コラム
バイオスティミュラントとは?|農作物の生産量や品質を向上する資材
公開日2020.12.18
更新日2021.04.17

バイオスティミュラントとは?|農作物の生産を向上する資材

最近話題になり始めた「バイオスティミュラント」という農業資材をご存じでしょうか。作物に対する非生物的ストレスを制御するといわれる農業資材で、まだ身近な存在ではありませんが、世界の食糧問題を解決する手段としても期待されており、ヨーロッパでは2011年に関係団体が発足したことで浸透し認知が進んでいます。近年、ヨーロッパやアメリカなどでシンポジウムが開かれるなど、農業における新しいカテゴリーとして注目されています。

日本においても愛知製鋼・旭化学工業・アリスタライフサイエンス・出光興産・OATアグリオ・コスモトレードアンドサービス・ハイポネックスジャパン・雪印種苗など8社の企業が「日本バイオスティミュラント協議会」を設立し、今後の研究開発や市場開拓に関心が集まっています。バイオスティミュラント資材をうまく活用すれば農作物を健康的に保つことができ、収益向上や品質向上などが期待できます。今回のコラムではバイオスティミュラントの基礎知識と農作物の生産向上を支援するおすすめの資材をご紹介したいと思います。

バイオスティミュラントとは?

バイオスティミュラント(Bio Stimulants | BS)とは、日本語に直訳すると「生物刺激(剤)」です。従来からある「肥料」「農薬」「土壌改良剤」といった分類には当てはまらない新カテゴリーの農業用資材の一つで、高温障害・低温障害・乾燥障害・湿害・窒素過多・酸素不足・薬害といった非生物的なストレスに対応して、生長活動に必要な吸収・代謝・調整などの機能が低下しないように助けます。

Bio(バイオ) Stimulants(スティミュラント)
生物 刺激剤

少し難しい概念なので身近な例で簡単に言い換えると、油粕・骨粉・米ぬか・牛糞などに土や籾殻などを加えて発酵させてつくるぼかし肥料に近いものと考えていただくと理解しやすいかもしれません。

作物が本来持っているはずの収穫量は、発芽から収穫までの期間にさまざまなストレスを受けることで減少していきます。ストレスには病害虫のような生物的なストレスと、高温障害や土壌不良などにより受ける非生物的なストレスがあり、バイオスティミュラントは非生物的ストレスを緩和する資材です。生物的ストレスと非生物的ストレスの両方が軽減すれば作物が本来持っている生理現象を最大限に生かすことができ慣行栽培に比べて収量の増加につながります。

このようなバイオスティミュラント資材は植物に使用することで、生命活動に欠かせない植物ホルモンを活性化するなどの何かしらの作用をもたらし、「植物の能力と農産物の価値を高める」農業資材として注目されています。バイオスティミュラントの世界市場は年率15%前後で成長しており、2021年には3000億円前後にもなると予測されています。日本の現在の市場規模は約100~200億円と推定されています。

バイオスティミュラントの定義

バイオスティミュラント(BS)の定義

バイオスティミュラント(BS)の技術や知識を安全に広げていくための活動を行っている日本バイオスティミュラント協議会によるとバイオスティミュラント(BS)の定義を以下のように説明しています。

BSの価値を理解するためには、まず「非生物的ストレスの緩和」を知るところから始まる。農薬が解決すべきターゲットは害虫、病気、雑草、生長調節(生物的ストレス:Biotic stress)であるのに対し、BSは干害、高温障害、塩害、冷害、霜害、酸化的ストレス(活性酸素によるダメージ)、物理的障害(雹や風の害)、農薬による薬害など、非生物的ストレス(Abiotic stress)に対する抵抗性を高め、結果的に増収や品質改善を実現しようとするものである。
引用元:バイオスティミュラントの定義と意義

バイオスティミュラント(BS)は病害虫の防除に使用する農薬や作物へダイレクトに作用する肥料とは異なります。温度・湿度・日照といった天候の悪化や土壌の状態が悪くなることによって、作物はストレスを受けて健全な状態を保てなくなり、その結果として病害中にかかりやすくなったり、葉面や土中にある栄養を上手に吸収できなくなったりします。作物がこのような悪い状態に陥らないように、受けるストレスを軽減し健康を保ち不良環境への耐性を強くすることがバイオスティミュラント(BS)の役割になります。

人に例えれば、病気になってから風邪薬で症状を抑えたりワクチンで耐性を作って細菌やウイルスから体を守るのではなく、「普段から軽度の運動をする」「バランスの良い食事をする」「十分な睡眠をとる」「日光を浴びる」などの体の管理を心掛け、健康を保つことで人間本来が持っている防御機能を十分に発揮するしくみに似ているのかもしれません。

バイオスティミュラントの種類と効果

バイオスティミュラント(BS)の種類には「腐食酸」「アミノ酸」「ミネラル」など、普段から聞きなれたものも含まれています。これらの成分を上手く活用することで、健康的な作物を育てることができるかもしれません。バイオスティミュラント(BS)としての効果が期待できる要素は種々雑多であるため、このような資材を規格化・標準化することは難しいと考えられています。

種類 効果
・腐植酸(フミン酸やフルボ酸)
・海藻抽出物、多糖類
・アミノ酸、ペプチド
・ミネラル、ビタミン
・微生物
・酢酸
・その他(動植物抽出物、微生物代謝物など)
・根圏環境の改善・根量の増加・根の活性向上
・栄養素の吸収、促進
開花、着果の促進
ストレス耐性の向上と回復
浸透圧の調節
・代謝の向上
・光合成の活性化
・蒸散のコントロール

腐食酸

枯れた樹木や落ち葉、動物の排泄物や死骸などが時間をかけてゆっくりと分解される過程で発生する物質です。酸やアルカリによる溶解度の違いにより「フミン酸」「フルボ酸」「ヒューミン」といろいろな呼び方があります。土壌に腐食酸があると土壌微生物の働きが活性化し、団粒構造を作り出します。土壌の保水性・保肥性を向上させ根の生長を促進します。

海藻抽出物・多糖類

海藻はヨーロッパではローマ時代から肥料成分のように使われていたという歴史があります。カリウム分が多いことから江戸時代の日本でも頻繁に使われていたようです。マグネシウム・カルシウム・鉄・亜鉛などのミネラルやアルギン酸・フコイダン・アスコフィラン・ポルフィランといった多糖類が含まれ植物活性効果が高く、また土壌微生物を活性化させ痩せた土壌を回復させるといわれています。

アミノ酸

アミノ酸は植物の細胞を構成しているタンパク質を作ります。有機質のアミノ酸は作物の根から吸収されタンパク質になるため光合成エネルギーを必要としないと考えられています。ですから天候不順による日照不足で光合成が活性化しなくてもアミノ酸があると、作物が育ちやすいといわれています。

ビタミン

ビタミンは作物の生育が盛んな場所に集まり根や葉の生長を助けたり、光合成活動を調整したりすると考えられています。

ミネラル

マグネシウム・カリウム・硫黄・鉄・マンガン・ホウ素・亜鉛・モリブデン・銅・塩素などがあります。代謝に欠かせない要素で、光合成や細胞の生長など作物の生育を円滑にします。

微生物

微生物は吸収した栄養素を作物に供給しやすくしたり、作物を病原菌から守る働きをしたりします。植物と共生することで土壌に良い影響をあたえる働きもします。糸状菌・納豆菌・乳酸菌・放線菌・光合成細菌・菌根菌・根粒菌などいろいろな種類の微生物資材があります。

バイオスティミュラントのメリット

作物を健康にして農業生産力が向上する

肥料のように直接作物の栄養になることはありませんが、バイオスティミュラントを使用することにより作物自体が丈夫(健康)になり、悪い環境でもその影響を受けにくくなります。健全な生理状態であることで、光合成を円滑に行ったり土壌中の栄養をを根が吸収しやすくなったり、栄養を生長が著しい部分に迅速に運ぶなどして、本来作物が持っている生長作用や免疫力を落とさないようにサポートします。これにより慣行農法に比べての収量や品質が向上すると考えられています。ヨーロッパのバイオスティミュラント協議会によればバイオスティミュラント資材を使用することで作物の収穫量が5~10%増加するとの報告もあるようです。動植物の抽出物や微生物が活動することで生成されるような天然由来ものが多く、農薬と混用して使用できる資材もあり使い勝手も悪くありません。

環境の変化に強い作物を作り省力化にもつながる

作物の植物生理機能が健全な状態を保つことができれば、急な環境の変化にも耐性ができて影響を受けにくくなります。日照りや曇天が続いたり、局地的に熱くなったり寒くなったりするなど、地域やその年によって刻々と変化する外部環境にも耐えられる強い作物を作ることができます。作物に悪影響を与える環境への対策が不要になれば農作業の省力化にもつながります。

長期的に農業経営が安定する

作物が健康な状態を保つことができれば、その年の品質や収量が向上するだけでなく、将来的にも良い状態が持続することにつながり、過度に農薬や肥料に頼らない安定した農業経営を行うことができるというわけです。

貯蔵中の保存性が向上する

バイオスティミュラント資材を使い栽培した作物は、収穫後の劣化現象が少なく保存中の被害が軽減されるという報告もあるようです。せっかく大切に育てた作物が保管している間に傷んでしまうことを防止できれば収量の減少という重要な課題をクリアすることができます。

バイオスティミュラントの課題や問題点

規格化・標準化の未整備

慣行農業で使われてきた農薬・肥料・土壌改良材とは異なる新しいジャンルのため規格化や標準化が未整備です。これらの使い方を規定している農薬取締法・肥料取締法・地力増進法のような法令も未だありません。そのため興味を持つ農業生産者はとても多いのですが利用した人は1割程度というレポートもあるようです。バイオスティミュラント資材は、作物へダイレクトに作用する肥料などとは異なり、即効性がありません。そのため化学的に有効性や安全性を確認することが難しく、知見を持っている専門家もまだまだ少ないというのが実情です。現在は勉強熱心な一部の農家さんを中心に利用が少しずつ広がっているという状況で、腐食酸・海藻抽出物・アミノ酸などの資材は、こだわりを持ったトマトやイチゴの施設農家さんなどの生産現場で使用が進んでいます。挑戦意欲のある農家さんがトライ&エラーを繰り返し、効果的な使い方を模索しています。

効果のほどは?

もともと農作物の生育は日照や水、そして農薬・肥料・土壌改良材などさまざまな要因により影響を受けるため、対策における効果が見えにくいという点があります。バイオスティミュラントは「非生物的ストレス」や「環境ストレス」を改善するため効果がより確認しにくく、農家さんが実際に体感的に良くなったという個人的な感想を頼りに使用されているというのが現状です。作物が改善しなければならない部分と施用するバイオスティミュラント資材の特性やタイミングがマッチしていないことで効果がないと結論付けしてしまうケースもあるようです。

バイオスティミュラントの安全な使い方は?|日本バイオスティミュラント協議会

世界ではバイオスティミュラント(BS)という新しい考え方の農業資材が農作物の生産向上に貢献していることが伝えられており、実際にEU(欧州連合)では2011年にEBIC(The European Biostimulants Industry Council|ヨーロッパ・バイオスティミュラント産業協議会)という関係団体が発足し活動しています。日本でも2018年に日本バイオスティミュラント協議会が設立し、主体となって勉強会や講演会を行ってきました。現在の協議会の正会員は26社、賛助会員は60社となっています。

バイオスティミュラント資材の認知拡大にはいくつかの課題が残っています。農家さんが安心して作物を育て、その作物を消費者へ提供し、さらに消費者が安全にその作物を食べることができるようにするためには、規格の標準化や法的な整備が必要ですが、上記で示した通りバイオスティミュラント(BS)は多種多様な種類に分けられるため「効果」「品質」「安全性」「薬害」といった側面において規格を整理することが難しく、その点が今後の課題といわれています。バイオスティミュラント(BS)が植物に作用するメカニズムの解明を明らかにして、標準的な規格を決めたり、安全に使うためのガイドラインを定めるなど、協議会で議論を重ねていくようです。

バイオスティミュラント資材のおすすめ商品

良質な天然アミノ酸肥料オルガミン

オルガミンは天然アミノ酸葉面散布肥料(液体肥料)です。魚をまるごと糖蜜と一緒に発酵させて作っています。化学処理をせずに天然発酵によって分解された約18種類のアミノ酸が含まれた液肥です。さらに植物が必要とする微量要素も加えられています。窒素・リン・カリがほとんど含まれていないため、作物の生育ステージを問わず安心して使用することができます。1,000倍に希釈し農薬と混合で葉面散布剤として利用できます。天然のアミノ酸は植物への吸収が早く、速効性が高いと考えられています。低温・高温・霜・乾燥・日照不足・長雨・病害虫などの障害が発生した際の回復促進や、作物の抵抗力強化が見込めます。有機JAS資材登録に登録されていますので有機栽培でも使用することができます。果樹(ぶどう・桃・リンゴ・さくらんぼなど)、野菜(トマト・イチゴ・キャベツ・レタス・ブロッコリーなど)といった様々な作物で活用されています。

高純度フルボ酸含有の100%有機質土壌改良材地力の素

フルボ酸は植物などの堆積有機物から生成される天然有機酸です。植物に必要なミネラルや微量要素をキレート化(吸収されにくい養分を吸収しやすくする)し、細胞内に届けるはたらきをします。また光合成を活性化し、窒素成分を効果的に葉や茎の組織に変えたり、根に働きかけて根量を増やします。一般的に農業において落ち葉や家畜の糞(馬糞・牛糞・豚糞・鶏糞)を混用し黒色になってできた堆肥を使用している場合が多いですが、その堆肥には腐植酸の含有量が少ないといわれています。

JAS規格の有機JASに登録されている資材ですので、有機栽培をして有機農産物を生産する生産者や法人の方もご利用できます(袋の表面に有機JASマークが表示されています)。

地力の素【細粒】20kg

地力の素【細粒】20kgだけで堆肥1トン分と同等の腐植質を含有しています。その為、堆肥と併用することで堆肥の投入量を削減しますので土づくりを省力化します。施用方法は基肥として作付前の圃場1000㎡あたりの土壌に2~4袋(40kg~80kg)を混和するだけです。フルボ酸と腐植質が土壌環境を長期間改善しますので、連作障害の防止や植物の生育環境の改善が期待できます。また育苗では培養土1Lに対して3~5gの混合がおすすめです。

地力の素【ペレット 】15kg

ペレットタイプの地力の素です。2~3袋でたい肥1トン分の効果があります。ペレットなので機械散布ができ、堆肥成分(有機炭素)も入っているオールインワン土壌改良材です。元肥一発肥料の土壌改良材版という位置づけですので大面積、露地向けの資材です。野菜・花き・果樹は10aあたり5~1o袋(75~150kg)、水稲は10aあたり3~5袋(45~75kg)、豆・麦類は10aあたり2~4袋(30~60kg)の使用をおすすめしています。

地力の素【 リキッド12 】1L,5L,20L

濃縮された腐植酸が入っている地力の素の液体タイプです。希釈して土壌へ流し込むことで、作中に衰えた地力を補うことができます。土壌潅注の場合は1,000倍で10~15日間隔での使用、点滴潅水・養液土耕の場合は3,000~5,000倍で随時での使用をおすすめします。葉面散布にも使うことができます。

phがアルカリ性ですので、酸性の資材と混ぜると沈殿が生じます。他の資材と混用する場合は本製品を1,000倍以上に希釈してから混ぜてください。

バイオスティミュラント資材を有効活用して農作物の生産向上を

今回はバイオスティミュラント(BS)の基礎知識を記載してきました。より詳しい情報を収集されたい方はバイオスティミュラント協議会のホームページをご参照ください。地域や育てる作物によって圃場環境は異なることもあり、バイオスティミュラント(BS)の標準的な使い方や効果については、不透明な部分も多く科学的なデータや有効性の仕組みなどが十分にあるとはいえません。現段階では、試行錯誤しながらより良い使い方を探すという方法で使われているケースが多いようです。効果の実証性は今後の課題になりますが、このようなバイオスティミュラント資材をうまく活用することで、農作物自体を元気にすることができれば、病害虫に強く品質の良い作物を作ることが期待できます。慣行栽培に比べて収量を上げることができれば農業従事者の高齢化が進んでも、バイオスティミュラント資材を使い農作業の労力を削減することで解決の糸口になるかもしれません。科学的に実証されていないから信頼しないというよりは、少し柔軟に捉えて活用していくのが良いのではないでしょうか。

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