コラム
IPM(総合的病害虫・雑草管理)とは?農業におけるIPMの方法メリットを解説
公開日2021.12.22
更新日2021.12.28

IPM(総合的病害虫・雑草管理)とは?農業におけるIPMの方法メリットを解説

梅雨時期を代表とする高温多湿の日本の気候は病害虫にとっては最適な環境といえます。そのため日本では化学農薬に頼った農業を行ってきました。しかし近年、農薬への耐性を強めた害虫の出現により生産物の収量低下や品質低下が大きな問題となってきています。今回のコラムでは化学農薬だけに頼らないIPM(アイピーエム)の手法とメリットに関して詳しく解説していきたいと思います。

IPMとはなにか?

IPMとはIntegrated Pest Managementの略で「総合的有害生物管理」と日本語に訳すことができます。農林水産省のホームページから引用すると、予め病害虫・雑草の発生しにくい環境を整え(輪作、抵抗性品種導入、土着天敵利用等)、病害虫の発生状況に応じて、天敵(生物的防除)や粘着板(物理的防除)等の防除方法を適切に組み合わせ、環境への負荷を軽減しつつ、病害虫の発生を抑制する防除体系のことを指します。

IPMはもともと海外で考えられた体系で、日本に入ってきたのは1990年代です。そのためまだまだ知名度は高くないのではと思います。次章ではIPMの手法に関して紹介していきます。

引用:農林水産省 病害虫防除に関する情報

4種類のIPMの手法をご紹介

1.耕種的防除

抵抗性品種

病原菌に対して抵抗性を獲得している品種を導入するだけで、簡単に対策ができます。例えば野菜の品種名に「CR」や「YR」のついたものがありますが、前者は根こぶ病を後者は萎黄病に対する抵抗性を意味しています。

対虫性品種

トマトなどではネコブセンチュウなどへ抵抗性のある品種が開発され、広く栽培されています。

抵抗性台木

ある作物を台木として接木すると発病を抑制できます。例えばカボチャの台木をキュウリに接木することでツル割病の発病が抑制できます。使用する台木によって耐暑性・耐寒性・草勢・低温伸縮性が異なるので使用する際は注意しましょう。

対抗植物

病害虫への対抗植物として利用できます。例えばマリーゴールドは根から分泌されるアルカノイドにセンチュウを殺す効果があります。

輪作で連作障害の回避

毎年のように同じ畑で同じ作物や同じ科の作物を続けて栽培すると連作障害という生育不良や収量・品質の低下が起こります。輪作(りんさく)といって1年ごとに畑を変えて栽培することで土壌環境を維持でき、農作物の病気を防ぐことで安定した生産をすることが可能になります。

2.物理的防除

防虫ネット

農作物にかぶせることで害虫の侵入を防止する資材です。90%程度の遮光性をもち、通風性に優れています。ネットの上から水やりのできる製品もありとても便利です。防虫ネットの目合いが細かいほど害虫の侵入を予防できますが、目合いが細かいと温湿度を上げてしまい農作物に悪影響を与える原因となってしまうので注意しましょう。一般的には空隙率(くうげきりつ)*が60%以上あれば問題ないです。防虫性と通風性のバランスを考慮すると0.6mm目合いの防虫ネットが最も評価されているようです。

*単位あたりの隙間の割合

シルバーマルチ

太陽光を反射するマルチシートを株元に敷くことで害虫の侵入や発生を抑えられる資材です。害虫は通常、背中に太陽光を受けて飛行しますので、地表方向から太陽光を受けると飛べなくなります。この生態を利用してアブラムシ、アザミウマ、コナジラミといった害虫に対して効果を与えます。

3.生物的防除

天敵昆虫

農作物につく害虫を餌にして増殖する昆虫・ダニ類・微生物を「天敵」と呼びますが、この天敵を使用して害虫対策する方法を「天敵利用」といいます。以下に例を記載します。天敵利用をすることで農薬の散布回数が削減できるので、散布労力と農薬コスト減が期待できます。最も盛んに利用されているのはオランダ等から輸入されているスワロスキーカブリダニです。価格がかなり高いというデメリットはありますが、農薬耐性のあるアザミウマ類に非常に有効なため、全国各地で利用されています。なお近年、高知県では地域の土着天敵の活用が広まり、殺虫剤は全く使用しないという生産者も出てきているようです。

害虫 天敵
アブラムシ ナナホシテントウ、ヒラタアブの幼虫
ヨトウムシ類、オオタバコガ クモ類、ゴミムシ
アブラムシ類、アザミウマ類、ハダニ類 ヒメハナカメムシ類、ヒメテントウ類

バンカープランツ

バンカーとは「銀行」の意味です。バンカープランツとは天敵を増やして温存する植物のことを指します。例を挙げると露地ナスの周囲にソルゴーを植えることで土着天敵のヒメハナカメムシ、クサカゲロウが増えてミナミキイロアザミウマ、ハダニ、アブラムシといった害虫を食べてくれます。

天敵生物農薬

BT剤や昆虫病原性センチュウ剤などが挙げられます。前者は散布された葉をコナガ等が食べると体内で化学的に作用することで死に至らしめます。後者は微小なセンチュウがハスモンヨトウ等の体内に侵入した後に共生細菌を放出することで害虫が敗血症になり死に至らしめる効果があります。

4.化学的防除

病害防除

うどんこ病以外のほとんどの病原菌は多湿を好みます。従って温度や湿度をみながら発生を予測し、予防散布することが基本となります。次項目の害虫防除の際も言えることですが、気温の高い季節はなるべく朝の気温が低い時間帯に散布しましょう。散布された薬剤がなるべく早く乾くように注意することが大切です。夕方散布すると乾きにくいため農作物が薬害を起こす原因となります。特に梅雨時期は湿度が高いため病気が発生しやすいので、天気予報を見ながら降雨の前日に散布しましょう。

害虫防除

大量発生や圃場全体に広がってしまってからでは手遅れですので発生初期の防除が基本となります。薬液が害虫にかからないと効果がありませんので、発生場所が一部の場合はその場所を集中的に部分散布することもおすすめです。

生産者にとってのIPMの具体的なメリットとは

農薬が効かない害虫への対策ができる

生産者にとってIPMを取り入れることによる最大のメリットは害虫の発生と被害を抑えられることです。近年、イチゴに発生するヒラズハナアザミウマ等の害虫は薬剤抵抗性が高まっており、もはや農薬散布という一つの手法だけではなかなか対策ができなくなってきています。次章でもご紹介しますが、吸引式LED捕虫器や活性式予察捕虫器などの複数の手法を組み合わせるといったIPMという総合的な対策がとても重要です。

農薬の使用量を削減できる

農業において化学農薬の使用することは収穫量や品質の維持のためにも重要なのですが、口に入る食べ物ですので農薬散布が少ないにこしたことはありません。IPMを取り入れることで農薬の散布回数を半分程度まで減らせたという例もあるようです。

農薬散布の労力を削減できる

農薬の散布回数が減ればその分の労力が減ります。農薬散布は薬液を作成し噴口を動かしながら、農作物にかける一連の作業を数時間かけて行うためとても労力のかかる作業かと思います。散布回数が数回減るだけでも身体の負担が軽減しますし、かつ空いた時間を休息時間や他の作業時間にあてることが可能になります。

心理的な不安を削減できる

農業は常に「病害や害虫はいつ発生するのだろうか」という心理的な不安と隣合わせです。次章で紹介する吸引式LED捕虫器や赤色LED防虫灯を設置することで日頃から害虫の発生を予防し抑制することができるのでセキュリティツール(お守り)としての効果が期待できます。

IPMをするために最適な製品

赤色LED防虫灯「モスバリアジュニアⅡレッド

モスバリアジュニアⅡレッドはLED照射を利用してアザミウマの活動を抑えます。この製品に使われている技術は農林水産省が発表した「2020年農業技術10大ニュース」にも選ばれている最新の技術です。モスバリアの赤色LED(ピーク波長630nm)光が半径15mに届き、日中に約12時間程度(日の出1時間前~日の入り1時間後までの照射が望ましい)照射するとアザミウマの成虫は方向感覚が麻痺し飛べなくなります。植物体の緑色を識別することが困難になり植物体への誘引や定着が妨げられ、雌成虫の産卵機会が減少し、次世代の幼虫数が減少しますので1世代で繁殖をストップさせる効果があります。※ヒラズハナアザミウマに対しては効果がないのでご注意ください。

導入事例はこちらからご参照ください▶チャノキイロアザミウマによる新芽への被害を50%カット!モスバリアの効果を実感|臼井園芸

吸引式LED捕虫器「スマートキャッチャー

紫外線と可視光線のLED灯を利用した害虫用の捕虫機です。各種害虫をLED光で誘引し、強力な吸引ファンで捕虫袋に捕獲します。専用ACアダプター付属で電源が取れる場所でしたらS字フックなどで簡単に設置することができます。独自のフレームレスモーターは害虫の死骸が固着して回転不能を起こすことがなく、LED灯を採用しているためメンテナンスにあまり時間を取られず長くお使いいただけます。専用補虫袋は使い捨てタイプですから衛生面でも心配がありません。コナジラミ類、アザミウマ類、コバエ類、チビクロバネキノコバエ、ナガマドキノコバエ、クロバネキノコバエ類、アシグロハモグリバエ、マメハモグリバエ、ハスモンヨトウ、ヨトウガといった飛翔害虫全般を捕虫することができます。

活性式予察捕虫器「コナジラミキャッチャー&アザミウマキャッチャー

施設園芸向けの予察捕虫器です。特殊誘引剤の匂いと粘着シートの色によってコナジラミ類及びアザミウマ類を誘引し捕虫します。付着した害虫の種類や数を農薬散布の判断目安とすることで害虫被害の早期発見と早期防除に役立ちます。電源が不要のため電気が完備していない圃場にもおすすめです。約1a(100㎡)あたりに1台設置することで、食品由来の原料を使用した誘引剤「コナジー」及び「アザミン」と粘着シートの色でコナジラミ類及びアザミウマ類を誘引し捕虫します。誘引剤の効果はおよそ3か月間持続します。1台あたり3,080円~と低価格なので手軽に導入できます。3か月以降も誘引剤(1本あたり605円~)を交換すれば継続的に使用することが可能です。※害虫の個体数を激減させたり、これさえあれば薬剤散布をする必要がなくなるといった絶対的な効果はありませんのでご注意ください。

コガネムシ類発生予察(モニタリング)用資材「ニューウインズパック

畑・果樹園・園芸などに設置することで特殊なルアーがコガネムシ類を誘引し捕獲します。ルアーには性フェロモンまたは植物誘因物質が練り込まれており、設置場所から50~100mの距離のコガネムシ類を誘因します。発生数・発生範囲・発生源といった駆除の指標となる情報が得られます。無農薬なので安心安全です。設置はとっても簡単です。ルアーを装着し地表より1m前後またはできるだけ地表近くに設置するだけです。ルアーの交換周期は2~3カ月です。※使用するルアーや設置場所は、コガネムシの種類によって変わりますのでご注意ください。マメコガネ・ヒメコガネ・ドウガネブイブイ・セマダラコガネ・ヒラタアオコガネ・チビサクラコガネ・アシナガコガネ・オオサカスジコガネ・アオドウガネ・ナガチャコガネ・スジコガネ・ツヤコガネ・シロテンハナムグリといったコガネムシを捕虫(捕獲)することができます。

IPMを取り入れて農作業の改善

今回はIPMに関して詳しく記載してきました。IPM関連の動きとしては令和2年より一般社団法人全国農業改良普及支援協会が「IPMアドバイザー」という資格試験を実施する活動を行っており徐々に注目され浸透し始めています。本コラムにより生産者の皆さんがIPMの詳細を知るきっかけとなり、取り入れることで農作業改善の一助となれば幸いです。

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