土壌改良の必要性
土壌改良とは
土壌改良とは耕作に適さない土地を作物にとって理想的な状態になるように改良を加えることです。作物の種類に関わらず、良い土壌の条件は以下のような項目があげられます。良い土壌の基本条件として把握しておくと良いでしょう。
- 通気性が良い
- 保水性や透水性(水はけ)が良い
- 通気性や保肥力に優れている
- 病原菌や害虫が発生しにくい
- 腐食が多く有益な微生物が存在する
- pHが適当である
土壌をこのような栽培に適した状態にするためには、土壌改良材の施用や深耕・客土をするなど土地をお手入する必要があります。
土壌改良の不実施により起こること
生長が抑制される
土の通気性や排水性が悪いと根が十分に生長せず、生育が悪くなる可能性があります。根の成長には新鮮な空気と適度な水が必要でかつ養分が土中になければなりません。排水性の悪い土壌は水分を含んでいる影響で表面が固く締まり、内部は常に水を含んだ状態になります。内部が湿っている状態のため根が酸素を吸うことができず腐ってしまいます。
反対に排水性が良すぎて保水性(水持ち機能)がないと、必要な水が土中に保たれず急激に乾燥します。植物は根から水を吸えない状態になると、水の損失を防ぐため気孔を閉まります。それにより二酸化炭素も取り込めなくなり光合成が抑制され、成長が抑えられてしまいます。
肥料が利きにくくなる
土壌の保肥性が低いとせっかく施肥をしても、根が養分を吸収する前に流れてしまいます。樹勢を回復させようと肥料を施肥しても良くならないケースが発生します。
病原菌や害虫が発生しやすくなる
微生物がいない土壌では植物にとって有益な菌が減り、植物体に害を与える病原菌や害虫が発生しやすくなります。一度、病気や害虫が発生してしまうと収量に悪影響をあたえ、対策にも費用と時間がかかるため農家さんにとっては大きな痛手となります。
団粒構造が維持されにくくなる
有益な微生物が存在しないと土壌の粒子が単一になってしまい、通気性や排水性に優れた土の団粒化がおこりにくいため土壌の性能が良くなりません。水分や空気を保持する機能が低くなり、保水性と排水性が悪くなります。
病気にかかりやすくなる
pHとは酸性・アルカリ性の程度を表す値です。pH7を中性として0~14の値で表されます。0~6までが酸性で数字が小さいほど強酸性、8~14がアルカリ性で数字が大きいほど強アルカリ性を示しています。作物にとって土壌の酸性度が適当でないと、必要な養分が土中に含まれていても根から栄養を吸収しにくくなります。酸性の強い土壌ではリン酸を吸収しにくくなり根が傷むことがあります。反対にアルカリ性に傾くとマグネシウムや鉄などのミネラルが吸収できなくなり、病気になりやすくなるといわれています。
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土壌改良に使用する資材の種類
土壌改良に関する資材を土壌改良材と呼びます。広義では土壌に混ぜ込むことで土を良い性質に変えることができる資材全般のことをいいます。土壌改良材には多くの種類があります。育てる作物に適合するように土を選定・配合した客土材や、化学的に酸性土壌を中和する石灰などは良く活用されている土壌改良剤です。圃場に合わせて有機物由来の土壌改良材を自ら作っている農家さんもいるようです。
植物由来
籾殻
稲を脱穀した後に残った籾殻は珪酸を多く含み固い構造のため、土と混ぜても比較的長く原型をとどめています。そのまま土に混ぜたり堆肥にして混ぜたり蒸し焼きにして混ぜたりと、いろいろな方法で使用でき通気性も確保できます。籾殻そのものは肥料要素が少ないため、そのまま使うときは通気性を確保する目的で使用するのが一般的です。肥料として利用する際は鶏ふんや米ぬかなどの有機物とよく混ぜ水を加え発酵させます。低温で蒸し焼きにする籾殻くん炭は、アルカリ性を帯び酸性に傾いた土を中和します。黒色をしているため土の表面に播くと保温効果を発揮します。
腐葉土
腐葉土は落ち葉に米ぬか・鶏ふん・水を加えて発酵させたもので牛ふん堆肥と似ています。期待される効果は通気性と排水性の向上であるといわれています。里山が近ければ落ち葉は比較的簡単に入手できますが、腐葉土の原料である落ち葉は昆虫の卵を産み付ける場所だったり胞子の発芽場所だったりするため、充分発酵させずに圃場に入れると病害虫の原因を持ち込むことになります。熟成させた病原菌のついてないものを使用するように注意してください。余談ですが腐葉土つくりが盛んになれば里山も整備され、人里と獣の住むところが分けられ鳥獣被害を少なくできるかもしれません。
バーク堆肥
土壌の膨軟化(土をふかふかにやわらかくする)の効果が高いといわれている土壌改良資材です。樹皮を鶏糞や油かすなどを加えて発酵させたもので、有機物を含み分解される速度が遅い特性があります。微生物の餌になるため、土に混ぜると多くの微生物が住み着き土壌が活性化されます。微生物により有機物がゆっくり分解されるため速効性はありませんが、分解が進むと保肥力や保水力が高まり、中長期的に土壌中の栄養素の状態が改善されるといわれています。植物繊維の間に空気を含んでいるため、圃場の表面にまくと保温効果が期待できます。
ピートモス
土壌の膨軟化(土をふかふかにやわらかくする)や保水性の改善に用いられる資材です。水分を吸収する特長があり水もちを良くします。また土質を酸性寄りに変化させる効果が見込めますのでブルーベリーと相性が良いといわれています。ミズゴケ・スゲなど水気の多い場所で育ったコケ類の植物が分解が進まない状態で堆積し、泥炭(腐食化した天然の有機質土)と呼ばれる状態になったものを乾燥させて細かく砕いて製造されます。
木炭
木材を蒸し焼きにして炭化させたものです。多孔性が高く内部の表面積が大きいため、水分を保ちつつ空気が流れやすくなります。木炭は通常の土壌では繁殖しにくい作物にとって有益な微生物の住みかとなり、有効微生物が繁殖します。特に菌根菌の繁殖率が高く、作物の生長を助けます。黒色で太陽の光を吸収することから寒い季節には保温効果、暑い季節には根の蒸れを防ぐ効果があります。
動物由来
牛ふん堆肥
牛ふんにおがくず・ワラ・ウッドチップなどを混ぜ6か月ほどかけて発酵させます。牛ふんはほとんどが食物繊維からなっているため、鶏ふんに比べ栄養素の少ない堆肥ができます。保水性・通気性を確保するために使われることが多く、圃場をふかふかにし肥料もち性能が良くなることが期待できます。食物繊維の影響で土中に混ぜると菌類を含む微生物の養分となって、これらが活性化すると言われています。
珪藻土焼成粒
珪藻土とは海底や湖底で珪藻というプランクトンが、長い年月をかけて大量に沈積した化石を1,000℃以上の高温で燃焼させセラミック化したものです。孔体で有益な微生物の増殖を促進します。無数の微細多孔は作物にとって必要な水分・空気・肥料などを蓄えることができ、硬質のため水を含んでも膨張したり破裂したりすることがありませんので長期にわたり土壌改良の効果が期待できます。
鉱石由来
パーライト
黒曜石・真珠岩などの火山岩を原材料とし高温で熱処理した発泡体です。加熱すると膨張するとともに内部の水分がガス化し多くの孔を作ります。軽石のような構造に似ており小さな多孔質の粒状になっています。特に通気性を高める効果が期待できます。原材料の種類によって孔の構造が異なり効果が違いますので注意してください。
原材料は通常の岩石に比べ比重が軽いため土壌に混ぜ込むと軽量化が図れます。ビニールハウス内の高設台の加重負荷を下げたい場合や、露地で耕運作業の省力化を図りたい場合は有効です。しかし大量に投入すると根がきちんと保持できず作物が倒れてしまいますので、混ぜる割合は1割位までが良いといわれています。
排水性を重視する場合は黒曜石由来の物を、保水性を重視する場合は真珠石由来のものを選択してください。土壌の性質をよく観察し現在の土壌に適したものを利用するようにしましょう。高温で焼いてあるためセラミックスのような性質があり耐火性・耐薬品性・断熱性にも優れています。pH値は中性です。
苦土石灰
ドロマイトといわれる鉱物を粉や粒の状態に加工したものです。日本の土壌は雨の影響で酸性になっている場合が多くpH値を調整するために使用します。カルシウム・マグネシウム・アルカリ成分が含まれているものが多いようです。一般的には農閑期や栽培を休んでいる時期に使用します。入れすぎるとアルカリに傾くので使用量には注意が必要です。
ゼオライト
ゼオライト(沸石)とは粘土鉱物の一種です。結晶構造による小さな孔が多数あるという特徴があります。吸着機能・イオン交換機能・触媒機能に優れており、肥料の栄養素を吸着することによる保肥力の向上や微細な穴による土壌の通気性の向上などの効果が期待できます。
バーミキュライト
苦土蛭石といわれるケイ酸塩鉱物です。高温で加熱するとバーミュキュライトに含まれる水分が水蒸気になり、ヒルのように膨張していくため蛭石(ヒルいし)と呼ばれています。軽量で多孔質のため保水性・保肥性・通気性の改善や、断熱性能により作物の根を暑さや寒さから守るという効果が期待できます。
ベントナイト
モンモリロナイトという粘土鉱物を主成分とする岩石です。火山噴火で降り注いだ火山灰が堆積し温度や圧力の影響で生成されたものと考えられています。漏水を防止し保水力や保肥力を向上させます。水田の漏水防止に使われることが多い農業資材です。
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土壌改良のポイントと注意点
土壌改良のポイント
畑の状態をきちんと把握していなければ改良すべき点がわかりませんので、まずは圃場の土の状態を知ることが重要です。通気性・保水性・土粒の大きさ・土の粘度・pH値などを知ったうえで、改良すべき点を確認し土壌改良を行う必要があります。どのような土壌改良材を使い、いつ散布するかなどの計画を決めておくことも大切です。
土地の状態を詳しく調べたい場合、土のサンプルを採取し送ると診断書を返してくれるサービスもあります。
土壌改良材を利用せずに土壌改良を行う方法もあります。土を深耕し上の層と下の層を入れ替える天地返しや、他の場所から性質の異なる土を搬入する客土作業、栽培している植物を収穫せずに土と一緒にして耕す緑肥などがあり、これらは毒性が少なく安全性の高い方法と言われています。土の病害虫を死滅させるために太陽熱・蒸気・熱湯などを使用した消毒法もあります。薬剤に頼らず高温殺菌ができれば、「有機JISマーク」の認証を受けやすくなるというメリットもあるようです。
土壌改良時の注意点
土壌改良材は使い方を間違えると、かえって圃場の土壌環境を悪くしてしまいますので注意が必要です。pH値を改善しようとして苦土石灰を入れすぎるとアルカリ性に傾いてしまい、一度アルカリ性に傾きすぎた土壌は酸性土壌より改善が難しく厄介だといわれています。パーライトのところでも書きましたが、土壌軽量化資材をあまり使いすぎる(土壌に対して2割以上)と土壌が必要以上に柔らかくなり植物が支えられなくなります。このような資材の使用量は対象土壌に対し1割程度を目安とし、改善が見込めない場合は深耕・客土作業・天地返しを行うなど別の方法も取り入れましょう。
土地の状態によっては土壌改良材では改善されにくいケースもあります。例としては富士山の噴火によって火山灰に覆われた関東ローム層や東日本大震災の津波による塩害などは、範囲が広くまた深くまで影響し及ぼしているため、簡単には土壌改良ができません。
土壌改良の時期はいつが良いの?
作物の根の活動が停止している冬場(12月~2月ごろ)が適していると考えられています。寒さにさらすことで土が風化して柔らかくなり、土壌中の害虫や病原菌を駆除することができます。
土壌環境の改良に効果的な農業資材
そこでおすすめしたいのが地力の素 カナディアンフミンです。カナディアンロッキー産の天然腐植質で、カナディアンフミン原鉱を粉砕した高純度フルボ酸・100%有機質土壌改良材です。土壌に混和することにより連作で崩れた微生物のバランスを整え、健全な土を取り戻します。病気(萎凋病)の発生が緩和された土壌に回復し、ネコブセンチュウ被害の緩和が報告されています。また高純度フルボ酸が植物に必要なミネラルや微量要素をキレート化(吸収されにくい養分を吸収しやすくする)し細胞内に届けるはたらきをします。光合成を活性化し、窒素成分を効果的に葉や茎の組織に変えたり、根にはたらきかけて根量を増やします。
土壌改良し高品質な作物を育てましょう
土は時間の経過や連作により粘土質や砂質になるなどクオリティーが低下していきます。作物の成長を促進するためには定期的なメンテナンス(土づくり)が必要です。土壌改良材はたくさん種類があり効果も様々ですから、現在の土の環境を良く観察し適切に活用しましょう。土壌改良材を上手に利用し土壌環境を整え収量アップを目指しましょう。
コラム著者
キンコンバッキーくん
菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。
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