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生花を長持ちさせる方法|エチレンガスを分解できる冷蔵庫用加湿機グリーンキーパー
公開日2021.07.12
更新日2021.07.12

生花を長持ちさせる方法|エチレンガスを分解できる冷蔵庫用加湿機グリーンキーパー

生活の身近にお花や花束があると心が落ち着き癒された気持ちになります。それぞれの花が持っている美しさや香りなどの個性がそのような気持ちにさせてくれますが、もっと長く楽しむ方法はないものでしょうか。花の観賞価値を長く保つには生産者から消費者までのそれぞれの流通ステージで適切な保管を行うことが重要です。筆者は切り花の観賞価値を2~3日延ばすことができればかなり画期的な技術だと考えていますが、切り花を長持ちさせるための方法を一つ一つ対策していけば実現可能だと思っています。
今回のコラムでは、生花特に切り花を長持ちさせる方法について解説していきたいと思います。

切り花が長持ちしない要因

切り花の寿命は種類によって大きく違いがあります。輪ギクやコチョウランの寿命は比較的長く2週間ほどですが、ダリアやユリの寿命はとても短く3-5日ほどしかありません。切り花が長持ちしない要因は花の種類によっても異なり、或いは切り花の置き場所が適切でないと日持ちを悪くしてしまう原因にもなってしまいます。このような切り花の日持ち性に関する研究は非常に盛んに行われており、最近だとダリアの老化の要因は導管閉塞とエチレンが関与していることが明らかになってきました。

本章では、切り花が日持ちしない要因について代表的なものを5つ挙げて説明したいと思います。

①導管閉塞

導管閉塞とは、生け水の細菌が切り花の導管*に詰まり、水揚げを悪くすることをいいます。細菌は不清潔な花瓶、剪定ばさみ、生け水を使用することで発生します。また、切り花に付着していた細菌が生け水で増殖することでも導管閉塞の原因になります。バラやガーベラは導管閉塞を引き起こしやすい品目で、花首が垂れ下がるベントネックの原因になってしまいます。

*導管:被子植物の組織で、水分の輸送経路。

②糖質の不足

植物は自身に必要なエネルギー源を光合成によって得ています。エネルギー源とは糖質*のことで、糖質は光合成によって合成されます。切り花の場合、室内の明るさは光合成を行うには不十分で糖質の合成を期待することはできません。糖質が不足すると多くの切り花では花や蕾が咲かない原因になってしまいます。特に花数の多い切り花は開花するために多くの糖質を必要とします。また、バラやハナモモなどは花弁の発色に影響が現れる“ブルーイング”と呼ばれる退色症状を発症します。

*糖質:切り花に含まれる主要な糖質はグルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、スクロース(ショ糖)です。

③病気(灰色かび病)

切り花の日持ち性を悪くする主要な病気は灰色かび病です。切り花の灰色かび病は花弁や葉に発生します。花弁では基部に浸み症状が現れ、次第に浸みが広がって最終的には花そのものを枯らしてしまいます。高温多湿で発生しやすく、梅雨時期は特に注意が必要になっています。

④高温

切り花を高温管理すると呼吸量増加による老化の原因になります。そのため切り花の日持ちは夏は短く、冬は長くなります。小売店によっては切り花を室内常温や外気温で管理していることがありますが、切り花品質を下げる原因になっていると考えられます。

⑤エチレン

エチレンは植物から発生する植物ホルモンの一つです。バナナやリンゴがエチレンを発生させることでよく知られていますが、切り花からも発生します。エチレンは切り花の成熟や老化に関与しており、花弁が萎れ落弁する原因となります。エチレンの感受性が高い切り花の品目は、カーネーションやスイートピーなどが代表的です。例えばカーネーションの場合、収穫後6日目ほどから花弁からエチレンを多量に生成するという実験結果があります。

日持ち短縮の要因が切り花に与える影響

日持ち短縮の要因 影響が大きい切り花の品目 影響が小さい切り花の品目
導管閉塞 バラ、ガーベラ、ダリアetc. カーネーション、キク、ユリ、チューリップ、ヒマワリetc.
糖質の不足 バラ、カーネーション、ユリ、トルコギキョウ、シュッコンカスミソウ、キンギョソウetc. ケイトウ、ニホンスイセン、クルクマ、スターチスetc.
病気(灰色かび病) バラ、トルコギキョウetc. 不明
高温 バラ、カーネーション、ヒマワリetc. クルクマ、シンビジウムetc.
エチレン カーネーション、スイートピー、デルフィニウムetc. キク、ユリ、チューリップ、グラジオラスetc.

関連コラム:エチレンガスで野菜などの農産物が劣化する?エチレン分解・除去について解説

切り花を長持ちさせる方法

本章では、その解決方法について説明したいと思います。

①導管閉塞

導管閉塞の解決方法|花瓶を清潔にする

導管閉塞を防ぐためには清潔な花瓶を使用することが対策の一つです。使用前の花瓶を中性洗剤などで洗浄殺菌することは勿論、生け水を交換することも重要です。細菌増殖を防ぐためには生け水に抗菌剤を添加することもおすすめです。また、不清潔な剪定ばさみを使用することは細菌を切り花から切り花へと移動させる原因になっています。切り花農家では細菌や病気の移動が起こらないように剪定ばさみの使用後は殺菌することが一般的です。

②糖質の不足

糖質不足の解決方法|糖分を切り花に与える

切り花の糖質不足は生け水に品質保持剤*を添加することで解決します。切り花は収穫後も呼吸することにより糖質を消費していきます。光合成による糖質の合成は期待できないため老化による日持ち性を改善するためには品質保持剤は必須です。切り花は品目によって必要とする糖質の種類が異なるため、各メーカーからは切り花の品目に合わせた専用の品質保持剤が販売されています。糖質は切り花の開花に影響を与えているため観賞価値を高めるためにも品質保持剤はとても重要です。

*品質保持剤:流通ステージにおいて前処理剤、輸送用品質保持剤、小売用品質保持剤、後処理剤の4つに分別されます。本章では特に糖質を含んだ品質保持剤を想定しております。

③病気(灰色かび病)

灰色かび病の解決方法|高温多湿を避ける

灰色かび病対策は高温多湿を避けることが有効的です。また、高温管理は灰色かび病発生を助長するだけでなく呼吸量増加による老化の原因にもなってしまいます。灰色かび病が発生しやすいバラでは、温度を下げて呼吸量低下させることで水揚げ量も少なくなるため導管閉塞を予防する効果も期待できます。

④高温

高温の解決方法|涼しい場所に生花・切り花を置く

日差しが弱く涼しい場所で管理し、品温を上げないことが切り花を長持ちさせる対策になります。小売店では室温を下げることやフラワー用ショーケースで管理することで商品ロスを減らすことができます。家庭での温度対策は、例えば鑑賞しないときは暗く涼しい場所に置くことで多少日持ちが長くなるコツです。但し、熱帯原産の切り花については低温管理すると低温障害が発生することがあるので注意が必要です。

⑤エチレン

エチレンの解決方法|STS剤などを活用してエチレンを抑えて日持ちさせる

切り花は品目ごとにエチレンに対する感受性が異なります。カーネーションなどエチレンの感受性が高い切り花を生産する農家では、切り花のエチレン感受性を低下させるため収穫後にSTS剤*という前処理剤を処理します。STS剤処理によってカーネーションやスイートピーでは1.5~3倍ほど日持ちを延ばすことができ、逆に、STS剤処理を行わないと日持ち性が著しく低下してしまいます。

*STS剤:チオ硫酸銀錯体を主成分とした液体の薬剤。

エチレンによる切り花の老化を食い止める

エチレンの感受性が高い切り花を調べてみると、お花屋さんでよく見かける品目がたくさんあります。カーネーションやスイートピーをはじめバラやトルコギキョウも比較的エチレンの感受性が高い品目です。

一方で、エチレンは常温では気体で存在するため“エチレンガス”と呼ばれることもあります。常温で切り花を扱う小売店では切り花から発生したエチレンによって店内のエチレン濃度が高くなっていることが考えられます。そのため、エチレン除去装置やエチレン除去資材を利用することが切り花の老化を食い止める対策の一つとなります。

切り花のエチレン感受性

エチレン感受性 切り花品目
高い カーネーション、スイートピー、シュッコンカスミソウ、デルフィニウム、リンドウetc.
やや高い バラ、トルコギキョウ、ブルースター、シャクヤク、ストック、ラナンキュラス、キンギョソウetc.
やや低い アルストロメリア、ダリア、ニホンスイセン、クルクマetc.
低い キク、ユリ、ガーベラ、グロリオサ、フリージア、グラジオラス、チューリップ、ヒマワリetc.

関連コラム:エチレンガスとは? 成長を促す植物ホルモンがもたらす作物への影響

切り花は冷蔵庫で保存すると長持ちする⁉

切り花の品目によりますが、切り花は冷蔵庫で保存すると低温によって呼吸量が低下し糖質の消費も少なくなるため老化を遅らせることができ長持ちします。しかし冷蔵庫内の湿度は80%以下であることが多く、切り花にとって乾燥している状態といえます。特に業務用の大型冷蔵庫では大量の切り花を一時保存するため、たくさんの切り花が低湿度条件に晒されてしまい水分状態が悪くなり品質低下を招く恐れがあります。そのため、冷蔵庫で切り花を保存する場合は加湿することが切り花にとって最適な環境といえます。

関連コラム:冷蔵中の結露に注意!プレハブ冷蔵庫で作物を良い状態で保管するには?

冷蔵庫でのエチレン除去と加湿が切り花を長持ちさせる『グリーンキーパー

冷蔵庫内で切り花の商品価値が下がってしまう要因はエチレンと乾燥が挙げられます。これまでは冷蔵庫の低温で切り花を保存するという考え方でしたが、最近の技術開発によって切り花の鮮度保持には低温に加えてエチレン除去と加湿も有効的であることがわかりました。つまり、冷蔵庫内でエチレン除去と加湿を同時に行うことで切り花を新鮮な状態で長期間保存できるということになります。

エチレンガス分解フィルタ内蔵 冷蔵庫用鮮度保持機『グリーンキーパー』

従来は常温を避け冷蔵庫で低温に保つ事によりエチレンガスを抑えていましたが低温保存だけでは完全に抑えることは出来ません。そこでご紹介するのが冷蔵庫用鮮度保持機グリーンキーパーです。冷蔵庫の湿度は80%以下で加湿量が不足していることが多いと言われていますがグリーンキーパーは野菜や生花にとって鮮度保持に必要な温度管理を行い、理想の湿度と言われる90%以上100%以下を保ちます。エチレンガス分解フィルタが内蔵されており、鮮度維持効果を高めデリケートな野菜・果物・生花をしっかりと守ります。キャスター付のコンパクトな仕様で置き場所にも困らず設置も簡単です。水の気化という自然の原理を利用するシステムのため省電力で、電気代も気にせずに使用できます。気化式は湿度が100%を超えることがないため結露の発生も抑えます。

グリーンキーパー解説動画【特徴・使い方・メリット】
グリーンキーパー解説動画【稼働方法・操作方法】

生花を長持ちさせて長い間楽しむ

本コラムでは切り花を長持ちさせる方法のなかでも、“エチレンの影響を減らすこと”と“冷蔵庫内で加湿すること”に着目しました。さらに、これらを同時に行うことでこれまでよりも長期間切り花を保存することが可能であることを解説させていただきました。切り花を長く楽しむための参考になれば幸いです。

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コラム著者

小島 英幹

2012年に日本大学大学院生物資源科学研究科修士課程を修了後、2年間農家でイチゴ栽培を経験。
2021年に民間企業数社を経てセイコーステラに入社。コラム執筆、HP作成、農家往訪など多岐に従事。
2016年から現在まで日本大学生物資源科学部の社会人研究員としても活動し、自然環境に配慮した農業の研究に取り組む。研究分野は電解機能水農法。近年はアーバスキュラー菌根菌を利用した野菜栽培の実践を始める。
検定、資格は土壌医検定2級、書道師範など。

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