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土壌EC・土壌pHとは?その測定方法と適正値について
公開日2022.09.16
更新日2022.09.16

土壌EC・土壌pHとは?その測定方法と適正値について

野菜の収量や品質が安定しないのは、もしかすると土壌が病気にかかっているからかもしれないと考える人が増えてきました。土壌が病気というのは例えた表現ですが、土のドクター「土壌医」は土壌診断を行い、土のトラブル解決のお手伝いをしてくれます。土壌医が土の診断をする際に測定する代表的な項目の一つが土壌ECや土壌pHです。今回はこのECやpHの測定値が意味する内容や測定方法について解説していきたいと思います。

土壌EC・土壌pHとは?

土壌EC

土壌ECとは土の電気伝導度(Electric Conductivity)を示す値で、単位はmS/m(ミリジーメンス)です。土壌中に塩の形として残っている栄養分が多いほど、電気伝導度は高くなるわけですから、EC値は土に含まれている栄養分濃度と強い相関性があるといえます。特に硝酸態窒素との関係性が強いとされ、土壌中の硝酸態窒素の量を推定する際に利用されています。目安としては1mS/m(ミリジーメンス)につき硝酸態窒素の含有量は20mg程度(100gあたり)とされています。その他の栄養素については、EC値だけで土に含まれている量を推定するのは難しいと考えられています。

土壌pHとは

pH(Potential Hydrogen)とは水溶液の「水素イオンの濃度」を示すもので、酸性やアルカリ性の傾向を表す値です。0~14の数字で表し、数字が小さいほど酸性、大きいほどアルカリ性の性質が強くなります。一般に、日本の国土は、火山灰土壌であることや雨(雨は大気中の二酸化炭素が溶けるため弱酸性になる)が多いことから酸性に傾いています。昨今のマスコミの報道により、すっかりイメージが悪くなってしまった黄砂ですが、この黄砂はカルシウムやマグネシウムなどのアルカリ性物質を運んできて、酸性土壌に傾いている日本の国土を中和したり、土壌を肥やしたりする役割を担っています。黄砂は、東アジア(ユーラシア大陸の東部)の砂漠や高原などの乾燥地帯で、数千メートルの高度まで吹き上げられた土壌や鉱物の粒子が偏西風の影響により、日本列島に降り注ぎます。

土壌EC値や土壌pH値といった2種類の指標を計測・管理するだけでも、翌年の施肥量の目安となるため、「品質が安定する」「肥料を調整できる」「濃度障害の発生リスクを抑える」などのメリットが生まれます。

土壌ECと土壌pHの計測方法

上澄み液測定法

土を5つの地点(4つ角と対角線が交わる交差点)から採取し混ぜ合わせ、風通しの良い場所で乾燥させます。この土が分析試料の風乾細土になります。風乾細土に蒸留水(精製水)を加えて、液体攪拌装置「スターラー」で攪拌します。風乾細土と蒸留水(精製水)の割合はECを計測する場合と、pHを計測する場合は異なります。ここではH2O法での計測について示します。

<風乾細土と蒸留水の割合>
ECを測定する場合:風乾細土1に対して蒸留水(精製水)5
pHを測定する場合:風乾細土1に対して蒸留水(精製水)2.5

水道水や井戸水では、それ自体の持つEC値に影響を受け正確に測定ができないことがあるため、混ぜる水は蒸留水か精製水をご使用ください。測定用の標準液が良いでしょう。約30~60分間、攪拌したら上澄み液(上側に残った澄んだ液体)に電極を浸けて値が安定したところで読み取ります。研究機関などでも採用されている信頼性の高い方法です。植物の生長に影響をあたえる根の周りの土は採取しにくいため、根回り周辺の値を計測がしづらいという点や、計測に手間や時間がかかるというデメリットがあります。

土壌測定法

蒸留水や精製水で土壌を湿らした状態にして、ダイレクトに計測する方法です。土が乾燥していると測定できないため、バケツ1杯の蒸留水(精製水)を撒いて20~30分程度放置し、土が手で団子が作れる程度になったらセンサーの電極部を土壌に突き刺して数値が安定したところで測定します。土を掘り起こしたり攪拌したりする必要がなく、根の周辺を手軽に測定することができますが、上澄み液測定法に比べて正確性に劣りますので、複数の場所で測定し平均を取るのが良いとされています。

土壌ECや土壌pHの適正値は?

土地の気候や、土壌の種類や育てる作物の品目・品種などにより、適正な値は異なりますが、一般的な適正値についてお伝えしたいと思います。

土壌EC

0.4~1.0mS/cm程度が適正の農作物が多いです。1.0~1.5mS/cmを超える値が出た場合は、栄養塩類が過剰に残っている可能性が高いため、ECを下げる対応を行わないと、塩類集積による濃度障害の発生リスクが高くなるとされています。

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ECに対する農作物の耐性

EC 耐性 農作物
0.4以下 弱い インゲン・キュウリ・ソラマメ
0.4~0.8 やや弱い レタス・タマネギ・イチゴ・オレンジ・ナシ・モモ・リンゴ・レモン
0.8~1.5 普通 イネ・コムギ・カボチャ・キャベツ・サツマイモ・トマト・ナス・ニンジン・ネギ・ブドウ・ブロッコリー
1.5以上 強い アスパラガス・ダイコン・ハクサイ

土壌pH

pH5.~7.0が適正の農作物が多く、pH6.0~6.5の弱酸性の土壌で最も良く育つ農作物が多くなっています。酸性に傾き過ぎると、石灰や苦土が欠乏し、アルミニウムや鉄が溶け出して根の伸長を阻害します・反対にアルカリ性に傾き過ぎて、ホウ素やマンガンなど微量要素の吸収が妨げられます。

農作物ごとの適正なpH

pH 状態 生育しやすい農作物
5.0~5.5 酸性 サツマイモ・ヤマノイモ・ミカン・モモ・チャ
5.5~6.0 弱酸性 サトイモ・ジャガイモ・ショウガ・ニンニク・ブルーベリー
5.5~6.5 弱酸性~微酸性 イネ・イチゴ・キャベツ・コマツナ・タマネギ・ダイコン・ゴボウ・ウメ・カキ・ナシ・ミカン・リンゴ
6.0~6.5 微酸性 アスパラガス・キュウリ・スイカ・トウモロコシ・トマト・ネギ・ハクサイ・ブロッコリー・ナス・メロン・ピーマン・レタス・キウイ・モモ・バラ
6.5~7.0 微酸性~中性 大麦・サトウキビ・ホウレンソウ・ブドウ・ガーベラ・スイトピー

土壌EC値や土壌pH値が適当でない場合の対策

ECが低い場合

肥料成分が足りていない状態です。積極的な施肥が必要です。

ECが高い場合

土壌中の栄養塩類が多すぎる可能性があり、特に硝酸態窒素との関係性が高いとされています。塩類集積が進みすぎると生理障害の発生リスクが高くなります。栽培を始める前に、ソルゴー(ソルガム)やトウモロコシなどの緑肥を使った除塩や、深耕や天地がえしを行い、塩類濃度を和らげるなどの対策が必要です。特に施設栽培においては、もともと施肥量が多いことや、降雨による土壌への水の浸透がない上に、施設内の急激な温度上昇による水分蒸発により、地下に溜まっている栄養分が地表部に上がってきやすいためECが高くなりやすいようです。

pHが低い場合(酸性に傾いている場合)

窒素・リン酸・カリといった三大栄養素や、モリブデンなどの微量要素が土壌に栄養があっても根から栄養分を吸収できなくなります。一方、マンガン・鉄・銅などは酸性の影響で土壌に溶け出て、植物の摂取過剰症状を引き起こします。日本は降雨量が多い(雨は弱酸性)ことや、腐植が豊富で微生物が活性化し二酸化炭素を放出することで、酸性よりになりやすいと考えられています。

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pHが高い場合(アルカリ性に傾いている場合)

石灰資材を投入しすぎたことが原因と考えることができます。アルカリ性に傾いた土壌では、マンガン・ホウ素などの微量要素を吸収できなくなり、生理障害が発生しやすくなります。pHを下げるには、石灰資材の施用を控えたり、肥料を施用する場合は硫安などの酸性質肥料を施用したりする方法があります。

土壌ECや土壌pHを適当に保つためのオススメの資材

ECが高く塩類集積が起こっている土壌にオススメ|地力の素

腐植物質は、植物の根に有害な土壌中の成分を吸着したり結合したりする作用(土壌緩衝性能)があると考えられています。地力の素カナディアンフミンには、フミン酸やフルボ酸といった腐植物質が含まれているため、土づくりの際に活用することで土壌緩衝性能が向上し塩類集積による障害発生のリスクを低減させる効果が期待できます。少量で堆肥1トン分と同等の腐植物質を保有しているため、堆肥投入量を軽減し農作業の省力化にもつながります。

地力の素の解説動画はこちら

pHが低い(酸性に偏りすぎている)土壌にオススメ|スミちゃん

一般に籾殻燻炭のpHは8.0~10.0とアルカリ性のため、土壌に施肥することで酸性土壌の改善につながります。籾殻連続炭化装置のスミちゃんは、処分に困った籾殻を簡単に燻炭化することができる便利な機械です。脱穀後の籾殻を処分するにも費用がかかり、農業経営の負担になりますが、籾殻を土壌改良材として活用することで処分費用と培土費用のコストを減らすことが可能です。酸性土壌の改善(土の化学性の改善)に加えて、微生物の活性化による団粒構造化の促進など、物理性や生物性の改善といった効果も期待できます。

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より品質の良い作物のために土壌ECや土壌pHの管理を

土壌のECやpHは、人の体温と同様に高すぎても低すぎても良くありません。土を健康に保つためには定期的に検査を行い、管理していくことが大切になりますね。簡易なテスターもありますので、一度ご自身で圃場の土壌分析をしてみてはいかがでしょうか。最近ではJAやメーカーさんなどでも土壌医の資格を持った方がいらっしゃいますので、本格的に調べたい方は外部に依頼するのも一つの手段です。今回のコラムを皆様の土づくりにお役立ていただければ幸いです。

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コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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