コラム
野菜や果実をエチレンガスから守れ!ガス発生のデメリットと対策をご紹介
公開日2022.06.16
更新日2022.06.16

野菜や果実をエチレンガスから守れ!ガス発生のデメリットと対策をご紹介

産地の予冷設備に始まり、冷蔵車両の普及や市場の冷蔵設備の充実などにより、コールドチェーン方式が整備されているものの、鮮度保持においてはまだ改善の余地があります。特に野菜や果物の成熟には欠かせないエチレンガスは、農作物(収穫物)の保管や流通過程においては、もっぱら商品価値を低下させるマイナス的な側面が多く、エチレンガスの影響を少なくする対策が求められています。今回のコラムではエチレンガスを中心に、鮮度保持の対策について考えていきたいと思います。

エチレンガスとは?

エチレンガスは自然に存在する植物ホルモンの一つで、野菜や果実が自ら分泌し追熟(老化)を促す働きをします。作物は収穫された後でも呼吸をしており、エチレンガスを放出し熟していきます。時間の経過と共に、青いリンゴが赤くなったり、バナナや桃がだんだんと柔らかく、そして甘くなったりするのは、エチレンガスの働きが大きいと考えられています。

エチレンガスは、野菜や果実の細胞壁を分解する酵素(細胞壁溶解酵素)の合成を促し、植物細胞をつなぎ合わせている複合多糖類の細胞間物質「ペクチン」(食物繊維の一つ)を分解して糖分に変化させます。この作用により野菜や果実が熟成し食べやすくなり、人間が美味しいと感じる状態になっていきます。

バナナの追熟を施す際に使用される都市ガスにもエチレンが含まれており、ガス管の破裂が街路樹の落葉を引き起こすなど、その成分の効用については以前から認知されています。

関連コラム:エチレンガスとは? 成長を促す植物ホルモンがもたらす作物への影響

エチレンガスのデメリット

野菜や果物は収穫後も活発に呼吸活動を行っているため、同時にエチレンガスの生成もストップすることはありません。エチレンガスの生成量や感受性は作物ごとに異なりますが、エチレンガスを多く発生するリンゴ・バナナ・パッションフルーツなどの果実を感受性の高い作物と一緒に保管すると、追熟が進みすぎて保管中に劣化して腐敗するという事態が発生します。感受性の高い作物を収穫した後は、保存環境や輸送環境においてエチレンの発生量を抑えることが大切になります。エチレンガスにより追熟が進み過ぎると、キャベツ・ホウレンソウ・コマツナといった葉菜類の緑色が退色したり、ニンジン・ピーマンなどの苦味が生成されたりするなど、品質の低下を引き起こします。このような品質の低下を防止するためには、作物の種類や成熟の段階など、異なる状態のものを限られた環境で保管・輸送をしなければならないという問題が発生します。

関連コラム:エチレンガスで野菜などの農産物が劣化する?エチレン分解・除去について解説

鮮度を保持するためのエチレンガス対策

エチレンガス対策を行うためには、大きく分けて2つの方法があります。1つは発生したエチレンガスを除去する方法で、もう1つは大気成分や大気圧をコントロールしエチレンガスの発生を抑える方法です。

1.発生したエチレンガスを除去する方法

エチレンガスを除去する包装資材

大谷石*・ゼオライトといった多孔質の資材を粉砕してポリエチレンなどのフィルムに練りこみます。このフィルムで作った保存袋で野菜や果実を個包装する方法です。フィルムには、エチレンガスを吸着して透過させる作用があり、野菜や果実が発生させるエチレンガスを取り除き、エチレンガスによる腐敗を防止します。さらに抗菌剤も練りこんで抗菌機能を持たせた製品や、フィルムに特殊な加工を施し、適切な湿度で維持できる機能を持たせた製品もあります。

*大谷石:栃木県宇都宮市にある大谷石地下採掘場でとれる石で、エチレンガスを吸着する作用があるため、採掘場が日本の政府米を貯蔵する倉庫として利用されたことがあります。地下空間は気温が一定に保たれていることから現在でもワイン・日本酒・ハムなどの貯蔵に活用されています。

エチレンガス吸着分解資材

天然のゼオライトと微量の過マンガン酸カリウムを混合したエチレンガス吸着分解資材です。多孔質の鉱石であるゼオライトがエチレンガスを吸着し、過マンガン酸カリウムが二酸化炭素と水蒸気に分解します。不織布などの小さな袋に入っていて、カートンや配送箱に入れることで、腐敗を防止する効果が期待できます。

2.エチレンガスの発生を抑制する方法

CA貯蔵法

貯蔵庫の大気組成を通常よりも「低酸素・高二酸化炭素」の状態にして、低温貯蔵することで野菜や果実の呼吸量を低下させ、発生するエチレンガスを抑制する方法です。収穫後の作物が呼吸を続けると、追熟が進み腐敗しますが、酸素濃度を下げることで呼吸作用が抑制されます。CAとはControlled Atmosphere(制御された空気)の頭文字をとった呼び方です。デメリットとしては、設備投資が高額になることと、酸素と二酸化炭素の濃度が保管する作物にとって適切に保たれないと、嫌気呼吸の状態となりメタンチオールやジメチルジスルフィドといった悪臭のガスが発生することです。品目・収穫時期・保管温度によって適切な酸素と二酸化炭素の濃度が異なるのが、管理の難しい点です。

MA包装貯蔵

ポリプロピレンやポリエチレンといったプラスチックフィルムなどの包装資材を使い、包装資材の内部の空気を「低酸素・高二酸化炭素」の状態にして呼吸を抑制する方法です。品質の目安として重視されているビタミンCの含有量が低下しにくいという実測結果もあるようです。酸素と二酸化炭素の濃度が適切に保たれるフィルムを選ぶ必要があり、選択を誤ると悪臭発生の要因になります。小さな穴があけられた加工がされており、高コストである場合が多くランニングコストが抑えられる製品の開発が期待されます。MAとはModified Atmosphere(変更された空気)の頭文字を取っています。

減圧貯蔵法

気密性の高い倉庫で換気を行いながら減圧し保管する方法です。空間の圧力を低下させると酸素が占める圧力も低下し、野菜や果物の呼吸量が低下することで常圧保存に比べてエチレンガスの生成量が少なくなります。冷却速度が速く、また換気性に優れエチレンガスなど好ましくない揮発性物質を除去しやすいといったメリットがあります。一方、耐圧性向上のため、鉄筋コンクリートの壁を厚くしたり鉄製容器を使用したりするなどに加え、空気の出入を調整する真空ポンプも必要で、設置費用はかなり高額になるというデメリットがあります。また、出荷後に追熟しても香りがあまり発生しなくなったり、軟化した果実が減圧で形が崩れたりすることがあります。

エチレンガス対策におすすめの除去装置

そこで皆様にご紹介したいのが、エチレンガス分解フィルター内蔵の冷蔵庫用加湿器グリーンキーパーです。エチレンガスを含んだ倉庫内の空気を吸収し、内蔵されているエチレンガス分解フィルターにより、ガスを除去した空気を排出します。同時に野菜や果物の水分蒸発を防ぐために加湿を行い、品質の低下を防止します。グリーンキーパーは気化式の加湿方式を採用しており、湿度が100%を超えることがないため結露が発生しにくい特徴があり、保管中の作物が傷んだり冷蔵庫内のエアコンが故障したりするリスクを抑えることができます。

大がかりな工事は不要で、タンク式*は電源だけ確保すれば、設置後すぐに使用することができます。キャスター付のコンパクトな仕様(W595×D350×H645/mm)のため、冷蔵庫内の限られたスペースでもご利用いただけます。気軽に導入することができ、手間や費用を抑えて冷蔵庫内のエチレンガス対策を行うことが可能になります。

*直水式は耐圧ホースを使い水道の蛇口から水を供給させます。

グリーンキーパー解説動画【特徴・使い方・メリット】
グリーンキーパー解説動画【稼働方法・操作方法】

関連コラム:生花を長持ちさせる方法|エチレンガスを分解できる冷蔵庫用加湿機グリーンキーパー

収穫物の腐敗を抑制|オゾン散水器

オゾンは厚生労働省より既存添加物に認可されており食品や農作物に安全に使用できます。オゾン水はオゾンを含有した水で、気体のオゾン(オゾンガス)よりも濃度が低くなるものの、その分安全に利用できて有効効果も維持します。充電式を採用しているので水道水蛇口があればどんな場所でもオゾン水を生成することできます。さらに、オゾン水生成に薬品を使用することがないため環境配慮されています。ボタン一つで操作できるのでだれでも簡単に使用できます。

エチレンガスを除去してフレッシュな状態で保管をしましょう

青果物を高い値段で販売するためには一定の品質で消費者まで届ける必要があります。収穫した野菜や果物を新鮮に保つためには、発生するエチレンガスを少なくしたり、呼吸量を抑えてガスの発生自体を低下させたりするなどの鮮度低下対策が重要です。有効な方法をチョイスし、上手にエチレンガスをコントロールして、野菜や果実の鮮度保持を行い品質の低下を防ぎましょう。

関連コラム:エチレンガスの果物への影響|鮮度保持の方法を紹介!

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コラム著者

キンコンバッキーくん

菌根菌由来の妖精。神奈川県藤沢市出身、2023年9月6日生まれ。普段は土の中で生活している。植物の根と共生し仲間を増やすことを目論んでいる。特技は狭い土の隙間でも菌糸を伸ばせること。身長は5マイクロメートルと小柄だが、リン酸を吸収する力は絶大。座右の銘は「No共生 NoLife」。苦手なものはクロルピクリンとカチカチの土。

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