予冷庫とは?冷蔵庫との違いと冷却方式について

強制通風予冷方式
冷たい風を使い青果物を冷却させる冷風冷却方式の中で代表的なものです。冷たい風を予冷庫内で循環させて熱交換により青果物を冷やします。どのような品目にも一定の効果が期待できる汎用性が高い予冷設備のため、最も普及しています。予冷庫の設備投資の中ではコストを抑えることができます。一般的には常温から5℃まで温度を下げるためには半日~1日程度かかります。積み上げたダンボールの中の青果物は冷えにくい点や、ダンボールの置いた場所により冷えムラが生じる点がデメリットとしてあげられます。
差圧通風予冷方式
こちらも冷風冷却方式の一つで、青果物を穴の開いたダンボールに入れて、気圧の差を利用し開けた穴から冷気を引き込んで冷やす方法です。強制通風予冷方式に比べて約3倍速く冷やすことができるとされています。減圧ユニットや被覆シートなどがついている高額な専用設備が必要になります。また冷気を引き込むための穴の開いたダンボールを用意したり、正圧と負圧の作用するように積み方に注意をしたりする必要があります。穴の大きさや荷積みの向きなどにより予冷効果が得られない場合もあり、設備を導入したものの、あまり活用されていないこともあるようです。
真空冷却方式
庫内の圧力を低くして、青果物の表面から水分を蒸発させて冷却する方式です。水が蒸発する際の気化熱を利用して青果物から熱を奪うため、冷えムラが生じにくく、大量の青果物の冷却処理を行うことができます。キャベツ・スイートコーン・レタスなどの予冷には最適だとされています。水分が飛びにくい果菜類の予冷には向いていません。また葉菜類は水分が奪われるため萎れることがあります。常温の青果物を5℃までさげるのに20~40分というほど予冷性能は優れていますが、設備投入には数百万~数千万円ほどの高額な費用がかかることや、圧力の調整が難しいことなどがデメリットです。
冷水冷却方式
冷媒ガスを使いチラー(冷凍機)で冷やされた冷水や、クーリングタワーで冷やされた冷却水を使用して青果物を間接的に冷やす方法です。マイナスの温度になっても凍結しない不凍液「ブライン液」を使用するやり方もあります。場合によっては冷水を活用して洗浄作業に併用することもできます。液体を利用しているため設備の故障により水漏れが発生する可能性があるという点がデメリットです。
収穫後の青果物を冷却する理由

およそ20℃における青果物の呼吸量(CO₂排出量)
| 呼吸量(CO₂排出量)mg/kg/hr | 品目 |
|---|---|
| 200以上 | アスパラガス・スイートコーン・ブロッコリー・ホウレンソウ |
| 200~100 | オクラ・エダマメ |
| 100~50 | イチゴ・キュウリ・セロリ・ナス・レタス |
| 50~ | キャベツ・ジャガイモ・トマト・ピーマン |
呼吸作用は温度が高いほど大きくなり、青果物の貯蔵成分が消費されて食味や栄養素を劣化させる要因となります。予冷は、この呼吸作用を抑えるために行われます。
予冷しない場合のリスク

呼吸熱が発生し品質低下が速くなる
収穫後の作物も細胞の機能を維持するために呼吸を続けています。植物の種類ごとに呼吸量は異なり、呼吸量は多い方から、キノコ類・芽野菜・花野菜・葉野菜という順番で、呼吸量の大きさは品質低下スピードの目安となります。呼吸量が多いと代謝が多くなるため、その分熱を発生させます。さらにこの熱により呼吸量が多くなり代謝が増えるという悪循環により、品質低下のスピードが速くなります。
蒸散が進みハリツヤがなくなる
青果物は水分含有量が80~90%で、呼吸をしながら水分を蒸散させています。水分が失われることで表面は萎れてハリツヤがなくなります。また蒸散時の結露により細菌・カビなどが発生しやすくなることがあります。
※イチゴ・キュウリ・ナスなどは、低温状態でも蒸散が活発に行われるため予冷に加えて加湿をする必要があります。
エチレンガスにより劣化する
呼吸代謝が高くなると野菜や果実はエチレンガスを多く発生させます。エチレンガスは青果物の呼吸を促進し生長を早める(追熟する)働きをしますので、青果物を予冷してこの働きを弱める必要があります。エチレンガスは品目によって発生量や感受性が異なります。
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予冷庫のメリットとデメリット
メリット
廃棄品や事故品の発生率が低下する
保管中や流通中の青果物が傷みにくくなり、廃棄率や事故率を低下させることができます。輸送中の温度が高い場合でも無予冷に比べて、温度上昇が抑えられて鮮度低下のスピードがゆるやかになります。
商圏を拡大することができる
予冷を行わなかった青果物を、冷蔵庫を搭載したトラックで冷やそうとしても、冷却機能が低く品温を維持することはできても、積極的に冷やすことができません。しかしトラックに受け渡す前に予冷をしておけば、長距離輸送にも耐えうる状態となり、商圏を広げることが可能になります。
高い値段で販売することができる
消費者は野菜や果物に鮮度を求めています。そのため価格を左右するいくつかの要素のうち鮮度は重要な要素の一つで、フレッシュな作物を提供できれば高い値段で取引を行うことができまし、良い商品にはリピーターがついて継続的な売上の安定にもつながります。
デメリット
導入する費用が高額だが稼働率が低い
一般に予冷設備を稼働する時期は、最高気温が15~20℃を超える時期が目安です。となると地域格差はありますが、4~5月頃から9~10月頃までの5~7ヵ月程度の稼働期間となり、稼働していない時期が長いわりには、導入する費用は高いと感じる方もいるかもしれません。
予冷庫を使用する際のポイント
適当な予冷庫を選ぶ
予冷庫の機能を最大限に生かすためには、青果物の特徴にあった予冷方式の予冷庫を選ぶ必要があります。フィルム包装や小袋に入れた状態で保管する場合、差圧通風予冷方式でないと冷えにくいなど、保管方法によっても効果の有効性が異なるため、この点にも留意しておきましょう。導入する設備によって費用も大きく異なりますので、経営的な視点から費用対効果についても十分に検討しておくこともお忘れなく。
収穫後すぐに低温処理で保管する
多くの野菜や果物は収穫後に最も呼吸が盛んになるとされています。甘味や栄養素の低下を防ぐためには収穫後は、なるべく早めに冷却処理を行い、それから箱詰めを行うと品質を維持しやすくなります。イチゴやイチジクなどは予冷により実が締まりパック積めの際に傷がつきにくいというメリットもあります。予冷が早ければ早いほど廃棄率が低くなるとされていますので、適切な温度で保管できない場合は、冷蔵庫を備えている仲卸売業者へ速やかに納品することをおすすめします。
品温5℃を目安に冷やす
ほとんどの青果物は5℃を目安に冷やすと良いとされています。キュウリやトマトなど一部の青果物においては障害が出る場合がありますので注意しましょう。5℃での予冷が難しい場合は10℃以下に冷やされるようにします。
予冷庫よりも気軽に導入できる!?鮮度保持におすすめの機材
グリーンキーパーは青果物が発生させる老化ガス「エチレンガス」を除去しながら、鮮度保持に最適とされる「90%以上100%未満の湿度環境」を作り出します。加湿方式は水蒸気加湿の気化式を採用していて、結露が発生しにくいため、ダンボールやエアコンの痛みが少なく、カビの発生および拡散が起こりにくくなります。予冷と同じ効果が期待できるわけではありませんが、加湿とエチレンガスを除去する機能で鮮度保持効果が期待できます。既存の冷蔵庫や保冷庫に設置するだけで、工事費もかからないため、新しくプレハブ製の予冷庫を投入するよりも低コストです。キャスターが付いているので移動させて別の倉庫で利用することもできます。
鮮度保持に役立つ予冷庫|費用対効果を見据えて導入しましょう

コラム著者
セイコーステラ 代表取締役 武藤 俊平
株式会社セイコーステラ 代表取締役。農家さんのお困りごとに関するコラムを定期的に配信しています。取り上げて欲しいテーマやトピックがありましたら、お知らせください。


メリット
適当な予冷庫を選ぶ