コラム
土壌改良資材の基礎知識|より良い土づくりを目指して
公開日2021.01.12
更新日2021.07.01

土壌改良資材の基礎知識|より良い土づくりを目指して

農作物が健全に育成する環境づくりに欠かせない『土壌改良資材』。現在では泥炭(ピート類)、バーク堆肥、腐植酸物質資材など、さまざまな種類が存在しており、その使用する種類によって期待できる効果が変わることが知られています。土壌改良資材の成分や適切な使い方を知ることができれば農作物の病害虫リスクの低減・品質の向上・収量の増加などが期待できますので必要な知識を身に着けたいですよね。今回のコラムでは土壌と農耕の歴史~おすすめの土壌改良資材に関して詳しく記載していきたいと思います。

土壌と農耕の関係

地球は半径6400kmのほぼ球体であり、表面積の70%が海洋、30%が陸地です。その陸地表面の数cmから数m、平均すると18cmが土壌といわれています。この全ての土壌上で農耕ができるわけではなく、ユーラシア大陸北部の寒冷地帯やアフリカ大陸の砂漠地帯など地理や気候的に不利な地域では容易な農耕活動はできません。多くの古代文明は大河流域で起こってきましたが、これは大河流域の土壌が肥沃で農耕を行うのに適しており、多くの人口を養うことが可能だったからです。近代になりヨーロッパで輪作技術が発展し、1843年にイギリスで化学肥料が登場してからは作物生産性が改善されました。現代に至っては養液栽培や植物工場が発展し土壌に頼らない農業方法が確立され食料生産の幅が広がりましたが、我々が口にしている多くの農作物は土壌を利用して生産されたものです。

土壌と農業のバランス

農業をしていると土壌について色々な事を考えると思います。「施肥設計は間違いなくできただろうか」「耕起は深くまでできただろうか」「土壌消毒はうまくいっただろうか」「土壌病害は発生しないだろうか」など考え出すとキリがありません。多くの農家は最大収量をあげる努力やより品質の高い農作物を栽培する努力をします。しかしその為に農地(土壌)に負担をかけてしまい、化学性、物理性や生物性が崩れ植物の生長が悪く病害の発生しやすい農地になってしまうこともあります。

最近は土壌診断を行う農家が増えています。そのため自分の農地がどのような状態におかれているかを数値化して判断できる様になり、化学性であれば肥料含有量、pHやECなど、物理性であれば保水性や排水性などが土壌診断から判るようになりました。

土壌診断結果によって農地に課題が見つかった時、その課題を解決する方法は一つではないかと思います。例えば窒素が少なければ作付け前にマメ科植物を用いて窒素固定を促す方法や堆肥を施用して地力窒素を増やす方法などが考えられます。また、排水性が乏しければ暗渠を設置する方法やパーライト(黒曜石)を施用する方法などが考えられます。課題解決を導く方法が一つでは無いことが農業の難しさだったり楽しさだったりしますが、作付け前に土壌管理で失敗はしたくないのが農家の心情です。最近は土壌改善を目的とした様々な土壌改良資材が注目を浴びており、その中でもフミン酸を含有した商品を多く見かけるようになりました。

次の章では土壌改良資材とフミン酸に注目して土作りについて考えていきます。

土壌改良資材とは?

土壌改良資材とは土壌の化学性、物理性そして生物性に変化をもたらして作物生産性を改善する農業資材のことをいいます。土壌改良資材と謳う製品は数えきれないほど売り出されていますが、地力増進法では以下の12品目の政令指定資材を取り上げています。

12品目の政令指定資材
泥炭(ピート類)・バーク堆肥・腐植酸物質資材・木炭・けい藻土焼成粒・ゼオライト・バーミキュライト・パーライト・ベンナイト・菌根菌資材・ポリエチレンイミン系資材・ポリビニールアルコール系資材

この中でも腐植酸質資材は、その資材中に腐植酸を含んだ資材のことを言い、含有量は50~70%とされています。では「腐植酸」とは何を指すのでしょうか。それを知るためには「腐植」について知る必要があります。

<腐植・腐植酸とは何か>

腐植は土壌有機物の同義語です。土壌有機物を定義するのは難しいですが、植物の根、土壌微生物、ミミズやモグラなどの土壌動物やその死骸など、それらと同定できないものが土壌有機物と呼ばれています。土壌有機物は非腐植物質と腐植物質に分けられます。非腐植物質は土壌有機物が分解される過程で生産されるタンパク質やアミノ酸などの構造が明確な有機物のことをいいます。一方、腐植物質は土壌有機物が土壌微生物などによって分解されその過程で生産されたもので、単一ではなく様々な有機物が混合した物質です。腐植物質はさらに腐植酸、フルボ酸、ヒューミンという種類に分けられ、なかでも腐植酸はフミン酸とも呼ばれています。フミン酸は腐植物質の主となるもので肥料分保持能力や土壌pH変化緩和に対して大きな役割を担っています。

<腐植物質の効果>

土壌pHが低くなると土壌中に存在するアルミニウムはリン酸と結合し、作物に利用されにくいリン酸アルミニウムとなります。腐植物質は土壌中のリン酸とアルミニウムの結合を抑制する効果をもっているため農作物に対するリン酸の肥効を良くします。そのため、腐植物質であるフミン酸やフルボ酸は発芽促進や根の伸長促進の効果など表します。

ではリン酸アルミニウムは農作物にどのような影響を与えるのでしょうか。

農作物には適正な土壌pHが存在します。多くの果菜類、葉菜類、根菜類、果樹、花卉はpHが6.0~6.5が適正pHといわれています。レタス、ホウレンソウ、ネギなどは6.0~7.0程度の高いpHが適正で、ブルーベリーやチャなどは4.0~5.5程度の低いpHが適正です。この適正なpHから外れると農作物の生育は一般的に悪くなります。今回は酸性に傾いた場合について考えていきますが、土壌pHが酸性に傾くと農作物の生育が悪くなります。それはアルミニウム、鉄、マンガンの有害なイオンが農作物の根細胞に害を与え、生育を抑制するからです。特にアルミニウムは非常に有害で、pH5程度より低下すると土壌中に多く存在するようになるので注意が必要です。また、鉄とマンガンは必須微量要素に含まれますが土壌pHが低くなることによって土壌中に過剰に存在するようになります。土壌中のリン酸イオンは特にアルミニウムイオンと非常に結合しやすくリン酸アルミニウムになりますが、土壌pHが低くなることでより結合されやすくなり難溶性リン酸つまり水に溶けにくい状態のリン酸になり、農作物に吸収されにくくなります。このためリン酸欠乏が発生しやすくなります。なお黒ボク土でリン酸欠乏が起こりにくいのは、腐植が黒ボク土に多く含まれているからです。腐植に含まれる腐植物質はpH変化に対する緩衝能があります。

土壌中の腐植含量を増加させることは農作物のリン酸欠乏を起こしにくくし、健全な土壌を作る一因となります。

高純度フルボ酸含有の100%有機質土壌改良材「地力の素

そこでご紹介したいのが地力の素です。フルボ酸が植物に必要なミネラルや微量要素をキレート化(吸収されにくい養分を吸収しやすくする)し、細胞内に届けるはたらきをします。また光合成を活性化し、窒素成分を効果的に葉や茎の組織に変えたり、根に働きかけて根量を増やします。

商品ラインナップの【細粒】と【粗粒】はJAS規格の有機JASに登録されている資材ですので、有機栽培をして有機農産物を生産する生産者や法人の方もご利用できます(袋の表面に有機JASマークが表示されています)。

地力の素の解説動画はこちら

地力の素【細粒】20kgだけで堆肥1トン分と同等の腐植質を含有しています。その為、堆肥と併用することで堆肥の投入量を削減しますので土づくりを省力化します。施用方法は基肥として作付前の圃場1000㎡あたりの土壌に2~4袋(40kg~80kg)を混和するだけです。フルボ酸と腐植質が土壌環境を長期間改善しますので連作障害の防止や植物の生育環境の改善が期待できます。また育苗では培養土1Lに対して3~5gの混合がおすすめです。

一般的に農業において落ち葉や家畜の糞(馬糞・牛糞・豚糞・鶏糞)を混用し黒色になってできた堆肥を使用している場合が多いですが、その堆肥の性質は腐植酸の含有量が少ないといわれています。

ペレットタイプの地力の素です。2~3袋で堆肥1トン分の効果があります。ペレットなので機械散布ができ、堆肥成分(有機炭素)も入っているオールインワン土壌改良材です。元肥一発肥料の土壌改良材版という位置づけですので大面積、露地向けの資材です。野菜・花き・果樹は10aあたり5~1o袋(75~150kg)、水稲は10aあたり3~5袋(45~75kg)、豆・麦類は10aあたり2~4袋(30~60kg)の使用をおすすめしています。

濃縮された腐植酸が入っている地力の素の液体タイプです。希釈して土壌へ流し込むことで、作中に衰えた地力を補うことができます。土壌潅注の場合は1,000倍で10~15日間隔での使用、点滴潅水・養液土耕の場合は3,000~5,000倍で随時での使用をおすすめ致します。葉面散布にも使うことができます。

※phがアルカリ性ですので、酸性の資材と混ぜると沈殿が生じます。他の資材と混用する場合は本製品を1,000倍以上に希釈してから混ぜてください。

まとめ|良い土づくりでより良い農業生産を

今回は土壌改良資材の基礎知識を記載してきましたが、いかがでしたでしょうか。腐植物質を土壌にバランスよく存在させてより良い土作りでより良い農業生産を実践していきましょう。今回のコラムが少しでもお役に立てると幸いです。

関連コラム:土壌改良の重要性とは?環境を整備する資材の種類と使用時の注意点

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コラム著者

小島 英幹

2012年に日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程を修了後、2年間農家でイチゴ栽培を経験。
2021年に民間企業数社を経てセイコーステラに入社。コラム執筆、HP作成、農家往訪など多岐に従事。
2016年から現在まで日本大学生物資源科学部の社会人研究員としても活動し、自然環境に配慮した農業の研究に取り組む。研究分野は電解機能水農法。近年はアーバスキュラー菌根菌を利用した野菜栽培の実践を始める。
検定、資格は土壌医検定2級、書道師範など。

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