コラム
オゾン水で野菜洗浄や果物洗浄を行うメリットとは?
公開日2022.08.15
更新日2022.08.15

オゾン水で野菜洗浄や果物洗浄を行うメリットとは?

収穫後の野菜や果物は、呼吸に伴う呼吸熱やエチレンガスの発生、そして付着した細菌などが原因となり鮮度低下を引き起こします。呼吸やエチレンガスが青果物に及ぼす作用は、他のコラムに説明を譲ることとし、本コラムでは、青果物が細菌(微生物)により鮮度低下を起こす原因と、オゾン水を使った野菜洗浄における鮮度低下対策についてお伝えしていきたいと思います。

オゾン水とは?

オゾン(O₃)を水(H₂O)に溶かした水溶液です。オゾンは(O₃)は非常に不安定な状態のため、すぐに酸素元素(O)を放出して酸素(O₂)に戻ろうとします。放出された酸素元素(O)は、水(H₂O)から水素元素を奪い、そして形成されたOHラジカルもまた不安定な状態なため、近くの有機物から電子を奪おうと働きます。この働きが殺菌・除菌などの反応を起こすと考えられています。酸化現象は殺菌・除菌の基本原理ですが、OHラジカルは活性炭素の中でも最も酸化力と反応性が高いとされています。

オゾン水が殺菌・除菌するしくみ

一般に細菌の構造は、中心に染色体*とリボソーム**があり、その外側にタンパク質や脂質で出来た細胞膜があり、さらにその外側に内部を守るための硬い細胞壁があります。オゾン水から発生するOHラジカルは、酸化作用により細菌の硬い細胞壁を酸化分解することから始まり、脂質やタンパク質で出来ている細胞膜を分解させ、細胞内の成分を漏出させます。また細胞透過率に変化を生じさせることにより細胞を分解するなど、細胞内の化学反応を触媒する酵素の活性作用を失わせて、核酸を不活性化させます。

*染色体:遺伝情報と発現と伝達を担う
**リボソーム:遺伝情報を翻訳しタンパク質を合成する

細菌により劣化する野菜や果物|発酵と腐敗の違い

野菜や果物には、土壌や水などの環境に由来した菌や、人の手を介して付着した細菌(微生物)がついています。汚染の原因となるものは、糞便・動物・昆虫・土壌用水・土壌肥料・農(機)具・収穫洗浄水・人などで、種類により個体差があるようですが1gあたりの細菌数が1千万~1億個を超えると腐敗が始まると考えられています。細菌は温度・pH・水分・栄養などに左右され増殖し、食べられない状態に変化する(食べると人に悪さをする菌が増殖してついている)ことを腐敗、食べられる状態に変化する(食べても人に悪さをしない菌が増殖してついている)ことを発酵と呼んでいます。実は腐敗と発酵において、細菌の働きは同じで人の視点に立って分けているだけのことです。一般的に果実に比べて野菜は、細菌汚染度が高く、野菜においては腐敗に関与する菌は150種以上あることが確認されています。

オゾン水による野菜洗浄・果物洗浄のメリット

耐性菌が発生しにくい

野菜洗浄や果物洗浄で広く使われている次亜塩素酸ナトリウムには次亜塩素酸イオンが多く含まれています。次亜塩素酸イオンの殺菌機序において、細胞壁を通過することができるが細胞膜は通過できないため、その性質上耐性菌が発生しやすくなります。よって、次亜塩素酸ナトリウムの除菌・殺菌のようなピンポイント攻撃では、薬害抵抗性を発達させた細菌が発生するリスクが常にあります。
一方、これも広く使用されている次亜塩素酸水(酸性電解水)には次亜塩素酸が多く含まれており、次亜塩素酸は細胞壁も細胞膜も通過することができるため、染色体を構成する核酸を変性させるという性質上、耐性菌が発生しにくくなっています。

また、オゾン水に含まれるOHラジカルは、細胞壁や細胞膜を分解させ細菌全体を分解していくため、薬剤抵抗性が発生しにくいと考えられています。次亜塩素酸水もオゾン水も同じように耐性菌を発生させにくい特徴がありますが、オゾン水は次亜塩素酸水と比較して、生成時に塩酸や塩化カリウム水などの生成液(被電解質)を必要としなことにメリットがあります。
次亜塩素酸ナトリウムによる攻撃がピンポイントだとすると、次亜塩素酸水とオゾン水による攻撃はマルチポイント攻撃と捉えることができるかもしれません。

劣化のスピードを遅らせて鮮度を維持する

オゾン水で洗浄すると、水道水などを使った水洗浄よりも菌の量を低減することができます。野菜や果物に付着している腐敗菌を殺菌・除菌することにより、鮮度保持日数が延長される効果が期待できます。

使い勝手が良く残留性がない

青果物の洗浄によく使われるナトリウムやカリウムを被電解質とした強酸性次亜塩素酸水は、食品添加物の区分は「指定添加物」となっており、使用後の処理は「分解又は除去しなくてはならない」とされています。ですから、強酸性次亜塩素酸水で洗浄した後は、十分にすすぎ洗いをする工程が必要になります。一方オゾンは、広く使用され長い経験があるとして、例外的に厚生労働省の指定を受けることなく使用することが認められている「既存添加物」であり、使用後の洗浄は不必要です。酸化作用後は水に戻るため残留性がなく安全だとされています。

道具の殺菌・除菌にも活用できる

普段の農作業で使う農機具や運搬器具などに菌が付着していることが原因で、菌が拡大していくこともありますので、これらの道具類にもオゾン水を散水することで殺菌や除菌の効果が期待できます。普段良く使う道具を清潔にしておけば、腐敗菌を遠ざけることが可能です。

いつでも気軽に生成できるオゾン散水器をご紹介

セイコーエコロジアが提案するオゾン散水器は、超軽量の電解ユニットを採用した小型のオゾン水生成機器です。薬液を使用することなく水道水のみでオゾン水を生成できるため、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸水よりも手軽に利用できることがポイントです。
オゾン水は厚生労働省によって野菜や果実の洗浄に用いることが認められており、使用後のすすぎ工程を行わくて済むため手軽さはさらにアップします。
食中毒の要因になりがちな、調理器具の洗浄や調理場の掃除にも利用することができ一石三鳥の優れものです。また、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸水のように金属に対する腐食性が低いため、ステンレスの腐植をほとんど気になる必要がありません。

オゾン水を使った洗浄でフレッシュな野菜を届けよう

オゾン分子を水に溶かしたオゾン水は、安全で取扱いがしやすい上に、洗浄した野菜は殺菌効果や除菌効果による鮮度保持を期待することができます。腐敗菌の除去は、保管中や輸送中の鮮度低下のリスクを引き下げます。それに伴い廃棄率や事故率が下がる上、よりフレッシュな状態でユーザー様の手に渡すことが可能となります。今回のコラムを丹精込めて作った青果物の鮮度保持にお役立ていただければ幸いです。

関連コラム:もしオゾン水を圃場の植物に利用できたら・・・そのメリットについて解説

オゾン水で野菜洗浄や果物洗浄を行うメリットとは?

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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