コラム
エチレンガスの果物への影響|鮮度保持の方法を紹介!
公開日2021.08.23
更新日2021.08.26

エチレンガスの果物への影響|鮮度保持の方法を紹介!

収穫後の果物は時間が経つにつれて少しずつ傷んできて腐ってしまいます。腐ってしまう原因は収穫後の温度管理や湿度管理など様々な原因によって引き起こされますが、その原因の一つにエチレンガスの影響による成熟と老化が挙げられます。リンゴやバナナがエチレンガスを生成することはよく知られていますが、生成量が異なるものの他の果物もエチレンガスを生成します。また、果物を劣化させないためにプラスチック製包装容器を使用することがありますが、世界的環境保全の取り組みである「脱プラスチック」に貢献できるとはいえません。本コラムで紹介するグリーンキーパーはプラスチック製包装容器を削減するための一助となる可能性を秘めています。
今回のコラムでは、エチレンガスの果物への影響、果物をより長期間新鮮に鮮度保持させるための知識、グリーンキーパーを利用したプラスチック製包装容器削減のアイディアを紹介したいと思います。

エチレンガスとは

エチレンガスは植物が自身から生成する植物ホルモンの一つです。エチレンガスは植物の成熟や老化に関与しており、その影響が進むとエチレンガスを生成した植物自身は最終的には枯れてしまったり腐ったりしてしまいます。また、その植物が放出したエチレンガスは他の植物にも影響を与えてしまい枯らしてしまったり腐らせてしまったりします。

エチレンガスは果物のほかに切り花や野菜からも生成されます。エチレンガスと呼ばれる所以は、エチレンは常温だと気体で存在する物質だからです。単に「エチレン」と呼ばれることもありますし、「エチレンガス」と呼ばれることもありますが、どちらも同じものを指しています。

エチレンガスは植物を劣化させて腐らせてしまう悪者として扱われるイメージがありますが、いくつかの植物では良い効果をもたらしてくれます。成熟性果菜類であるメロンやトマト、あるいは外国産のバナナなどではエチレンガスは色素形成、香り成分の増加、甘味の増加など一般的に追熟と呼ばれる作用を誘導します。つまり、エチレンガスはただ単に植物を劣化させて腐らせてしまうだけではなく、その過程では追熟というプラスの影響もあるということです。実際に、スーパーに並んでいる大玉系トマトはまだ緑色の部分が残った状態で収穫されて流通の過程で追熟し赤色になったものもあります。

エチレンガスによる果物の劣化

エチレンガスの生成には果物を管理している空間の温度、酸素濃度、CO²濃度が関わっています。とくに温度に関しては、エチレンガス生成による劣化だけではなくカビの発生も懸念されます。

本章では、果物が発生するエチレンガスについて高温の影響および酸素とCO²の影響について解説したいと思います。

高温の影響

温度に関しては、35℃を越えると果物のエチレンガス生成量がかなり抑えられるとされています。近年夏場では最高気温が35℃以上の猛暑日や30℃以上の真夏日が増えてきました。このような日はエアコンを付けないと屋内でも温度がかなり上昇してしまうため、果物を冷蔵庫に入れずに管理すると35℃以上の高温管理になってしまうこともあります。その場合果物からのエチレンガス生成は抑えられますが、高温による果実の呼吸量増加に伴った劣化や、高温に加え湿度も高い場合はカビの発生によって果実を腐敗させてしまいます。流通の過程においては、日本ではコールドチェーンという物流方式が進んでいますので35℃を越える温度で果物を長期間保管することはあまり考えられません。

酸素とCO²の影響

酸素やCO²濃度に関する果物の保管に関しては、「CA貯蔵*」が有名です。1932年にイギリスでトマトに関係する研究が報告され、5年後の1937年にはリンゴの商業目的でCA貯蔵が始まったとされています。CA貯蔵は空気の組成を変換して、低酸素・高CO²の条件にして低温で冷蔵する貯蔵方法です。低酸素条件にすることで農作物の呼吸を抑制することができます。さらに、低酸素はエチレンガス生成抑制や農作物に対するエチレンガス作用の阻害があることも知られています。CO²は農作物に対するエチレンガス作用と拮抗することが知られており、CO²濃度が高くなると農作物はエチレンガスによる影響を受けづらくなります。CA貯蔵によって管理された農作物は長期間の保存が可能なため、出荷時期を後ろにずらすことができます。果物では青森県のリンゴ、野菜では北海道のジャガイモやタマネギがCA貯蔵で管理されたものが流通しています。

*CA貯蔵:Controlled Atmosphere Storage。Controlled Atmosphereの頭文字をとってCA、Storageは日本語で貯蔵として、CA貯蔵と呼ばれています。

果物のエチレンガス生成量

多くの果物はエチレンガスを生成しますが、その生成量には違いがあります。リンゴやバナナはエチレンガス生成量が多いことでよく知られていますが、パッションフルーツはさらに多くのエチレンガスを生成します。逆にサクランボやブドウはエチレンガス生成量が少なくなっています。エチレンガスの生成量が多いと生成した果実自身の劣化も比較的早い傾向にあり、また、エチレンガスは他の果実にも(切り花や野菜にも)影響を与えるため、同じ空間や段ボールに一緒に保管してしまうと他の果実の劣化を早める原因になってしまいます(次章でエチレンガス感受性として説明します)。

下表では果実のエチレンガス生成量についてまとめております。

果物のエチレンガス生成量

エチレンガス生成量* 果物名
少ない サクランボ、ブドウ、キウイフルーツ、温州みかん etc.
やや少ない カキ、ブルーベリー、パイナップル、ラズベリー etc.
やや多い バナナ、マンゴー、イチジク、パパイヤ、ハネデューメロン etc.
多い リンゴ、洋ナシ、プラム、モモ、アボカドetc.
特に多い パッションフルーツ etc.

*20℃で管理した場合

果物のエチレンガス感受性

果物はエチレンガスを生成しますが、エチレンガスに対する感受性が低いものと高いものに分別されています。<エチレンガス生成>と<エチレンガス感受性>の間で混乱を招きそうな表現になっていますが、エチレンガス生成はその果物がエチレンガスを生成するということを表現しています。それに対してエチレンガス感受性は果物がエチレンガスの影響を受けるのかを表現しており、例を挙げて説明すると、リンゴやバナナから生成されたエチレンガスは他の果物にも影響を与えうるということです。

下表では果物のエチレンガス感受性についてまとめております。

果物のエチレンガス感受性

エチレンガス感受性 果物名
低い ブルーベリー、パイナップル、イチジク etc.
普通 ブドウ、温州みかん etc.
高い リンゴ、バナナ、マンゴー、ハネデューメロン、カキ、キウイフルーツ、モモ、アボカド etc.

グリーンキーパーとその効果|エチレンガスを分解して果物の鮮度を保持する

グリーンキーパーはエチレンガスを分解し作物の鮮度を維持する冷蔵庫用加湿器です。鮮度維持にとって最適な湿度90%以上100%未満を維持しながら、植物の劣化を早めるエチレンガスを分解フィルターに吸着させます。エチレンガスを水と二酸化炭素に分解しデリケートな野菜・果実・生花などを過熟から守ります。湿度が100%を超えることがなく、結露が発生しないため冷蔵庫内のエアコンが傷んだり、輸送用の段ボールが劣化したりすることがありません。エチレン分解フィルターは2年程度を目安にお使いいただけます。

グリーンキーパーはプラスチックゴミを削減できる⁉

果物をはじめとした農作物を鮮度保持するための技術のなかに、エチレンガスを分解できる包装資材やMA包装*と呼ばれる包装資材があります。これらの機能性包装資材は農作物の鮮度保持をするだけでなく、流通の簡易化やパッケージにおける消費者への広告効果も付加されています。とても画期的な技術で、農家においては出荷した農作物の劣化抑制によるクレームの減少が期待できます。このような包装資材は<軽い・丈夫・安価>の三拍子が揃ったプラスチックから製造されています。しかし、気候変動にかかる昨今の世界的な「脱プラスチック」の流れにおいて、プラスチック製の包装資材に頼った流通方式について何とか脱却しなければならない状況が否めません。

補足になりますが、世界のプラスチック生産量の35%以上がパッケージに使用されているといわれています(勿論、農作物のパッケージだけではなく他の産業からのパッケージも含まれています)。2015年において、パッケージ向けに1億4100万トンが生産されており(この内の約70%が食べ物と飲み物の容器です)、リサイクルやリユースのためにすべてが回収されているわけではなく、ゴミとして海に捨てられ流出するものもたくさんあります(海へのプラスチックゴミの流出量は年間800万tと試算されています)。また日本は、ワンウェイ容器**廃棄量が世界2位の多さです(1位はアメリカ)。日本は世界的にみても使い捨て容器をたくさん使用していると指摘されており、家庭で消費されるパッケージをはじめとしたワンウェイ容器の削減が急務となっています。

グリーンキーパーを利用した鮮度保持において、農作物のプラスチック製包装資材を削減するアイディアについて紹介したいと思います。ここでのアイディアですが、農家は市場や小売業者そして消費者からの要望に沿ったかたちで出荷方法を指定されている背景があります。よって、流通の最終段階である消費者や小売業者が農作物の包装(パッケージ)に対する考え方を検討する必要があると考え、本章では流通の逆の流れからアイディアを述べたいと思います。

*MA包装:Modified Atmosphereの頭文字をとってMAとしています。包装資材内の農作物をCA貯蔵のような低酸素・高CO²の状態にできます。

**ワンウェイ容器:ペットボトルを代表とした、一度だけ使用して捨ててしまう容器のこと。ワンウェイ容器に対して、洗浄して再度利用できるリターナブル容器があります。

消費者

<購入した農作物は適切な保存方法で>

購入した農作物には長持ちさせられる保存方法があります。適切に保存することでプラスチック製包装容器に頼ることなく日持ちさせることができ、食品廃棄も削減できます。ここではいくつか果物で例を挙げて紹介したいと思います(ここで紹介するいずれの例も新聞紙で包むと乾燥を防いでより日持ちします)。

冷蔵保存が向いています。もともと足がはやい果物で、常温で保存すると水腐れ症状が発生してドロドロに腐ってしまいます。とくに幸水や豊水などの7~8月の暑い時期に出回る品種は屋内でも室温が高くなってしまうため保存方法には十分注意しましょう。

  • バナナ

冷蔵保存が向いています。一般的には常温保存といわれていますが、常温だとシュガースポットが短期間で発生します。甘くてトロみのあるバナナが好きな方は良いかもしれませんが、スーパーでシュガースポットが発生したバナナに半額シールが貼ってあるところをみると日本人はこのバナナを好まない傾向にあると思われます。冷蔵保存はエチレンの発生を抑えるためシュガースポットの発生も抑制でき、常温保存の2倍ほど日持ちが向上します。

  • メロン

冷蔵保存が向いています。一般的には常温保存し、食べる2~3時間前くらいに冷蔵庫に入れます。購入したメロンは既に食べごろが迫っている状態のため、2~3日以内に食べると一番おいしいタイミングです。購入後すぐに食べないのであれば冷蔵保存して追熟を遅らせることで、食べごろをずらすことができます。

  • ブドウ

冷蔵保存が向いています。冷蔵保存する際は必ず枝を残すように(房の状態)してください。ブドウは乾燥が進みやすく枝の切り口から水を吸わせることで日持ちがかなり向上する果物です(一部のブドウ農家で実践されている鮮度保持方法です)。また、枝から果実をもいでしまうと果実の切り口が傷口となるためカビが発生しやすくなり劣化の原因となります。

小売業者

<マーケット方式の売り場展開>

テレビでヨーロッパ地域の放送を観ると食料品市場、スーパーマーケット、野外マーケットが映ることがあります。とくに農産物売り場では包装容器に入れられないで野菜やフルーツが一つ一つ積み上げられた状態で並べられていて日本人からするとなんともオシャレに感じます。日本でもこのような一つ一つを個別にする売り方を徹底できないでしょうか。既に多くのスーパーマーケットにおいて、農産物の個別売りが見受けられますが半数以上は何らかのプラスチック容器に入れられて販売されています(大容量入りや宣伝目的のパッケージなど)。ヨーロッパ地域のような農産物のマーケット方式の売り場は、農家にとっても選別(選果)の手間が減りとても効率的に農作業ができるようになります。

農作物を保管するバックヤードにグリーンキーパーを設置することで、農作物を乾燥とエチレンガスによる劣化の影響を抑制することができ、鮮度を保った状態で店頭に陳列することができます。

集荷市場

グリーンキーパーは段ボールに入った農作物でもエチレンガス分解が可能>

グリーンキーパー段ボールに直接入れられた農作物に対してエチレンガス分解機能を発揮します。逆に、プラスチック製包装容器に入れられた農作物にはエチレンガス分解機能を発揮しません。集荷市場でも農作物の一時的な保管があると思いますが、グリーンキーパー設置によって、プラスチック製包装容器に入っていない農作物を乾燥とエチレンガスによる劣化を抑制することができます。

農家

<農家の冷蔵庫にグリーンキーパーを設置>

生産する農作物によりますが、農家には収穫した農作物を出荷までの間に一時的に保管しておくための大型冷蔵庫が設置されています。一般的に普及している大型冷蔵庫の鮮度保持に関する機能は冷蔵機能のみであることが多く、乾燥やエチレンガスによる農作物の劣化が懸念されています。このとき、エチレンガス分解をする包装資材やMA包装の機能性包装資材で劣化を抑制することができますが、大型冷蔵庫内にグリーンキーパーを設置することでエチレンガス分解と加湿の効果で農作物の劣化を抑制することができます。

農作業のなかでも包装や出荷の作業時間は全体の労働時間の10~20%ほどとなっており、この作業の簡素化は農家にとっても望ましく、プラスチック製包装容器の削減にも貢献できます。また、レストランへの直接販売やインターネット販売などをしている農家にとって、納品・出荷までの間に鮮度保持をすることは農作物の付加価値になるのではないでしょうか。

10aあたりの農作業の労働時間と包装、出荷時間(1人あたり)*

栽培品目 全労働時間(hour) 包装・出荷時間(hour) 全労働時間時間に対する包装、出荷時間の割合(%)
みかん 101.9 16.5 16.2
りんご 133.9 13.2 9.9
ぶどう 196.7 27.6 14.0
日本なし 178.2 19.4 10.9
もも 134.9 14.3 10.6
施設いちご 822.9 196.1 23.9
施設メロン 195.6 10.6 5.4

*農林水産省発行 農業の「働き方改革」主要品目ごとの課題と経営者の取組(例)平成30年3月30日時点版を参考に作成

エチレンガスを理解してムダのない鮮度保持を目指す

今回のコラムではエチレンガスと果物の関係およびグリーンキーパーを利用した効率の良い鮮度保持対策について紹介しました。エチレンガス対策による鮮度保持技術から脱プラスチックというテーマを発想しましたが、そもそも鮮度保持は農作物の流通に関わりの深い技術です。流通では安全・衛生・スピード(効率性)などを求めるためにプラスチックは不可欠ですが、世界的な地球環境保全を目の前に少しでもプラスチックを削減する行動をとる必要があります。

補足になりますが、天然ガスや石油から作り出されたエチレンを原料にしてプラスチックが製造されていることはとても興味深いことです(精製とクラッキングを経てエチレンの他にプロピレン、ブチレンなども原料になります)。

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