プレハブ冷蔵庫とは
植物の生理現象の中に昼間の時間の長さや気温の変化に反応する生理現象があります。温度を管理することで、休眠状態を作り保存期間を延ばしたり、糖度を高めることができます。よく知られているのは積雪地方で雪を利用する手法で、あたかも布団のように畑の野菜の上に雪を敷き詰めます。「野菜の糖度を高める」「端境期に出荷するために氷室のように貯蔵する」といった活用法があるようです。これを人工的に行うのがプレハブ冷蔵庫です。
プレハブ冷蔵庫に結露が発生する原因
そもそも結露とはどのような現象でしょうか。空気は温度が高いほど空気中に含まれる水蒸気の量が多くなります。温度の高い空気が急激に冷やされると空気中に含まれていた水蒸気の量を保持することができなくなり、余った水蒸気が水滴になります。空気が保持することできる水蒸気の量(飽和水蒸気量)を超えると、余った水蒸気が水分に変化するという現象です。夏場でも二重構造になっているビールグラスの表面が結露しにくいのは、温まった空気がグラスの冷えた部分に直接あたらない仕組みになっているためです。プレハブ冷蔵庫は、同様にポリウレタンフォームやグラスウールなど高性能の断熱材を使い設計されています。開閉が多く外気との接触が増えやすい扉も気密性を重視したつくりになっています。
しかし設備の老朽化により、断熱材の性能低下・ユニットクーラー機能の劣化・扉の裂傷(ゴムパッキンの劣化など)が発生し気密性が低くなると外気が接触する箇所が増えて結露が発生してしまいます。設備が古くない場合に結露が発生する場合は、扉の開け閉めが頻繁であったり、プレハブ冷蔵庫内の密閉空間で空気が滞留し流れが悪くなっていたりと別の要因により引き起こされている可能性があります。またユニットクーラーの定期的な清掃作業を怠るとホコリが浮遊して農作物に付着する可能性があります。ホコリと結露の組み合わせはカビの発生を増長します。
そもそも、どうして結露が発生するのか
結露という現象についてもう少し詳しく解説します。湿度を把握する際に相対湿度と絶対湿度という2つの捉え方があります。天気予報で皆さんが良く耳にする湿度はパーセンテージ(%)で示される相対湿度です。
- 相対温度 → 空気中に含まれる水の割合(%で示す)
- 絶対湿度 → 1立法メートルあたりに含まれる水の量(g/㎥で示す)
飽和水蒸気量(絶対湿度)
気温 | 0℃ | 5℃ | 10℃ | 15℃ | 20℃ | 25℃ | 30℃ |
---|---|---|---|---|---|---|---|
飽和水蒸気量 (㎥あたり) |
4.9g | 6.8g | 9.4g | 12.8g | 17.4g | 23.2g | 30.4g |
相対湿50%時 水蒸気量 (㎥あたり) |
2.45g | 3.4g | 4.7g | 6.4g | 8.7g | 11.6g | 15.2g |
上記の図は気温に対して1立法平方メートルあたりに含まれる水分量を示したものです。気温が上がるほど飽和水分量が増えることが理解できると思います。
この表を利用して相対温度50%の場合に、気温が20℃のから5℃へ急激に冷やされると発生する結露現象を見ていきましょう。20℃のときに1立法メートルあたりに含まれる水分量は、8.7g(17.4g×50%)です。この空気が一気に5℃まで冷やされると1立法メートルに含むことができる飽和水蒸気量6.8gを超えた水分量1.9g/㎥(8.7g/㎥-6.8g/㎥)が結露として発生します。
例えば冷蔵庫で5℃に冷やされた果実が倉庫から気温20℃の場所に出されると、果実と果実に接している空気は同じ温度になろうとし結露が発生します。この時空気に流れがあると、温かい空気が冷えきる前に気体が移動して結露は起こりにくくなります。また、果実同士を広げておくと早く果実の温度は外気温に近づき結露しにくくなります。氷の塊を細かく砕くと早く溶けるのと同じです。
雪の布団や氷を利用した温度管理は、水の固形化を利用し果実や野菜とは直に接することはなく、空間を挟んで温度管理がなされています。相対湿度は高く保たれ、外気は遮断されている環境が一般的です。畑は数十センチの雪に覆われ収穫までそのままになります。これに対し、人工的な冷蔵庫は乾燥しやすく、一時保管に使われることが大半で外気との接触機会が多く結露対策が欠かせません。結露(水滴)が付着すると熱の移動が急速に起こったり、カビ菌の活動が活発になりやすかったりします。自然界で空気は強力な断熱材になります。物理的な仕切りを作って空間を分けることにより断熱効果を期待できます。また出入口を二重三重にすることで断熱効果を発揮します。
プレハブ冷蔵庫の結露発生による弊害
水ということで油断してはいけません。結露を放置するとさまざまなトラブルが発生しやすくなります。保管中の農作物に結露が付くと、それが引き金となりカビの繁殖を促進します。また運送用の段ボールが劣化したり、ユニットクーラーが錆びて故障や機能低下の原因となります。ユニットクーラー内部は一度カビが発生してしまうとクーラーを稼働させることでカビを冷蔵庫内にまき散らすことになります。
結露により発生する弊害
- カビが発生・増殖し、出荷前の作物の製品価値が失われる
- 作物の製品個箱や運送用の段ボールなどが湿気で劣化する
- ユニットクーラーが錆びて故障の要因となる
プレハブ冷蔵庫の結露防止の対策
ユニットクーラーの定期的なメンテナンスを行う
熱交換器のホコリ除去をする日常清掃や、ファンやドレンパンの洗浄のような定期清掃に加えて、断熱材交換といったメンテナンスを行い、ユニットクーラーが正常に作動するように定期的な保守点検をお勧めします。
温かい外部の空気との接触機会を減らす
お伝えしてきたように冷たい空気と温かい空気が接触する部分に結露は発生します。プレハブ倉庫の場合、室内側の空気と外側の空気のもっとも接触機会が増える場所は出入口の扉になりますので、扉の密閉性はもちろん必要ですし、開閉頻度が高いようでしたらビニール素材のスリットカーテンを設置して倉庫内の空気と外部の空気が接触しにくい対策が必要です。
農作物の保管量に注意する
保管量が多いと冷蔵庫内の空気循環が悪くなり、結露しやすくなります。空気の流れを止めないように保管量は適量に保つことが大切です。
プレハブ冷蔵庫にオススメ!冷蔵庫用加湿機グリーンキーパー
収穫物の長期保存のためにプレハブ冷蔵庫と合わせてご利用いただきたいエチレンガス分解フィルタ内蔵冷蔵庫専用加湿機グリーンキーパーを紹介します。グリーンキーパーは収穫物の老化を進めるエチレンを分解して鮮度維持効果を高め、さらに冷蔵庫内を湿度90%以上に保ちます。気化式を採用しているため高湿度でも結露が付きにくいという特徴があります。
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プレハブ冷蔵庫の結露対策を行い、作物を長持ちさせましょう
農作物保管の冷蔵庫で結露を放置してしまうと、カビが発生しせっかく労力をかけて収穫した作物が出荷できなくなることで農業経営の損失となります。しっかりと結露対策を行い、保管中の大切な作物を守りましょう。
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コラム著者
キンコンバッキーくん
菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。