コラム
ハウスでのキュウリ栽培における高温障害、その原因と対策
公開日2021.06.02
更新日2021.06.02

ハウスでのキュウリ栽培における高温障害、その原因と対策

施設園芸は厳しい露地環境から作物を守り、品質や収量を向上させる便利なツールです。施設園芸で成功している国の一つに、オランダの施設栽培があります。オランダの施設園芸の特徴は作物の生育環境を維持するときに、ほとんどの場合加算する方向にコントロールすることが多いことではないでしょうか。

日本の気象環境は、春・夏・秋・冬と四季に恵まれておりそれぞれ異なる特徴を持っています。晩秋から早春にかけては、日が短くなることと気温の低下の影響で温度や日照時間の加算管理が主体になります。梅雨の時期から晩夏にかけては、気温の上昇と湿度管理が主体になり、いかに減算するかの管理になります。

過度な日照により温度管理が上手くいかず、ビニールハウスの温度が高くなりすぎると、作物に様々な生理障害が発生します。高温障害が発生しやすい作物は、稲・大豆・葉茎菜類(キャベツ・ネギ・たまねぎなど)・果菜類(トマト・キュウリ・ナスなど)・根菜類(大根・人参・ごぼうなど)です。今回はキュウリの高温障害にスポットを当ててご紹介していきたいと思います。

ビニールハウスの高温障害とは

キュウリの原産国は、インドからヒマラヤの高山地帯といわれています。キュウリの雌花は雄花がなくても果実をつけることができます。つるを伸ばしながら栄養生長と生殖生長を、同時に行い果実をつけていく植物です。キュウリの果実は直射日光に比較的弱く、このため葉の陰に隠れるように実がつくのが一般的です。原産地の環境から、キュウリは昼間と夜間の温度差がはっきりし、比較的乾燥した環境が適しています。

キュウリにとって生育適温でない高温が続くと、植物の呼吸量の過剰な増加により代謝が進みすぎて体力が低下します。結果、光合成の能力が低下することによるエネルギー不足が発生し、軟弱でひょろひょろとした草勢の作物に生長します。また地表面の温度が上昇し、根周辺の温度も上昇すると根の活動が低下すると考えられます。地表から一定の深さより下の土の温度は比較的一定の温度を保っていますので、根を深く張る傾向がある植物は温度変化の影響をさけ、根の活動を維持しているものと考えられます。これに対しキュウリは、比較的浅い場所で広く根を張る傾向があり、このことが温度変化に影響を受けやすい原因になっています。地表面の温度の上昇は土壌乾燥を招き、土壌中の水分は水蒸気となり施設内に放出され、換気が悪いと植物にまとわりつくように停滞します。土壌乾燥を避けるため潅水しすぎると土が締まり酸欠の原因にもなります。

これらの悪条件が重なれば、根や葉の働きが悪くなり免疫力や治癒力が低下し、細菌感染や食害を受けやすく簡単に病害虫にかかりやすくなります。このように高温が原因として発生するさまざまな作物の異常が高温障害というわけです。はっきりとした原因は断定できていませんが、複合的な要素がからみあって発生する可能性が高いと考えられています。

梅雨入りから夏場にかけての温度や湿度が上がりやすい環境が危険です。生育適温よりも5~10℃ほど高くなると障害が発生しやすいといわれています。特に夜間温度が低下しない環境はキュウリにストレスを与えることになり、成長を阻害、体力を低下させ免疫系が異常をきたし、果実の曲がりを起こすなど、病原菌の罹患原因を作るようです。

キュウリの高温障害の被害

露地栽培でも、梅雨あけ頃から温度が高くなり始めると、キュウリの成長も活発になってきます。つるを伸ばしながら栄養生長と生殖生長をしながら黄色い花がたくさんつくようになります。雌花から、たくさんの着果が起こります。多くの着果を維持することは負担が大きく株やつるを維持するエネルギーも実の方に振り向けられます。このことが株本や樹勢を弱らせる原因の一つになります。

夜間に温度が落ちないこともストレスになり正常な代謝を維持できなくなると考えられます。キュウリは果実に水分をため込む性質がトップクラスで、栄養価の評価では重量当たりの含有量が小さく水分割合が多い野菜といわれるくらい水分をため込む性質があります。過度なかん水が重なり水分をため込みすぎると、葉が薄く大きくなりキュウリの組織が柔らかくなるなど軟弱徒長状態となり、ハダニ類・コナジラミ類・アザミウマ類・オオタバコガ類などの害虫や、うどん粉病や褐斑病といった病気が発生しやすくなり被害を招きます。

発芽適温より地温が高くなる日が続くと発芽率が極端に低下します。生長点の生育が止まり、葉焼けが発生します。収穫時期に果実が割れる裂果や尻細りや尻太りが発生し、形が悪くなり売り物にならなくなるなど、品質に悪影響を及ぼし収量が大きく減少してしまいます。

高温障害を防ぎ健康なキュウリを育てる方法

適切な温湿度管理

キュウリにとって生育最適な栽培温度は、約18~25℃(昼間22~28℃、夜間17~18℃)が適当といわれています。午前中は温湿度を高めにして草勢の維持と側枝の生長を促進させます。着果数は樹勢の様子を見ながら摘果を行うようにします。地面に近いところの葉っぱが込み合っていると、湿度が停滞する可能性があります。この状態で地表付近が暖められると、蒸れる原因となります。葉っぱの重なりを避けるため風の通り道を作り、果実の日よけをしている葉っぱは大事にしてください。

キュウリの果実が曲がる原因は温度管理・肥料不足・水不足・虫の刺激・ネットのこすれがあります。曲がりが発生したキュウリは商品価値がないだけでなく、ほかのまっすぐなキュウリの成長も妨げる要因になりますから適宜取り除きましょう。午後は換気を十分に行い夕方までに温度・湿度共に下げましょう、これが十分でないと夜間温度が下がり切れず障害の原因となります。換気を行う際、冷たい風を直接キュウリに当てないように注意してください。

また設置費用やランニングコストはかかりますが、ヒートポンプエアコンなどを使用して温度を下げる方法もあります。ただし酷暑時期に稼働させると農業経営としては費用がかかりすぎてしまうかもしれません。最近では細霧冷房(ミスト)を利用した設備もあり、かん水もかねることができ、ランニングコストを抑えられます。気化熱でビニールハウス内の温度を下げてくれますが、湿度が上がり病害虫発生の要因の一つになる可能性があるため、注意が必要です。

育苗を行うハウスでは、害虫侵入防止のため開口部を防虫ネットで覆いますが、目合いの細かいネットだと風通しが悪いため換気性能が低下し、温度があがりやすくなりますので、換気扇や遮光ネットにより対策をする必要があります。

適切な遮光管理

遮光資材を活用すると、葉っぱや地温の温度上昇や葉焼けを防ぐことができます。キュウリは根が下へ深く伸びず、表層付近にひろがるため地温が高くならないように注意が必要です。キュウリは地温が気温より低いほうが良いようです。遮光ネットやポリマルチなどの資材を活用し葉っぱの温度や地温の上昇を抑えるのも効果的です。遮光率は30~40%が適当です。

農薬散布や葉面散布の時間帯に注意する

農薬、葉面散布肥料は施肥後に葉が夕方までには乾く時間帯に散布しましょう。ただし、日中の高温時に散布すると葉が焼け薬害が発生するなど、被害が発生してしまうことがあります。朝か夕方で気温が15~20℃ぐらいの時間帯に行うのが良いといわれています。また、天気の悪い日に窒素成分の入った追肥を与えると黒星病の発生を招きやすいので注意してください。

高温障害対策にお勧めの資材

ビニールハウスの高温障害対策におすすめの資材をご紹介いたします。

空動扇|全自動温度調節換気扇

ビニールハウスの天長部にある熱だまりを排気する換気扇です。上部のファンが風や太陽光により回転することにより温まった空気をビニールハウスの外に逃がします。電源が必要ありませんので、新たに電気配線を設置する手間なく利用できます。内蔵されている形状記憶スプリングが周辺温度に反応し伸び縮みすることで、内部の換気弁が開閉します。温度調節範囲は0~40℃の間で設定ができます。最初に設定してしまえば、急激な天候の変化にも自動で対応しますので、ビニールハウスの換気作業が軽減され、農作業が省力化されます。

空動扇の説明動画はこちら

ライトシェード|手動開閉の内貼りカーテン

手動で簡単に開閉ができる、内張式の遮光カーテンです。強い日射や、ビニールハウス内の温度上昇を抑え高温障害の抑制になります。レールはカーテンメーカーが開発しており、カーテンがスムーズに移動しますので、力のない方でも簡単に開閉作業を行うことができます。遮光率は20%・30%・40%・50%をご用意していますので、環境や栽培している品種の特徴にあわせてお選びいただけます。育て方により注意が必要な育苗ステージの使用にも適しています。

ライトシェードの設置動画はこちら

高温障害対策をおこない、品質の良いキュウリの栽培を

キュウリが高温障害の被害を受けてしまうと、収量や品質の低下により農業経営にもダメージを与えます。ビニールハウス内の環境管理をしっかりと行い作物を健康に育てることができれば、自然免疫による防除効果も期待でき与える肥料も吸収されやすくなります。今回のコラムをキュウリのハウス栽培に生かしていただければ幸いです。

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