コラム
CA貯蔵とは?メリットとデメリットを解説
公開日2022.06.29
更新日2022.07.01

CA貯蔵とは?メリットとデメリットを解説

日本の消費者は食品の「鮮度」を重視する傾向がありますが、野菜や果実のような青果物は米や肉に比べて鮮度維持が難しいものです。品質の高い青果物を育て収穫することに加えて、いかに新鮮な状態で消費者の手元に届けるのかという貯蔵技術のレベルアップが求められています。今回は、鮮度保持に効果が期待できるCA貯蔵という特殊冷蔵技術についてお伝えしていきたいと思います。

CA貯蔵(Controlled Atmosphere Storage)とは?

温度を低くする通常の冷蔵機能に加えて、気密性の高い貯蔵庫の大気の組成を「低酸素・高二酸化炭素」の状態に調節し、保管する野菜や果物の呼吸作用を抑えて、品質の低下を防ぐ貯蔵方法のことです。通常の大気組成は酸素20.95%二酸化炭素0.03%(窒素78.08%・アルゴン0.93%・その他0.01%)という状態ですが、一般的にCA貯蔵の大気の組成は、酸素が2~10%二酸化炭素2~10%という状態に制御して保管します。普通冷蔵の2倍ほど鮮度保持効果が期待できると考えられています。

このようなやり方はCA貯蔵法と言われ、1821年にフランスにおいて「貯蔵寿命を可能な限り伸ばす」というテーマで研究が始まり、モモ・洋ナシ・リンゴなどの果実の鮮度保持期間を延長することができたという記録があります。その後イギリス・アメリカ・日本・カナダ・オーストラリアなどで実用テストや研究が始まり、1950年代からはアメリカのリンゴ産地において急速に広がっていきました。日本では、1961年に青森県で初めてリンゴを保管するためのCA貯蔵庫が建設され、2021年では青森県内に719棟の貯蔵施設があり収容能力は約35万トンもあります。

CA貯蔵のメリット

野菜や果実といった青果物は収穫後も、空気中の酸素を利用し活動を行っています。そのため成熟(追熟)作用のあるエチレンガスの発生や、黄化作用をもたらすクロロフィルの分解が行われ、青果物が劣化していく原因となります。このような作用を抑制するためにCA貯蔵法においては、低温の冷蔵庫内を「低酸素・高二酸化炭素」の状態に保ち、青果物の呼吸量を大幅に低下させ、エチレンガスの生成やクロロフィルの分解といった作用を抑制し、冷蔵だけの保存に比べて鮮度維持の期間を長くすることが可能となります。このような手法の確立により、冬の果実であるリンゴを、夏の暑い時期にもスーパーマーケットなどで販売をすることができるようになっています。農業経営にとっては年間を通じて安定した収入を得ることが可能です。

CA貯蔵のデメリット

建設費や運転費が高い

CA貯蔵施設は、温度・湿度・大気組成といった環境制御を高い精度で行う設備のため、建設費や運用費用が高くなり、大規模農業では費用対効果が得られやすいのですが、小規模の農業経営をしている農家にとっては、経営上において負担になるリスクが高く導入が進みにくいという傾向があります。アメリカにおいて急速にCA貯蔵法が普及したのは、米国の農業はほとんどが農地を平野部に集約し大規模に農業経営を行っているためだと考えることができます。

大気組成のコントロールが難しい

貯蔵に最適な酸素および二酸化炭素濃度は、野菜や果物の品目や品種さらには収穫したタイミングなどで異なるため、青果物ごとに適切な空気調整が必要ですが、このコントロールが難しいと考えられています。制御を誤り酸素濃度が低すぎる(例えばリンゴにおいては酸素濃度1.5%を下回る程度とされる)と嫌気呼吸の状態となり、嫌気性細菌が増え悪臭が発生するリスクが高くなります。一方、二酸化炭素の濃度が高すぎると青果物の内部が褐変したり、柔らかくなったりして品質が低下する可能性があります。

多品目貯蔵が難しい

青果物の品目によって鮮度保持に必要な適切な大気組成条件が異なりますので、同一のCA貯蔵庫内においては、多品目の貯蔵は難しいとされています。食の多様化が進み、消費者の様々なニーズに答えるためには、多品目の青果物を貯蔵しなければなりませんが、品目ごとにCA貯蔵庫を設置運営するのは、かなりの投資が必要になります。

CA貯蔵における大気組成・温湿度・貯蔵期間

品目 酸素 二酸化炭素 温度 湿度 貯蔵期間
リンゴ 1~3% 1~3% 0~3℃ 90% 6~9ヵ月
トマト 3~10% 5~10% 7~9℃ 95% 5週間
バナナ 5~10% 5~10% 12~14℃ 85~95% 1.5ヵ月
温州ミカン 10% 0~2% 3℃ 85~90% 6ヵ月
ジャガイモ 3~5% 2~3% 3℃ 85~90% 8~10ヵ月
ハクサイ 3% 6~9% 0℃ 90% 4~5ヵ月

冷蔵庫の鮮度保持におすすめ!グリーンキーパー

グリーンキーパーは、エチレンガス分解フィルタ内蔵の冷蔵庫用加湿器です。この装置は大気組成をコントロールする方式ではなく、青果物から発生するエチレンガスを分解し、野菜や果物の劣化を防止します。キャスター付のコンパクトな仕様(W595×D350×H645/mm)で設置工事も必要がないため、CA貯蔵に比べて導入コストやランニングコストを大幅に抑えることができます。発生したエチレンガスを除去する機能ですから、1台で多品目の青果物を保管している冷蔵庫の鮮度保持にも活用することができます。

また鮮度保持に必要な加湿機能(90~100%の湿度を保つ)を備えているため、乾燥による青果物の水分減少をおさえつつ、気化式を採用しており過度な加湿による冷蔵庫の故障などを防ぐことができる貯蔵性能の高さを備えています。

グリーンキーパー解説動画【特徴・使い方・メリット】
グリーンキーパー解説動画【稼働方法・操作方法】

収穫物の衛生管理ツール!!オゾン散水器

オゾン散水器はオゾン濃度0.3~0.7 mg / Lのオゾン水を瞬時に生成できるオゾン水生成器です。充電式の散水器タイプというこれまでにない新しいモデルで、水道水蛇口(飲用適水)があればどこでもオゾン水が生成できます。オゾン水は農作物の表面に付着した腐敗の原因になる菌を取り除くことができ、収穫物の鮮度保持に貢献します。生成には薬品を必要としないので環境に優しく、また、手荒れを起こすこともなく安心して使用できます。

 

 

貯蔵技術を生かして新鮮な青果物を提供しましょう

四季おりおりの食材を、旬の時期に楽しむ感覚も大切ですが、農業経営においては収穫した作物の鮮度を保ちながら長期保存を行い、市場に提供することで売上向上をしていくことが収益の改善につながっていきます。今回のコラムがフレッシュな青果物貯蔵の一助になりましたら幸いです。

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コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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