コラム
コールドチェーンとは?|青果物における低温流通体系について解説
公開日2022.08.17
更新日2022.08.17

コールドチェーンとは?|青果物における低温流通体系について解説

一般的に、消費者やユーザーは「野菜や果物の鮮度が良い=商品価値が高い」と見なしています。ところがその価値観とは裏腹に(バナナや洋ナシのように追熟期間を経ることでうまみが増す一部の品目を除き)青果物は収穫後が最もフレッシュであり、時間の経過と共に品質は低下していきます。このような問題点を改善するために普及してきたのが、収穫時の鮮度をなるべく維持しながらユーザーにお届けすることを可能とするコールドチェーン(Cold chain)という仕組みです。

コールドチェーンとは?

コールドチェーンとは、農作物を生産地から販売店へ、そしてユーザーの手に渡るまで、適切な温度帯で保管・流通させ、最も新鮮な状態で管理する食品物流体系のことです。低温度(cold)での保管や輸送が鎖(chain)のように途切れない流通体系ということで、日本語では低温流通機構や低温流通体系などともいわれています。

コールドチェーンという言葉は低温物流体系が発達していたアメリカで生まれた言葉です。日本では1965年(昭和40年)に科学技術庁資源調査会から「食生活の体系的改善に資する食品流通体系の近代化に関する勧告」が科学技術庁長官に提出され、また同会から「食生活の改善と食料流通の近代化」という書籍も出版されました。このような行政機関の動きが契機となり、コールドチェーンへの関心が高まったとされています。当時は冷凍食品が話題の中心となっていましたが、当然ながらコールドチェーンが適用されるのは、冷凍品(管理温度-15℃以下)だけでなく、冷蔵品(管理温度2~10℃)、常温品(管理温度10~20℃)といったように、種類ごとに適切な温度での保管が望まれる製品群も含みます。

コールドチェーンが担う役割

日本は食品小売店の密度が高く、買い物をする頻度が高いとされています。そのため鮮度にはとても敏感で、多くの方が食品を購入する際に必ず賞味期限をチェックするのではないでしょうか。従来、国民が豊かな食生活を享受するためにコールドチェーンの整備は進められてきましたが、現在ではその豊かさは当たり前となり、コールドチェーンの役割は、鮮度の高い青果物を低温管理・低温輸送をして、消費者に選んでもらえるようなフレッシュな状態で提供するための手段になっています。

コールドチェーンのメリットとデメリット

メリット

廃棄率や事故率を低下させることができる
青果物の劣化には多様な要因がありますが、低温で管理することにより、保管段階や流通段階における廃棄ロスを大幅に少なくすることができたり、最も避けたい消費者やユーザーに届ける段階での鮮度低下による事故を削減できたりします。生産者の不利益を低減するだけでなく、社会問題となっているフードロス(食品廃棄)の減少にも寄与するかもしれません。

市況に振り回されにくい
通常の温度での保管に適していない青果物の場合、鮮度保持のための設備を持っていなければ安くても販売するより他の手段はありません。しかし長期保存に適した設備を用意することができれば、在庫管理をしながら出荷量を調整することが可能です。販売価格を安定的にすることで堅実な経営が実現できます。

商圏が広がる
販路を日本全国に広げようと思っても、常温倉庫や常温輸送しかなく、鮮度が保たれなければ販売ができません。コールドチェーンによれば遠距離輸送が可能になりますので、販売ルートが限定されにくく販路を拡大することができます。場合によっては海外への輸出も可能となるのではないでしょうか。

デメリット

費用負担が大きい
コールドチェーンを実現するための設備は、高額な投資になるものが多いため、費用対効果や資金調達方法なども十分に検討しておく必要があります。特別な知見や経験が必要な設備も多くあり、教育制度も確立しておかなければなりません。

低温障害が発生する可能性がある
低温障害とは、限界温度以下で保管されたときに発生する生理障害の一つです。アボカド・バナナ・マンゴーといった熱帯性の果実や、キュウリ・ジャガイモ・トマト・ピーマンなども低温障害になりやすいとされています。低温保管状態から常温に戻った際に障害の症状が出やすいため、市場や販売店で現れると取引上の信頼を失う原因となります。

保管や輸送に知識や技術が必要になる
次の章で紹介しますがコールドチェーンを実現するための、さまざまな専門設備には専門的な知識と技術、そして経験が必要です。利用方法を誤ると、鮮度保持効果が出なかったり、悪い場合にはかえって品質を低下させてしまうことがあるので注意が必要です。

青果物の安全性の判断が難しくなった
これは生産者や卸売業者にとってのデメリットというよりは、消費者にとってのデメリットです。長距離輸送が不可能であった時代には、産地から消費ユーザーまでの距離はとても短く、流通過程を把握することは容易でしたが、冷蔵冷凍技術の発達や人々の生活様式の変化により、青果物が消費者に届くまでの距離が長くなったことで、多くの会社や人が関わらざる得なくなり、安全性について判断することが難しくなっています。ですから生産者の顔が写真でついている野菜に人気が出たり、生産から消費者までの履歴を追跡できるトレーサビリティというシステムに注目が集まったりしているという訳です。

コールドチェーンを実現するための設備

予冷設備

収穫した青果物をなるべく早く冷却処理するための設備です。大きく分類すると冷却方式は「冷風冷却方式」「真空冷却方式」「冷水冷却方式」の3つに分類されます。冷蔵設備や冷凍設備との違いは、冷却にかかる時間が短いという点です。収穫直後の野菜や果実は劣化が進みやすいため、早く冷却させる必要があります。

関連するコラムはこちら:青果物を予冷庫で冷却するメリットとは?

冷蔵設備(冷凍設備)

冷蔵庫や保管庫など青果物を適切な温度で維持するための設備です。高鮮度保持冷蔵庫は温度管理に加えて湿度管理ができるなど、鮮度保持のための機能が追加されています。卸売市場などでは建物全体や一部を低温化する全館空調設備や部分空調設備が導入されているところもあります。

関連するコラムはこちら:鮮度長持ち!大型冷蔵庫における果物の長期保存方法とは!?

CA貯蔵設備

青果物の呼吸量に着目し、気密性の高い冷蔵庫内において、大気組成をコントロールすることでエチレンガスを抑制し鮮度を維持する設備です。

関連するコラムはこちら:CA貯蔵とは?メリットとデメリットを解説

低温輸送設備

もっとも一般的なものは、温度管理ができる冷蔵または冷凍機能をそなえた配送トラックです。冷却方法にはエンジンを冷却の動力としている「機械式」、8時間程度の短距離輸送に適している「蓄冷式」、荷台を-40℃以下にすることができる「窒素式」などがあります。

コールドチェーンの実現を補助するおすすめの資材

今回のコラムでご紹介しましたコールドチェーンを実現するための設備は、いずれも高額で費用対効果や資金回収といった点から、簡単には導入することが難しいものが多かったと思います。そこでおすすめしたい製品が、エチレンガスの除去と加湿を同時に行うことができ、既存の冷蔵庫に備え付けるだけで鮮度保持の効果が期待できるグリーンキーパーです。エチレンガスを放出する量や感受性は、青果物の品目ごとに異なりますが、こちらの装置は発生したガスを単純に分解するため、多品目を保管している冷蔵庫や保冷庫でも、細かい設定は不要で鮮度の劣化を防止することが可能です。

コールドチェーンをサポートする鮮度維持に役立つオゾン散水器

オゾン散水器から生成されるオゾン水は、野菜や果物に付着する腐敗の要因となる菌の増殖を抑制する効果が期待できます。超軽量の水素分離型電解ユニットを採用しており、ボタン一つで瞬時にオゾン水を生成します。
生成に必要なものは水道水のみ。超低ランニングコストでいつでも手軽にオゾン水を利用できます。
オゾン水の利用は環境保全にも貢献でき、SDGsを取り入れた活動を考えている方にはオススメです。これまで行っていた鮮度維持方法を見直したい方は是非オゾン散水器をご検討ください。

関係者と協力が必要なコールドチェーンの確立

農家さんにとっては播種から収穫まででも大変なのに、消費者ニーズに答え信頼を得るには、収穫後の保管や流通過程にも注意を払わなければなりません。課題解決に向けては、仲卸業者や輸送業者などコールドチェーンに関わる人たちに理解や協力をしてもらう必要があるかと思います。今回のコラムをコールドチェーンの確立にお役立ていただければ幸いです。

コールドチェーンとは?|青果物における低温流通体系について解説

コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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