コラム
青果物の鮮度保持を行う方法とは?
公開日2022.08.18
更新日2022.08.18

青果物の鮮度保持を行う方法とは?

スーパーの野菜や果実の売り場では「鮮度抜群!産地直送〇〇」「朝採り〇〇!新鮮です」「採れたて〇〇!一押し」といった鮮度を売りにしたようなキャッチフレーズを目にする機会が多いのではないでしょうか。これは消費者の購入判断基準に、青果物は鮮度が高ければ高いほど品質や味が良いという意識が強くあるためです。品質の良い作物を収穫できたとしても消費者の手に渡るまでの鮮度保持を怠ると、それまでの努力が泡となってしまいます。今回のコラムでは青果物の鮮度保持について詳しく解説していきたいと思います。

青果物の鮮度保持を妨害する原因とは?

野菜や果物といった青果物と、肉や魚といった生鮮食品との違いは、何でしょうか。一番大きな違いは、ほとんどの作物は収穫後も生命活動を続けているという点です。根や枝から切り離された後も呼吸を行い必要なエネルギーを作りだしています。根から水や栄養を吸収できないため、体内に残っている糖や有機酸などを多く消費しますが、この消費により品質が劣化すると考えられています。加えて、呼吸には蒸散やエチレンガスの生成なども伴いますので、シンプルに表現すると「収穫後の植物の呼吸」こそが最も根本的な鮮度低下の理由だと捉えることができるのではないでしょうか。呼吸(に伴う代謝)により発生する鮮度低下の要因は「呼吸熱」「蒸散」「エチレンガス」などです。

呼吸熱

呼吸はエネルギー代謝であるため、青果物の品温を上昇させる要因となります。呼吸速度は温度が高いほど早くなり呼吸量(カロリー)が増加するため品質低下を促進させます。品温が高くなると、さらに熱がこもって品温を上昇させるという悪循環に陥ります。

蒸散

呼吸が活発になると代謝を促し、植物の蒸散も盛んになります。養分の吸収を促すために必要な蒸散ですが、根や枝から切り離された青果物は蒸散のみの活動となり、水分を吸収することができないため、次々に水分量を失っていきます。重量の80~90%は水が占めているとされる植物ですから、水分の蒸発は鮮度の低下に大きく影響します。

エチレンガス

エチレンガスは開花や熟成のために必要だとされていますが、保管や輸送中のガスの曝露は鮮度低下を招く原因になります。蒸散と同様にエチレンガスも植物の呼吸に関連して放出されます。

関連コラム:エチレンガスの果物への影響|鮮度保持の方法を紹介!

青果物の鮮度保持を行う4つの方法とその設備や資材

1.呼吸を抑える

予冷庫・冷蔵庫
高い温度での保管は、野菜や果物の鮮度を低下させますので、適切な温度で保管をする必要があります。予冷は、出荷前に行う低温処理のことで、収穫後に鮮度が落ちやすいとされる青果物を急速に冷やすことで呼吸作用を抑える目的で行われます。予冷庫は冷蔵庫と同じような側面がありますが、一番の違いは冷却に係る時間が短く、また保管中の青果物から発せられる呼吸熱や外部からの侵入熱を除去する能力に優れている点です。予冷や冷蔵で管理を行う場合、品目によっては低温障害が発生する可能性がありますので注意が必要です。

関連コラム:青果物を予冷庫で冷却するメリットとは?

CA貯蔵庫
通常の冷蔵機能に加えて、倉庫内の空気の酸素濃度と二酸化炭素濃度をコントロールして、青果物の呼吸作用を抑えます。通常の空気組成よりも「低酸素・高二酸化炭素」の状態にすることで野菜や果物の活動を抑制します。空気組成をコントロールするため貯蔵庫の気密性が高い必要があります。CA貯蔵を行っていない冷蔵庫で保存した場合に比べて、およそ2倍の鮮度保持効果が期待できるとされています。品種や品目ごとに最適な空気組成調整を行うため、経験や技術が求められます。

関連コラム:CA貯蔵とは?メリットとデメリットを解説

MA包装
ポリエチレンやポリプロピレンなどで出来ている特殊なフィルムで青果物をつつみ、包装内部に適当なガス環境(低酸素・高二酸化炭素)をつくることで呼吸代謝を抑制します。袋内に窒素や二酸化炭素を充填しガス環境を作るActive MAと、青果物の呼吸を利用してガス環境を作るPassive MAがあります。

 

2.蒸散を抑える

加湿機能付冷蔵庫
一般的な冷蔵庫の湿度は60%程度のため、蒸散作用により青果物の水分が失われてしまいます。理想的な湿度は85~95%程度とされており、このような高湿度環境をコントロールできる冷蔵庫です。

 

3.エチレンガスを除去する

エチレンガス除去剤
活性炭や基材にしたエチレン除去剤がパックされた鮮度保持材です。青果物を梱包するカートンに入れて使用します。エチレンガスを吸着・分解などの作用で除去します。箱詰めの時や、倉庫で保管する時に活用される場合が多いようです。またエチレンを吸着するゼオライトや防カビ成分の添加物をポリ袋に練り込んだ個包装材などもあります。

エチレンガス除去装置
ガスを分解するフィルターで保管倉庫内のエチレンガスを除去します。大型の装置の場合には、設置工事が必要な場合もあります。

オゾンガス発生装置
不安定な結合をしているオゾン(O₃)は他の物質と融合し酸素(O₂)に戻ろうとする性質を持っていて、この性質を利用して倉庫内のエチレンガスを分解します。同時に腐敗の原因となる細菌も分解することが可能です。オゾンによる細菌の分解は耐性菌が発生しにくいというメリットもあります。高濃度のオゾンガスは人体に悪影響を与える危険性がありますので、濃度管理には注意が必要です。

関連コラム:オゾンを利用した除菌やウイルス除去とは?そのメカニズムと活用方法

 

4.細菌を除去する

次亜塩素酸水などによる洗浄
食品添加物に指定されている次亜塩素酸水や次亜塩素酸ナトリウムを用いて、青果物を洗浄する方法です。塩素の酸化作用により細菌を失活させます。次亜塩素酸ナトリウムは光や熱などで分解されやすいので保管方法や使用期限に注意しましょう。電解型の次亜塩素酸水には微酸性・弱酸性・強酸性の3つがあり、pHや有効塩素濃度といった条件が決められていますので、定期的なチェックを行った方が良いでしょう。食品衛生法やHACCPなどで定められた残留塩素濃度基準をクリアするために、洗浄後の青果物は流水で十分にすすぐ必要があります。

オゾン水による洗浄
前項で解説しましたオゾンガスを水に溶かした水溶液です。水溶液の中で形成されたOHラジカルが有機物から電子を奪う作用を利用し、除菌・殺菌を行います。

関連コラム:オゾン水で野菜洗浄や果物洗浄を行うメリットとは?

青果物の鮮度保持をサポートするおすすめの資材①

グリーンキーパーは、特殊な気化技術を使い青果物の鮮度維持に適した90%以上~100%未満の湿度空間を作り出す冷蔵庫用の加湿器です。同時に内蔵されたエチレンガスフィルターでガスを分解し、青果物の腐敗を抑制します。キャスター付きのコンパクトなサイズで、電源が取れれば既存の冷蔵庫に設置するだけ利用することができます。時間やコストのかかる面倒な施工工事は不要で、稼働している冷蔵庫を止める必要もありません。

オゾン散水器は、ボタン一つで瞬時にオゾン水を生成し菌の増殖抑制・脱臭に抜群の効果を発揮します。フラワーショップでは切り花に付着した菌の増殖を抑制してフラワーロスを削除、食品施設では手洗い、野菜洗浄、調理場の清掃など様々なシーンでオゾン水を活用できます。水道水のみで生成できるためランニングコストも安価に抑えられます。

青果物の鮮度保持を行う方法とは?(イメージ)
グリーンキーパー:適用床面積は5坪(16㎡)程度
青果物の鮮度保持を行う方法とは?(イメージ)
グリーンキーパーアクア:適用床面積は15坪(50㎡)程度
青果物の鮮度保持を行う方法とは?(イメージ)
青果物の鮮度保持を行う方法とは?(イメージ)

青果物の鮮度保持をサポートするおすすめの資材②

オゾン散水器は、ボタン一つで瞬時にオゾン水を生成し菌の増殖抑制・脱臭に抜群の効果を発揮します。フラワーショップでは切り花に付着した菌の増殖を抑制してフラワーロスを削除、食品施設では手洗い、野菜洗浄、調理場の清掃など様々なシーンでオゾン水を活用できます。水道水のみで生成できるためランニングコストも安価に抑えられます。

青果物の鮮度は「売り」になります

日本人は、青果物を選ぶ際の基準として鮮度を最も重視すると考えられています。鮮度が長持ちする商品というのは、市場競争の中で大きな武器になりますので、取扱いをしている品目に最適な鮮度保持方法を選択して、市場競争力を強化できるといいですね。今回のコラムをお役立ていただければ幸いです。

青果物の鮮度保持を行う方法とは?

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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