コラム
エチレンガスとは? 成長を促す植物ホルモンがもたらす作物への影響
公開日2019.04.16
更新日2022.05.10

エチレンガスとは? 成長を促す植物ホルモンがもたらす作物への影響

野菜、果物には自然の天候によって本来は適切な収穫の季節があります。現在では植物工場、施設園芸などにより通年での収穫が可能となっている作物が多いですね。鮮度を保った状態で適切に市場へ届けるには栽培時期はもちろん長期保存が求められています。野菜を新鮮でフレッシュに保つためには、温度と湿度が重要ですが、もうひとつ注意が必要な要素がエチレンガスです。 エチレンガスを理解して、コントロールするメリットを理解しましょう。

エチレンガスの基礎知識

●エチレンガスとは

エチレンガスは無色で特殊な甘い臭いのガスです。人体に対する毒性はありませんが、可燃性があるので注意が必要です。比重は0.975(空気は1)あり、環境中に広く存在する気体で野菜や果物などが発する植物ホルモンの一種です。別名「成熟ホルモン」「老化ホルモン」と言われています。エチレンガスは花が受精し、果実が出来る過程や果実が完熟後に腐る過程に多く発生します。また花も開花する時と傷み始めた時に大量のエチレンガスを発生します。つまり、植物のエイジング(老化・経年)を進める役割を持っているものです。この植物ホルモンが作用することで呼吸が盛んになり「着色する」「軟らかくなる」「糖分の増加する」など、いわゆるおいしく熟した状態になります。しかし常に成長を促すホルモンのため、熟しすぎてしまい腐敗の原因にもなります。カビの発生源にもなってしまいます。(放置すれば最終的には種だけが残ります、自然の摂理ですね)

収穫後もエチレンガスは放出され続け、周辺の野菜や果物がエチレンガスを吸着してしまい腐敗が早くなってしまいます。そのため農家では出荷前の貯蔵および輸送中に追熟が進みすぎないように、エチレン除去剤(鮮度保持剤、分解剤)を使用して鮮度を保ち過熟を抑制することがあります。エチレンガス生成量は農作物によって異なりますが温度が8度以上だと発生しやすいとの研究もありますので、貯蔵の際の温度管理も重要です。

作物の種類によってエチレンガスの発生の度合いは異なり、多く放出する作物としてはリンゴ・梨・メロン・柿・アボガド・ブロッコリーなどがあり、その他にもみかん・洋梨・トマト・桃・パパイヤなどが多いと言われています。作物の成長にエチレンガスは必要不可欠なものですが、作用を受けすぎてしまうと収穫した作物と近くの野菜や果物までも痛める要因になりますので注意が必要です。

冷蔵庫の野菜室にリンゴを入れておくと、食材や食品も痛みが早くなってしまうのもエチレンガスの影響です。換気が行われない密閉空間ではその影響をさらに受けやすくなります。保存するときはラップ・ポリ袋(保存袋)・箱などで密閉しておきましょう。未熟な野菜を早く食べたい場合は、リンゴなどエチレンガスを出す果物などの働きで成熟が進むので良いでしょう。

●エチレンガスの活用方法

エチレンのこの特性を活かして収穫後にエチレンガスで処理をすることにより、成熟防止および追熟促進効果を図り出荷を計画的に行うことができます。例えばイチゴのような出荷を調整することで高い価格で販売ができる果物は、収穫後すぐにエチレンガスを除去しておき、市場の出荷量が低くなってきた段階でエチレンガスを投入して、追熟したものを出荷することで収益を増やすことが可能です。バナナは海外の国から青く果肉組織が固い未熟な状態で輸入され、日本で追熟し適当な状態(黄色いバナナ)にしてから市場に出回っています。一旦熟成してしまうと果実がやわらかくなり、傷みやすく害虫も付きやすくなってしまうためです。

エチレンガスには発芽を抑えるという作用があり、ポテトチップス用のジャガイモに活用されています。ポテトチップス用のジャガイモは保存時期の温度が低すぎると糖度が上がり、揚げたときの色が黒く変化してしまいますが、反対に温度が高すぎて条件が悪くなると発芽してしまいます。発芽したものは芽の部分をカットしなければならず作業としてはかなりの手間です。糖度を上げずに発芽を防止するためにエチレンガスが使われています。 花に対しても効果がありますので、保管したいときはエチレンガスを除去して、反対に出荷を急ぎたいときやつぼみが小さいときはエチレンガスで生長を促し、出荷タイミングを早めることができます。

熟成を上手にコントロールができれば、市場への出荷量を平準化することが可能で生産性の向上にもつながり、市場マーケットから求められている通年の提供に近づくことが出来ます。

エチレンガスに関してもっと知りたい方はコチラ:エチレンガスで野菜などの農産物が劣化する?エチレン分解・除去について解説

エチレンガスの影響を受けやすい作物

エチレンガスにより追熟、過熟の影響を受けやすい作物、受けにくい作物があります。

●野菜

野菜で影響の受けやすい作物はトマト・キュウリなどの果菜類、キャベツ・レタス・アスパラガス・ブロッコリーといった葉菜類です。トマト・キュウリ・キャベツ・レタスなどはエチレンガスの影響を受けすぎると腐敗や変色といった反応が表れます。アスパラガス・ブロッコリーは追熟しすぎると硬くなったり、変色やかびの発生などの反応が表れます。

関連コラムはこちら:野菜の鮮度を保持する方法│新鮮で美味しい状態をキープするには

●果樹

果物はエチレンガスの影響を受けるものが多いです。リンゴ・メロン・バナナ・キウイフルーツ・アボカド・マンゴーなど味や食感が落ちたり、腐敗が進んでかびや表皮が柔らかくなったりします。

関連コラムはこちら:エチレンガスの果物への影響|鮮度保持の方法を紹介!

●生花

生花ではカーネーションやバラなどはエチレンガスの影響を受けやすいです。花が下を向く(ベントネック)、葉が巻いてくる、早咲きになるなど症状が出ます。収穫後はエチレンガスを発生させる野菜や果樹と離して保存するのが望ましいとされています。

関連コラムはこちら:生花を長持ちさせる方法|エチレンガスを分解できる冷蔵庫用加湿機グリーンキーパー

エチレンガスの影響を軽減するグリーンキーパー

従来は常温を避け冷蔵庫で低温に保つ事によりエチレンガス生成を抑えていましたが低温保存だけでは完全に抑えることは出来ません。そこでご紹介するのが冷蔵庫用鮮度保持機グリーンキーパーです。冷蔵庫の湿度は80%以下で加湿量が不足していることが多いと言われていますがグリーンキーパーは野菜や生花にとって鮮度保持に必要な温度管理を行い、理想の湿度と言われる90%以上100%以下を保ちます。エチレンガス分解フィルタが内蔵されており、鮮度維持効果を高めデリケートな野菜・果物・生花をしっかりと守ります。キャスター付のコンパクトな仕様で置き場所にも困らず設置も簡単です。水の気化という自然の原理を利用するシステムのため省電力で、電気代も気にせずに使用できます。気化式は湿度が100%を超えることがないため結露の発生も抑えます。

▶解説動画はこちら⇒グリーンキーパー 解説編

大切に育てた作物は大切に保管

野菜・果物・生花は収穫した後の保管方法もとても重要ですね。苗から大切に育てた作物は保存方法が行き届いていないために傷んでしまっては元も子もありません。作物にあった適切な保存方法で出荷までの作物を大事に保管してください。

関連コラムはコチラ:冷蔵中の結露に注意!プレハブ冷蔵庫で作物を良い状態で保管するには?

エチレンガスとは? 成長を促す植物ホルモンがもたらす作物への影響

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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