分以内にすると、連続散水とほぼ同等の昇温抑制効果が発揮されると報告されています。タイマー付きバルブを使用し散水間隔を設定すれば安定した温度管理が実現しやすくなり、省力化にもつながります。散水時間が長すぎると夜の湿度が過度になり、病害を引き起こす原因となるため注意しましょう。

作物ごとに最適な温度・湿度の範囲は異なるため、それぞれの栽培特性に合わせた運用を行うことが重要です。試験的に導入したり、すでに実施している農家さんから情報を仕入れたりするなどを、最適化を図る作業が求められます。

散水の角度は低くする

散水の角度が高すぎると強風時に水が煽られてしまい、屋根に均一に水がかからず冷却効果が低下する可能性がありますので、散水の角度はなるべく低くしたほうが良いとされています。

水を再利用してランニングコストを抑える

ビニールハウスの肩の部分に雨どいと、貯水タンクを設置して、散水した水を回収し再利用すると水の使用量を節約してランニングコストを抑える方法があります。オプションが増えるほど初期コストも上昇しやすいため、コストパフォーマンスの観点も忘れずに検討しましょう。

電気を利用した他の資材に水がかからないように注意する

通常の雨とは違う角度からハウスの屋根に水がかかるため、電気を利用した資材に影響がないように注意する必要があります。特にスプリンクラー方式の場合、斜めからの散水となり、雨では影響がない資材でも水が想定外の場所から侵入し故障の原因となる場合があります。

計画的にメンテナンスを実施する

屋根散水システムの故障は、夏期の高温シーズンに発生すると作物や作業環境に大きな影響を及ぼします。特にポンプの故障や配管の破損は冷却効果を大幅に減少させるため、予防策が重要です。日頃のメンテナンスを徹底することで、トラブルの発生を未然に防げます。定期的な点検スケジュールを設定し、ポンプや配管に異常がないかを確認する習慣をつけましょう。消耗部品の交換時期を把握しておけば、故障リスクを軽減できます。

屋根散水との併用におすすめの換気扇|空動扇&空動扇SOLAR

換気や遮光などの複数の手段を同時に活用すると、より安定した温度管理が実現しやすくなります。そこで屋根散水と併用をおすすめしたい資材が空動扇&空動扇SOLARです。風の力や太陽光を利用して、換気のためのベンチレーターが回転し、ビニールハウスの天井部分にたまりがちな熱を排出します。内蔵された形状記憶スプリングが温度変化に反応して伸縮しベントが開閉する構造となっており、一度、温度設定をしてしまえば、自動的にベンチレーターが開閉しますので、農作業が効率的になります。一般的な天窓を新設するよりも導入コストを抑えることができます。

※空動扇SOLARのソーラーパネルアタッチメントとベンチレーターの隙間から水が侵入すると内部の部品が錆びて故障の原因になることがあります。散水角度にはくれぐれもご留意ください。詳しくはお問合せ CONTACT USからご連絡ください。

ビニールハウスの屋根散水とは?高温対策に効果的な方法を解説(イメージ)
左:空動扇|右:空動扇SOLAR
ビニールハウスの屋根散水とは?高温対策に効果的な方法を解説(イメージ)
空動扇は自然の風の力でベンチレーターを回転させることでハウス内の暑い空気をハウス外へ排出します。
ビニールハウスの屋根散水とは?高温対策に効果的な方法を解説(イメージ)
空動扇SOLARは自然の風の力とSOLARの力を利用してビニールハウス内の熱い空気をハウス外へ排出します。無風の時でも晴れてさえいれば換気能力が失われません。
ビニールハウスの屋根散水とは?高温対策に効果的な方法を解説(イメージ)
ビニールハウスの上部に設置することで、熱気と湿度を排気します。
ビニールハウスの屋根散水とは?高温対策に効果的な方法を解説(イメージ)
パイプ取付部分の爪の直径は約25mmと約40mmです。25mm側を補助パイプへ、40mm側を母屋パイプに固定します。
ビニールハウスの屋根散水とは?高温対策に効果的な方法を解説(イメージ)
設定温度(換気弁の開閉温度)は形状記憶スプリングのツマミを回すことで0~40℃の間で設定することができます。
ビニールハウスの屋根散水とは?高温対策に効果的な方法を解説(イメージ)
ビニールハウスの屋根散水とは?高温対策に効果的な方法を解説(イメージ)
ビニールハウスの屋根散水とは?高温対策に効果的な方法を解説(イメージ)
ビニールハウスの屋根散水とは?高温対策に効果的な方法を解説(イメージ)
ビニールハウスの屋根散水とは?高温対策に効果的な方法を解説(イメージ)
ビニールハウスの屋根散水とは?高温対策に効果的な方法を解説(イメージ)

屋根散水を活用して高品質な作物を栽培しましょう

一つの方法だけではビニールハウスの暑さ対策には限界があり、作物の品質や収量を維持しながら、高温期でも安定した生育環境を作るためには、複数の対策をバランスよく取り入れる必要があります。屋根散水は、換気設備や遮光資材など他の手段と併用することで、より効果的にハウス内の温度上昇を抑制し、高温下でも安定して高品質な作物が栽培できるようになります。

関連コラム:ビニールハウスの冷却対策完全ガイド:高温期を乗り切る方法

参考資料:
屋根散水による夏季のパイプハウス内昇温抑制技術の開発 (大阪府 環境農林水産研究所)
ビニールハウスの屋根散水による高温期のハウス内昇温抑制 (鳥取県 野菜研究室)
屋根散水による施設内冷却技術マニュアル
(群馬県農業技術センター・栃木県農業試験場・農研機構)

ビニールハウスの屋根散水とは?高温対策に効果的な方法を解説

コラム著者

セイコーステラ 代表取締役  武藤 俊平

株式会社セイコーステラ 代表取締役。農家さんのお困りごとに関するコラムを定期的に配信しています。取り上げて欲しいテーマやトピックがありましたら、お知らせください。

https://x.com/SEIKO_ECOLOGIA2

おすすめ記事
Tweets by SEIKO_ECOLOGIA
youtube
ご注文
見積依頼
お問合せ