コラム
土壌改良|植物をより健康に育てるための土づくり
公開日2020.09.29
更新日2023.05.11

土壌改良|植物をより健康に育てるための土づくり

植物の生育に欠かせないものの一つに“土”があります。土には根っこを支え成長に必要な養分や水を貯え供給する機能があります。土のこのような性質は、植物が育ちやすく病気にかかりにくい環境を整えるために必要な特性です。土は植物の成長に大きな影響を与え、生産物の品質や収量に直結してしまうため、植物の生育にとって重要な要素なのです。

今回は”土”にスポットをあてて詳しく記載していきたいと思います。農業(畑)に関わらず、花壇・ガーデニング・プランターなどを利用し野菜を育てている家庭菜園の皆様にも参考になる内容かと思いますのでぜひご一読ください。

植物の成長に必要な土の機能

植物は地面に根をおろすことで全身を固定し支えるだけでなく、土から水分・栄養素などを適切に吸い上げ、全身にいきわたらせることによって成長していきます。水分・栄養素などを貯蔵し供給する土の性質や機能が栽培する植物の要求に合っていることがとても重要です。土の性質や機能は通気性・保水性・土の硬さ・pH値・保肥性・微生物の多様性といった条件によって表されます。

これらのバランスが取れている土の構造を団粒構造と表現します。土が団粒構造だと水はけが良い・肥料もちが良い・病気が出にくい・根の張りがいいといった環境が生まれます。私たちが目指す土作りの目標ですね。

●良い土の条件

1.通気性
植物も人間と同様に酸素(空気)が必要です。植物の株元に水やりをした際に、水が溜まってしまう場所と水がすぐ吸収される場所があることを経験された方は多いのではないでしょうか。水が溜まらない土は通気性の良い土で、根に酸素を供給させやすい特性があります。一方で水はけの悪い土は、根が酸素を受け取れず呼吸障害になる原因となります。

2.保水性
栄養素を根から吸い上げるためには、水分が重要な役割を果たします。水分を保つことが出来ない代表例が砂地です。砂地では養分が水によってすぐに流されてしまいます。砂漠や乾燥地帯で植物が育ちにくいのはこのことが原因です。一方で保水性が良すぎると水捌けが悪くなり、通気性が悪化することで過剰に肥料が残留し植物に悪い影響を与える可能性があります。

3.土の硬さ
土は根を支えるため、適度に根が張りやすい隙間がある構造と硬さが必要です。なぜなら土が柔らかく崩れやすい場合は、根が茎や葉を支えきれず倒れてしまうからです。また固すぎると根の成長方向に影響を受け、根菜などはまっすぐ成長できなくなることもあります。

4.pH値
多くの植物はpH値7(中性)を好みます。ブルーベリーなど、種類によっては酸性に傾いた土壌の方が育つ種類や、逆にアルカリ性を好む種類もありますがそれはごく僅かです。基本的には中性を保つようにしましょう。

5.保肥性
植物は根から栄養素を吸収し成長していきます。栄養素が適度な濃度(バランス)で土の中に存在していると根が栄養素を吸い上げやすくなります。植物が要求するタイミングで土からの栄養供給を保ち続けることができ健全に生育します。この保肥性のバランスは、通気性や保水性の影響を受けます。例えば砂地のように保水性がない土壌では水とともに肥料は排出されやすくなり、反対に粘土質の土壌では肥料は留まりやすいですが通気性が悪くなります。

6.微生物の多様性
様々な微生物が生活できる土壌環境は植物に良い影響を与えます。微生物が活躍する土壌は、有機物や無機物を原料にさまざまな化学物質を生産してくれるプラント(工場)が存在するようなものです。そこで生産される物質は病気の原因となる病原菌の増殖を抑えたり、アミノ酸の原料を作ってくれたりするといわれています。また微生物が健全に活躍している土壌は団粒構造を形成し作物が育ちやすい環境を整えます。

関連コラム:土壌微生物を増やすには?作物が育ちやすい環境づくりで収穫量向上を

●土壌改良を行う時期

土壌改良を行う時期は、収穫が終わり次に定植するまでの期間が一般的です。大がかりな土壌改良には、天地返しや客土がありますが、通常は土壌資材を基肥などと同時に投入し鋤き込みます。気象条件を利用し土中の害虫駆除や雑菌の消毒を行う方法もあります。真夏のハウスを閉め切ることによる太陽熱消毒や、真冬に土を掘り返し越冬中の害虫を凍死させるなどのやり方があります。

土壌改良・土の性質に適した土壌改良材

土壌改良の基本は土を十分な深さまで掘り返すことです。連作障害の原因になる残渣や、残った根雑草などを取り除き、根の成長阻害をもたらす小石などの除去を丁寧に行います。柔らかく深耕した土壌と土壌改良剤をよく混ぜ合わせることで、土壌改良は効果を発揮します。土壌改良剤は目的に沿って組み合わせて使いましょう。

関連コラム:土壌改良資材の基礎知識|より良い土づくりを目指して

●通気性・排水性・硬さの改善

通気性が良くない土壌は、排水性も悪い傾向があります。土の粒子が細かく、水を混ぜると粒子同士がくっついてしまい、この状態で乾くと固く締まって根が張りにくい状態になります。粘土質の土壌に多くみられ火山灰に覆われたところでも同じ傾向があります。

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・バーミキュライト、バーク肥料
バーミキュライトは多孔質の鉱石で、保水・排水機能の向上に役立つと同時に微生物の住処を提供します。バーク肥料も即効性はないものの微生物の住処として機能し団粒の形成を促します。バーミキュライトやバーク肥料は肥料としての即効性は期待できません。比較的深いところ(30cm以上)まで掘り起こして柔らかくしたところに、バーミキュライトやバーク肥料を混ぜ込みます。また定植前の基肥としては落ち葉を発酵させて分解させた腐葉土・緑肥(緑肥植物)・堆肥(鶏糞や牛糞)など遅行性が期待できるものと組み合わせると効果が期待できます。

・パーライト
パーライトの原料は真珠岩や黒曜石や松脂岩です。高温で加熱することで人工的に作りだします。土壌中に適量を混ぜ合わせることによって土壌改良ができます。パーライトはいくつか種類があり、それぞれの効果が違いますので注意して使用しましょう。

●酸性土壌の改善

・苦土石灰
酸性に傾いた土地にはアルカリ性の土壌改良剤を混ぜ込む方法が一般的です。よく利用されるのが苦土石灰です。微量要素のマグネシウムを含んでいるので補給にもなります。

・ゼオライト
苦土石灰ほどではないものの、ゼオライトも有効です。バーミキュライトと同じ多孔質のため、保水性と微生物の増殖も期待できます。

●アルカリ性土壌の改善

アルカリ性土壌は酸性土壌よりもやっかいだといわれています。酸性資材を投入して中和する方法や、アルカリ成分の原因である塩類や石灰分を吸収するほうれん草やトウモロコシを栽培するやり方が知られています。酸性資材は短期間で土壌を中和する効果があります。しかし速効性を期待される肥料として使われているものもあり、使いすぎると土壌が肥料過多や酸性に傾いてしまうので注意が必要です。

・硫安(硫酸アンモニウム)
よく使われるものとしては、硫安(硫酸アンモニウム)が古くから知られています。主に葉や茎を大きくするための肥料として利用され、水に溶かして追肥として使われています。酸性資材としては即効性がありますが持続力はありません。

・無調整ビートモス
ビートモスは植物の堆積物が泥炭になる過程で形成されるといわれています。一般にビートモスと表示されている物はpHが調整されているものが多く、保水性や保肥性の改善に使われます。アルカリ性中和に使うものは無調整ビートモスといわれと強酸性(pH3.8~4.8)を示します。使用にあたっては水分を十分含ませて過剰な使用は避けましょう。

・硫酸カリ
即効性のカリ肥料として使われることがあります。カリ分が肥料として使われる結果、硫酸分が残り、アルカリ性と反応し中和効果が発生します。使いすぎるとカリの肥料過多を引き起こすと同時に、酸性に傾きすぎることもありますので使用量に注意してください。

●肥料過多や肥料欠乏している土地

肥料過多や肥料欠乏しているように見える土地のなかには、pH値が原因で投入した肥料成分やミネラル分が水溶化できず土壌成分と結合したり、反対に水捌けが良すぎて肥料成分が逃げ出していることがあります。

肥料過多は窒素過多の場合が多いようです、特に基肥として多く使用される堆肥は鶏糞や牛糞を含んだ動物由来の有機物を含み、肥料の3要素の窒素分が必要以上に多く含まれている場合があります。使い切れなかった窒素成分が残留することにより、窒素過多になります。窒素過多の土壌はさまざまな害虫や病原菌を発生させる温床となります。pH値が正常で肥料過多の場合、圃場に水をためて過剰分を溶け出させて排出することにより改善できる可能性があります。

肥料の欠乏している土地は、休耕地であったりしばらく圃場として利用していなかった土壌で見受けられます。腐葉土や堆肥を投入し地道に土地づくりを行う必要があります。

土壌改良におすすめな資材「地力の素

皆様へおすすめしたい資材が地力の素です。カナディアンロッキー山脈の東麓に位置するアルバータ州から発見された天然鉱物「カナディアンフミン」を原料としており、フミン酸・フルボ酸などの腐食物質が高度に濃縮されています。この地力の素を土づくりに使うことで土の粒子と粒子を結び付ける役割を果たします。連作障害の改善や健康な土壌づくりに貢献します。

フルボ酸は植物などの堆積有機物から生成される天然有機酸です。植物に必要なミネラルや微量要素をキレート化(吸収されにくい養分を吸収しやすくする)し、細胞内に届けるはたらきをします。また光合成を活性化し、窒素成分を効果的に葉や茎の組織に変えたり、根に働きかけて根量を増やします。一般的に農業において落ち葉や家畜の糞(馬糞・牛糞・豚糞・鶏糞)を混用し黒色になってできた堆肥を使用している場合が多いですが、その堆肥には腐植酸の含有量が少ないといわれています。

製品ラインナップの【細粒】と【粗粒】はJAS規格の有機JASに登録されている資材ですので、有機栽培をして有機農産物を生産する生産者や法人の方もご利用できます(袋の表面に有機JASマークが表示されています)。

地力の素【細粒】20kg

地力の素【細粒】20kgだけで堆肥1トン分と同等の腐植質を含有しています。その為、堆肥と併用することで堆肥の投入量を削減しますので土づくりを省力化します。施用方法は基肥として作付前の圃場1000㎡あたりの土壌に2~4袋(40kg~80kg)を混和するだけです。フルボ酸と腐植質が土壌環境を長期間改善しますので、連作障害の防止や植物の生育環境の改善が期待できます。また育苗では培養土1Lに対して3~5gの混合がおすすめです。

地力の素【ペレット 】15kg

ペレットタイプの地力の素です。2~3袋でたい肥1トン分の効果があります。ペレットなので機械散布ができ、堆肥成分(有機炭素)も入っているオールインワン土壌改良材です。元肥一発肥料の土壌改良材版という位置づけですので大面積、露地向けの資材です。野菜・花き・果樹は10aあたり5~1o袋(75~150kg)、水稲は10aあたり3~5袋(45~75kg)、豆・麦類は10aあたり2~4袋(30~60kg)の使用をおすすめしています。

地力の素【 リキッド12 】1L,5L,20L

濃縮された腐植酸が入っている地力の素の液体タイプです。希釈して土壌へ流し込むことで、作中に衰えた地力を補うことができます。土壌潅注の場合は1,000倍で10~15日間隔での使用、点滴潅水・養液土耕の場合は3,000~5,000倍で随時での使用をおすすめします。葉面散布にも使うことができます。

phがアルカリ性ですので、酸性の資材と混ぜると沈殿が生じます。他の資材と混用する場合は本製品を1,000倍以上に希釈してから混ぜてください。

土壌環境を改良して農作物の健全育成を

農作物が成長していく上で非常に重要な土壌改良。病害虫に強い健康な作物を育てることができれば収量の増加につながります。作物の特徴にあった土壌環境を整えていきたいですね。今回のコラムを皆様の作物づくりに少しでもお役立ていただけると幸いです。

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土壌改良|植物をより健康に育てるための土づくり

コラム著者

満岡 雄

2012年に玉川大学農学部生物資源学科を卒業。種苗会社を経てセイコーエコロジアの技術営業として活動中。全国の生産者の皆様から日々勉強させていただき農作業に役立つ資材&情報&コラムを発信しています。好きなことは食べること、植物栽培、アコースティックギター。Twitterを更新していますのでぜひご覧ください。

 

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